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だんまりはあんまりだ

2017-12-09 23:27:55 | Weblog

トランプ米大統領が12月6日、エルサレムがイスラエルの首都であると認め、テルアビブの合衆国大使館をエルサレムに移転するとの大統領布告に署名した。

布告にはこんなことが書かれている。合衆国の外交は筋の通った現実主義に立脚し、それは明白な事実を正直に認めることで始まる。連邦議会は1995年にエルサレム大使館法を可決し、合衆国がエルサレムをイスラエルの首都と認め、駐イスラエル合衆国大使館をエルサレムに移転するよう求めてきた。立法化から22年、今がその時だと判断した。この遅れていた現実の承認は、合衆国とイスラエルとパレスチナ人の平和希求にとってともに有意義である。

トランプ大統領は、スラエルとパレスチナの双方が受け入れられる和平交渉へ向かって引き続き努力すると言明したが、多くの国の首脳がトランプ大統領を非難した。

新聞を拾い読みすると、当然のことだが、中東地域では、パレスチナ自治政府のアッバス議長が、パレスチナとイスラエルの和平プロセスはもちろん、中東地域全体、ひいては世界に危機をもたらす、と批判した。ヨルダン国王のアブドゥラ2世、サウジアラビアのサルマン国王が懸念を表明、トルコのエルドアン大統領は越えてはならない一線だ、と発言、イランの最高指導者ハメネイ師は、米国は中東政策を行う資格がないと批判した。

ヨーロッパでは英国のメイ首相がトランプ大統領の決定に同意しないとし、フランスのマクロン大統領もエルサレムはイスラエルとパレスチナ双方の首都であると発言、ドイツのメルケル首相も支持しないことを表明した。ロシア、中国も政府高官が米大統領の決定に懸念を表明した。

トランプ大統領のゴルフ友達である日本の安倍首相は、今のところ、だんまりを続けている。毎日新聞によると、河野外務大臣はトランプ氏の中東和平促進への努力を評価すると前置きしたうえで、情勢悪化を懸念していると発言した。菅官房長官は「予断を持って発言することは差し控えたい」といつもの調子だ。

識者の中では田中明彦・政策研究大学院学長が面白いことを言っている。「北朝鮮問題には米国の責任ある関与が不可欠で、日米の足並みが乱れているとの印象を北朝鮮に与えるのはリスクが高い。エルサレム首都認定は米国内の支持者向けで、ある意味で内政問題。(日本政府が)トランプ大統領を表だって批判するのはリスクが高いと考えるのは当然だ。パレスチナ問題に強い利害を持つ欧州諸国とは事情が異なる」。

田中学長のコメントの笑えるところは、中東和平の主導的仲介者としてふるまってきた米国が、これまでのスタンスをちゃぶ台返しにするような態度に出たことについて、ある意味で内政問題だという見立てである。内政問題のために世界の安全保障を顧みないトランプ大統領の外交音痴の恐ろしさを知らないわけではないだろうに。次に、日本は北朝鮮の脅威があるから、パレスチナに利害を持つヨーロッパ諸国のようにトランプ大統領を非難するのは得策ではないという判断である。ヨーロッパは北朝鮮の脅威から遠いが、北朝鮮がこの9月に核実験を行った際、ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領は、北朝鮮を厳しく非難する共同声明を出した。安全保障問題を世界規模で見ていることの証左である。米国が激しくイスラエル寄りに舵を切った今回のエルサレム首都承認も、北朝鮮の核ミサイルに劣らない世界の安全保障上の重要問題なのである。外交政策には利己的な面が強く出てくるが、それがあまりにも見え見えだと、日本ってなんて身勝手な国なのでしょう、と国際社会に不信感をもたれる。

北朝鮮の核とミサイルは、米国と対等な立場で米朝関係を交渉するための北朝鮮の道具である。核とミサイルの標的は米国である。日本が北朝鮮の脅威をひしひしと感じるのは、日本が米国の忠実な子分であることと、地理的に米朝の間にあることによる。中国やロシアが世界戦略の一環として、日本に核ミサイルの照準をあてていることは十分懸念されるが、政府もメディアもそのことを喧伝しない。つまり、米中関係、米ソ関係がまだ最悪の事態になっていないから、米国の子分である日本国も大きな不安を感じなくてすむのである。

ここで突然、話は変わるが、天皇の生前退位の日程が正式に決まったさきごろの皇室会議では、新聞報道によると、退位日に関していくつかの異なる意見が出たらしいのだが、詳しい記録は公開されなかった。

朝日新聞によると、菅義偉官房長官は会議の詳細なやりとりを公表しない理由について、「国民がこぞってお祝いすべき日に関するものであって、どなたがどのような発言をされたかを明らかにすることは必ずしも好ましくない」と皇室会議が合意したためだと強調した。詳細な記録については「作成しない」と明言した。詳細は菊のカーテンの奥に奉納された。

日本国憲法1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

 (2017.12.9 花崎泰雄)

 

 

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性懲りもなく繰り返す、その真意は?

