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news commentary

言葉の軽さを避ける方法

2016-03-23 18:00:41 | Weblog

安倍首相が今年5月に伊勢志摩で予定されているサミットの準備のために、米国などのノーベル賞受賞経済学者らから世界経済に関する意見を拝聴している。

経済学者から消費税10パーセントへの引き上げを再先送りした方がいいという意見を引き出すのが目的のようにもみえる。

「消費税引き上げ再先送り」を使って衆参同日選挙をやろうというにおいも強まっている。

ふり返れば、2014年11月18日の記者会見で、安倍首相は2015年10月に予定していた消費税の10パーセントへの引き上げを18か月先送りし、2017年4月からにすると言明した。その是非を国民に問う、と称して総選挙を行った。

11月18日の記者会見で、安倍首相は次のように言った。

「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18ヵ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします」

この時の首相の言葉を信じれば、経済学者との会合が消費税引き上げ再先送りのエクスキューズづくりという見方は成り立たないし、再び消費税増税再先送りを国民に問うための衆院解散という二番煎じの茶番もあり得ない。

「再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします」「景気判断条項を付すことなく確実に実施します」という言葉は、いまでも首相官邸のサイトに残っている。

したがって、もし経済情勢を理由に消費税引き上げ再先送りをしなければならないという判断に首相が立ち至ったとしても、2014年11月18日の約束を破るわけにはいかない。その約束で票を集め、その票のおかげで首相を務めている政治家の国民に対する約束は重い。

消費税増税再先送りは、首相が自らの経済運営の拙さを認めることである。政治の常識からすれば、その先にある首相の仕事は、首相をやめる事だけである。

(2016.3.23 花崎泰雄)

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Trumpedeと安倍頭

2016-03-09 16:56:53 | Weblog

米紙『ワシントン・ポスト』や『ボストン・グローブ』、英誌『エコノミスト』などが、米大統領候補選びで共和党のトップを走っているドナルド・トランプ氏を「阻止せよ」「首にせよ」と共和党指導部に呼びかけている。しかし、トランプ氏の猛進は止まらない。

いまや、Trumpede (トランピード)としか呼びようのない暴走の域に入り、止めるすべがなくなったように見える。Trumpede はTrump と Stampedeをつないだ造語である。米国のマスメディアはトランピードを発生させた共和党の責任を追及している。共和党はマスメディアが面白がってトランプ氏を頻繁に取り上げて、結果として同氏の宣伝をしてしまったからだと反論している。

興味津々なところは、このトランピードがいつ終わるかだ。7月の共和党全国大会前か、全国大会から大統領本選挙の11月の間か、それとも今のままの勢いで大統領本選挙に突入するか。

全国大会前にトランピードがおさまった場合、全国大会で進出される共和党の大統領候補者はその求心力に欠けることになろう。トランプ氏が全国大会で共和党の候補者に選出され、本選挙を前にそれまで使ってきたアクの強い暴言戦略を捨てて並みの保守派資本家の主張に帰れば、一気に有権者の興味をそぐことになろう。そのような展開を民主党は歓迎するだろう。トランピードが大統領本選挙まで持ち込まれれた場合どうなるか。それは米国の悪夢と世界の災難の始まりである。

安倍頭は「あべこーべ」のダジャレである。安倍首相の頭の中では、改憲と選挙対策としての2度目の消費税10%延期戦術が渦巻いている。選挙対策としてすでに「辺野古和解案」を受け入れている。改憲に必要な国会の3分の2以上の議席確保と、在任中に改憲を成し遂げたいと、その執念を参院予算委員会で吐露もしている。

とはいうものの、憲法のどの条文をどのように変更するかについては、はっきりしたことは何も言っていない。

1889年に旧明治憲法が発布された時、少なからぬ人が「絹布の法被」が下賜されると誤解したという笑話を、中学生時代に教師に教わった。そののち、明治のお抱え外国人で、ベルツ水でも有名なエルウィン・ベルツが、同年2月9日の日記に、憲法発布を前に、東京は祝賀気分でいっぱいだ。だが、「滑稽なことには、誰も憲法の内容を知らない」と書き残していることを知った。国民の多くは公布前に憲法の内容をよく知らなかったが、下賜される欽定憲法であれ、憲法を持つことによって先進国の仲間入りができるような気になって提灯行列に加わっていたのである。

いまの日本国憲法は日本が米国との戦争に敗れたあと、米国が日本に押し付けたもので、日本人が自らの手で憲法を書き直すことが必要だ――その内容はともあれ。

以上の主張が通用すると考える安倍頭には以下の認識がある。

憲法のどこをどう変えるか明らかにしないまま、改憲の必要性だけを前面に出して、国会の3分の2以上の議員を確保できれば、改憲に関するカルテブランシュが手に入る。そのような戦術が通用すると考えるのは、安倍頭の面々が、いまの日本人も1世紀以上前に明治憲法公布で提灯行列したときの日本人と同じであると認識しているからである。

いま「保育園落ちた日本死ね」というブログの文言が話題になっているが、「憲法変えた日本死ぬ」とならないことを祈るのみだ。

(2016.3.9 花崎泰雄)
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