風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「月の祭り」

2013-11-30 | 音楽


月の祭り

月は満ちて昇り 星は輝き出す
人は集いながら 優しく生きる 優しく生きる

永い時を抜けて 会えるその日が来た
人も森も海も  微笑みあって 微笑みあって
喜びの夜 月の祭り

昔 インディアンは 花と遊びながら
光る命の意味 花に学んだ 花に学んだ

俺とこの星との 唄が唄えるまで
夢は満ちて引いて くり返すだろう くり返すだろう
約束の夜 月の祭り

月は満ちて昇り 星は輝き出す
人は集いながら 優しく生きる 優しく生きる

      (作詞:KURO 作曲:大塚まさじ)


フォーク世代と言われるし
確かに吉田拓郎さんや風なども好きで聴いていたが、
どちらかというとBuesテイストの関西フォークが好きだった。
(拓郎はBluesとして、風は日本語AORとして聴いていた)
大塚まさじさん永井洋さんのディランⅡ、西岡恭蔵さん
上田正樹さん、有山じゅんじさん、中川イサトさん、
西岡たかしさん、シバさん、友部正人さん、石田長生さんetc...
西岡恭蔵さんの奥様で作詞家だったKUROさんは
実は亡くなってからその存在を知ったのだった。
作詞家としてご主人の音楽活動をサポートし続け、
他のアーティストにも味のある詞を提供し、
46歳で乳がんのため亡くなったKUROさん。
それまで何気なく聴いていた曲のいくつかがKUROさん作詞だった。

冬の始まり。
空気が冷たく澄んだ夜は月がきれいだ。
KUROさんと、
後を追うように彼女の三回忌に自死した恭蔵さんを思いながら、
ぼんやり眺めてみようか。
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「ファミリーツリー」

2013-11-29 | 読書
ざっと読んだ感じは少年少女向け青春小説に見える。
ストーリーも少女漫画のようでもある。
・・・が、根底に流れるテーマは
「命のバトン」あるいは「生のリレーション」。
血は連綿と受け継がれ、ツリーを成し、
大地や自然は何代もに渡って共有される。
その雄大さ、有り難さが特に本作後半部分からにじみ出てくる。

新しい命が生まれ、子を成し、
その子がまた子を成していくうちに最初の命は消えてゆく。
そしてまた新たな命が生まれていく。
老いた命から新しい命へのバトンは次々に受け継がれていく。
大地や自然はそれら命のリレーを見守り、包み込み、育む。
そんな「命の営み」を改めて感じながら一気に読了。
普段の生活の中でいつか忘れてしまっている
自然への畏怖や生かされている有り難さ、
そして私たちの命について気づき、認識してもらうために
高校生や20歳前後の若い人たちにも読んで欲しい。
いかに生きるべきかを考えながら。

ワタシ自身は今後
菊さんのように土に足を踏みしめて生きたいと思う。
100%そんな風に生きられなくても
意識するとしないのとでは違う生き方になると思うのだ。
少し、岩手に帰りたくなってきた。

ところで、ワタシが作者または編集者ならば
主人公たちの幼い頃の思い出が語られる前半部分を
もう少しまとめて縮め、後半のボリュームを増したい。
あるいは後半をじっくりと書き込み、
もう少し長い物語にしても良い。
いずれにせよ、途中のストーリーの走った感が惜しい。
主人公が20歳になったあたりから最後まで
もう少しじっくりじっくり描いて欲しかった。

「ファミリーツリー」小川糸:著 ポプラ文庫
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風屋の日本語教室~故事成語編~

2013-11-28 | 社会・世界・平和
「虎の衣を藉る」
例えると、某国総理大臣が
関係悪化している近隣諸国との関係改善を
自らの外交努力で解決しようとせず
友好軍事大国とNSCで協定を結び、
防衛情報を共有するポーズを見せることによって
相手をビビらせるようなやり方を言う。
いわば「寄らば大樹の陰」的
「他人のふんどしで相撲を取る」方法。
国民の不安や懸念、国内にある大国基地への反発も無視し
とにかく大国との関係を取り繕ってばかりいるのは
「芋の煮えたもご存じない」坊ちゃん首相ならではと言える。