2017-11-22 23:11:30 | Weblog

11月22日の朝日新聞朝刊を読んでいたら2面に、自民党の山東昭子・参議院議員が前日開かれた党役員連絡会で、子どもを4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか、と発言したという短い記事が載っていた。

朝日新聞によると「女性の出産をめぐっては、2007年に当時の柳沢伯夫厚労相が『女性は子どもを産む機械』と述べ、安倍晋三首相が陳謝。09年には当時の麻生太郎首相が『(自分には)子どもが2人いるので、最低限の義務は果たしたことになるのかもしれない』と発言し、その後、撤回している」。

合計特殊出生率は1989年の人口動態調査で、それまでの過去最低である1.57に低下した。「1.57ショック」と話題になったが、以来、合計特殊出生率は低下傾向が続いた。21世紀に入って人口減が目前に迫り、2010年ごろには人口減が始まった。生れる子どもが減り、人間が長生きするようになれば社会の老齢化が始まり、出生数と社会増が死亡数を下回ると人口減が始まる。このままでは日本から日本人がいなくなる日が来る、その日はいつ? という机上の計算が話題になった。

不思議なことに、人口減は国力を減ずる、という側面の議論ばかりがにぎやかで、人口減の日本でゆったりと人生を楽しもうという議論は、あまり表にでてこない。

2017年のIMF統計によると、人口50万程度のルクセンブルクの1人当たりGDP10万ドルが世界のトップ。2番手が人口800万弱のスイスで8万ドル、3番手が人口500万弱のノルウェーで7万ドル。

少子化・高齢化が進み、人口減が始まるに至るまでの間、日本の政府はエンゼルプランとか新エンゼルプランとか称する少子化対策をたてて、保育所の待機児童ゼロを目指すなどの具体策を立案した。むなしい画餅描きに終始し、日暮れてなお道遠き現状である。「保育所落ちた、日本死ね」と話題になったのは、ほんの最近のことである。「一葉落ちて天下の秋を知る」ごとく子どもが保育所の抽選に落ちたことで日本絶滅の日を予測した、このカサンドラのような女性の呪詛にみちた警告の叫びは、国会で取り上げられ、話題になったが、ほとんどの人はすぐ忘れた。

そしていまだに、多産表彰を持ちだすような時代錯誤の議員を国費で養っているというこの国の政治風景の貧しさ。

まっとうな答えは、内閣府の「選択する未来――人口推計から見えてくる未来像」(2015年)という報告書にすでに書かれている。

「北欧諸国やフランスなどでは、政策対応により少子化を克服し、人口置換水準近傍まで合計特殊出生率を回復させている。例えば、フランスは家族給付の水準が全体的に手厚い上に、特に、第3子以上の子をもつ家族に有利になっているのが特徴である。また、かつては家族手当等の経済的支援が中心であったが、1990年代以降、保育の充実へシフトし、その後さらに出産・子育てと就労に関して幅広い選択ができるような環境整備、すなわち『両立支援』を強める方向で進められている」

「スウェーデンでは、40年近くに渡り経済的支援や『両立支援』施策を進めてきた。多子加算を適用した児童手当制度、両親保険(1974年に導入された世界初の両性が取得できる育児休業の収入補填制度)に代表される充実した育児休業制度、開放型就学前学校等の多様かつ柔軟な保育サービスを展開し、男女平等の視点から社会全体で子どもを育む支援制度を整備している。また、フィンランドでは、ネウボラ(妊娠期から就学前までの切れ目のない子育て支援制度)を市町村が主体で実施し、子育てにおける心身や経済の負担軽減に努めている」

国会議員がいくらお馬鹿さんだといっても、日ごろから公務員と付き合いそれなりの情報をもらっているわけだから、上記のような海外の少子化対策の成功事例を知らないわけはないだろう。それを知ったうえで多産の女性を厚生労働省が表彰してはという発言は、裏に別のたくらみがある。

1939年に当時の厚生省が人口増をめざしてこんなたわごとを公表した。「産めよ殖やせよ国のため」。「結婚十訓」の1つである。それを今さら持ちだすのは、つまりこういうことである――人口減はいまや国難である。国家のために子どもを産んでくれ。期待に応えてくれた人は愛国者として表彰する

自民党右翼の戦前回帰派の人口問題に関する時代錯誤の発言が出るたびに、批判する側は以下の歴史文書を持ちだしてきた。「堅実なる家庭を営み子女を健全に育成するは国民生活の根幹たる家の基礎を鞏固ならしめ国本の培養に寄与する所以なり。殊に多数の子女を擁し之が養育を全ふするは一般の亀鑑となすにたるものとす。仍て是等の家庭を表彰し…」。これは1940年の「厚生省の優良多子家庭表彰竝付帯調査」の趣旨の一部である。

当時の新聞の切り抜きをみると、人口増は対外拡張のための兵力と労働力を増やすのが目的であった。1941年1月23日の朝日新聞は厚生省の熊谷某局長にインタビューしその見解を聞いている。熊谷某は西洋文明に蝕まれ個人主義、自由主義の都会的生活が都会の低い出生率の原因だとの説を開陳し、朝日新聞はその記事に次のような大見出しをつけた。「一家庭に平均五児を 一億目指し大和民族の進軍」

人口問題をめぐる現在の一部右翼政治家の発言を聞くと、その背後に、国家権力が個人の家庭の私的領域への介入をやりたがっていることが明らかである。「堅実なる家庭を営み子女を健全に育成するは国民生活の根幹たる家の基礎を鞏固ならしめ国本の培養に寄与する所以なり」――あらゆるものに国家への奉仕を要求した1940年の日本への強い望郷の念がうかがわれる。

時代錯誤の変な人たちなのだが、有権者が選んで国会に送った人たちでもある。

このままでは人口ゼロを待つまでもなく日本は亡びる。座上の空想かも知れないが。

 (2017.11.22 花崎泰雄)

 

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一枚めくれば

2017-11-06 16:56:15 | Weblog

以下はためにする冗談である。念のため。 

日本に到着するや否や、川越のゴルフ場にヘリで乗り込んだトランプ米大統領が、コースに出て言った。「良いコースだ。機会があれば買い取りたい」。現職の米大統領だから、名目上は商売から切れているトランプ氏だが、トランプ・ゴルフという会社はアメリカやイギリスに17のコースを持っている。ゴルフも好きだがコースを所有するのもすきなのだ。

