パート1 『ためぞうの帰還。』
長崎ドラゴンタウンという街に暮らす、
美人OLのエリスおねーさん。
農業や、漁業が盛んで、
オフィス街のベットタウンとあって、
結構、たくさんの人々が暮らしています。
だいたい、3000万人くらいです。
ためぞう「何処の、
スカイタワーのある都市圏の話してんだYO!!
地域でおよそ、1000万人くらいだと思います。」
旅からふらりと帰ってきた、
ためぞう君、18才です。
それでも、中々の人口ですねっ。
名物の明太子に、
とんこつラーメン、皿うどん、
海苔がおいしい有明海の、
ムツゴロウさんパワーなのです。
ためぞう「うん、街も港も、
デカい造船所もあるからね。
アクセスも、結構便利だよ。
市街地のすぐそばに、
「佐賀・がばい国際空港」もあるのし、
冒険行くにも、楽なので、
自称、冒険野郎もあちこちいたりする。」
そうです!
ためぞうは、番外編なら、
いつでも帰ってこれるのですッ!!
ためぞう「そこ、強調する所じゃないからね・・・。
オレ、本編に出れないよね?
出す気、ないよね?
・・・まあ、ともかく、
梅雨も間近なこの時期に、
エリスねーさん家に、帰ってきたわけだが、
もうすでに、
きらめきの学園生活を、
相当取りこぼしているよね。
主に始業式から、自己紹介やら、
お花見やら・・・、
・・・語るとむなしいとこは、
この際、省こう。
でもね、
銀髪の美少女サフィリアさんにも、
おまけのネコちゃん×2や、
実は、麗しの美白なお姫様の、
ゲーム大好き、レミーアさんとも、
一度も会ったことないよ、本年度。」
エリスねーさんがいなくなってから、
しばらくの時が流れています。
ためぞう「エストさんとかは、
別に、会いたきゃいつでも会えそうだし、
女の子というより、マブダチなんで、
別にいいんだけど。」
そんなエリスねーさんの、
ガレージ付きの一軒家に、
ためぞうは、長い旅を終えて、
帰って来ました。
ためぞう「エリスねーさんも、
まさか冒険出てるの?
新聞が一週間ぶんくらい、
郵便受けから溢れ出して、
生活感が、まるでないんだけど。」
そう言って、家の中に、
冒険の荷物とお土産を置いた、ためぞうは、
まず、木の葉の落ちたままの、
縁側の雑巾かけから始めました。
お寺の小坊主のように、せっせと動くためぞうは、
ピカピカに床や縁側を磨き上げると、
廃品回収用に、古新聞や、
使わなそうな物を、きちんと分別して、
片付けをしてます。
業者並のスピードで、エリスねーさんの家が、
磨かれていきますが、
こたつは年中、
出しっぱなしのくつろぎスペースなので、
いつでも、ごろ寝出来るように、
ねーさんの、枕代わりのクッションとかを洗濯して、
物干し竿に、天日干しにし、
敷き布団を、ひんやり冷感タイプに交換して、
テレビを付けて、一息、お茶でも注ぎます。
ためぞう「まあ、のんびりやっていこう。」
と言いながら、
ずずーっ、とお茶をすする、
ためぞうです。
もう、家の中のほとんどが、
ピッカピカになっています。
ためぞうは、その長い冒険の旅で、
掃除スキルを磨いて、戻ってきたようです。
残すは、ねーさんの愛する、
カスタムガレージの掃除です。
ピンポーンッ!
ためぞう「はーい。」
お客さんが来たっぽいので、
ためぞうは、玄関に向かうと、
磨りガラスの木製の戸の向こうに、
長身の男性らしいシルエットが見えます。
ためぞうが、ガラガラ~っと音を立てながら、
玄関を開けると、
そこには、イケメン王子様のレオクスさんが、
立っていました。
レオクスさん「ためぞう君!?
