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news commentary

日本銀行総裁

2012-12-27 22:07:11 | Weblog


気がつくと髪の毛がずいぶんのびていたので散髪屋さんへ行った。

電話で予約して、予約の時刻きっちりに行ったのだが、少々待たされた。待合席のテーブルに日本経済新聞があった。新聞を開くと、イギリス政府がバンク・オブ・イングランドの新しい総裁にカナダ銀行総裁のマーク・カーニーを公募で選んだことにちなみ、日本も外国から新しい総裁を招いたらという記事が『フィナンシャル・タイムズ』に載ったことを紹介し、その手もあるなと同意する記事が載っていた。

一ひねりして嫌味をきかせたコラムではなく、普通のストレートな報道記事だった。それにしても変な記事で、来年4月に退く今の日本人の日銀総裁を外国人に変える手もあるなと書いていたわりには、外国人が日銀総裁になるとどんな利点があるのか、説明がなかった。経済専門の新聞にしては、ツイッター・レベルのお粗末な内容だ。

イギリスの新聞『ガーディアン』によると、マーク・カーニーは、イングランド銀行総裁に就任すると、年間48万ポンドのサラリー、25万ポンドの住宅手当、14.4万ポンドの年金掛け金など合計87.4万ポンド(1億1千万円余)の報酬を受けることになるそうだ。有名スポーツ選手にくらべると穏当な額だろうが、さて、日本銀行がそれだけの総裁報酬を出すことができるだろうか。

日銀総裁の年収は1998年に4000万円だったものが、5年後の2003年には3636万円に下がり、さらにその5年後の2008年には3576万円に、2012年には2396万円に落ち込んだ。日本の経済と財政の疲弊ぶりを見事に示す数字だが、こんな報酬では、程度のいい外国人日銀総裁は見つからないだろう。

外国人の日銀総裁を招へいする目的で日銀総裁の報酬をイギリス並みに引き上げようとすれば、それこそ日本政府は火中の栗を拾うことになる。火を見るよりも明らかなことだ。やはり冗談半分のコラムがお似合いの記事だった。

(2012.12.27 花崎泰雄)
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女と男

2012-12-20 11:37:45 | Weblog


2012年12月19日投票の韓国大統領選でセヌリ党のパク・クネが当選した。韓国初の女性大統領になる。東南アジアではフィリピンのコラソン・アキノ、インドネシアのメガワティと女性が大統領(元首)に選出されているが、男尊女卑の伝統をいまなお麗しいとする東北アジアでは初めてのことだ。

アキノ大統領は暗殺されたアキノ上院議員の妻、メガワティはスカルノ大統領の娘、パク・クネもパク・チョンヒ大統領の娘。みんな世襲だ。世襲となれば日本が本場で、首相は福田、麻生、安倍、鳩山と続いているが、こちらはみんな男ばかりだ。

イギリスでは王位継承順位の完全男女平等をめざす法案が間もなく議会を通過する。妊娠中のケンブリッジ侯爵夫人キャサリンがやがて出産する子は、男であれ女であれ、そのうち王位に就くことになる。

日本の新聞によると、国民からの意見公募で女性宮家の創設に反対する意見がきわめて多く寄せられた、とする結果を政府が発表した。

「今月十日までの二カ月間で二十六万件を超える意見が寄せられた。内閣官房によると、女性宮家創設に関し『安定的に皇室活動が継続されるために、ごく自然な流れだ』と賛同意見がある一方『将来、女系天皇につながる恐れがあり反対』などの意見が多数を占めた。『元皇族の皇籍復帰の検討を希望する』との主張も多かった。反対意見は、いくつかの定型文を使った同様の主張が繰り返し寄せられたケースが多く、同一人物が約二千件送信した同趣旨のメールも含まれているという。こうした事情から賛否の内訳などの集計はしなかったとしている」(東京新聞12月19日付朝刊)

次期首相に就任する自民党の安倍晋三は、男系で紡いできた皇室の長い歴史と伝統の根本原理が崩れるとして、女性宮家に反対しているという。

これが彼らのいう美しい国・日本が守るべき美しい伝統である。

(2012.12.20 花崎泰雄)



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どこまで行くか?

