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番外編 『戦うセバリオスさん!』

2017年02月03日 18時27分48秒 | -ためぞう の ぼうけん。『番外編。』-

   - あらすじ -


 謎のワナにはまったローゼさんと、

 その場に居合わせたリンカさんを、

 安全に、お家まで送り届けたセバリオスさん。


 そして、その場に残った、

 セバリオスさんのお話です。



   番外編 『戦うセバリオスさん!』



 まやかしの大地に留まったセバリオスさんは、

 その手を天高く突き上げ、

 巨大な雷雲を呼び寄せると、


 雷光を帯びた巨大な雲によって、

 この禍々しい、仮想世界全体を覆い尽くします。


 その轟雷は、天地を引き裂く激しさで、

 幻惑を打ち砕き、

本来の荒れきった大地が、その姿を露わにして行きます。


 するとそこには、

 この世界には存在してはならない、

 次元の裂け目が姿を現わし、


 開かれた扉からは、邪気に満ちた黒い闇の力が、

 荒廃した世界へと、溢れ始め出すのです・・・。


セバリオスさん「さて、

        そろそろ出て来てはもらえないでしょうか?」


 幾千を超える無数の雷撃が

 セバリオスさんの周囲を取り巻くように、

 莫大な高電圧の塊に変化していきます・・・。


 目も眩む光となったその雷光の球体は、

 闇を現わし始めた大地を、小太陽のように眩く照らすのです。


 セバリオスさんが、その青白い閃光の中へと、

 全身を飲み込まれると、


 次の瞬間、神々しいほどに美しい、

 蒼白に煌く重厚な甲冑をまとった、

 恐るべき『雷帝・セバリオス』として、

 この地へと顕現したのです。


 瞳に蒼い雷光を宿すセバリオスさんは、

 その右手に幾重にも厳重に鎖で拘束された、

 一本の長いつるぎを、強く握っています。


 そして、青白い電光に照らされた大地で、

 鞘に納まったままのつるぎを振り上げ、こう叫んぶのですッ!!


セバリオスさん「では、こちらから、

        行かせて頂きましょうっ!!!」


 天井方向に向かって突き上げた、鎖で繋がれたつるぎを、

 セバリオスさんが、勢い良く振り下ろすと、

 なんと、闇が溢れ出した次元の狭間を、

 真っ二つに引き裂いたのですッ!!


 ・・・大きく十の字に開かれた、次元の狭間。

 そこへと吸い込まれてしまえば、ローゼさんやリンカさんでは、

 一巻の終わりだった事でしょう。


 二つの切裂かれた次元は、星さえ押し潰す強力な重力場で、

 元に戻ろうと互いを引き合おうとしますが、

 それを、セバリオスさんのつるぎから放たれる、

 その驚異的なまでの高電圧の壁が、

 より激しい閃光を上げながら、狭間を拡大させて行くのです。


 何億ボルトあるかもわからない雷帝の鉄槌が、

 溢れ出た闇さえもかき消しながら、その範囲を支配下に置きました。


 さらに強力な雷撃で、次元の裂け目の奥までも、

 セバリオスさんは、一掃しようとするのですっ!!