「午の耳に念仏」「馬耳東風」
ほぼ同じ意味。
特定秘密法案への不安、疑念、原発再稼働への反対意見
そして米軍普天間基地の移転問題など
国民がどんなに反発しても知らん顔という様を言う。
下品な言い方をすると「蛙の面にションベン」。
自分たちに投票しているのは誰なのかをいつか忘れ
国費をどんどん垂れ流しつつ
「甘いものに蟻がつく」状況の財界や
海の向うの友好超大国の方ばかり向いている方々は
憲法を変え、自分たちのおもちゃ(軍備)を欲しがっているが
まぁ「似非侍の刀いじり」ってことになるだろう。

「泥縄(泥棒を捕らえて縄をなう)」
「敵を見て矢を矧ぐ」
金の提供を受けたことが発覚してから「借りた」と言い、
マスコミに突っ込まれると
印紙の貼らず、実印も押していない
急造したような借用書をヒラヒラ見せたりするなど
何か起きてから対応する様を言う。
原発で汚染水が漏れるたびにその対応に追われる様も
このことわざで表現することが出来る。
いかに除染を進めても、汚染水問題が解決しないと
文字通り「割れ鍋に綴じ蓋」。

「本末転倒」
消費税を上げておいて法人税を軽減したり
減反政策を止め、減反補助金を廃止して
飼料米転換補助金を上げたりするなど
結局何をしたいの?的政策がこれに当たる。
財政再建をしたいけど反発も怖いとばかり
「お茶を濁す」政策ばかり。
一生懸命何かを決めているように見せるが
それは次の選挙のための「転ばぬ先の杖」だろう。
ちなみにこの言葉
「備えあれば憂い無し」と同義に見られがちだが
実は「羹に凝りて膾を吹く」的ネガティブな意味らしい。

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らん哉」
細菌の学生さんたちは、就活にあたって
自分たちだけでレッテルを貼ったブラック企業を避け
有名企業や大企業ばかりを狙っているようだが、
ブラックかどうかなんてのは入ってみてからわかること。
何でも飛び込んでみて、やってみて
自分に合うかどうかを考えれば良いと思うのだが。
第一自分自身を過大評価し過ぎてないかい?
就職ってのはどこに入るかじゃなくて
どんなステージで何をしたいかだと思うんだ。
元気な中小企業の方が案外やりがいのある仕事があるかもよ。
「鶏頭となるも牛後となる勿れ」

「田舎者の国自慢」
自分の目で世界を見たり、足を使って歩いたり
異文化に積極的に触れたりしていない若者たちが
殊更「日本」「国家」を語るのは
まぁこんなことなんだろうね。
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燃える秋

2013-11-27 | 生活の風景


燃える秋

燃える 秋
揺れる 愛のこころ
ひとは 出逢い
ともに 生きてゆく

燃える 秋
消える 愛の蜃気楼
ひとは 別れ
遠い 旅に出る

Oh, Glowing Autumn
and Glowing Love
Oh, Glowing Love
In my Heart, La La Lu......
Glowing Love In my Heart

燃える 秋
空は ペルシャンブルー
ひとは 夢み
詩は 風に消え

夏は 逝き
めぐる 愛の季節
ひとは 信じ
明日を 生きてゆく

Oh, Glowing Autumn
and Glowing Love
Oh, Glowing Love
In my Heart, La La Lu......
Glowing Love In my Heart

Oh, Glowing Autumn
and Glowing Love
Oh, Glowing Love
In my Heart, La La Lu......
Glowing Love In my Heart

(作詞:五木寛之 作曲:武満徹)
 歌:ハイ・ファイ・セット
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小春日和

2013-11-26 | 散歩
日曜日はいい天気。
ふと思いついて、
以前いただいた大島紬に袖を通してみた。
羽織は袖無しの陣羽織にしたけれど
それでも袷だと汗ばむほどの暖かい日。



空には飛行船が気持ち良さそうに浮かんでいる。



スカイツリーの足元を流れる北十間川には
小さな遊覧船やゴムボートなど。
隅田川から旧中川へのルートがあるらしい。
この日のように天気がいい日に
一度乗ってみたい。
水の都トウキョウが実感できるだろう。
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小石川後楽園