日本の安倍晋三首相から銀座の鉄板焼き屋に誘われたトランプ大統領が言った。「アメリカの肉ならもっと良かった」

アメリカ国内では世論調査によるとトランプ大統領についてネガティブな見方をしている人が、ポジティブな見方をする人より多い。さらに、いわゆる「ロシア・ゲート」の疑惑の波がトランプ氏の至近距離まで迫ろうとしている。EUのリーダーたちとの仲は冷え切ったままだ。いまトランプ氏をあたたかく迎えてくれるのはシンゾーだけだ。彼の“extraordinary” relationshipという言葉にはその気持ちが込められている。

            *

冗談はさておき、北朝鮮に核弾頭と大陸間弾道ミサイルを捨てさせることが可能かどうか、という点になると、答は誰も出せない。

サダム・フセインのイラクは核兵器を持っていなかったので、アメリカに叩きつぶされた。北朝鮮はこれを教訓にしている。核兵器はアメリカを交渉に引っ張り出し、生き残るための手段だ。それを捨てれば、北朝鮮がイラクになる。

たとえば、インドは核兵器も運搬手段のICBMも持っている。インドのICBMは5000キロを飛ぶ。だが、インドの核ICBMを米国も欧州も近隣国も、安全保障上の抜き差しならない脅威ととらえているようには見えない。隣り合わせの中国は脅威を感じているかもしれないが、中国も核戦力を保有しており、最終的には両国間に相互確証破壊という核の恐怖のバランスによる安定が生まれるだろう、という安心感と気休めがある。

核兵器が怖いというより、その引き金を引くことができるのは誰か、それが恐怖の核心である。そうであれば、北朝鮮のいまの指導部を排除するしか方法はない。中国も北朝鮮の核ミサイルには気分を害している。中国も北朝鮮のミサイルの射程内だ、という発言が漏れ伝わればなおさらだろう。

日本はソ連・ロシアの核ミサイル、中国の核ミサイルの標的に含まれてきたのだが、それよりも北朝鮮の核ミサイルの恐怖が大きいのは、キム・ジョンウン指導部を正気を失った政権と考えているからだ。同様に「米国の決意を軽く見るべきではない」と発言するのが、オバマ前大統領なのかトランプ現大統領なのかで、その怖さは変わる。

北朝鮮の核武装解除は成功せず、核保有に暗黙の了承を与える可能性もささやかれ始めている。そうなると、韓国が核武装によって、軍事バランスをとろうとするだろう。韓国が核武装をすればいずれ日本も核武装をする。日本政府は、現行日本国憲法は自衛のための核武装を禁じていない、とかねがね表明している。

国連の核廃絶決議で日本政府は今年の提案で、これまでの「核兵器のあらゆる使用による壊滅的な人道的結末についての深い懸念」から「あらゆる」を削除して、「核兵器の使用による壊滅的な人道的結末」と変更した。この変更は、核攻撃を受けた場合、核による報復の余地を残しておこうとする、日本の考え方を示唆している、との見方も報道されている。

北朝鮮の核の脅威をきっかけに北東アジアに核武装のドミノが広がる。その可能性はある。冗談じゃない。

 

(2017.11.6 花崎泰雄)

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語るに落ちる

2017-10-29 21:41:55 | Weblog

「問うに落ちず語るに落ちる」という。

武装した北朝鮮の偽装難民がやって来たらどうする? そんな発言で話題になった副総理・麻生太郎氏が、先の総選挙での自民党の勝利の要因について、「明らかに北朝鮮のおかげもありましょう」と自民党議員のパーティーで語った。

あれはジョークだよ、と自民党幹事長・二階俊博氏は例の愛想な表情と口調で語ったが、麻生発言をジョークだと思った有権者は、さて、どのくらいいたのだろうか。

首相・安倍晋三氏は先の解散総選挙を決意したさい、記者会見でこんなことを言っていた。

「国民の皆様は、北朝鮮の度重なる挑発に関しまして大きな不安を持っておられることと思います」「民主主義の原点でもある選挙が、北朝鮮の脅かしによって左右されるようなことがあってはなりません」「こういう時期にこそ選挙を行うことによって、この北朝鮮問題への対応によって、国民の皆さんに問いたいと思います」「我が国を飛び越える弾道ミサイルの相次ぐ発射、核実験の強行、北朝鮮による挑発はどんどんエスカレートし、その脅威はまさに現実のものとなっています」

いわゆる国難突破解散・総選挙の宣言だ。

10月27日の朝日新聞朝刊の記事によると、安倍首相は9月28日の衆院解散から10月21日までの間に、全国で75回の演説をした。このうち53回は北朝鮮関連のテーマに触れた。消費税増税とその死と変更については67回、東日本大震災・熊本地震からの復興については6回だった。ちなみに同紙によると、森友・加計問題については一切触れなかった。改憲についてもほとんど口にしなかった。

「問うに答えず」となのである。言いたいことだけを口にする。「由らしむべし知らしむべからず」。古臭い『論語』の統治者の心得が、いまなお、日本国では生きている。

それで、北朝鮮の脅威が「国難」だったかといえば、そうではなかったようである。

総選挙が終わって特別国会で首班指名・組閣をすませたら、年内には国会は召集しないそうである。通常国会は1月に召集される。

2017年の通常国会は6月18日に閉会した。9月28日には臨時国会が開かれたが、これは衆院解散を告げるためだけの開会。

したがって国難である北朝鮮の脅威はかれこれ半年にわって、民主主義の原点である国会で本格的な議論がされないままになりそうだ。北朝鮮の脅威については「難儀なことである」という認識はあるのだろうが、日本国の存立の基盤が崩れるほどの「国難」とは、議員諸侯の誰もが感じていなようだ。

というわけで、麻生氏の「北朝鮮のおかげ」発言は、ジョークでもなんでもなく、正鵠を得た発言だった。

 (2017.10.29  花崎泰雄)

 

 

 

 