謎の女性の声「フフフッ、

       この私をどうにか出来ると思っている、

       その慢心をひねり潰すのも一興か。」


 刹那、その次元の裂け目は消失し、

 放たれる雷撃を打ち消しながら、

 一人の女性剣士が、涼しい顔をして姿を現すのです。


セバリオスさん「予想通りに、貴女であったか。


        美しい清流のような錬気を感じる、

        流石は、伝説で語られるだけの存在と言った所だ。」


 スレンダーな体付きに、

 肌に吸い付くような、黒のレザースーツを身に着けた、

 端正な顔立ちの若い女性。


 雷光を纏うつるぎを手にしたセバリオスさんを前にして、

 その彼女は、丸腰で静かに微笑んでいます。


 二人の距離は、わずか10m。

 一太刀で、間合いを詰められる距離にあって、

 その長い髪の女性は、セバリオスさんにこう放つのです。


謎の女性「我が名は、『ルフィア』。


     貴様も名を告げよ。

     さすがに、片付けるとしても、

     その名くらいは、記憶の隅にでも慈悲で残しておいてやろう。」


 ルフィアを名乗る女性がそう言った瞬間、

 彼女のその長い髪は、紅蓮の炎よりも赤い色へと、

 変化していきます。


セバリオスさん「では、その光栄に甘えて、

        名乗らせてもらうとしよう、美しき孤高の戦姫よ。


        我が名は『セバリオス』。

        争いなど望んではいないのです。


        ですが、話にもならぬなら、

        神の如き強さの貴女を、満足させられるかは知れませぬが、

        全力を以って、お相手するといたしましょう。」


 赤い髪のルフィアは、その名を聞いたとたん、

 きょとんとして、噴出すようにこう問い返すのです。


ルフィア「セヴァリオスだと?


     さて、私の知るその男とは、

     まるで別人のようであるが、

     何故に古の神の名を語るのか、フフフフフッ。


     まあ良い、

     ならばその名に相応しいだけの実力を、

     見せてもらうとしようかッ!!」


 一閃が大地を駆け抜けると、

 ルフィアは鋭い片刃のつるぎを出現させ、

 セバリオスさんの背後へと回り込んでいます!


ルフィア「ほう、我がつるぎを避けたのか?


     口だけかと思えば、それなりの力は備えていたか。」


セバリオスさん「そう認められたのならば、

        身に余る賛辞と心得ましょう、美しき姫君。」


 その瞳の色を、より強く光を引く蒼へと変えるセバリオスさん。

 と、同時にその重厚な甲冑を解除して、

 内に着ていた軽装の白のアクトン(布製の防具)のみにして、

 ルフィアの速度にその動きを合わせるのです。

ルフィア「なるほど、

     光速を超える我が一閃に対する為に、

     関節の稼働域を縛る、無駄に重いだけのガラクタを脱ぎ捨てたか。


     フフッ、

     その深淵を見る瞳まで操れるとはな。」


 ルフィアの鮮血のような赤いその眼差しは、

 光という、酷く鈍いものを捉えてなどいません。


 より高速に加速された、粒子とフォースを視覚情報として、

 認識することで、彼女は高速を超えるその速度を実現しています。


 セバリオスさんが捉えたルフィアのスピードは、

 光速の約10倍、秒速300万kmです。


 常識や限界を完全に無視した、

 恐るべき敵、『最強のルフィア』と対峙する為に、

 セバリオスさんは、彼女の域までその身体能力を高めるのです。


 そんなセバリオスさんに、

 直接声が身体に届くようなテレパスが、

 ルフィアから送られて来ます。


ルフィア「やはり、限定的にダークフォースを発生させ、

     時と重力を操る能力に長けているようだな。


     この程度の速度、蚊が止まっているようなものだが、

     僅かなダークフォースの痕跡させ、この世界に残さぬとは、

     それが貴様の獲得した『戦士能力』というワケか。


     だが、本物のヤツ(セヴァリオス)の実力は、

     こんなものではない。

     あいつは、たかだか一つの世界の崩壊などに、

     気を使うほど、お人好しではないぞ。


     フフッ・・・。」


 セバリオスさんも、ルフィアも、

 超光速状態時は、通常世界の中で異次元をその身に纏わせ、

 物理的な不可能を可能にしています。


 わずかな時間に重ねられるその攻撃回数は、

 数十万撃を数え、

 二人はつるぎを交える感覚すら感じる事もなく、

 次の攻撃に移る予測のみで、その先を異次元化しています。


 禁忌とされる力「ダークフォース」は、

 完全に制御出来るものにとって、

 ただの強化の一つの手段に過ぎません。


 セバリオスさんも、ルフィアも、

 この状態にあるだけで、すでに太陽すら超える巨大なパワーを、

 その身に宿し、ぶつけ合っていますっ!


ルフィア「もっと早く動いてやろうか?


