先日の新聞で、ハッとさせられる記事を見た。
現代の最大ともいえる問題である「少子化」について
独身研究家・コラムニストという方の意見だった。
それによると「少子化などという問題は存在しません」とのこと。
あるのは「少母化」なのだそうだ。
出生率が低いのは未婚率が高まったからだが、それ以前に、
子どもを産む世代の女性の人口が減っているからとの意見だ。
本来90年代に来るはずだった「第三次ベビーブーム」が無かったのは
バブル崩壊と、それに伴う就職氷河期により
若者の婚姻数が減ったからなのだという。
確かにうなずける意見ではあるが
それは女性だけの問題ではなかろう。
あえて言うなら「少親化」なのではなかろうか。
当然、90年代のそういう状況で婚姻数が減ったのは経済的な問題。
それは少親化された現代においても理由において変わらないから
さらに婚姻率が倍々ゲームで下がったことになる。
今、政府で語られている子育て支援は
すでに婚姻し、あるいは子がいる世帯へのものだから
少子化対策にはつながらない。
それではどう対策すればいいのだろうか。
我々、昭和に結婚した世代も、若い頃は金がなかった。
狭いアパートで肩を寄せ合うように新婚生活を送ったものだ。
私よりも上の世代では風呂なしアパートでの新婚時代もあった由。
もちろん当時も奨学金返済は今と変わらない。
それでも慎ましく、ささやかに生活しながら家庭を築き、
子どもまで持てたのは、未来を信じられたから。
夫婦2人で頑張れば、きっと徐々にでも生活は楽になる。
子ども達と家族で笑顔で過ごせる。
歳を取ればちゃんと食べていけるだけの年金がもらえる。
そんな未来をイメージしていたはずだ。
ところが今はどうだろう。
果たして未来は信じられるか?
後代を考えない「次元の違う」金融緩和と国債残高。
財源論議なしで空手形が次々に切られる社会保障。
国会での論議なしに閣議だけで憲法解釈を変えてまで購入する武器。
物価は高騰しているのに、給与は大企業しか上がらないし、
本来物価に応じてスライドすべき年金はなぜか減る。
大きなイベントでは汚職が蔓延し、
国の先行投資ともいうべき教育予算も減らされて
学費負担は学生やその家族に重くのしかかる。
「結婚はコスパの悪い贅沢消費」という意識も宜なるかな。
昔はどこの大学にも、比較的学費の安い夜間の2部があり、
学びたいものは昼間アルバイトしながらでも大学を卒業できた。
地元に帰って就職することで、都会のような家賃負担もなかった。
そこで結婚し、子を持つと親が育児を支援した。
(地元回帰のメリットは現代においても同じなので、
地方の婚姻率、出生率は都市部よりも高いのだと思う)
少子化対策は、大学をはじめとした教育予算増と
企業の地方展開、地方のベンチャースタートアップ支援による
「働く場所」の全国展開と都市部の人口集中回避が
もしかしたら最も効果があるのかもしれない。
しかし、江戸期、明治期は今よりもっと人口が少なかったはず。
それでも成り立つ社会にするためには
経済や社会のダウンサイジングも必要かもしれない。
「成長し続けなければならない」という神話を
見直す時期なんじゃないかと思ったりもするのだ。