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鉄槌

2017-10-24 21:45:59 | Weblog

みなさま、よくご存じの事なので、結論だけを書く。

小池百合子、前原誠司の両氏に名誉自民党員の称号を差しあげてはいかがだろうか。

解散・総選挙にあたって、安倍晋三氏は自身の進退ラインを定数の過半数とした。進退ライン過半数はあまりに低すぎるのではないかとの声もあったが、進退ラインの引き上げは口にしなかった。

それほどまでに、彼の読みでは、先行きに不安があった。

第五列という言葉がある。スペイン内戦のさいマドリッド侵攻にあたって、フランコ派の将軍が、ここに4個部隊を率いているが、マドリッド市内には我々の攻撃に呼応して蜂起する第5の部隊(quinta columna)がある、と言った。Columnaには兵士の縦隊の意味がある。

そういうことから、第五列という言葉は敵の中に紛れ込んで攪乱を担当する隠密部隊をさすようになった。

小池・前原両氏の思いつきが、結果として招いた第五列効果で、自民党は総選挙で予想外の大勝を果たした。安倍氏は森友・加計問題をリセットし(古い永田町用語でいえばミソギをすませ)、憲法9条の変更を日程にあげた。永田町には彼を止められる人はもう誰もいない。

自民党は小池・前原両氏をかりそめにもおろそかに扱ってはいけない。前原氏は中身のあることをまだ何も言っていないが、小池は「鉄の天井」があった、という言い方をした。知事選で勝って女性を排除するガラスの天井をぶち破ったが、国政選挙では鉄の天井にぶつかった、のだそうである。

自分の失敗を人のせいにする小池氏らしいレトリックである。

見ていた人はみんな知っている。鉄の天井があったわけじゃない。あれは、天上の鉄槌だった。

(2017.10.24 花崎泰雄)

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ヌー

2017-10-17 23:16:24 | Weblog

 デジャ-ヴュ。

テレビの動物ドキュメンタリーで見たアフリカのセレンゲティのヌーの大群のシーンがちらつく。

東アフリカから南アフリカにかけてのサバンナに「ヌー」とよばれる一見牛のような動物か群れを成して生息している。『世界大百科事典』(平凡社)によると、ヌーは別の名を「ウシカモシカ」という大型のアンテロープで、偶蹄目ウシ科の哺乳類だ。

頭と体の前半が牛に似て、雌雄とも角とたてがみをもつ。体の後半は細く貧弱だ。6月から7月にかけての、雨季から乾季への変り目と、10・11月の乾季から雨季への変り目に、草を求めて、数万の大群が移動する。

そのヌーの大群がケニアとタンザニアの国境付近のマラ川を渡るシーンが特に有名である。

何万というヌーがいっせいに渡河を始める。ドキュメンタリーは待ち構えていたワニに喰われるヌーや、流れに足をとられるヌーを映し出す。それでもヌーの大群は押し合いへし合いしながらマラ川を渡り、必死で向こう岸にたどり着こうとする。

いわゆるスタンピード(大暴走)のようにもみえる。

ワニの餌食になるヌーは想像するほど多くないそうだ。渡河に失敗して溺死するヌーの方が圧倒的に多い。

『ナショナル・ジオグラフィック』日本語版のサイトの記事によると、溺れ死ぬヌーは、平均で6250頭。重さにしてシロナガスクジラ10頭分に匹敵する1100トンにおよぶ。

英語「スタンピード」には、総崩れ・大敗走の意味もある。もっか進行中の「日本のヌー」の総崩れ・大敗走の先頭で、緑の狸が旗を振っているように見えるのは、幻影か?

はたして、どのくらいのヌーが向こう岸までわたりきれるか?

 

(2017.10.17 花崎泰雄)

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憲法7条

2017-09-26 01:28:43 | Weblog

 憲法第7条は、天皇が内閣の助言と承認にもとづいておこなう国事行為をいくつか定めている。

 「憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること」については、例えば憲法改正の場合、内閣の助言以前に、やらねばならないことがある。憲法96条は「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する」としているので、一内閣の助言と承認だけでは、天皇は憲法改正を公表できない。

 「国会を召集すること」は憲法53条が「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」としているので、天皇は内閣の助言と承認により、国会を召集できる。だが今回、議員の要求にもかかわらず、内閣は召集の決定を渋った。

 さて目下話題の「衆議院を解散すること」だが、憲法69条は「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」としている。この条文には不明確な部分がある。「総辞職をしなければならない」の主語は「内閣は」であるが、「10日以内に衆議院が解散されない限り」は受動態の文章であり、衆院解散の行為の主体が不明確である。不明確ではあるが前後の脈絡から、内閣は衆院を解散するか、総辞職するかの二者択一をしなければならないと了解されてきた。この69条をふまえて、7条によって天皇が衆議院の解散を儀礼的に宣するばあいは、憲法改正の公布の行為と同じで、憲法の規定に従った行為である。

ところで、内閣が独断専行で解散を決め、天皇にこれを告げさせることは、憲法に反すると訴訟に持ち込まれたことがある。しかし、最高裁は「統治行為」だとして憲法判断を回避した。

 7条による衆院解散は一種の政治的慣行で、法の条文の裏付けはない。英国は数年前に内閣による解散は弊害が大きいとして、政権の恣意的な解散に歯止めをかけた。ドイツ連邦議会も同様で、首相の解散権に制限をかけている。

 政策をめぐって野党と激しい対立が起き、国民の判断を問うというのなら解散の理由になるが、解散総選挙を今やっておけば、議席の減り方が少ない、という理由で首相が解散を決め、そのあとで解散の大義だの公約だのを持ちだしてくる日本国のいわゆる「解散は首相の専権事項」というならいは21世紀のいまどき異常である。

 (2017.9.25  花崎泰雄)

 

 

 