     秒速10兆kmほど速度で動けば、

     いくら貴様がこんな朽ちた星一つを守ろうとしても、


     展開させた異次元が、その制御に耐え切れず、

     星と共に塵と化すしかあるまい。」


セバリオスさん「さて、思い通りに行くでしょうか?

        どうやら貴女は、完全体にはほど遠い。

        『最強』と称えられたあのルフィアでは、

        ないようだ。」


ルフィア「何だとッ!?」


 セバリオスさんの挑発に乗せられたルフィアに、

 わずかな隙が生じます。


 投槍のように、その鎖で縛られたつるぎを、

 ルフィアの次の移動地点に、

 勢い良く投げ飛ばしたその瞬間、


 ルフィアが、グッ!っと、

 苦虫を噛み潰したような表情になると、


 投げられたつるぎは、ルフィアの真横を瞬く間にすり抜け、

 まるで何かの壁にでも突き刺さったように、

 ガラスを割ったようなヒビ割れを、

 何もないハズの中空に刻んだのですッ!!


ルフィア「おのれッ!!」


 そう叫んだルフィアを、

 まるで拘束するかのように、


 空気の壁に突き刺さったつるぎに向かって、

 無数の鉄鎖がクモの網のように伸びて行きます。


 鋼鉄のように、鈍い光を放つ鎖の群れは、

 ルフィアの斬撃すら弾き返す強度ですッ!!


 しかも、さらにその数を幾重にも増加させ、

 三角錐状の巨大な鉄塊へと変化して行くのです・・・。


ルフィア「これで私を捉えたつもりかッ!?」


 ルフィアは怒りを窮屈な檻にぶつけるかのように、

 その内に秘めるパワーを増大させて行きますッ!!