2013-11-25 | 散歩




紅葉が始まったばかり。
まだまだこれからって感じだけど、
緑と赤のグラデーションもきれいだった。
初めて行ったけど、
木立の間からぬっと頭を出している
東京ドームの屋根がちょっと邪魔(^_^;)



お茶席にも行ってみた。
石州流は初体験で、
お点前の違いが面白かったなぁ。
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神宮外苑

2013-11-24 | 散歩






東京の秋は黄色のイメージ。
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「いつの日も泉は湧いている」

2013-11-23 | 読書
本書を読みながら「ノスタルジー」という言葉が心に去来し
ワタシはいささか慌てた。
「ノスタルジー?そんなこと言っちゃっていいのか?」と心の中の別の声。
お前だって高校2年に進級する際
「桜雲台の校舎にいたい」と移転阻止運動を企図したではないか。
2年の時、初めての新校舎での桜雲祭のあり方について
進路指導の教師と夜中にやりあったのは一体どこのどいつだ?
「詩を1編作って来い」という現代国語の夏休みの宿題に
ランボーやボードレールを気取って金持ちを嘲笑する詩を書いたのは?
「受験のための勉強なんてナンセンス」とばかり
高校3年の冬、仲間たちとガリ版の詩の同人誌を作ったのも、
大学入試で上京した際、お茶の水駅前で
黒メットにタオルで顔を隠した三里塚支援セクトのカンパに
「頑張って下さい」となけなしの千円を渡したのもお前だろう。
そんなことをしながら、「縛る組織は全体主義と同じ」と言い訳し
結局は安全な場所で新聞やニュースにぶつぶつ言ってたのは
情けない日和見主義でしかなかったお前らしい。
そんな自分を棚に上げて、他人の高校時代の思い出話に
「ノスタルジー」などと分別臭く思うほどの大人にお前はなっているのか?
そんな心の声を感じながら読み進んだのだが・・・

読み終えた後は心が揺さぶられていた。
これはノスタルジーなんかじゃない。レクイエムではないか。
事象を学び、壁と戦い、傷ついていったひとりひとりの登場人物たちの、
真面目で真摯な人生に対するレクイエム。
確かに50歳を過ぎるまで社会の中でもがき泳いで来た身にとっては
彼らの稚拙さや短絡性が若さの象徴に見えてある意味微笑ましく感じる。
世の中はそれほど単純でもなければ明快でもない。
何かを変革すれば、思ってもみなかった別の何かの支障となる。
清潔に暮らせば暮らすほど身体の抵抗力が無くなるように。
しかしだからといって彼らの考えや行動を否定するつもりは無い。
その時その時真剣に生きた結果なのだから。
真面目であればあるほど、その考えや行動は先鋭化していく。
その結果のその人の人生。
後悔することも多いのだろうが、その必要は無い。
胸を張って生きていけばいいと思うのだ。
自分には出来ないけれど(^^;
登場人物たちは今年60歳になる人たち。
時間は容赦がないけれど、でもきっとそれらの思い出は
ついこの間のような気がするんだろうな。
思い出や記憶は断片ではなく、すべて繋がっているのだから。

ところで、ワタシの伯父は日本社会党の代議士だった。
左派の理論派として割に知られる存在だったが、
伯父の唱える社会主義は、資本主義の対極に存在する、
イデオロギーとしての「社会主義」ではなく、
大衆の中にある道理を元にした「社会」主義だったのだと思う。
常に大衆の声に耳を傾けるべきだとよく口にしていたし
そういう意味では、本書に出てくる
1970年代前半に市民運動として知られたベ平連に対しても
暴力革命を目指す新左翼とは違って暖かい目で見ていたと思う。
急激で力の変革は大衆のコンセンサスを得られないし
間違いなくどこかに弊害が出てくる。
ベ平連のような平和的で静かな行動に徐々に参加者が増えていく形が
時間はかかるかもしれないものの、最後には漢方薬のように効いてくる。
政治も世論も右傾化の今、それがまた求められる時代だ。

「いつの日も泉は湧いている」盛田隆二:著 日本経済新聞社
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「生まれ来る子供たちのために」