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抑止力

2017-08-09 14:45:57 | Weblog

 防衛省が敵基地攻撃能力保有に関して議論を始める、と報道されている。北朝鮮のICBM開発と核弾頭に対する抑止力にしようとの意図だ。

日本国憲法の「専守防衛」の定めとどのように折り合いをつけるか、国内的にも国際的にも激しい議論になるだろう。

北朝鮮だけでなく、ロシアも中国も万一の事態に備えて、米国をはじめ、米国と同盟関係にある国々に向けて核ミサイルの照準を合わせている。これが世間一般の常識だ。

米ソ冷戦時代にMAD という言葉がよく使われた。たとえば、ソ連が米国から、米国がソ連から核攻撃を受ければ、直ちに報復攻撃が開始され、相互に取り返しのつかない大惨事を発生させる。DADとはMutual Assured Destruction(相互確証破壊)のことである。当事者双方が勝者はありえず、あるのは敗者のみという核戦争の深刻な結果を確信して、心理的な抑止力効果を求めて核兵器のストックを積み上げてきた。つまり恐怖の均衡の上に冷戦状態が保たれてきたのである。MADnessとは言い得て妙な言葉だった。

では、米ソ間にあったMADのような共通認識は、米中間にもあるのだろうか。核弾頭の保有数では中国は英仏並みで、米国とは差があるが、米中双方が核は使えないという共通認識をすでに持っていると考えられる。やがて米ロ中の核三すくみ状態に至るだろう。

わかりきった話はこのあたりで切り上げて、防衛省の敵基地攻撃能力保有構想の前提となる敵基地は、いったいどこにあるのだろうか。中国やソ連のミサイル基地は広大な国土に散在し、また陸上移動式のミサイル発射装置もある。さらに潜水艦発射ミサイルもある。

これらの敵基地に対する攻撃能力保有には、いったいいかほどの金がかかるのだろうか。さらに中国やソ連のミサイル基地攻撃を可能にするような軍事力を日本が構想すれば、中国やソ連は日本に照準を合わせたミサイルの数を増やすと、日本を脅すだろう。すると日本がさらなる攻撃能力を備えようとする。抑止力と安全保障のジレンマの始まりである。

米国の核の下で安心している日本人が多いのは、米中ソの間にMADの認識が確立されていると信じているからだ。これに反して、北朝鮮の核とミサイルを理由に敵基地攻撃能力が話題になるのは、北朝鮮は破綻国家であり、破れかぶれの核ミサイル使用もありうるという不安を持っているからだろう。あるいは、北朝鮮を引き合いに出して、このさい日本の軍事力増強を進めようという計画かも知れない。

第2次世界大戦後、日本列島はソ連・中国の共産主義がアジアに拡散する動きを封じるための前線基地だった。ポツダム宣言は、日本に責任ある政府が樹立されたのち占領軍は撤退するとしていたが、米国は日米安保条約を日本と結んで日本に米軍基地を残した。日米戦争によって手に入れた太平洋における米国の覇権を維持するためだった。

中国の太平洋進出の動きは、この地域における米国の覇権への挑戦であると、米国は神経をとがらせている。もし日本の敵基地攻撃能力論議が中国に対するなんらかの抑止効果を持つとすれば、米国もこれを歓迎するだろう。

 

(2017.8.9  花崎泰雄)

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君子の交わり

2017-07-25 22:56:53 | Weblog

 

人はお金に、政治家は票に頭を下げる。

安倍政権が閉会中審査に応じたのは、東京都議選で惨敗し、メディアの世論調査で内閣支持率が急落したせいである。毎日新聞調査の内閣支持率26%は衝撃だったことだろう。加計問題の真相究明はともかく、真相究明に協力的であるという印象を世間に示し、安倍政権の不人気度に歯止めをかけるのが狙いだ。一方、野党は疑惑追及によって政権のダメージを拡大させようと追い打ちをかけた。

外に出ると暑いので24・25日の月・火、家で衆参の国会中継を見ていた。

24日の衆議院予算委員会の質疑で、野党議員が質問した。加計学園の獣医学部新設問題が山場にさしかかった2016年の後半、安倍総理は加計学園の加計孝太郎理事長と頻繁に居酒屋、焼き肉店、ゴルフ場で会っていた。そのさい獣医学部新設の件が話題にならなかったのか、と聞いた。

それに対して安倍首相は「一切なかった」「加計学園の申請は1月20日に知った」と答えた。2017年1月20日は加計学園の申請を正式に認めた特区諮問会議の開催日だった。

君子の交わりは淡きこと水のごとし、と荘子は言っている。安倍氏もこれにならって、宰相と教育者にふさわしい清らかな交際ぶりを示唆したのだが――。

だが、このファンタジーは翌25日の参院予算委員会で、過去の答弁と違うではないかと野党に突っ込まれ、「首相、答弁修正し陳謝 加計認識の時期『混同』」(朝日新聞7月25日夕刊)と信頼性の傷口を広げるはめになった。

安倍首相の側近の態度もまた、興味深かった。前川前文部科学事務次官に向って「総理は自分の口では言えないから私が代わって言う」と言ったとされる和泉首相補佐官は、これまで前川氏との面会の記録が残っていないので確認できないとしていた。しかし、24日は態度を変えて前川氏との面会を認めた。その一方で、「こんな極端な話をすれば記憶に残っている。そういった記憶はまったく持っていない。したがって言っていない」(朝日新聞7月25日朝刊)と変則三段論法を使ってみせた。

今治市職員と面会したとされる柳瀬・元首相秘書官(経済産業審議官)は「お会いした記憶はない」と呪文を繰りかえした。NHKの国会中継のカメラが参考人席の柳瀬氏をクローズアップした。森友問題の国会質疑で「ない、ない、ない。記録はない」と突っぱねて安倍晋三・昭恵両氏を固くガード、アッパレ国税庁長官に這い上がった財務省の佐川理財局長と二重写しになって見えた。

