Podium

news commentary

瞑想・瞑目・居眠り

2019-01-31 00:56:20 | Weblog

国会には睡魔が巣くっているのだろうか。

議事進行中に国会議員が居眠りをする姿はたびたび中継で映し出されてきた。議場での論戦より、場外交渉が得意なセンセイたちはつい睡眠不足になりがちだ。自動車や列車や航空機の運転手・運転士・操縦士の業務中の居眠りには目を三角にする国民も、国会でだらしなく居眠る議員たちを嘲笑しつつも許してきた。国の針路を決める重要な会議中のことなのだがね。

通常国会が始まった。1月30日午後、衆議院本会議場での代表質問のNHKの中継を見ていたら、玉木雄一郎・国民民主党代表の質問中、玉木氏を映していたNHKのカメラが切り替えられ、安倍晋三首相を映しだした。

瞑想していたのか、居眠りしていたのか、目を瞑っていた理由は本人に聞かなければわからないが、なんだかボンヤリとした安倍首相の表情だった。しかし、なんとなく殺気のようなものを感じたのか、彼は閉じていた目を開いた。するとNHKは映像を切り替えて玉木氏に戻した。

昼食後の時間帯は睡魔に襲われやすい。大学の講義でも午後の講義では居眠りする学生が多い。本会議場での代表質問と答弁はいってみれば芝居の脚本を読み合っているようなものだ。答弁する側は質問の内容と答弁の内容をあらかじめ知っているわけだから、逐一質問演説の声を追う必要はない。そういう安心感もあって、質問演説が子守唄のように聞こえるのかもしれない。メディアだけでなく世の中の多くの人も、そういう前提で国会中継を行い、また見ているのであるから、政治家たる者、間違っても議事進行中に瞑想したり、瞑目したりして、報道のカメラに焦点をあわせられるような事態は避けなければない。

筆者の記憶に間違いがなければ、2015年3月の、シンガポール元首相リー・クアンユー氏の国葬に参列した安倍晋三首相が式場で、黙祷だったのか瞑想だったのか、瞑目している姿をカメラで捉えられ、日本の安倍首相がリー・クアンユー氏の国葬で居眠った写真として世界に出回った。

日本人は地下鉄車内で瞑想や居眠りすることで有名だが、最近はスマホ操作に忙しく、居眠る姿が減ったような感じがする。瞑目したらスマホのディスプレーが読めない。

 

           (2019.1.31 花崎泰雄)

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あとがない職業

2019-01-16 16:06:11 | Weblog

日本の大相撲ではいったん横綱になってしまえば、あとは引退するしかない。成績不良なら大関や関脇に番付をさげて捲土重来、というわけにはいかない。相撲の番付も横綱以外はプロテニスの世界ランキングのように上がったり下がったりするが、横綱になると、降格したくてもそれはできない相談なのだ。

アメリカの大統領も憲法によって一生に2期8年しか務めることができない。バラク・オバマ前大統領はトランプ現大統領より若くまだ50代だが、若くして米国大統領を2期8年務めたので、もはや大統領になる機会はない。

日本の安倍首相はかつて首相在任中に参院選での大敗と体調不良を理由に政権を投げ出したことがあるが、再チャレンジを合言葉にまた首相に返り咲いた。

ロシアのプーチン大統領は大統領の任期が一杯になると大統領をやめて首相になり、憲法を変えてまた大統領になった。

中国では国家主席の任期を「2期10年」と決めていたが、2018年の全人代が憲法からこの条文を削除したことで、理論上、習主席の終身国家主席の道が開けた。

一般庶民の再チャレンジはOKだが、権力のヒエラルキーの頂上付近にたむろする人々の再チャレンジにはうんざりする。政治権力については「長きを以て貴し」としない。安倍政権下の森友問題、加計問題、官僚の忖度・へつらいなど、弊害が多い。

ソロンはアテナイの政治改革を終えると、さっさと10年間の旅に出て、アテナイを留守にした、とヘロドトスは『歴史』に書いている。

         (2019.1.16 花崎泰雄)

 

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レーダー照射

2019-01-01 00:36:03 | Weblog

日本の海上自衛隊のP-1哨戒機が2018年12月20日の午後、能登半島沖の海上で韓国海軍の駆逐艦から火器管制(FC)レーダーを照射された。日本の防衛相がこのことを公表したことで、日韓関係はさらに気まずくなっている。

FCレーダーの照射事件はときどき起きている。2013年には東シナ海で中国海軍のフリゲート艦が海上自衛隊の護衛艦にレーダーを照射したと、日本が中国に抗議したことがある。

2016年には、日本の自衛隊機が中国軍機にFCレーダーを照射したと、中国が日本を非難した。

レーダー照射ではないが、2014年5月に東シナ海で中国の戦闘機が日本の自衛隊戦闘機に30-50メートルの距離まで異常接近したという事件があった。古くは1988年のことだが、米軍の駆逐艦タワーズが海上保安庁の巡視船を標的に見立てて砲撃演習をした事件もあった。2018年9月には、南シナ海のスプラトリー諸島付近で中国軍の艦船が米軍艦に40メートルほどの近くまで異常接近していた、と米軍当局者が明らかにした。

軍と軍の荒っぽい火遊びは日常茶飯の事であるが、多くは隠密裏に処理され、メディアにのって表沙汰になることはめったにない、と考えられる。表沙汰になるのは、事件の公表が何らかの政治的効果をもたらすというヨミがある場合だ。

韓国の『東亜日報』は社説で、「強制徴用賠償判決などをめぐって韓日関係が深刻に冷え込んでいる状況で、日本側が韓国側の行動に『他意』があったように追及することは、安倍政府が韓日関係の悪化を国内の支持勢力の結集など政治的に利用しようとする他意があるという批判を招くことになる」と主張した。

同じく韓国の『朝鮮日報』も「水面下ですぐに事実を明らかにし、再発を防ぐことができる問題が、このように大ごとになっていること自体が、今回の問題の本質なのかもしれない。今、日本では韓国を友好国と見なさないという世論が高まっているそうだ。韓国政府の反日性向は周知の事実だ」と指摘した。

安倍政権は12月18日の閣議で、新しい「防衛計画の大綱」と中期防衛力整備計画を決定した。総額27兆円をかけて、防衛の範囲を宇宙やサイバー空間にまで広げる。さらに、中国の軍拡に対応して護衛艦「いずも」を事実上の空母に改装、艦載機にもなる最新鋭ステルス戦闘機F-35Bの導入も決めた。

F-35戦闘機については1兆円をかけて100機を米国から購入する予定である。これはトランプ米大統領におもねり、今後の日米通商交渉のさいはお手柔らかにという趣旨の買物、というのが大方の見方だ。

大風が吹けば桶屋がもうかる。アメリカを喜ばすF-35の大量購入には、さしあたって日本の国民や国会に対してその必要性と緊急性についてそれなりの説明が必要になる。中国・北朝鮮の脅威に加えて、竹島から遠く離れた地点で韓国艦が自衛隊機にレーダーを照射した事件は、日本海における脅威の高まりに韓国までもが加わったと国民に訴える格好の材料である。中国・北朝鮮・韓国の3ヵ国からの軍事脅威を利用すればF-35の導入がスムーズに進められる――アメリカ一辺倒の軍事マニアック・安倍政権がそう判断して、レーダー照射事件を国防上の重大問題として演出した可能性は否定できない。その代償は『朝鮮日報』のコラムがいう「日本では韓国を友好国と見なさないという世論が高まっているそうだ。韓国政府の反日性向は周知の事実だ」という現状のさらなる深刻化である。

(2019.1.1  花崎泰雄)

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