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news commentary

似非坊主横行す

2006-11-18 16:45:14 | Weblog
「日本ではキリスト教徒は総人口の1パーセントにすぎない。しかし、最近では結婚式の90パーセントがキリスト教式でおこなわれる。ドレスや接吻などのイメージが好まれているからだ」

最近BBCのサイトでニュースを読んでいて、上記のような内容の記事を見つけた。その記事によると、キリスト教式結婚式の人気上昇のため、西洋人の中にはキリスト教の坊さん(神父あるいは牧師)に扮装して挙式の飾り物になることで、結構な暮らしをしている人もいるそうである。

記事をかいたキャスリーン・マッコール記者が在日6年になる英国ランカシャー出身で札幌在住のマーク・ケリーという男性から話を聞いたところ、結婚式の似非坊主の役どころは英会話講師の賃金などとは比べものにならないうまい商売だという。

マークによると「札幌だけで5つの紹介所があって20人ほどの似非坊主役を抱えている。東京では何百という数字だろう」ということである。「正式な結婚は役所で手続きした段階で成立するので、式場の坊さんは飾りに過ぎず、パフォーマンスによる結婚式の引き立て役なんだ」とマークは記者に説明している。

また、マークがかつて働いていたチャペルは札幌のスーパーマーケット6階のすし屋、お菓子屋、麺処などがある一角にあった。

本物のキリスト教僧侶はこうした似非牧師・神父の横行に眉をひそめているが、マークは「結婚式は宗教ではなくてイメージなんだ」と自身の似非坊主役を弁護している。

日本では一般に仏教は葬式のための宗教で、仏教式の結婚式をするのはよほど仏教にかかわりの深い人だけである。神式の結婚式は前世紀末の1990年代中ごろまでは主流だったが、ある結婚情報誌の調査だと、今ではキリスト教式が結婚式の約7割、神前式と人前(「ひとまえ」ではなく「じんぜん」と読む)式がほぼ同数の1割5分程度を占めているだそうだ。

イスラム教の国に住んでいたころよく「汝の宗教は?」とたずねられた。はじめのうちは「信じる神をもたない」と答えていた。すると「しからば汝はコムニストなるか?」とたずねられることがあった。「いや、どちらかというとキャピタリストである」と答えると、尋ねた方は、さすがに、どうもからかわれているのではないか、と勘違いて気分を害した様子になってくる。というわけで、以来、言い訳の宗教が必要なさいは、私は「仏教徒」と名乗ることにしていた。

日本人の大半がこの程度の仏教徒なのであろう。宗教は遠くなり、一部の民族に見られるイスラム回帰現象と同質な「仏教回帰」はこの国ではとんと見られない。

このような国の民に愛国心という新宗教を教え込むのはなかなか難しい仕事だろう。だから政府は、精神世界に関してはすでにすれっからしになってしまった成人日本人の再教育はあきらめ、うぶな魂をつかまえて愛国心を吹き込もうと躍起になっているのである。権力が音頭をとって愛国心鼓舞運動をやるというのは、歴史をひもとくまでもなく、なんとも粗野な話ではないか。

(2006.11.18 花崎泰雄)
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