ご苦労さま――。

荘子・山木篇は「君子の交わりは淡きこと水のごとし」に続けて次のように言う。「小人の交わりは甘くして醴のごとし。君子は淡くして以て親しみ、小人は甘くして以て絶つ。彼の故無くして以て合う者は、則ち故無くして以て離る」。永田町・霞が関は日本ナンバー1の娑婆である。国会中継に映る記憶や記録をなくした側近たちの姿を、彼らの家族や友人・知人はどんな思いで見ていたのだろう。

昔むかし、役人の世界のせちがらさが嫌になって隠遁生活に入った陶淵明の詩。

  盧を結んで人境にあり 而も車馬の喧しき無し

  君に問う何ぞ能く爾ると 心遠ければ地自ずから偏なり

  菊を采る東籬の下  悠然として南山を見る

  山気 日夕に佳く 飛鳥 相与に還る

  此中に真意あり 弁ぜんと欲して已に言を忘る

 

 (2017.7.25  花崎泰雄)

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二重国籍

2017-07-20 00:26:12 | Weblog

蓮舫・民進党代表が戸籍情報を開示した。父親が台湾国籍だったので台湾と日本の二重国籍ということだが、日本国は外交上台湾を国家と認めておらず、「台湾国籍」者の国籍は中国になる。蓮舫氏は台湾政府発行の国籍喪失許可証書を区役所に提出したが受理されなかったという。

野党第1党の代表ともなれば人気商売のようなところもあり、戸籍情報を開示するマイナスより開示しない方のマイナスが大きいと判断したのであろう。自民党とその支持層からの批判の声があり、民進党の党内の反蓮舫グループへの対応策だった。

思い出すのは、前合衆国大統領のバラク・オバマが大統領になる資格がないと批判された時のことである。オバマ陣営はハワイ州の修正証明書のコピーを公開して対抗した。オバマ氏はホノルルで生まれ、彼の母親は米国籍だった。米国憲法は大統領の資格を “a natural born Citizen” としている。アメリカ合衆国の国籍は出生地主義なので、合衆国内で生まれた子は自動的に市民権を獲得する。加えて母親か父親のどちらかが合衆国の市民権を持っていれば、その子も自動的に市民権を獲得する。オバマ氏が “a natural born Citizen” であることは疑う余地がなかった。つまり批判は法的なものはなく、アフリカ系アメリカ人を大統領にしたくないという感情的なものであった。オバマ氏の大統領資格に懐疑的だったトランプ・現大統領ものちに資格ありと見解を変えた。

また、トランプ大統領は大統領予備選の段階で、競争相手のテッド・クルーズ上院議員には大統領になる資格に疑問符がついている、と発言した。クルーズ氏はカナダ生まれで、母親が米国籍、父親がキューバ国籍だった。クルーズ氏は4歳のころカナダから米国に移った。母親が米国市民で出生地がカナダなので、40年以上も米国とカナダの二重国籍だった。クルーズ氏がカナダ国籍を放棄したのは2014年のことである。

さて、本日のNHKで次のようなニュース聞いた。

国民の6人に1人が二重国籍者とみられているオーストラリアで、野党の上院議員2人が二重国籍を理由に相次いで議員を離職した。オーストラリアは憲法で二重国籍者が国会議員になることを制限している。1人の議員はオーストラリア人の両親のもとでカナダに生まれ1歳になる前にオーストラリアに帰国していた。5日ほど前にはオーストラリア・ニュージーランドの二重国籍の上院議員が辞職している。

日本国憲法には首相の資格として米国大統領のような  “a natural born Citizen” にあたる資格制限はない。議院内閣制だから国会議員になれば首相になることが可能になる。その国会議員になるには日本国籍所有が資格だが、オーストラリアのように二重国籍者を排除していない。

ペルーの元大統領アルベルト・フジモリ氏はペルーと日本の二重国籍者で、ペルーで失脚後日本に亡命、さらには2007年の参議院選挙で国民新党の公認候補(比例代表)になったが、落選した。

この先どうする? アメリカ合衆国式に、日本国首相の国籍条件を付ける? オーストラリア式に国会議員に国籍条件を付ける? 現行のまま?

 

(2017.7.19 花崎泰雄)

 

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暑さボケ

2017-07-09 22:28:35 | Weblog

素人くさい外交ミスである。新聞が伝えるところでは、米国のホワイトハウスが中国の習近平国家主席を台湾総統と間違って発表した。トランプ米大統領と習近平主席がハンブルクのG20で会談した4時間あとの報道発表文の中で間違った。

 REMARKS BY PRESIDENT TRUMP
BEFORE BILATERAL MEETING
WITH PRESIDENT XI OF THE REPUBLIC OF CHINA

President of People’s Republic of China が正しい。

日本の新聞によると、日本の安倍晋三首相のことを、President と書いていたそうだ。ただしくは Prime Minister である。

トランプ氏がホワイトハウスの主になって以来、ホワイトハウスの内部は相当な混乱状態だと米国の新聞が伝えている。

もっとも、アメリカ人の国際方向音痴は昔からで、日本は中国のどこにある? とアメリカ人に尋ねられたという、冗談のような話を、かつて聞いたことがある。インドネシアでは、インドネシアはバリのどこにある? と米国人に聞かれた、という話を聞いた。

加えて、G20の会議のメインテーブルのトランプ大統領の席に娘のイヴァンカ・トランプが座ったということで、ヨーロッパや米国では話題になっている。トランプ大統領がちょっと席を離れたあいだ、彼女がその席に座った。

ホワイトハウスはトランプ一族の家族経営という意識があるのか、どうなのか? いずれにせよ、素人くさい外交である。

(2017.7.9 花崎泰雄)

