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news commentary

退陣求める世論調査の “?”

2011-02-22 13:14:23 | Weblog

2月21日付『朝日新聞』朝刊1面に、同社の世論調査によると、菅首相に対して、「早くやめてほしい」と退陣を望む声が49パーセント、「続けてほしい」と続投を望む声が30パーセントだったという記事が載っていた。

菅首相の続投よりも退陣を望む声が多かったことははっきりとわかるのだが、では、世論調査回答者がなぜ早期退陣を望んだのか、なぜ続投を望んだのか、理由が記事に書きこまれていなかった。

22日付の同紙4面に世論調査の「質問と回答」が掲載された。 この世論調査は2月19、20日に電話で行われたもので、有効回答2082人、回答率60パーセントだった。

「質問と回答」を読んでみてわかったのだが、じつは、なぜ菅首相に早くやめてほしいのか、なぜ続投してほしいのか、その理由を世論調査では質問していなかったのだ。

この世論帳では菅内閣の評価については、以下のような質問をしている。(数字はパーセント)

①いまのような政治状況になったのは、菅首相の政治の進め方に問題があるからだと思いますか。野党の姿勢に問題があるからだと思いますか。
   菅首相の政治の進め方 24    野党の姿勢 31
②官僚に頼った政治を改める菅内閣の取り組みを評価しますか。評価しませんか。
   評価する 40             評価しない 42
③民主党は、おととしの衆議院選挙で掲げたマニフェストを見直す方針です。このことを評価しますか。評価しませんか。
   評価する 54             評価しない 36
④消費税の引き上げに賛成ですか。反対ですか。
   賛成46                 反対   45
⑤社会保障の財源を確保するために、消費税を引き上げる必要がある、という意見があります。この意見に賛成ですか。反対ですか。
   賛成   53              反対    35
⑥行政のムダを徹底して減らせば、消費税の引き上げを急ぐ必要はない、という意見があります。この意見に賛成ですか。反対ですか。
   賛成   64              反対    23
⑦菅内閣の社会保障と税の一体改革への取り組みに期待しますか。期待しませんか。
   期待する 38             期待しない 49
⑧民主党の小沢一郎さんが、政治資金問題で強制起訴されました。民主党は小沢さんに対し、裁判が終わるまで党員の資格を停止する方針です。この処分は適切だと思いますか。重すぎると思いますか。軽すぎると思いますか。
   適切だ  52    重すぎる  9    軽すぎる 28
⑨小沢さんは、検察審査会が決めた強制起訴と、検察の起訴とではまったく違うので、衆議院議員の辞職や、民主党からの離党は必要ないと言っています。この小沢さんの主張に納得できますか。納得できませんか。
   納得できる17              納得できない72

質問①では、今の政治の行き詰まりは、野党の姿勢の姿勢が原因とする意見が多く、質問②では、脱官僚政治についての評価は拮抗し、質問③では、民主党のマニフェスト見直しについて評価するという意見が過半数を占め、質問⑤では社会保障の財源確保のための消費税引き上げについても過半数が賛成、質問⑧の小沢一郎に対する民主党の党員資格停止には過半数の人が「適切だ」と答えている。

これらの回答からは、首相に早期退陣を求めるほどの逼迫した政治状況が感じられない。にもかかわらず、首相の早期退陣を求める声が49パーセントと過半数すれすれまでに上ったのは、いったいなぜなのだろうか?中東・北アフリカ情勢の熱気に影響されたためだろうか? テレビに現れる首相のいつも眠そうな顔のせいだろうか? ちなみに故人になった韓国のノ ・ムヒョン前大統領はまぶたの整形手術を受けたと報じられたことがあった。

(2011.2.22 花崎泰雄)






 

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1人あたま3億円の値打ちはあるか?

2011-02-19 22:29:56 | Weblog
民主党の衆議院議員16人が衆議院の民主党会派からの離脱を表明した。国会議員は自由に院内会派を組織できる。したがって、議員の会派離脱や1政党複数会派の結成については、その党の規約とのかねあいになる。

とはいえ、政党というものは価値観やビジョンを共有し、その実現のために議会で政治権力の獲得を目指す団体であるから、常識上、1政党複数会派の結成という事態は想定外である。したがって、民主党の規約には党員による別会派を禁じる項目はない。

16人が民主党会派を離脱して別会派を作ろうとした動きが、どのような政治上の価値観から生じたのかについては、マスメディアは詳しく伝えていない。政治報道より政局報道が好きなマスメディアの性なのだろうか。あるいは16人にメディアが詳しく伝えるほどの政治的見識がなかったのかもしれない。

議員が所属する党と考え方を異にする場合は、離党するのが普通だ。自民党を離党して新党を結成し、その新党からも離脱して民主党政権の大臣になって自己実現を図ろうとした人物がいる。

1政党複数会派が常態化すると、自民党、あるいは民主党の一部が旧会派を離脱して新会派を作り、民主党あるいは自民党と会派を組んで、自民党、あるいは民主党籍のまま他党政権の閣僚になることも考えられる――はて、こういうことは可能だろうか?