帰ってきてたのッ!」
ためぞう「ほんの、
ちょっと前に帰ってきたとこっす。
あ、庭掃除とかしてくれてたのって、
師匠だったんすか?」
ためぞうは、人生の先輩であるレオクスさんを、
いろんな意味で、「師匠」と仰いでいました。
ためぞうは、レオクスさんの、
そのイケメンパワーにあやかっています。
190cmの長身に、
端正な顔立ちの、優しいレオクスさんは、
老若問わず、世の女性を惹き付けます。
そのおかげで、ためぞうは、
女子との出会いに困りません。
よく見ると、レオクスさんは、
簡単なお掃除キットを持参しています。
どうやら、週一くらいの感覚で、
古新聞や、庭掃除をしてくれていたみたいです。
レオクスさん「いやー、逢えて良かったよ!
ためぞう君。」
舞台の女形もスッピンで演じられるくらい、
紫陽花色の長い髪が綺麗な、
絵に描いたような王子様のレオクスさんが、
その元気なためぞうの姿を見て、
曇りのない、美しい瞳を、うるうると潤ませています。
ためぞう「ためぞうは、
番外編なら登場可能らしいんで、
何かご用があれば、
この番外地に足を運んでくれると、助かります。」
レオクスさん「大変なんだよ、ためぞう君!!
エリスさんが出かけちゃって、
もう、結構経つんだけど、
今度は、あのセバリオスさんまで、
どっかに行っちゃてて、
スマホも繋がらないし、
ホント、困ってた所だったんだよ。」
レオクスさんは、そう言って、
ためぞうの安否が確認出来た事の、
その安心感と、
強烈な度胸を持って、自分を引っ張ってくれる、
セバリオスさんと連絡がつかない不安で、
びみょ~な表情をしています。
ためぞう「まずは、あがって下さいよ。
茶でも飲みながら、
ゆっくりと話してみましょうよ。」
レオクスさん「そうだね、ためぞう君。」
レオクスさんの表情が、
ちょっとだけ柔らかくなります。
今のレオクスさんは、
何事にも怯まず、
いろんなものを手に入れまくる、
セバリオスさんと、
無駄に激しい試練を切り抜けまくって、
その経験のほとんどを、水に流してしまっている、
冒険野郎のためぞうとの、
そんな対極にいる二人の間にいることに、
とても安心させられるのです。
多彩で何でも出来る、
神のルックスを持つ、レオクスさんですが、
実は、かなり引っ込み思案で、
自分にも、からきし自信のない、
相当、もったいない性格をしている人なので、
いつもの三人組でいる時が、
一番、生き生きしています。
相変わらず、和風テイストの、
アットホームな感じのする、
こたつのある、縦長の居間に、
レオクスさんは通されます。
レオクスさんは、ちょこんと、
エリスねーさんの指定席に近い場所に座ると、
ためぞうは、すすーっと台所の方へと向かい、
湯のみと茶菓子を取りに行きます。
レオクスさん(あれ? エリスさんのあの優しい匂いが、
しない・・・。)
レオクスさんは、料理のプロなので、
香りにはとても敏感です。
誰も気付かないくらいで、微かに漂う、
ねーさんの使ってる、シャンプーの柔らかな空気が、
今日は、感じられませんでした。
ためぞう「模様替えしたんす。
きっちり、ピカピカに磨き上げました。」
レオクスさん「あ、そうなの?」
空気まで新品にされた感じで、
心の中では、ちょっとガッカリなレオクスさんです。
すると、ためぞうが持ってきた、
その渋い湯のみは、
ツーリングで立ち寄った陶芸村で、
エリスねーさんが作ったという、
『えりす』という、銘の入った湯のみでした。
レオクスさん「えっ!?
それ、使っちゃうの?」
ためぞうは、新しく入れなおしたお茶を、
その湯のみに注いで、
レオクスさんに、差し出します。
ためぞう「ねーさんいないんで、
せめて、雰囲気だけでも、と。」
レオクスさんは、
その温か湯のみを包み込むように持つと、
(グッジョブ! ためぞう君っ!!)っと、
その心が、シャウトしました。
ためぞうが、エリスねーさんが買ってきた、
からしレンコン煎餅の袋を開けると、
そのお煎餅を、レオクスさんに進めてきます。
縁側には、エリスねーさんのクッションなどが、
天日干しされていて、
居間に差し込む陽射しに、
ほっこりさせられそうです。
なかなか、湯のみに口を付ける勇気を持てない、
レオクスさんは、
先に、エリスねーさんのお土産っぽい、
お煎餅の方に手を延ばします。
パリッ!