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乱暴狼藉国会議員がいっぱい

2017-06-23 00:07:56 | Weblog

 秘書を殴ったと週刊誌に報道された豊田真由子衆議院議員が、暴行の事実を認めて6月22日、自民党を離党した。

 ちょっと、筋が違う。自民党員を辞めることはない。国会議員の方を辞めるべき事件なのだ。

 国会議員は特別職の国家公務員であるという考え方が一般的である。憲法99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」としている。なぐった豊田議員は特別職の国家公務員であり、殴られた方の秘書(当時)も政策秘書という特別職の国家公務員である。

 議員秘書は国家から給与が出る公設秘書と議員が給与を支払う私設秘書からなる。公設秘書は特別職の国家公務員である。

 『週刊新潮』の記事を引用したNHKニュースによると、殴られてけがをした秘書は公設秘書のうち「政策秘書」とよばれる秘書だった。政策秘書になるには国家試験に合格しなければならない。司法試験、公認会計士試験、国家公務員採用Ⅰ種試験若しくは外務公務員採用Ⅰ種試験に合格している者あるいは博士の学位を授与されている者は、国家試験を免除され、選考採用審査を受けることができる。

 専門的な知識で議員をサポートするのが役目の、ちょっと格式の高い秘書である。その政策秘書が議員の運転手役をつとめていた。その政策秘書兼運転手が車運転中に、後部座席にいた豊田議員が背後から殴った。いやどうも、運転妨害というか、危ないことである。

 そうした専門職の政策秘書を国家から与えられながらも、政策秘書を政策立案面で使いこなすことができず、議員の草履とりのような仕事をさせ、草履とりのように扱っていた。この事件をこうした視点から判断すれば、特別職の国家公務員が特別職の国家公務員を殴った事件の当事者である豊田議員は、その不明を恥じて辞職するのが当然である。

 この件についての自民党の河村建夫衆院議員(元官房長官)のコメントがふるっている。「あれはたまたま彼女が女性だから、あんな男の代議士なんかいっぱいいる。あんなもんじゃすまない」(朝日新聞電子版、6月22日)と述べた。河村氏はすぐフェイスブックで、発言を取り消したが、はしなくも、国会は暴力常習議員でいっぱいであることを告白した。

 (2017.6.22 花崎泰雄)

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笑止千万

2017-06-03 14:29:53 | Weblog

「沖縄密約事件」あるいは「外務省密約事件」が起きた1972年、日本国首相・安倍晋三氏と内閣官房長官・菅義偉氏は、ともにまだ学生だった。

ちょっと因縁話めくが、外務省の秘密文書を暴露された当時の佐藤栄作(安倍晋三氏の大叔父)政権は、秘密文書のコピーを持ちだした外務事務官・蓮見喜久子氏と、コピーを受け取った毎日新聞記者・西山太吉記者が「情を通じていた」とネガティブ・キャンペーンを始めた。

これが功を奏して世間は「密約」問題よりも「密通」問題の方に多大な関心を寄せた。この事件は裁判に持ち込まれ、蓮見・西山両氏とも執行猶予付き有罪の判決を受けた。ちなみに「ペンタゴン・ペーパーズ」をニューヨーク・タイムズ紙に渡したダニエル・エルズバーグ氏は裁判で無罪を勝ち取った。

日本の最高裁判所の判決要旨は、男の新聞記者が秘密文書を入手する目的で女の公務員と肉体関係を持ち、公務員が新聞記者の依頼を拒み難い心理状態に陥ったことに乗じて秘密文書を持ち出させた、とした。肉体関係を持つことにより男が女を言いなりにできるとする考え方は、当時の最高裁判事たちの知的レベルをよく示している。事務官が男で新聞記者が女だったとしたら、こういう風な判決要旨になっただろうか? 

こうして、うやむやのうちに闇の中に残された秘密文書は、後になって米国で機密指定が解けて公開された文書の中から見つかった。当時の外務省アメリカ(北米局の前身)局長・吉野文六氏も日本側に同じ秘密文書があったことを証言した。

今回、加計学園獣医学部新設に関連して、「官邸の最高レベルが言っている」と記された文書があることを文部科学省の前事務次官・前川喜平氏が公にした。さっそく、前川氏がひところ新宿歌舞伎町の出会い系バーに通っていたとするネガティブ・キャンペーンが始まった。どこかで誰かが1972年の柳の下のドジョウを目論んでいる。

さすがに首相は「歌舞伎町の出会い系バー」のことは口にしなかったが、代わりに、ラジオ番組の収録で次のように言った。

「次官なら大臣と一緒に私のところに(確認に)来ればいい。内閣府との議論で、なぜ(計画に)反対しなかったのか不思議でしょうがない」(6月2日付朝日新聞朝刊)

首相はことさらに不思議がって見せたのだが、どっこい、日本国で世間を渡るための常識からすれば、少しも不思議な事ではない。

「外務省は1日、韓国・釜山の森本康敬総領事(60)を退任させ、後任に道上尚史ドバイ総領事(58)をあてる人事を発表した。同日付。森本氏は16年6月に着任したばかり。総領事の任期は通常2~3年間で、約1年での交代は異例だ。政府は釜山の日本総領事館前に慰安婦を象徴する「少女像」が設置されたことへの対抗措置として、長嶺安政・駐韓大使とともに森本氏を1月から4月まで一時帰国させていた。複数の政府関係者によると、森本氏は帰国中、私的な会食の場で安倍政権の対応を批判したこともあり、首相官邸が問題視していたという」(6月1日付朝日新聞夕刊)

役人も辛いのである。外務省密約文書の存在について、吉野文六氏はアメリカ局長時代にはその存在を否定していた。存在を認めたのは私人となってからである。

安倍首相は加計学園理事長が友人だからではなく、加計学園の理事長がたまたま友人だった、というふうな言い方をしている。加計学園理事長・加計孝太郎氏は首相の「腹心の友」だそうだ。腹心の友は「刎頚の友」と似たようなものだろう。では、言い換えてみよう。