2012-12-17 21:47:49 | Weblog

総選挙で自民党が大勝し、出戻り再チャレンジ安倍晋三内閣が誕生する運びになった。そこで急ぎ、2012年4月に自民党が発表した日本国憲法改正草案を斜め読みした。

①天皇が日本国の元首である②国旗は日章旗、国歌は君が代とする。日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない③国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いないが、自衛権の発動を妨げるものではない。国防軍を保持し、 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、国防軍に審判所を置く。国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。 ④国民は、憲法が国民に保障する自由及び権利を濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。⑤国・地方自治体・その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならないが、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。⑥集会・結社・言論・出版その他一切の表現の自由は保障するが、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。 ⑦家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない――などなど安倍好みの復古趣味がつづられている。

なかでも、ものすごいウルトラ復古のひとつが、⑥の集会・結社・言論・出版その他一切の表現の自由は保障するが、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない、という規定で、「日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス」という帝国憲法の条文そっくりだ。かつてこの条文のせいであまたの人々がひどい迫害を受けた。

こんどの選挙ではたくさんの候補者がやたらと「日本」「にっぽん」「ニッポン」と、まるでオリンピックの応援のように叫んでいた。袋小路にはまっている現状を打開する有効な方策をひねり出すだけのアタマがないので、ニッポンを連呼したのだろう。

ニッポンとはそもそも何ぞや?

夏目漱石の小説『三四郎』の導入部で、熊本から上京する三四郎が列車で奇妙な男に出会い、話しかけられる。以下、デジタルライブラリー「青空」からの引用。


「どうも西洋人は美しいですね」と言った。
三四郎はべつだんの答も出ないのでただはあと受けて笑っていた。すると髭の男は、
「お互いは哀れだなあ」と言い出した。「こんな顔をして、こんなに弱っていては、いくら日露戦争に勝って、一等国になってもだめですね。もっとも建物を見ても、庭園を見 ても、いずれも顔相応のところだが、――あなたは東京がはじめてなら、まだ富士山を見たことがないでしょう。今に見えるから御覧なさい。あれが日本一の名物だ。あれよりほかに自慢するものは何もない。ところがその富士山は天然自然に昔からあったものなんだからしかたがない。我々がこしらえたものじゃない」と言ってまたにやにや笑っている。三四郎は日露戦争以後こんな人間に出会うとは思いもよらなかった。どうも日本人じゃないような気がする。
「しかしこれからは日本もだんだん発展するでしょう」と弁護した。すると、かの男は、すましたもので、
「滅びるね」と言った。――熊本でこんなことを口に出せば、すぐなぐられる。悪くすると国賊取り扱いにされる。三四郎は頭の中のどこのすみにもこういう思想を入れる余裕はないような空気のうちで生長した。だからことによると自分の年の若いのに乗じて、ひとを愚弄するのではなかろうかとも考えた。男は例のごとく、にやにや笑っている。そのくせ言葉ことばつきはどこまでもおちついている。どうも見当がつかないから、相手になるのをやめて黙ってしまった。すると男が、こう言った。
「熊本より東京は広い。東京より日本は広い。日本より……」でちょっと切ったが、三四郎の顔を見ると耳を傾けている。
「日本より頭の中のほうが広いでしょう」と言った。「とらわれちゃだめだ。いくら日本のためを思ったって贔屓ひいきの引き倒しになるばかりだ」
この言葉を聞いた時、三四郎は真実に熊本を出たような心持ちがした。同時に熊本にいた時の自分は非常に卑怯であったと悟った。

はっはっは、たまには小説を読むのもいいもんだ。

今度の選挙では、維新だの、船中八策だのとはしゃいでいた橋下が「君が牛若丸、僕は君を支える弁慶だ」と政治的骨董品の石原におだてられたが、さて、選挙が終わり政治のアリーナが永田町へ移った時、大阪市長と大阪府知事の威光や意向がどこまで国会議員に届くか? ご本人が首長から国会議員に転進するまで今の勢いが維新に残っているか?