レオクスさん「うおぅ!!!
・・・これ、めっちゃくちゃ、
からし効いてるのね。ひーひー。」
ためぞう「慣れたら、めちゃ旨いっす。
ねーさん、バリバリ食べてますし。
袋、残っててよかったっす。」
レオクスさん「確かに・・・、じわぁ~んと旨みが出てくるね。」
レオクスさんは、額に汗を流しながら、
なかなか、その湯のみを口に運ぶことが出来ずに、
その青春の辛さを、艶のある唇を痺れさせて味わっています。
確かに、レオクスさんは、
青春の味を感じているのです。
お茶は飲めなくても、
料理を嗜む者としてのサガが、
お煎餅に延ばす手を、止めさせないのです。
レオクスさん「これ、ホント美味しいね!
うん、癖になりそうです。」
恍惚とした表情を浮かべながら、
いい汗を流しているレオクスさんです。
そんなレオクスさんに、
ためぞうは、これまでの経緯を尋ねます。
ためぞう「ところで、ねーさん、
いつ頃から、見かけなくなったんですか?」
レオクスさん「うんと、話すと長いんだけど、
こんな感じという事で。」
レオクスさんは、そう言うと、
新聞のチラシを裏返し、
ポケットから取り出した、
すごく高そうな万年筆で、
自分にも分かりやすいように、
これまでの出来事を整理し始めます。
・ まず、エリスさんを、
春先辺りから、見かけなくなりました。
・ ためぞう君もいなかったので、
金髪ショートカットの美少女、シオンさんは、
ためぞう君が本編に戻ってくるまでの期間、
忙しそうなアリス会長さんに、連れて行かれました。
・ エリスさん家に、一緒に住んでる、
雪華の美少女、ゆきはなさんも、
今は実家の、東北の伊達の本家に帰っています。
・ エリスさんの代わりに、
花嫁衣裳を身に包んだ、エリナ先生の写真を見て、
ちょっといいかな?
・・・うんと、かなりいいかなっ!! とか、
セバリオスさんと一緒に、思ってしまった事。
でも、サフィリアさんバージョンも見てみたいなと、
思います。
・ エストさんは、相変わらず元気ですね。
ローゼさんとも、良く会う感じです。
・ そして、セバリオスさんと、
いつの間にか連絡が付かなくなってしまいます。
セバリオスさんの秘書っぽい、
黒髪美人の、学園の事務員も兼務している、
セリスさんに聞いても、
「たぶん、いつか帰って来るでしょう。」と、
簡単に言われただけです。
レオクスさん「と、まあ、
こんな感じですね。」
ためぞう「なるほど、
謎に謎な、ミステリーなわけですね。」
ためぞうは、状況をよく分かってるのか、
わからない感じですが、
納得した様子をしています。
エストさん「とぅ!!」
と、そこに、
何処からともなく、颯爽とエストさんが現れます。
結構な重装備で、
重そうなキュイラス系の甲冑を着ています。
これまたゴツイ兜を畳みに置いて、
背中にしょった、いっぱいに戦利品の詰まった、
大きなバックを、軽々とからっています。
よいしょ、っとエストさんが、
こたつに座ろうとしたその時ですッ!
エストさんは、こたつに空いた謎の穴に落ちて、
その姿を消してしまいます。
エストさん「せっかく帰ってきたのに、
また、高難度の冒険かぁ~~~!!!」
エストさんは、
ゴツイ兜を、畳の上に残して、
その叫びと共に、いなくなってしまいました。
ためぞう「うぉう!
・・・この安全地帯で、
いきなり凶悪なワナが、発動しやがったぜッ!」
次は、我が身と、
ためぞーは、エストさんの残した重たそうな兜を、
じーっと、見つめています。
レオクスさん「だ、大丈夫だよ、ためぞう君。
仮に、ワナに落ちても一緒に行くから。」
そんな、緊迫した現場に、
黒髪の美人秘書、セリスさんがやってきます。
セリスさん「お二人とも、ごきげんよう。
厚い友情で、素晴らしい事ですワ。
ウフフフフ・・・。」
いつもと360度以上、雰囲気の違う、
そのセリスさんが、
上品にこたつへと座ります。
セリスさん「あら、ごきげんよう、エストさん。
そんな所に居ただなんて、
気付かなくてごめんなさいネ。」
セリスさんは、無機質な表情をして、
畳に置かれた、ゴツイ兜にそう言います。
ためぞう+レオクスさん(こ、怖えぇーー!!!