「加計学園理事長が刎頚の友だからではなく、加計学園の理事長がたまたま刎頚の友だった」

今から半世紀ほど前、エロ路線を展開していた新東宝という映画会社があった。そこのワンマン社長が、自社所属の女優との関係について

「女優を妾にしたのではなく、妾を女優にしたのだ」

といって、世間を賑せたことがあった。

歴史はファルスを繰り返すが、日本ではファイルは失せたままだ。

 (2017.6.3 花崎泰雄)

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世論調査はどの程度正確か

2017-05-29 18:24:04 | Weblog

新聞がときどき世論調査記事を掲載する。それがどの程度信用できるかどうか。判断が難しい。回答者が性別、年齢、職業などの面で日本の有権者の縮図となるように、層化無作為2段抽出法によって選び出した回答者に面接調査するのが、かつては世論調査の常道だった。これには時間と費用がかかった。今では新聞社の世論調査は電話調査が多い。面接調査に比べると安上がりで機動性もある。

面接調査のころは固定電話の普及率が低かった。固定電話が普及したのでコンピューターで無作為に電話番号を発生させて、電話に出た人の意見を聞く電話調査法式に変わった。皮肉なことだが、電話調査を始めると間もなく、携帯電話が普及し、固定電話の加入率が減った。そいうことなので、今では電話調査は固定電話だけでなく携帯電話も対象にしている。

面接調査法と電話調査法のどちらの世論調査が代表性に優れているかについての議論はさておく。回答率に限って言えば、面接調査の時代の回答率は80-60%台だった。電話調査では回答率は40%台にとどまっている。

回答率が低いと誤差率が高くなる。回答率4割台の世論調査結果は、「当らずと言えども遠からず」程度のものである。

くわえて世論調査は質問の発し方によって回答が違ってくる。

たとえば、5月29日付日経新聞(電子版)の世論調査記事は次のように言う。「日本経済新聞社とテレビ東京による25-28日の世論調査で、安倍晋三首相が提起した憲法9条に自衛隊の存在を明記する条文の追加について『賛成』は51%で、『反対』の36%を上回った。男女別に見ると、男性は賛成が59%で反対の34%より多かった。女性は賛成が40%、反対が38%で賛否が拮抗した。首相の2020年に新憲法を施行する目標については「賛成」が43%で「反対」は39%だった」

次に5月3日付同紙の記事。「日本国憲法は3日、1947年の施行から70年を迎えた。日本経済新聞社とテレビ東京が憲法記念日を前に世論調査を実施したところ、憲法改正について『現状のままでよい』が46%、『改正すべきだ』が45%で拮抗した。昨年4月の調査と比べると、現状維持が4ポイント減って改憲支持が5ポイント増え、その差が縮まった」

5月初めの段階では、「憲法は現状のままでよい」とする世論と「憲法を改正すべきだ」という世論が拮抗していたが、5月末になると「憲法9条に自衛隊の存在を明記する条文の追加」に賛成する意見が51%と、反対する意見34%に大きく水をあけた。憲法9条に自衛隊の存在を追加することは、すなわち憲法修正・改憲であることを考えると、この2つの調査結果の矛盾は世論というものを考えるうえで興味深い。

日経新聞の記事から、質問を引用すると次の通りである。

「安倍首相は憲法9条について戦争放棄や戦力の不保持を定めたいまの条文は変えずに、自衛隊の存在を明記する条文を追加したい意向を示しました。あなたはこの条文の追加に賛成ですか、反対ですか」

ちなみ、次のような質問と回答もあった。

「安倍首相は憲法改正の項目として、高等教育を含む教育無償化にも理解を示しました。あなたは高等教育も含めた教育無償化を憲法に明記することに賛成ですか、反対ですか」。

  賛成だ   52

  反対だ   35

では、質問を次のように変えたら、回答はどう変化するだろうか?

「安倍首相は憲法9条について戦争放棄や戦力の不保持を定めたいまの条文は変えずに、自衛隊の存在を明記する条文を追加したい意向を示しました。あなたはこの憲法改正案に賛成ですか、反対ですか」

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役人

2017-05-22 13:05:00 | Weblog

「最近の役人たちといったら……10もの禁忌を犯して10もの真実を踏みにじるといった具合で、それがどんな結果をひきおこすか何も考えていないのではないか」

そういわれてみると、防衛省の例があった。南スーダン国連平和維持活動参加した陸上自衛隊の部隊から送られてきた日報について、保管期限切れですでに廃棄したと、国会で(つまり国民に)言っておきながら、問い詰められると、実は保管してあった、と返答を変えた。

森友学園国有地売却問題でも、国会での追及に対して、高級役人がその記録は規定に従って廃棄した、の一点張りだ。コンピューターから消したとしても、データは復元出来るとして、情報公開活動をしているNPOが、関係官庁のコンピューターの証拠保全申し立てしている。

安倍首相のお友達が理事長をしている加計学園の獣医学部新設に関係して、文部科学省に「総理のご意向」とつたえられた文書があると、報道され、国会で追及された。そこで、文部科学大臣が、関係する高等教育局長、大臣官房審議官、専門教育課長ら省内の7高級役人に問い合わせたが、答はすべて知らぬ。存ぜぬ、だった。新聞の報道によると、1人当たり10分から30分間程度の聞き取りだった。

内閣総理大臣とその妻を守るために、役人たちが公務員としての禁忌をものとせず、納税者のために真実を見つける責任を拒否している――ように見える。

時の政権と官僚集団は運命共同体だ。これは日本に限らないが、日本は特にひどい。公文書の扱いについて、歴史への敬意の気持が薄いからである。

さて、冒頭の「最近の役人たちといったら……」は、今から1000年前の、11世紀ペルシアのニーザム・アルムルク(井谷鋼造他訳)『統治の書』(岩波書店)からの引用だ。

古典の教えは常に新鮮で、人はあいかわらず愚かである。

 (2017.5.22  花崎泰雄)

 

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