出戻り再チャレンジの安倍首相候補について言えば、彼は憲法改正に必要な国民投票法を前の安倍内閣の時に成立させている。今度は憲法改正の発議の条件を議員の3分の2から半分へと、壁を低くしようと狙っている。

自民党の憲法改正草案は4月に発表され、今度の選挙では憲法を変えようと叫んで安倍自民党が大勝した。以上のことを有権者は承知のうえで安倍を選んだのだから、この先何があっても有権者の自業自得ということになる。

(2012.12.17 花崎泰雄)





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北のロケット

2012-12-14 14:07:21 | Weblog

北朝鮮が長距離ロケットを打ち上げた。

北朝鮮の何十倍ものGDPを持ち、ロシアの技術支援を受けながらも、韓国はこれまで自前の大型ロケット打ち上げに失敗してきている。韓国の焦燥感はただならないものがあるだろう。

韓国では12月19日が大統領選挙の投票日だ。パク・クネ、ムン・ジェイン両候補が接戦の最中だ。北のロケット打ち上げは、大統領選挙の結果に影響を与えるだろうし、どちらが大統領になっても、その後の北政策の再検討と軍備増強を迫られることになる。

12月16日投票の日本の総選挙では、メディアの予想では自民党が単独300議席をとる勢いだという。安倍晋三、福田康夫、麻生太郎が1年ごとに交代した自民党政権末期の低パフォーマンスのせいで、前回2009年の総選挙では民主党が300議席超を獲得した。自民党は100議席ちょっとの壊滅的敗北。

その後、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦による3年余り不手際があった。したがって、2012年の選挙結果が2009年の裏返しになるというのは常識的な見方だ。

さて、日本では首相の座にいちばん近い位置にある安倍晋三が、美しい日本を守るために自衛隊の名前を国防軍に変えようと主張している。日本のどこが美しいのか、名前を変えれば防衛力が強化されるのか、よくわからないが、いずれにせよ、北朝鮮のロケット発射は日本の軍拡論に拍車をかける効果がある。

ところでその昔、筆者が勤め人だったころ、同僚が当時のソ連邦に出張で出かけ、ソ連製のスプーンをお土産に買ってきてくれたことがあった。ブリキを打ち抜いたような薄い大型のスープ用スプーンだった。触ってみるとスプーンの周辺にギザギザ感が残っている。このスプーンで食物を口に運ぶと、くちびるを傷つけそうに思えた。

当時のソ連は核ミサイル競争で米国と熾烈な戦いをしていた。だが、お土産のソ連製スプーンは最先端の技術開発が民生部門の洗練と断絶していることを如実に示していた。

国連人口基金の2008年の調査によると、北朝鮮の平均寿命は前回1993年に行われた調査と比べて著しく短くなっていた。1993年の平均寿命72.7歳が69.3歳に落ちた。1990年代の飢饉のせいではないかとみられる。

北朝鮮は慢性的な食糧不足に見舞われているが、1990年代はとくそれがひどかった。ファン・ジャンヨブの『黄長回顧録』(文春文庫)には、ファンが北朝鮮のイデオロギーである主体思想の研究所長をしていたころの彼の妻の弁当について書かれている。ファンが妻の弁当箱をのぞくと、弁当箱に容器の半分だけのご飯とダイコンキムチが数切れはいっているだけだった。ファンの妻は「職場の人はみんな草ばかりの弁当を持ってきている。これでも一人で食べるのが申し訳ないぐらい」と言ったという。

すきっ腹をかかえて北朝鮮が打ち上げたロケットで、飽食の日韓がばたばたする。政治の世界というのはどうもグロテスクでいけない。

(2012.12.14 花崎泰雄)


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