中身が、あの恐怖の女王様、
『アセリエス』さんに、戻っちゃってるよォ!!)
今、うかつ発言をすると、
ためぞうは、もちろん、
実力では、あの無敗のセバリオスさんにも迫る、
レオクスさんでさえ、
エストさんの出落ちの、二の舞になりかねません。
安全地帯と思われた、このこたつエリアを、
一瞬で戦場へと変える事が出来る、セリスさん。
そんな彼女を止める事が出来る、エリスねーさんも、
セバリオスさんも、今は居ません。
セリスさん「あら、そんなに畏まらなくっても、
よろしゅうございましてよ。
エリス様に会えなくて、悶々とした日々を送る、
いわば、同士ですもの。
ワタクシたちは、ね?」
ためぞん+レオクスさん「は、ハイでありますッ!!」
気の利くレオクスさんは、
エリスねーさんの湯のみを、
よかったらどうぞと、セリスさんに譲ります。
セリスさん「まあ、嬉しい。」
ためぞうは、代わりの湯のみを探しに席を立ちます。
残されたのは、レオクスさんと、
エストさんの残した、
物言わぬ鉄兜だけです。
レオクスさん(ひぃ・・・、
一人にしないでYOッ!!!)
その恐怖に、レオクスさんも、
ちょっとズレた感じになっちゃってます。
そんなセリスさんは、
湯のみの温かなぬくもりをその手に感じながら、
鉄兜となってしまった、エストさんに、
こう言います。
セリスさん「エストさんは、どう思われますか?
・・・なるほど、
沈黙も一つの答えというわけですね。
ええ、それにはワタクシも、
同意してしまいますワ。」
テーブルの上に置かれたメモさえあれば、
知力が98(+10)もある、セリスさんに、
相談相手など無用なのです。
つまり、ためぞーも、レオクスさんも、
何らかの存在意義を持たなければ、
エストさんと、同じ末路を辿ることでしょう・・・。
レオクスさん(た、助けてw)
ためぞうも、ためぞうなりに、
数多の試練を乗り越えて来ましたが、
今度の試練は、いつものとは格が違います。
ですが、レオクスさん一人を、
その試練の前に晒す事は、
ためぞうには出来ません。
エリスねーさんの予備の湯のみを持って、
こたつへと向かうのです。
ためぞう「師匠、湯のみどぞ。」
レオクスさん「ありがとう、ためぞう君。」
セリスさんは、その新しい湯のみに、
お茶が注がれるのを、
ただ、見つめています。
少し手が震えている、レオクスさんです。
レオクスさん(まじまじと、見ないでっ!)
セリスさん「まあ、
それもエリス様の愛用の品なのですワね。」
白磁の湯のみに、
マジックで、またも『えりす』と書いてあります。
何だか、色んな物に名前入りって、
小学生の持ち物みたいで、いいですね。
ためぞう(OH-、ミステイクッ!!!)
レオクスさん(・・・嬉しさと、恐ろしさを、
同時に体験するだなんて。)
セリスさんは、
ためぞうの方を見て、こう言います。
セリスさん「ためぞうさんは、
このワタクシがこよなく敬う、
エリス様の大切な存在ですし、
どんな事が起こっても、
ワタクシは、ためぞうさんの味方ですよ。
取引には、誠実でありたいと、
常に思っておりますので。」
ためぞうの、これまでの貢献度に応じて、
セリスさんは、同等の対価をもたらす事でしょう。
つまり、普段ピンチとは、縁遠いレオクスさんだけが、
今のターゲットだという事になります。
ためぞうも、レオクスさんも、
そして、虚しいそこの鉄兜も、
まるで石のように固まって、動けないでいます。
そんな中、セリスさんは、
メモに目を通しながら、
激辛、からしレンコン煎餅を、
上品にですが、バリバリと食べています。
あんなに辛いものを、顔色一つ変えずに、
とくにお茶をがぶ飲みするわけでもなく、
淡々と食べています。
レオクスさん(は、半端ねーッ!!)