2013-11-22 | 音楽
生まれ来る子供たちのために

多くの過ちを僕もしたように
愛するこの国も戻れない もう戻れない
あのひとがそのたびに許してきたように
僕はこの国の明日をまた想う

ひろい空よ僕らは今どこにいる
頼るもの何もない
あの頃へ帰りたい

ひろい空よ僕らは今どこにいる
生まれ来る子供たちのために何を語ろう
何を語ろう

君よ愛するひとを守り給え
大きく手を拡げて
子供たちを抱き給え
ひとりまたひとり 友は集まるだろう
ひとりまたひとり ひとりまたひとり

真白な帆を上げて
旅立つ船に乗り
力の続く限り
ふたりでも漕いでゆく
その力を与え給え
勇気を与え給え
      (作詞・作曲:小田和正)


憲法改正および特定秘密保護法案、
原発再稼働に反対します。
これから生まれ来るすべての子どもたちのために。
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「透光の樹」

2013-11-21 | 読書
少年と少女は、やがて大人の男と女になり、
夫と妻になり、父と母になり、
そしてお爺さんお婆さんになっていく。
しかし夫と妻以降は社会的な役割。
いくつになっても男と女であることに違いはない。
そして男と女は惹かれ合うことになる。いくつになっても。

相手が自分の、そして自分が相手の内面に
入り込めば入り込むほど寂しさ、切なさが増すのはなぜか。
はじめは形から、徐々に内面までもが融合し始め
自分たちだけの孤高の世界に入り込んでしまうためか。
その熱が高ければ高いほど
その後の喪失は深く厳しく哀しいが
しかしその人生に悔いはないのではなかろうか。
前に読んだ「飛水」にも
根底に同じテーマが潜んでいると感じた。

 自分流に細部までシナリオを用意し、
 失敗のないよう反芻し、
 頭の中で幾度となく疑似体験することで、
 ようやく呼吸し立って歩くことも出来たわけだが、
 どうやら男というものは、
 女の覚悟の深さを想像しにくいものらしい。
 肝心なときに男がおどおどし、
 女が妙に図太く腰が座って見えるのはそのためで、
 これは女がしぶとくて男があてにならないというより、
 女はあらかじめシナリオが出来ていないと、
 一歩の足が進まずひと声も発せられない、
 つまりは、融通のなさのあらわれとも言える。

 ある良きものを守るために良からぬものも身内に許す、
 という条件のもとで生きているうち、
 ある良きものが本当に自分の中に存在しているのかどうか、
 確かめるのを忘れてしまう、ということもある。

この引用部分を読みながら
作家家業というものもこれに近いのではあるまいかと思った。
本作を書くために、高樹さんはある種の覚悟があったのだろう。
谷崎潤一郎賞受賞作。

「透光の樹」高樹のぶ子:著 文春文庫
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神谷バー

2013-11-20 | 生活の風景


雷門や観音様と同じくらい
浅草に無くてはならない店のひとつ。
戦前からの建物は空襲にも耐え、
当時の写真を目にすると
一面焼け野原の中でポツンと建っている
今も変わらぬビルが目に留まる。
昔はモダンだったであろうこの店は
今ではノスタルジーを感じさせる風情で
それが新たな魅力となっている。
いや、古き良き時代の空気が逆にモダンだ。

ボトル詰め電気ブランを売る窓口では
きちんと黒い蝶ネクタイを締めた老紳士が
人通りの多い歩道を眺める。
ここは浅草1丁目1番地。
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盛岡市中央公民館

2013-11-19 | 散歩


ここは盛岡市街地北部。
公民館とはいえ南部家所縁の建物や庭園があり、
隣にある愛宕山の景色も含めて
広い敷地全体が市民の憩いの場となっている。
この季節は紅葉が素晴らしいので、
近くまで行ったついでに何枚か写真を撮ってきた。
たぶん今年最後の紅葉狩り。







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晩秋の夕日

2013-11-18 | 生活の風景


ススキの穂を光らせて。
実家庭にて。

さて、自分の人生の中でも
大きな転換点に来ているようだ。
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MICCO in MORIOKA

2013-11-17 | 音楽


昨夜は盛岡のbar&cafe The Sにて
友人であるJAZZシンガー下村瑞枝(MICCO)さんの
初めての故郷凱旋ライブがあった。
30人以上の来場があり、店の中はいっぱい。



