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核シミュレーション

2012-11-23 17:44:49 | Weblog

1965年のことだが、「中共が核を持つなら日本も核武装せざるをえない」と、佐藤栄作がリンドン・ジョンソンに日米首脳会談で言ったという記録が米国務省に残っている。いつもながらのことではあるが、日本ではこの種の記録はとられなかったり、途中で消されたりするケースが多いのだが、アメリカ合衆国政府はそうした記録をきちんと保存し、一定の時間が経過すると公開している。ともあれ、歴史に対して正直であろうとしている点においてアメリカの政府の方が日本の政府よりましだ。

佐藤発言から四十余年、いまや中国は堂々たる核大国になった。噂では、米ソの10,000発前後には及ばないが、中国は英仏と同程度の200から300発の核弾頭を持っている。中国は米ソに次いで世界3番目に人間を宇宙に打ち上げたロケットも持っている。

だが、日本は核武装に至っていない。あまつさえ、佐藤栄作は非核3原則堅持でノーベル平和賞をもらっている(キッシンジャー、オバマ、EUとこの賞ははずれが多い)。

佐藤栄作の親戚で目下の自民党総裁・安倍晋三は「憲法は核保有を禁じていない」としているが、「政府としては非核三原則を堅持する」と、腹痛で総理大臣を辞める前の内閣総理大臣時代に見解を表明している。

石原慎太郎も都知事の時代から、「日本は核兵器に関するシミュレーションぐらいやったらいい。これも一つの抑止力になる」と言い続けており、先日も東京の外国特派員協会で同じ見解を繰り返して披露した。この見解に何らかの新しい意味があるとすれば、このとき石原は日本維新の会の代表になっていたということだ。

日本はスーパーコンピューターを持っている。それを使ってシミュレーションをするにしても、まずインプットするデータが必要だ。日本政府はそうした核シミュレーション用の信頼できるデータを持っているのだろうか。持ち合わせがない場合、核拡散防止条約違反を承知で、アメリカ政府に核シミュレーションをしたいのでデータを分けて頂戴とねだるのだろうか。そのあとの作業である、シミュレーションの結果が正しいかどうかをどうやって検証するのだろうか。

自民党幹事長の石破茂は、「日本は核兵器を作ろうと思えばいつでも作れるという状態が抑止力になるので、プルトニウムを作り出す原子力発電はやめられない」と言っている。

原子力委員会の「我が国のプルトニウム管理状況」によると、2011年末現在、日本は国内に9トン、国外に35万トン、合計44万トンのプルトニウムを保有している。日本は衛星打ちあげ用のロケットも持っている。

北朝鮮が「衛星打ち上げ」と言っても、諸外国が弾道ミサイルの実験とみなすように、日本のH2ロケットを弾道ミサイル、保有しているプルトニウムを燃料ではなく核兵器の原料とみなす国は当然あるだろう。そのことを、石破は正直に告白しているのだ。

佐藤栄作の時代から保守派の一部政治家は核武装を唱えてきたのだが、それが実現しなかったのはなぜだろうか。

日本は核拡散防止条約に加わっている。この条約は米ソ英仏中にだけ核兵器の保有を許し、非核国には核兵器の製造と取得を禁止し、一方で保有国は条約で課せられた核廃棄の義務を実行していない不平等な条約だが、日本が核兵器開発のシミュレーションを始めると、この条約が動き出す。

そのあとはシミュレーションをするまでもない。日本に対する制裁措置が始まる。それは尖閣問題をきっかけにした中国の日本製品不買運動の程度の対日経済圧力とは比べ物にならない深刻な規模になろう。

日本の親分であるアメリカでは最近、保守派のシンクタンクが日本を核武装させてアメリカの核による世界秩序の片棒を担がせようという意見を発表しているが、日本の核武装推進はすぐさま韓国や台湾に感染し、東北アジアに収拾がつかなくなる状況が発生するので、アメリカ政府は日本政府に「ちょっと待て」と声をかける。

アメリカ政府からの「ちょっと待て」の声が日本政府にどれだけの衝撃を与えるか。それは2030年代に原発ゼロという計画を、アメリカの反対で野田内閣が閣議決定できなかったことであきらかである。

右翼政治家たちは以上のことを百も承知のうえで、左翼が消え去り、重心がどんどん右へ右へと傾いている日本の有権者の心情をくすぐり、かれらから一票をくすねとる目的で甘言を弄しているのだ。

(2012.11.23)


