11.9 「ロシアは共同作業の用意あり」APECに向けたプーチン大統領の論文全文
プーチン大統領は10、11両日ベトナムで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を前に、「第25回ダナンAPEC首脳会議ー共に繁栄と調和のとれた成長へ」と題する論文を寄稿した。スプートニクが全文訳を公開する。
まもなく、11月10〜11日、ダナンで節目となる第25回APEC首脳会議が開かれる。
APECフォーラムが参加各国に、経済、社会、環境、人道といった多種多様な問題について話し合い、立場を調整する幅広い機会を関係諸国のために提供することを、我々は高く評価する。
我々は政治状況に関わらず、コンセンサスと自発性、相互尊重と歩み寄りへの準備の原則に基づいた協力に努めている。
まさにここにこそ、唯一無二のパートナーシップ的「APEC精神」も現れている。
大きなポテンシャルを有する広大な極東の領域を持つユーラシア最大の大国として、ロシアはアジア太平洋地域の順風な未来と、
持続可能で包括的な成長を地域全域で保障することに関心をいだいている。
この課題解決の鍵となる道具は、オープン性と相互利益の原則に基づき、世界貿易機関(WTO)の普遍的なルールを基にした効果的な経済統合だと見ている。
我々はアジア太平洋自由貿易圏形成の考えを支持する。
そこに実際的な利益とダイナミックに成長するアジア太平洋市場における立場を強固にする可能性を見る。
この5年間でロシアの対外貿易におけるAPEC諸国が占める割合は23%から31%に増え、輸出においては17%から24%に増えた。そして私たちはここで立ち止まるつもりはない。
もちろん、APEC自由貿易圏設定という大型プロジェクトはアジア太平洋地域やユーラシアの重要な統合フォーマットの実績と経験を踏まえて実現される必要がある。
その中には、ロシアがアルメニアやベラルーシ、カザフスタン、キルギスタンと協力するユーラシア経済連合(EAEU)も含まれている。
我々の連合はダイナミックに伸び、関心を持つ各国や連合と関係を築く用意がある。
今回の議長国ベトナムは、自由貿易圏についての協定をEAEUと結んだ初めての国となった。
結果、我々の貿易量は顕著に増え、多様化した。
最近、中国との貿易経済協力協定についての交渉が完了した。シンガポールとの協議も始まり、東南アジア諸国連合(ASEAN)との自由貿易協定締結の可能性を検討している。
そしてもちろん、大ユーラシア・パートナーシップ創設という我々のアイデアについて個別に言及したい。
大ユーラシア・パートナーシップは、EAEUと中国が打ち出した「一帯一路」を基に形成することを提案している。
強調したいのだが、これは柔軟で現代的なプロジェクトであり、他の諸国の参加にも開かれている。
効果的な統合の基礎となるものは輸送、通信、エネルギー分野を含むインフラの複合的な発展だ。
今日ロシアは極東の港湾と空港を活発に更新し、大陸横断鉄道ルートを開発し、新たな石油ガスパイプラインを敷設している。
我々は経済と市場を結びつける2国間ないし多国間でのインフラ事業を実施する意向だ。
露中日韓を1つにするエネルギー・スーパーリングやサハリンと北海道を結ぶ輸送路のことだ。
アジア太平洋地域の経済システムへのシベリアと極東地域の統合に我々は特に意識を向けている。
これは我々の諸地域への投資の魅力を高め、国際的な生産網にロシア企業を組み込む一連の複合的な措置を含んでいる。
ロシアにとって極東の発展は21世紀の国家的優先課題だ。
それは「成長地域」を同地域に創設し、豊富な天然資源を大規模に開発し、最先端テクノロジー分野を支援することだ。
人的資源や教育、保険制度、競争力を有する学術研究センターの形成に投資することだ。
APEC諸国をはじめとする海外パートナーがこれらの計画や事業に活発に参加することを期待している。
さらに、海外からの参加者は毎年ウラジオストクで開催される東方経済フォーラムですでに、我々の計画の展望と現実性に確信できていることを期待している。
同じく真剣に、APECの枠組みで中小企業を経済統合プロセスへと組み込み、女性による起業や若者のスタートアップ企業を支援することにアプローチしている。
そしてもちろん、人道的つながりの強化や科学・教育分野における交流の拡大を特に重視する。
また将来的には、アジア太平洋における共通の教育空間の形成にも特別な意義を見出しており、拠点の1つには極東連邦大学がなる可能性がある。
我らがダイナミックな時代に共鳴する最重要課題と我々が考えるものは、イノベーション支援における効果的な協力体制の確立だ。
これに関してロシアは、一連の具体的な案を提案してきた。
例えばデジタル経済や貿易ルールの一元化、諸国家の技術基準の調整、ハイテク市場形成戦略の調整、デジタル空間のための統一概念の創造だ。
また、電子化された住民サービスの提供分野における成果をパートナーに紹介した。
それに加えて、APECの枠組みで国際情報安全保障やコンピュータープログラムのセキュリティ問題に関する協議をはじめるよう提案する。
アジア太平洋地域における全パートナーのまとまった対応を要するもう1つの課題がある。
それは、自然災害や技術的災害、集団感染や世界的感染を予防し復旧することだ。
そしてもちろん、食の安全の問題には共同で取り組む必要がある。
この地域で急増する高品質で健康的な食材への需要をいかに満たすか考える必要がある。
ロシアは穀物や植物油、魚類、その他一連の商品の輸出量で世界をリードする。
アジア太平洋地域の隣国にクリーンな食品を送る主な供給者になることを見込んでおり、そのために農産品の収穫量を増やし、その生産効率を高める策を取っている。
ダナンでまもなく開かれる首脳会議で以上の諸問題に関する実りある話合いを指向している。
我々が共に、共通の地域の持続可能でバランスと調和の取れた成長を保障する課題を十分に解決し、地域の繁栄をもたらせることを確信している。
ロシアはこうした共同作業の準備ができている。