バックは地元で音楽活動を続けている
これまた友人の及川浄司さんのカルテット。
わかりやすいスタンダードナンバーを中心に
暖かいアットホームなライブ。
特にラストナンバーに選んだ「Smile」は
震災で心身ともに傷ついた人たちへ向けた1曲。
聴きながらウルウルきてしまった。



この店のベーゼンドルファーは
津波に遭ったあと復活を遂げた奇跡のピアノ。
素晴らしい音色を奏でていた。
そのエピソードを、ちょっと長いが引用しよう。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

2011.3.11

東北地方を襲った未曾有の地震は、
海辺に近い街々を
恐ろしい津波の渦に巻き込みました。

当時、岩手県の宮古市にあった、
その店の“ベーゼンドルファー”も、また、
津波の被害を受け、一夜明けて引き揚げられた時には、
海水と泥砂が浸食し、
一音もその音色が響くことはありませんでした。

1940年代に生まれた、そのピアノは-
その生涯の大半をドイツで過ごし、
時を経て、遥々日本にやってきました。

第二次世界大戦の戦禍を抜け、
たくさんの終焉と涙を、その音色で優しく包み、
人々の人生によりそってきたベーゼンドルファー。

ウィンナートーンの音色を恋われ、
新たな地でたくさんの人に愛され、幸せな時を過ごし、
このまま穏やかな時間が過ぎていくと思っていました。
あの、恐ろしい瞬間が訪れるまでは…

この時、その冷たい海水の中で、失われていく音色が、
ひとつ、またひとつ、増えていく毎に、
ピアノは本当の涙の意味を知ったのかもしれません。

そして、洗っても、洗っても、
わずかな隙間から津波による塩害が
襲ってくることは避けられず、
二度と音を奏でることはない、と言われました。

けれど、このピアノが奏でる音を、
どうしても、どうしても、諦めることが出来ず、
どうしても、どうしても守りたい人がいました。

バーカフェ“The S”のオーナー、堀内 繁喜さん。

堀内さんは、自らも全てを失いながら、
このピアノに未来を懸け、希望を託し、
出来うる限りピアノを分解し、
海水と泥砂を丁寧に、丁寧に洗い、
ひとつ、ひとつを包むように拭っていきました。

これが本当に正しいことなのかも分からず、
無我夢中で拭い続け、
ただ、ただ…
ひたすら蘇ることを信じ続けた、
まるでピアノ線の上を歩くような時間。

その深くて、強い、身体中から振り絞るような願いは、
冷えきったベーゼンドルファーの身体を温め、
優しく包み、新しい命を吹き込みました。

蘇ったベーゼンドルファー。
もう二度と、
その音を奏でることはないと言われたピアノ。

しかし、その絶望から再び立ち上がったのは、
そのベーゼンドルファーを愛する、
“決して、あきらめない!”という、
強い想いがあったから…。

そして、その想いに、
すべてを委ねる勇気をもらったからでした。

だから、今度は、ひとつでも多くの、
傷ついた心を温めたくて、
やがて震災から3年の月日が経とうとしている
現在(いま)も、
精一杯の“想い”を奏で続けています。
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「飛水」

2013-11-16 | 読書
ただの恋愛小説じゃない。
切なく、熱く、
そして最後まで読むとまた最初に戻りたくなる
驚きのストーリーと展開。
語り口は淡々としているからこそ
余計に読む者の切なさをかきたてる。
人生をかけた恋と言ってもいいのかな。
こんな想いを抱いて生きている人たちがいるという
そのことだけでも勇気をもらえる気がする。

それにしても、文章表現の巧みさに舌を巻いた。
2人でいる時の濃厚な描写とは裏腹に
会話は軽妙で意味深に含み笑いを伴う。
一方で主人公がひとりのシーンは淡々としていて
それがまた内に秘めた熱を感じさせてリアル。
狂おしい想いを心に抱きつつ
何気なく日常を生きる「女」に畏怖すら感じる。

初めて触れた作家だが
もう少しこの人の作品をひもといてみようか。

「飛水」高樹のぶ子:著 講談社文庫
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