 まるで理性を無くした獣のように、

 ギラついた瞳で、鉄鎖の向こう側のセバリオスさんを睨み付け、

 もはや、その力は禁忌を越えて、

 破滅すら感じさせる狂気で、全身を包み込んだのです・・・。


セバリオスさん「だから、私は貴女が完全体ではないと、

        言っているのだ。


        その限界を超えた力を安易に使う危うさと、

        愚かさといい・・・。


        つまりは、『最強のルフィア』の気高さが、

        僅かでも感じられれば、

        私はその剣を抜かざるを得なかっただろう。」


ルフィア「言っていろ、

     すぐに、貴様ごと全てを消し去ってくれるわっ!!!」


 ルフィアの握るそのつるぎが、闇と光に呑まれながら、

 溶けるように湾曲していき、

 彼女を中心に、おぞましい漆黒の飛沫が、

 空間を引き裂くように、撒き散らされて行きます。


 ですが、超高熱の蒸気を周囲に噴出しながら、

 原型すら失い始めた、その醜いつるぎを、

 いくら憎き鉄鎖に叩き付けようとも、

 ビクともしない鉄鎖の群れは、


 さらにルフィアを追い詰めるかのように、

 つるぎに向かって周囲を埋め尽くすように、

 鈍い光を放つ重たい鎖が、その数を増して行くのです。


セバリオスさん「私なりに、貴女を理解しているつもりですが、

        貴女はまだ『ルフィア』の名を名乗るには、

        不完全だと、お分かりいただけませぬか?」


ルフィア「・・・何を言っている。」


 そのつるぎすら、鞘から抜くことなく、

 ルフィアを追い詰めたセバリオスさん。


 少し寂しげな表情をしたセバリオスさんは、

 ルフィアの拘束を緩やかに解くと、

 空間に突き刺さったつるぎを抜き、

 そのつるぎを腰のソードベルトへと納めたのです。


 二人が元の通常世界へと戻った瞬間でした。


 もう、ルフィアからは抵抗する姿勢が感じられません。

 そんな彼女に、彼はこう語りだしたのです。


セバリオスさん「このつるぎを拘束しているのは、

        私自身の意思です。


        普段はレプリカを用いてはいますが、

        貴女と対峙したと同時に、つるぎも本物と、

        入れ替わってしまったのです。


        このつるぎの名は『ラグナロク』。

        預言者セラは、私に告げました。


        - ラグナロクは、世界の終わりを告げるつるぎ。

          一度抜けば、世界を巻き込む最終戦争が始まるでしょう。 -

        、と。


        故に、奇跡とも言える戦士の力の資格を、

        私の知る創世主から授かりし時に、

        つるぎを封じる為に願った力が、

        この戦士能力『最大限界』なのです。


        私の能力の発動下においては、

        破滅的な力を秘める貴女の憤怒をも、

        封じる事が出来るのです。」


ルフィア「フフッ、

     そういうカラクリか。」


 荒れ果てた赤銅色の大地に、

 膝を折って、息を荒くするルフィア。


 その髪の色は、燃えさかる灼熱の紅蓮から、

 次第に美しい黒髪へと変わり、

 碧眼輝く、端正なその表情は、

 何処か少しだけ、満足そうに笑んでいるようにも見えました。


 ルフィアが長身のセバリオスさんを、

 ゆっくりと見上げると、

 彼は一瞬、どうしていいのか分からず、

 その胸の奥に、決して哀れみの表情のようなものは見せてはいけないと、


 彼女を気遣うような顔をして、

 こう語りだすのです。


セバリオスさん「貴女がこうやって、

        もう一人の自分を否定しようとしたのは、

        これが二度目になりますね。


        前回のバルマード王や、今回の私の事を、

        憎く思われても仕方ないかもしれません。


        これは以前、貴女たちが一つの『ルフィア』だった頃の、

        その彼女の願いと聞き及ぶのですが、


        偶然とはいえ、知り得た以上、

        貴女には、伝えておく必要があると、

        私は、思い至った次第です。


        ・・・こうなる事を、

        何者かが意図した事かも知れないと、

        そう感じるのは、否定しません。


        ただ、貴女が望まれないのならば、

        これ以上の口を慎む事にします。」


 そう話すセバリオスさんは、

 ただ、黒髪の乙女の事を純粋な思いで、

 大切にしたいと、

 そんな真摯な彼の姿勢が、

 ルフィアの瞳には映ったのでした。


 彼女は、もう一人の自分、『凜花』とは違い、

 何者からも恐れ慄かれ、

 こうして、誰かと向き合って話す機会など、

 過去の一度もありませんでした。


 破滅的過ぎるその『力』は、禁忌のように扱われ、

 封じられ、自由を奪われ、

 いつ覚めるかもわからない、永遠に等しい眠りを、

 強いられて来たからです。


 時の流れを奪われた彼女には、

 もう一人の自分である凜花が、

 どれほど苦しい思いをして、硬く閉ざされた人々の心を、

 開いたのかというその事実すら、

 知ることは出来ないのです。


 違う道に分かたれた二人、

 そんな彼女が、自由を求め、

 受け入れてくれない世界に抗ったとして、


 はたして、そんな彼女の事情を知ったとしたら、

 その彼女を咎める事は、

