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news commentary

秘密保護法

2013-10-30 21:29:17 | Weblog

新聞を開いて苦笑させられた。2013年10月30日付の朝日新聞14面の社説だ。特定秘密保護法案をめぐる、社説としては型破りなブラック・ジョークだった。

その写真をここに添えておく。まだお読みになっていない方は、新聞紙でもインターネットでもいいから、とりあえず読んで、こんな新聞を読まされる日を想像なさるといい。



自由な言論が世界で最も尊ばれていると自負するアメリカ合衆国では、だいぶ前から伏字でいっぱいのベストセラーが売られるようになっている。国防省や情報機関から伏字を押し付けられたことで、かえってベストセラーになったのかもしれない。アメリカのアフガニスタン最前線での隠密作戦のノンフィクション Anthony Shaffer、Operation Dark Heart だ(米国では St Martin’s Press、英国ではMainstream Publishing 刊)。



特定秘密保護法案では、行政の長が秘密を指定する。

2005年、鈴木宗男代議士が「外務省文書の秘密指定区分に関する質問主意書」を提出し、①外務省の文書にはどのような秘密区分があるか②極秘の指定とはどのような基準でなされているか③秘(無期限)の指定はどのような基準でなされているか④期限付きの秘の指定はどのような基準でなされているか⑤取扱注意の指定はどのような基準でなされているか⑥取扱注意の指定がなされた文書といかなる指定もなされていない文書との間にはどのような差異があるか⑦秘密指定の解除をせずに外務省職員が極秘もしくは秘の指定がなされた文書を外部の人に渡す、あるいは提示することは許されるか⑧許されないとした場合、当該職員にどのような処分がなされるか⑨取扱注意の指定の解除をせずに外務省職員が取扱注意の指定がなされた文書を外部の人に渡す、あるいは提示することは許されるか⑩九が許されないとした場合、当該職員にどのような処分がなされるか。あるいは処分はなされないか⑪極秘、秘、取扱注意の指定もなされていないが、外部に対して公開しない内部文書が外務省に存在するか12そのような文書があるとした場合、当該文書は情報公開の対象となるか――と質問した。

これに対して、小泉純一郎首相が①外務省の文書に係る秘密指定の区分としては、①「秘」及び「極秘」がある②極秘の指定は、秘密保全の必要が高く、その漏えいが国の安全、利益等に損害を与えるおそれのある文書に対して行われる③~④秘の指定は、極秘に次ぐ程度の秘密を含み、関係者以外の者には知らせてはならない文書に対して行われる。また、秘密指定に当たっては、当該文書の内容等を踏まえ、原則として、併せて秘密指定期間を定めることとなっている⑤取扱注意の指定は、秘密文書以外の文書で、当該文書に係る事務に関与しない者にみだりに知られることが事務遂行に支障を来すおそれのあるものに対して行われる⑥取扱注意に指定された文書の取扱いは、秘密文書の取扱いに準ずるものとされている。いかなる指定も行われていない文書の取扱いについては、特段の定めはない⑦~⑩極秘、秘又は取扱注意の指定が行われた文書について、これらの指定を解除することなく外部の者に配付し又は提示することは、原則として許されない。このような行為を行った職員に対する処分の在り方については、一概にお答えすることは困難である⑪~⑫ 極秘、秘又は取扱注意の指定が行われていない文書であって、外部に公開していないものは存在する。そのような文書について行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)に基づく開示請求があった場合には、同法の規定に従って対応することとなる――と答弁書を返した。

筆者がまだ勤め人だったころ、「お話ししたいことがある」と外務省に呼び出されたことがある。出かけてみると、筆者が担当していた企画が現地のイギリス・ウェールズの住民の間で不評だという情報提供だった。その情報源として示してくれたのが、現地ウェールズの新聞の切り抜きだった。

そのスクラップ記事を読みながら、ふと気がついた。その新聞記事切抜きにスタンプが押してあった――「取扱い注意」。

(2013.10.30 花崎泰雄)

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5兆円 vs 5兆円

2013-10-08 21:30:20 | Weblog

その意味がどうもよくわからない。

安倍政権は2014年4月から消費税率を現行の5パーセントから8パーセントに引き上げること決めた。一方で、消費税率引き上げがもたらす景気の減速を食い止めるために5兆円規模の経済対策と復興法人税廃止を検討することにした。

消費税率引き上げは、来年度、5兆円を超える税収増をもたらすそうだ。財務省は5兆円の経済対策は、新たな国債発行なしでねん出したいと言っている。 当然のことだ。消費税増税の目的は財政再建のためだったのだから。

そういうことであれば、国庫の歳入・歳出で見た場合、消費税の税収増と景気の腰折れを防ぐための支出で差し引きゼロとなる。

お金の流れをみると、消費行動にかける税率を増やして日本全国から集めた金を、景気対策の目的で公共事業などに振り向けるわけだから、この再配分がもたらす政治的効果はそれなりに出てくるであろう。

そういう見方は「ひがみ」だという見方もある。5兆円の経済対策費投入によって、企業の活動が活発になり、景気が軌道に乗れば、雇用が増え、給与も上がり、消費も活発になり、税収が増える。5兆円の効果を「したたり理論」(trickle-down theory)で説明する。

「大風が吹けば桶屋がもうかる」理論ほどには、その因果関係は希薄ではないが、したたり理論はマユツバである。公共投資で潤う企業や復興法人税で懐があたたまった企業とその経営者が、いまの時代、その金で雇用を増やし、従業員の賃金を上げるだろうか。

「経済人(ホモ・エコノミクス)」である企業経営者は収益が増えると、その金をまず何に使うだろうか。米国の話だが、「最高経営責任者(CEO)と一般労働者の賃金格差は、1950年比で10倍拡大している。『Fortune500』に選出されている大企業のCEOは、2013年は平均で一般労働者の204倍の報酬を得ているが、この比率は2000年は120倍、1980年では42倍、1950年では20倍だった」(『ブルームバーグ』2013年4月30日)。

また、別の調査では「米国内上位500社CEOの平均報酬と労働者の平均賃金の格差では、2009年の263倍から2010年は325倍にアップ。金額では年額1076万2304ドル対3万3121ドルと文字通りの桁違いです」(『しんぶん赤旗』2011年9月2日)という。

したがって、自民党が「国民運動本部」設置して、経済対策にみあう賃上げを企業に要請して回る方針を打ち出しているのも当然だろう。増収分を社内留保に回したり、経営者の報酬増に浸かったり、株主配当に使ったりするよりも、まず従業員の賃金引き上げに使うとは考えにくいと知っているからだ。

(2013.10.8 花崎泰雄)

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