どうやら、そのキャラを維持できそうにもない、
レオクスさんです。
セリスさんは、わりと熱いお茶を、
平然とごくんと飲むと、
ためぞうと、レオクスさんと、
残された鉄兜に、こう話し出します。
セリスさん「簡単な見解を、申し上げさせて頂きますと、
現在、姿が確認出来ない方々が、
この問題に関係しています。
ああ、申し遅れましたが、
今は、教員免許を持つワタクシが、
エリナ先生の代わりに、
3年J組の教鞭を執らせて頂いております。
つまり、ためぞうさんと、
ワタクシは、
生徒と女教師という関係ですので、
ご要望がございましたら、
秘め事的な展開も、サービス内容に入っております。
気軽に、お声をかけて下さいまし。」
ブーーーッ!!!
含んだままのお茶を、
鼻と口から噴射する、ためぞう。
慌てて、濡れたテーブルを、
持参した布巾で拭く、レオクスさんに、
ためぞうは、ティッシュて顔を拭いて、
すいませんっ、という表情をしています。
この時、ためぞうは内心、
どーなってんの!? 『狂嵐の3年J組!!!』
って、思えてしまったのです。
これでは、クラスメイトのサフィリアさんや、
レミーアさんとは、簡単に会う事が出来ません。
「取り引き」という言葉を使えば、
セリスさんは、ためぞうの貢献度を消費して、
その願いを叶えてはくれそうです。
そんな二人の様子に、無関心な表情で、
セリスさんは、話を続けます。
セリスさん「このメモの中には、
我が主が、エリナ先生に興味を持ったという、
大変、愉快な情報が記されています。
まあ、それはワタクシの楽しみとして、
この胸の奥に秘めておくとしまして、
報告を一つ、
して差し上げたいと思います。」
セリスさんの次の言葉に、
ためぞうも、レオクスさんも、
興味深々です。
セリスさん「現在、こちらへと花嫁修業中として、
ヒゲが収めるある大国の姫、
そのローゼさんが、
大きなマンションの管理人である事は、
みなさん承知の事ですワね。
あらゆる出来事を、知る事が出来る、
その『便利な本』をお持ちの、
ローゼさんに、手がかりを求めて、
会いに行ってみたのですが、
面白い事になっていたので、
そのまま放置して参りました。
彼女のその本も、今は使い物にならず、
時々、その容姿が弟のウィルハルト王子と入れ替わっていたりします。
中身がそのままで、入れ替わっているので、
おろおろとしている様は、
中々の見物ではありました。
ワタクシは、美しい男の娘は、
大変、興味がございますので、
内面など気にせす、
あの姿で、固定されてしまえば良いと、
個人的に願っています。
そういうオモチャを手に入れるのに、
悦びを感じる性分なもので。
それもアリと思われるのであれは、
ためぞうさんも、レオクスさんも、
美しく可憐な男の娘との、
甘美なる営みを、妄想、あるいは、
目標の一つとしてみるのも、いかがでしょう。」
うかつに、お茶すら飲めないと悟る、
ためぞうと、レオクスさんです。
ためぞう(シオン君との同居ですら、かなりの試練なのに、
そこまで話が進んだら、
オレは、きらめき学園ライフから、
完全に脱落する事だろう・・・。
落ち着けオレ。
オレの知力3では、答えの出ない事を、
ひたすら考えるのだ。
いろんな誘惑にホイホイ、飛び込むんじゃーない。
桃栗三年、柿八年と言うではないか。
機を見て敏たるを極めねば、
オレは、あらゆる戦場から、生還は出来ない。
・・・まだ、何の結果も出せていないオレが、
それを語るのも、
知力が3な理由なのだろうが。)
セリスさんは、お茶をおかわりすると、
袋の残りを気にしてか、
お煎餅に手を延ばすのをやめます。
セリスさん「さすが、エリス様は、
大変おいしい物を、
ご存知でいらっしゃいます。
十分に満足いたしましたので、
あとは、三人(+鉄兜)でお楽しみください。
では、推測の域を超えるものでは、ないものの、
ワタクシなりの見解を述べさせていただきます。
どうやら、タイムパラドックスが、
起こっている様子です。
具体的に言うならば、
過去の歴史、に何らかの変化が起きていると、
言えるでしょう。」
すばり来たセリスさんの、その大胆な結論に、
ためぞうも、レオクスさんも釘付けにされます。
この人のいう事が外れる確立は、
1000分の1%も無いからです。
セリスさん「ある文献の記述が、