 本当に正しい事だと言えるのでしょうか・・・。


 やり場のない思いで、彼女が葛藤していたとしても、

 誰もそんな彼女に手を差し伸べる者は、

 これまで、誰としていませんでした。


 ですが、その彼女を恐れる事もなく、

 理解しようと悩み、言葉を交わそうとする、

 一人の青年のその姿が、


 彼女の見上げるその先に、

 今まさにあるのです。


 黒髪のルフィアは、そんな彼に向かって、

 こう言うのです。


ルフィア「フフッ・・・、

     そんな事、知りたくもないといったら、

     強引にでも、この身を封じるつもりか?」


セバリオスさん「そう望まれるのなら、

        私はこの場を立ち去ることにします。」


ルフィア「同じ事を繰り返せと、

     言っているようにも聞こえるが。



     フフッ、

     一度、つるぎを交えた相手に、

     後れを取るとは、思わぬ事だ。」


 口では強がるルフィアですが、

 この場ですぐに、彼と争おうという気配は微塵も感じられません。

 二人の間に、暫しの時が流れます・・・。


 荒廃した大地の水平に、陽が落ちて行くその時も、

 背後から赤く照らされた、セバリオスさんは、

 ただじっと見守るように、ルフィアの言葉を待っています。


ルフィア「立ち去れと言わなければ、

     ここでじっと、そうしているつもりなのか。」


 その問いに、セバリオスさんは、

 彼女と視線を同じにするように、

 ゆっくりとその膝を突き合わせます。


 夕陽があめ色のように流れる、
 セバリオスさんの長く美しい銀髪が、

 ルフィアの頬を撫でるような距離にあります。


 彼の端正に整った顔を目の前にして、

 ルフィアは、その胸の奥に何か温かいものが溢れるのを感じ、

 どうしていいかも分からず、思わず視線を逸らしてしまいます。


 その感覚が、ルフィアには何なのかを知りませんが、

 決してそれは、嫌なものではなかったのです。


 沈黙してしまったルフィアに、

 吐息がかかるようなそんな距離で、

 こう、セバリオスさんは言うのです。


セバリオスさん「・・・出来れば、この私に、

        また貴女と語り合う機会を頂けないでしょうか?」


 その時、ルフィアは彼のその言葉を、

 すぐに否定する事は出来ませんでした。


 これまで、邪神のように恐れられてきたその身を、

 遥かに上回る実力を持ちながら、

 その行動は、とても自分を気遣うような態度で、


 そんな彼からは、

 言葉だけのうわべだけの人々とは違う何かを、

 ルフィアはその身に生まれて、

 初めて感じさせられたのです。


 彼女がそれが何なのかを知るのは、

 もっと先の事になるでしょう・・・。


ルフィア「・・・。


     好きにすればいい。

     私の行動や考えが、誤っていた事は、

     素直に認めよう。


     フフッ、

     私の知らぬ事が、この世界には、

     きっと溢れているのだろうな。


     自分が無意識に作り出した殻の中で、

     わかったような気になっていた自身が、

     今は愚かだと気付かされた。」


 ルフィアはセバリオスさんと視線を交わすと、

 すっと立ち上がり、

 その美しい黒髪を風に流しながら、

 彼にこう言うのでした。


ルフィア「では、私は元の場所へと帰るとしよう。

     いつまた会えるかは分からないが、


     その時は、あの空の向こうに広がる世界の事など、

     語り合ってみたいものだな。」


 そう残して、彼女がこの場から、

 いつ醒めるともわからない、

 停滞した時へと戻ろうとしたその時、


 彼女よりも遥かに頭一つ以上高い、

 セバリオスさんが、それを制止するように立ち上がって、

 こう言うのです。


セバリオスさん「私からでよろしければ、

        いつでも貴女の元へ駆けつけます。


        そうしても、よろしいですか?」


ルフィア「フフフッ・・・、

     では、こちらも待たせてもらうとしよう。


     気遣いなどいらぬので、

     暇な時ににでも訪れるといい。」


 そう言って振り返るルフィアは、

 何処か微笑んでいるようにも見えました。


 彼女はすぐに理解したのです。

 彼ならば、封じられたその内なる世界にさえ、

 訪れることが出来るという事を。


 かげろうのような光の中に、

 立ち去って行くルフィアの姿を、

 セバリオスさんは、ただじっと見送ります・・・。


 逢おうと願えば、

 何時でも再会出来る事を知って立ち去った、

 ルフィアのその心の中に、


 一輪の綺麗な花が咲いたような想いを、

 セバリオスさんは感じ取ったのでした。


 陽が落ちて、夜の帳に包まれ始めた荒廃した大地に、

 一人残ったセバリオスさんを、

 この星を回る月とは違う、


 突如として現れた、もう一つの輝ける月が、

 その大地ごと、まるで日中のように、

 セバリオスさんを照らし出すのです。


セバリオスさん「来たか、フォーリナ。」


 天空を覆い尽くすほどに、巨大に迫ったそれは、

 セバリオスさんが所有する、

 この大銀河に幾つと存在しない、


   『星々を駆ける者』


 の、その証となる「機動要塞 フォーリナ」でした。


 セバリオスさんは、フォーリナに、

 この星の再生の命を下します。


 すると、荒れ果てていたその大地から緑が溢れ出し、

 人の手によって荒らさせていない、

 美しい蒼い星として、蘇って行くのですっ!


