河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

1604- 本「万物は流転する」

2014-03-09 17:21:13 | 本と雑誌

B1
本「万物は流転する」
知識人から見た旧ソ連の思想
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ワシーリー・グロスマン著
齋藤紘一訳
亀山郁夫解説
みすず書房3800円
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 冬季五輪が開かれたソチは、元来はチェルケス人という少数民族の地であった。本書はスターリンの死後、30年の収容所生活から故郷ソチにもどってきた知識人イワン・グリゴーリエビッチからみたソ連をめぐる思想小説である。
 自家出版として書かれたが、日本では1972年にソ連抵抗文学として紹介された。反スターリン的な風潮の中で、一歩踏み込んだレーニン批判として評者は読んだが了解可能だった。中でも30年代飢饉(ききん)の鬼気迫る記述はその後の仕事にも参考になった。ちなみに本国で公開されたのは89年、レーニンを疑い始めたソ連崩壊直前であった。
 再読してレーニンの思想の根源にロシア独自の運命があったというグロスマンの省察までは読めていなかったと反省している。レーニンと正教異端派である古儀式派(アヴァクーム)の思想的関係までは日本では誰も理解しなかったのではないか。革命の帰結がなぜ収容所なのか。破壊と建設、専制と革命、欧州とアジア、ロシアは逆説の国である。だが自由だけはなかった歴史的運命から37年のテロルをも思索する。
 圧巻は密告と裏切り、そして倒錯としての同性愛まで生み出した収容所世界の記述である。同性愛を巡る今の欧米からのロシア批判がいかに的外れか。だが釈放され自由となったはずの市民生活でも人々は恐怖ゆえに自己規制したと、フルシチョフ自由化の逆説も示唆する。
 レーニンの中にあるロシアの正教と異端、歴史的な文脈の問題は、今ようやく理解されだした。ただ自由なきロシアの悲劇性に問題の根源があったという主題それ自体はソ連崩壊後は陳腐に響く。問題はレーニンやスターリンだけでなく、平凡な「ユダ」たちの保身と裏切りにもあった。ナチズムの基盤に獄吏アイヒマンのような凡庸さを見出したハンナ・アレントにも似たまなざし、「日常的なスターリニズム」の問題でもある。違っているのはその考察の行き着く先が「流転」という言葉が暗示する諦観なのか、それともロシア的悲劇への歴史的問いなのか、それへの解答は21世紀の今もない。
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・著者は05年生まれ。ウクライナ出身の作家。著書に『人生と運命』など。64年没。
・評 法政大学教授 下斗米伸夫


1603- シベリウス4番2番、他、尾高忠明、札幌交響楽団2014.3.5

2014-03-09 16:44:57 | コンサート

2014年3月5日(木)7:00pm サントリー

オール・シベリウス・プログラム

組曲、恋人 4′3′5′
交響曲第4番 11′5′12′8′
交響曲第2番
(encore)
悲しきワルツ

尾高忠明 指揮 札幌交響楽団


風邪でダウンしていたさ中だったのですが、昨年に続き「てんさい糖」の恩恵を受けるためになんとか出てきました。が、
前半はもったものの、後半はほぼ睡眠状態で、特に第4楽章にアタッカでなだれこんだあたりで目が覚めたときは退場しようと思うぐらいバッドな状況でした、なんとか周りに迷惑かけずに座っているだけで精いっぱい、踏みとどまりました。
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実は前半は微熱が高熱に越えてしまった感じで、意識としてはスッキリしていて、感覚的にはむしろさえていた。
シベリウスの4番はどうだこうだといった話はよくあるのはわかっていますが、この日の4番はダイナミックさに欠ける演奏で、音が萎えている。
4番は神秘的に語られることもあるけれど、個人的にはもっと素直に直情的にオーケストラサイズで鳴らした演奏が聴きたい。静寂への意識が強いのかわかりませんが、音が川底に澱んでいるような状態で、音楽が生きて進行しない。
ストリングはこのオーケストラ独特の音色があり魅惑的ながら、弱音フレーズでももう少しグワッグワッと波打つ感じがあってもいいと思う。指揮者の思惑が大きいのかもしれない。静寂さを志向するのであれば、全体のレベルをもっと上げないといけない。
一度、鳴らしきった演奏(練習でも)をやってみて、それから秘境系の音造りをしてみるのもいいのではないか、この4番。
それから1曲目の組曲恋人、音楽の片側の側面だけで何かを言おうとしているのか、1曲目としてはかなり厳しい曲。どのような曲でもどこかいいところを探そうという意思を持って聴けば何事もそれなりにいいところは聴こえてくるところはあるのだが。
4番作曲中、歌からオケ用に編曲されたからみで冒頭に持ってきたところはあるのかもしれない。演奏会のプログラム・ビルディングとしては4番がらみで置くなら1曲目なのだろう。また、これら2曲はプログラム前半に置くことにより演奏メンバーの集中度をそれなりに保てたところがある。テンションが高いうちにやろう、みたいな感じですね。緩んでしまったら、この2曲に立ち向かうには困難が伴う。
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後半の2番は、風邪薬が効いてきたのか、熟睡と仮眠を繰り返すなか、瞬間目覚めがありその時だけは音が聞こえてくるという状態で感想にならない。アンコールも同じ。
すみません
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昨年に続き、帰り際にいただいた「てんさい糖」、ありがとうございました。ちょっと小振りになりました。
おわり




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