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争点

2012-11-16 23:13:26 | Weblog


12月4日公示、16日投票の総選挙の最大の争点は、財政再建でも経済成長でも安全保障でも憲法改正でもなく、じつは、いかにして現在のような質の悪い議員を国会から締め出す制度をつくるかである。それさえきちんとできれば、大震災からの復興、エネルギー政策、対中政策、安全保障、社会保障などさまざまな課題がおのずと解決へ向けて動き出す。

いまのままの選挙のやり方で議員を選んでも、これまで同様のお粗末な政局劇を繰り返すだけに終わるだろう。ここは三権のひとつ、司法の出番である。

今度の総選挙は、違憲状態にある一票の格差を正さないままに行われる。0増5減は国会では可決されたが、12月の衆院選の定数は480のままである。0増5減は適用されない。そこで、これまで一票の格差を問題視して選挙無効訴訟を起こしてきた弁護士グループが、12月16日の投開票が終わり次第、選挙の無効を求めて提訴することにしている。司法の判断が、「違憲状態」から「違憲」に変われば、総選挙は無効になる。

そうなるといよいよ、根源的な選挙制度改革がテーマになってくる。現行の小選挙区・比例代表並立制がよいのか、小選挙区制、あるいは比例代表制だけでよいのか、かつての中選挙区制に戻るのがよいのか。そのあたりからきちんと議論することだ。二大政党制らしき姿が見えたと思ったとたん小政党があふれてきた。それはなぜだろうか。このことは考察にあたいする。

選挙制度改革では、韓国がやったような女性の議員を増やすためのクォータ制の導入や、歌舞伎なみになった世襲議員を減らすための方策、政党を作っては壊し、作っては壊ししているうちにどこかへ消えてしまったような政党助成金の制度の見直しや、秘書まかせが抜け道になっている政治資金規正法の強化等々を検討する必要がある。だが、こうしたことは現行の選挙制度で選ばれた議員にはできない相談だ。今はやりの第三者機関に検討させて、出来上がったものを議員たちがよってたかってザル法化しないように監視する態勢をつくっておく必要がある。

議員を選ぶ方法を議員がつくるというお手盛りは、代表民主制の落とし穴で、これが繰り返されるとやがて落とし穴が民主主義の墓穴になる。

そういう改革ができそうな古代ギリシャの政治家ソロンの再来と評判をとっている人物が、筆者が住んでいる選挙区から立候補すると聞いた。これは投票に行かずばなるまいと力んだとたんに、目が覚めた。

ああ、夢であったか。

(2012.11.16  花崎泰雄)
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暴走老女

2012-11-07 15:00:04 | Weblog

都知事の仕事を途中で放り出して国会に舞い戻る宣言をした石原慎太郎のことを、文部科学大臣の田中真紀子が「暴走老人」と適切なコメントをした。

その舌の根の乾かぬうちに、田中真紀子自身が大学設置認可の件で暴走した。田中はれっきとした60代後半の高年齢者で世間では老人と呼ばれる人である。彼女もまた「暴走老人」の本領を発揮した。

大学設置審議会が基準を満たすと判断した大学の新設を、「大学の乱立は教育水準を落とす」という理由だけで、設置OKの詳細な中身を知らないままで認可しないと田中真紀子が独自に判断した。

このあたりが、田中のテレビ向け人気取りの手法で、受けだけを狙った、実直な行政手続きに無知な素人の発作的判断だった。

考えてもご覧。

既存の大学設置審議会がパスさせた新設大学を、大臣の一存でストップさせ、新しい基準で組織した新・大学設置審議会に審議させ直すのは、おかしな手順になる。

それに、田中は「大学の乱立は教育水準を落とす」といったが、文科省はこれまでパンフレットで、

 問い 「大学全入時代」が到来すると聞いていますが,大学の数が増え続けているのはなぜなのでしょう
 答え  多くの大学が競争して良い大学を作ることが必要です。

と説明してきた。

実社会では、やたら組織を引っ掻き回す輩を「洗濯機」と綽名する。

暴走老人・田中真紀子は洗濯老女、昔の「洗濯ばあさん」でもあったのだ。

(2012.11.7 花崎泰雄)

夕方のTVニュース速報がで、田中文部科学大臣が3大学の新設不認可の決定を取り消して、認可することにしたと伝えた。大学設置審議会のあり方を再検討するとも言った。再検討は結構だが、それより、文部科学相をやめるのが先だ。教育行政に不見識な大臣の下で、審議会のありかた再検討もないだろうからだ。
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