 その光景はまさに、『奇跡』でした。


 世界は失われる以前のその姿を取り戻し、

 芽吹く緑や、川のせせらぎ、

 生命の息吹が豊かな自然が、

 わずか一夜にして、星を覆って行くのです。


セバリオスさん「かつて闇に呑まれし者達を、

        ただ、この大地へと戻してやることしか出来はしないが、


        再度、災厄に見舞われるとしたならば、

        次は私がそれに立ち向かうことを、

        この大地に誓おう。」


 こうしてセバリオスさんは、

 その陽光のように煌く月と共に、

 その世界から、立ち去って行ったのです・・・。



 次にセバリオスさんが、

 リムジンを降りて、白のスーツ姿で現れたのは、


 久しぶりの外食を楽しく終えて、

 豪華なデザイナーズマンションに戻ってきた、

 笑顔に溢れるローゼさんたちの前でした。


ローゼさん「あらセバリオスさん、

      もうお戻りになられたのですか。」


 街灯に照らされながら、三人の帰りを待つセバリオスさんに、

 驚いた様子でそう言った、

 薄桃色のワンピース姿のローゼさんです。



  ◇ セバリオスさんは、ローゼさんの抱えた、

    リンカさんを巻き込んだ大事件を、

    快く解決してくれたという、

    そんないきさつがありました。


    その件は、ローゼさんとセバリオスさんだけが知っています。



 メリハリの効いたナイスバディに、

 冬なのに、やけに露出の多めの服装の、

 金髪美女のハインさんが、

 ローゼさんにこう問いかけます。


ハインさん「誰? このすんげぇー、イケメンッ!!


      ローゼさんの王室の関係者とか、

      何処かの国のプリンス様なのっ!?」


 出かけている事が多いハインさんは、

 以前、会っているはずのセバリオスさんの事を、

 深酒で記憶が飛んでしまったのか、

 まるで覚えていませんでした。


 そんなハインさんに、ローゼさんはセバリオスさんの事を、

 少し盛った感じで、ひそひそ伝えるのです。


ローゼさん(セバリオスさんは、恩人さんなのでぇす!!

      これくらい、盛ったとは言えないのでーす。)


ハインさん「へー、

      エリスさんの上司の方なのかー。


      エリスさんって、何だかんだで、

      顔広いよなー。


      (今度、ぜひ紹介してもらおう・・・。)」


リンカちゃん「こんばんはー、セバリオスさんっ。」


 ちょうど用のあったリンカさんが、

 真っ先に駆け寄ってきてくれたので、

 セバリオスさんは、その手に持った可愛い小箱を、

 リンカさんに手渡すのです。


セバリオスさん「忘れ物を届けにきたよ、

        リンカさん。」


リンカちゃん「忘れ物?

       誕生日プレゼントとか何かですかー。」


 セバリオスさんは、そのリボンの可愛い、

 ピンクの小箱を開けるよう、リンカさんに進めます。


 すると中に入っていたのは、

 リンカさんが欲しくて、すーっとジュエリー店で眺めていた、

 ちょっと大人っぽい、三日月を模った金色のイヤリングです。


 ムーンライトのように輝くきれいな宝石が施された、

 結構なお値段のそのイヤリングは、

 どうやら、子供騙しのイミテーションではなく本物のようです。


リンカちゃん「こ、こんなお高い物を、

       頂いちゃっていいんですか!?」


ハインさん「おお・・・、

      (めっちゃ高いデザイナーのヤツじゃん!!

       さすが、スーパーセレブは違うなぁ・・・。


       羨ましいなー。)」


 その二対のイヤリングに、

 興奮がおさまりそうにないリンカさんですが、

 ローゼさんだけは、その「忘れ物」の意味が、

 キチンと理解出来ていたようですっ。


ローゼさん(リ、リンカさんの失われた希望の丘が、

      しっかりと元に戻っていますっ!!)