民主党の無惨な末期的ドタバタ劇をわれわれは目撃している。はっきりしているのは国会議員の資質がとめどなく劣化し続けていることだ。政治家としての能力・資質を問わず、当選可能性だけで候補者選びをした報いだ。

2007年のこと。参議院の民主党所属某議員が国会議員1人あたり年間どのくらいの国費が使われているか、質問主意書を出したことがあった。それに対する回答は、当時の新聞報道によると、以下のようであった。

①議員歳費・秘書給与・議会事務局職員の人件費など
  衆議院       654億円
  参議院       420億円
②参院選関係費     580億円
③政党助成費      321億円
④国立国会図書館    229億円

などなど、予算総額は2244億万円だった。

国会議員1人あたま年間3億万円余。3億円といえば、ごくめぐまれた勤め人の生涯賃金に匹敵する額である。国会議員にはこれだけの金がつぎ込まれているのだ。かれらにそのコスト意識はあるのだろうか。「金返せ」と怒鳴りたくなる人もいるだろう。

(2011.2.19 花崎泰雄)
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読み違え

2011-02-11 13:26:06 | Weblog
今朝、新聞を見たら、「ムバラク大統領辞任へ」「権限 副大統領委譲か」「エジプト、デモ衰えず」「軍の後ろ盾を失う」と言う見出しが、『朝日新聞』(2011.2.11 朝刊)1面におどっていた。

大、そのときがついにきたかと、続報を読むために、BBCのサイトを開くと、なんと、それは事実上の誤報だったらしいことがわかった。BBCは次のように書いていた。

Egypt's President Hosni Mubarak has said he will stay in office and transfer all power only after September's presidential election. His comments in a national TV address confounded earlier reports that he was preparing to stand down immediately.

勘違いしたのはメディアだけではなかった。米CIAのレオン・パネッタ長官も下院情報委員会で、ムバラク大統領が木曜日(2月10日)夜までに辞任する可能性が高いと証言した。しかしその数時間後、ムバラク大統領が、副大統領に権限の一部を委譲するが、9月まで大統領職にとどまるとエジプトのテレビで演説した。CIAはチュニジアの国外逃亡も読み切れず、さらにエジプトでも見当違いをして、その情報収集・分析能力の衰えを露呈することになった。

というよりも、それほどまでに、ムバラク大統領周辺のエリート内の権力争いと大統領の出方が、外部から読みにくい状況になっているといえる。

今日、2月11日は金曜日で、イスラム教徒にとっては、モスクに出かけて礼拝する日だ。カイロのタフリル広場に集まった人々がどんな動きを見せ、それに軍がどう対応するのだろうか。アメリカはエジプトに多大な軍事援助をつぎ込んできた。この軍事援助の継続については、タフリル広場に集まった人々に対するエジプトの軍の出方にかかっていると、軍の動きに影響を与えてきた。この影響力はどこまで持つのだろうか。

ムバラク大統領の即時退陣を要求する大衆運動、とムバラク体制を支える側とのせめぎ合いは手詰まり状態だし、民主化の促進を求めるアメリカのオバマ政権とエジプト側との間にも、外交的な手詰まり感がただよう。

強権政治の後始末はやっかいだ。1998年のスハルト政権崩壊の時は、副大統領だったハビビが大統領に昇格し、民主化への道を準備し、大統領選挙でハビビが野党候補に敗退することで、スハルト時代が最終的に終わった。

エジプトは大統領後継選びについても、複雑だ。時事通信が次のような解説記事を伝えていた。

権力移行に関するエジプト憲法の規定が大統領の早期退陣の障害になっている。 エジプト憲法はその84条で、大統領辞任・不在の場合は国会議長が臨時大統領に就任し、60日以内に大統領選挙を実施すると定めている。82条は、大統領が一時的に職務の執行ができなくなった場合、副大統領に職務が委譲されると規定している。だが、臨時大統領や副大統領に憲法改正発議の権限はなく、ムバラク大統領が即時辞任した場合、野党候補の出馬が事実上不可能である現憲法の立候補資格規定(76条)に基づいて大統領選が行われることになってしまう。

公正な大統領選挙をするためには憲法の改正が必要であり、憲法を改正するためにはムバラクが必要であるという、キャッチ22的状況におかれている。

(2011.2.11 花崎泰雄)


こう書いて一夜明けた12日、朝刊には「ムバラク大統領辞任」の活字が躍っていた。『アルジャジーラ』のサイトを除くと、タフリル広場に花火が上がっている写真が載っていた。だが、これからの展開で、タフリル広場で踏ん張った若い世代がどこまで発言力を獲得できるか。正念場はまだ続く。

(2011.2.12)


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