ワタクシの知るものと一部、
異なっている点があるのを、
書庫を調べている内に、判明したワケですが、
さらに詰めて言うと、
過去のエグラート大陸の、その南方で起こった、
大きな争いに、エリス様は、巻き込まれています。
仕掛け人は、エリナ先生。
でなければ、
その過程で現在へと戻って来て、
かの主さえ魅惑した、
あの可憐なる花嫁姿の写真の、説明が付きませんもの。
また、我が主セバリオスも、
ローゼ姫と共に暮らす凜花さんも、
その出来事に関係しています。
主とワタクシが、
長距離移動に用いるフォーリナも、
何らかの干渉を受けておりますので、
そこに過去の出来事が、関連しているのは、
間違いございません。」
予想もしない展開を語る、
セリスさんに、
ためぞうも、レオクスさんも、
言葉がありません。
有体に言うと二人は、居ても居なくても同じなくらい、
役に立ってはいません。
ですが、
その想いは、一つでした。
ためぞー+レオクスさん(ちょースゲーーーーーッ!!!)
っと、その時です。
セリスさんが食べていた、
お煎餅の激辛カラシが遅れて鼻に来たのか、
くちゅん!
と、可愛いくしゃみをしました。
しばし、沈黙の時が流れます・・・。
セリスさん「えーっと、
なんだか、私、
元にもどっちゃったみたいですねっ!
時々、あんな風になっちゃう事があるんですよ。
長く管理職をやってると、
こう、ヒュッて、
その感覚が、フィードバックするような感じです。
あー、でもさっきお話ししてた事は、
もちろんしっかり覚えてるんですよ。
さっきのは寝起き? みたいな感じでしょうか。」
とんでもない、
寝起きの恐ろしさを見せられたものでした。
ですが、普段のひょうひょうとした、
ポップな感じのセリスさんに戻ったので、
ためぞうも、レオクスさんも、
一安心です。
辛味に耐えてきたレオクスさんも、
ようやく、お茶を飲めました。
レオクスさん「いやー、お茶が旨いねっ!
ためぞう君。」
セリスさん「あー、それって、
間接キスってやつじゃないですかぁ?」
レオクスさんは、一気に赤面して、
あわわと、動揺してます。
レオクスさんは、いい想い出メモリーをゲットしました。
ためぞう「そういや、ねーさん、
湯のみって、ざっと水で濯ぐくらいだから。
オレがいない間は、
ちゃんと誰か洗ってたのかな・・・。」
それは、セリスさんにも、
レオクスさんにも、吉報でした。
湯のみを手にした二人は、
何だか幸せそうに、ほっこりしています。
レオクスさん「こういうのも、
いいものですね。」
セリスさん「ですよねー、
私、エリス様の愛人で構いませんので、
レオクスさんルートに、エリス様が入ったら、
私も混ぜてくださいねっ!」
レオクスさん「あはは・・・、
その勇気を持てればですが。」
セリスさんとしては、
相手がセバリオスさんだろうが、
レオクスさんだろうが、
エリスねーさんと一緒なら、
それで幸せだったりします。
元に戻ったとはいえ、
セリスさんの知力98(+10)は、健在です。
能力的には、さほど変わらないのです。
セリスさん「第二話って、
そろそろ10章に入ってるじゃないですか、
早く解決できるといいですねぇ~。
それと、ためぞうさんとも、
早く、本編で会えるといいですねっ!!」
性格は変わっても、
中身は変わっていないんだと思い知る、
ためぞうと、レオクスさんでした。
セリスさんは、浮かれた様子で、
持ち込んだ、ローゼさんが内職で作っている、
1本100円の見事な完成度の造花を、
飾り付けます。
レオクスさん「手伝いますよ、セリスさん。」
レオクスさんは、高い所の飾り付けを担当します。
セリスさんのエコバックには、
底に、中華まんのパックと、
たくさんのお花が入っています。
ためぞう「花見、見逃してるんなら、
違う花でも、飾ったおいた方が、
帰ってきた時、嬉しいかもですね。
自分、いい香りの芳香剤、
裏から探してきますー。」
セリスさん+レオクスさん「はーい。」
エリスねーさんの事情が、
なんとなく分かったので、
三人とも、ちょっとだけ浮かれています。
残った一輪の花は、セリスさんが、
エストさんのその鉄兜に、手向けました・・・。
ローゼさんの、海が見える、
リゾートホテルのようなマンションの前にある、
道路のマンホールのフタが、
ガタガタと、動きます。
シュポーーーンッ!!