 そう絶叫したい思いを、必至に押さえ込み、

 リンカさんに、温かいまなざしを送るローゼさんです。


セバリオスさん「二個で一つの物だから、

        よかったら大事にしてあげてねっ。」

リンカさん「あ、ありがとうございますーっ!!」


 外食で暴食したリンカさんよりも、

 太っ腹なセバリオスさんでした。


 ・ プレゼントの効果! →

   リンカちゃんの好感度が、100になった!


セバリオスさん「・・・。


        リンカさん、もう少しちゃんと、

        好感度とか管理しないと、

        変な人に騙されちゃうよ。(古蔵さんとか・・・。)」


リンカちゃん「あ、はいっ!

       では元に戻しておきますが、

       セバリオスさんの事は大好きですよっ!!」


 子供のように微笑ましい、快活なその返事に、

 セバリオスさんは、にこりと笑んで頷いたのでした。


セバリオスさん「やっぱり、みんな平和で、

        笑顔が素敵なのが、一番だね。


        ローゼさんは、素晴らしくよくやっていると、

        いつも関心しています。


        私の大切な友人のためぞう君のこと、

        これからもよろしくお願いしますね。」


ローゼさん「あ、ありがとうございますっ!


      もしよかったら、上がってお茶でも飲んでいかれませんか?」


ハインさん(ナイス、ローゼさんっ!!)


 ローゼさんのおもてなしは、

 それはもう天下一品なものでした。


 暖かなリビングで、どんな男の心も鷲掴みに出来る、

 最強の手料理を振舞ってくれることでしょう。

 ローゼさん、自分ではそれに気が付いてはいませんが、

 セバリオスさんは、そんな誘惑に負けるわけにはいかないのですっ。


セバリオスさん「ローゼさんのお言葉に甘えたいところだが、

        先約がありまして、


        よかったら、また次の機会にでも、

        是非お願いしたいものです。(耐性つけておきますので。)」


ローゼさん「あ、はいっ。

      リンカさんにプレゼント、ありがとうございましたっ!」


リンカちゃん「ありがとうございますー!!」


ハインさん「・・・わ、私にも、

      機会があったら、お願いしますっ!!!」


 セバリオスさんはにこやかに、三人の乙女たちに手を振って、

 リムジンへと乗り込んで、去って行ったのです。


 遠ざかる車を、何処か寂しそうに見つめるリンカさん。

 そんな彼女にローゼさんはこう言って、

 マンションの部屋へと入って行ったのです。


 「よかったですね、リンカさん。」、と。


 少しだけ、夜風に当てられながら、

 手にした小箱の中の対なすイヤリングを見つめるリンカさん。


 そのイヤリングの煌きを見つめていると、

 リンカさんの胸の中に、何か温かいものが湧き上がるのを、

 何処か恥ずかしそうに感じて、


 車が見えなくなっても、大きく手を振って、

 室内へと戻っていくのでした。



 リムジンの中で、美人秘書のセリスさんと、

 向かい合わせるように座ったセバリオスさんは、

 普段見せないような、油断した表情で、

 フフッ、と笑って見せたのでした。


セリスさん「何かいい事、あったんですかーっ?」

セバリオスさん「そうだね、

        セリスなら、わかっているような気もするが、

        良い感じで、二人の乙女がこの地に、

        舞い降りたのを感じてね。


        ルフィアさんの事だから、

        古蔵君には、黙っておかないといけないね。」


セリスさん「ああー、

      ルフィアさんって、古蔵さんの元フィアンセさんですよね!


      私的には、鈴木さんとルフィアさんで揺れ苦しむ、

      古蔵さんの面白い姿を見てみたいですが、

      今回は、内緒にしておきますねーっ!」


セバリオスさん「フフッ、

        感謝するよ、セリス。」



 こうして、セバリオスさんは、

 いつもの日常へと戻っていくのでした。

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