宙を舞う、マンホールのフタ。
その穴から、帰還したのは、
とんでもないアドベンチャーから帰って来た、
泥だらけのエストさんでした。
エストさん「勝手に、花とか手向けてんじゃねーッ!!」
ぜぇぜぇと、息を切らしながら現れた、
ボロボロのレディースの特攻服に、
ヘッドライトの壊れた、黒いヘルメット姿のエストさん。
特攻服は、エリスねーさんのお下がりのようです。
あんなに山盛りあった戦利品も、
置き去りに、
今のお宝は、
腰にぶら下げた、
小さなそのずた袋を残すのみです。
その中身は、
ドラゴンが10ダースほど居るような、
秘宝の迷宮から、命がけで持ち出した、
小さな色の付いた石ころが数個と、
保存食のバターピーナッツが一本です。
エストさんが、
ちゃんとマンホールのフタを元に戻していると、
そこに、赤毛の長い髪をふわふわさせた、
とても美しい、中学生くらいの女の子が通りかかります。
エストさん「ウ、ウィルハルト王子様!?」
怒涛の勢いで迫り来る、
黒いヘルメットの泥まみれの不審者に、
赤い髪の女の子は、
反射的に、つま先を天高く上げて、
見事な、かかと落としで、
エストさんをアスファルトに沈めます。
ローゼさん「あれれ、・・・エストさん!?」
気絶するエストさんに、ウィルハルト王子の姿をした、
ローゼさんが近寄ると、
その腰のずた袋から、
こぼれ落ちる石ころを目にします。
ローゼさん「・・・ざっと鑑定して、
300円くらい?
苦労なさっているのですね、おろおろ・・・。」
自分でノックアウトしておきながら、
エストさんの稼ぎに同情する、ローゼさんです。
ですが、このままエストさんを、
放置するわけにも行かないですし、
この状況で、起きられるのは、
なお面倒なので、
ローゼさんは、誰にも気付かれないよう、
農作業用の服に着替えなおして、
麦わら帽子を深くかぶると、
ヒゲパパの農園で使っているリアカーに、
エストさんを担ぎ上げて、
エストさんのアパートまで、送って行くのでした。
ローゼさん「これでよし、っと。」
今日は真夏日を記録していたので、
ローゼさんは、
エアコンの温度を26℃に設定すると、
ソウルを感じたクマと、
まりものヌイグルミに、
エストさんを託して、家路に着きます。
リアカーには、
何故か立派な紅鮭が、
保冷剤の入った発泡スチロールに、
入れられた状態で、積まれていました。
ローゼさん「いいもの食べているのですね、
エストさん。」
ローゼさんは、コソコソと姿を悟られないように、
ワナを避けながら、マンションへと帰ってきます。
ローゼさん「ハインさーん、
今日は、立派な紅鮭が手に入りましたよ。」
ハインさん「おっ! 今日は贅沢だね~。
リンカちゃん、残念だな。」
金髪、ナイスバディの元気なおねーさん、
ためぞうの元師匠のハインさんです。
ローゼさんの、姿が元に戻ったので、
ハインさんは、ためぞう達を夕食に招きます。
ためぞう「おお、これは幻の1万匹に1匹いるかという・・・。」
レオクスさん「おじゃましてます。
ワインとノンアルコールのシャンパン、
持ってきました。」
セリスさん「私は、中華まん持ってきましたー。
エストさんの紅鮭ですね!
美味しく頂ますー。」
こうして、
ハイタワーマンションの一階にある、
ローゼさんの家で、
楽しい夕食が始まります。
ローゼさん「・・・エリスさん、がんばってくださいね。
では、またですー。^-^」
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