クーデタとは、ふつう軍事力を用いて政権を急襲して転覆、国家の体制を変更することと理解されている。先ごろエジプトでは、シーシ国防相が軍を使ってムルシ大統領を解任して拘束、憲法を停止し、暫定大統領を立てた。
これは政治学上のクーデタの定義に当てはまる。そこでメディアはこれをクーデタと呼んだ。
アメリカ合衆国大統領は7月4日の「エジプト情勢についてのステートメント」で、軍によるエジプトの政変に「クーデタ」という言葉を使わなかった。なぜか? 米英のメディアは大統領がクーデタという言葉を使うと、米国からエジプトへの軍事援助が出来なくなるからで、政治学上の定義よりも政治的な理由を優先したのだろうと推理している。
日本の外務省もクーデタの語を避けている。7月4日のエジプト情勢に関する外務大臣談話は次の通りである。
1.我が国は、エジプトにおいて、6月末以降死傷者を伴う大規模なデモが発生し、7月4日未明(日本時間)には,エルシーシー・エジプト国防大臣が,憲法の一時的な停止,大統領選挙の早期実施,最高憲法裁判所長官による暫定政権の樹立などを内容とする声明を発表する事態に至るなど、エジプト情勢は引き続き予断を許さないものと認識しており、事態の推移を強い関心と懸念をもって注視しています。
2.我が国は,全ての当事者に対し,暴力を行使せず,最大限の自制と責任ある行動を呼びかけます。同時に,情勢が早期に安定し,エジプト政府が経済・社会面での課題克服に取り組めるよう、諸勢力が民主的な手続きの下で国民和解を進展させ、真摯に協力していくことを期待します。
3.また,これまでのところ,在留邦人に被害等が出たとの情報はありませんが,外務省としては,7月3日に,エジプト国内において,従来「十分注意してください。」としていた地域を「渡航の是非を検討してください。」に引き上げました。また,在エジプト大使館から随時情報提供及び在留邦人に対して注意喚起を行う等,邦人の安全確保に最大限努めているところであり,引き続き万全を期していく所存です。
2006年にタイで当時のタクシン首相とその勢力と、反タクシン派双方の対立が激化するなかで、軍部による政変が起きたとき、日本の外務省はこれを「クーデタ」と呼んだ。日本の外務省が2006年のタイの軍による政変をクーデタと呼び、2013年の軍による今回のエジプトの政変をクーデタと呼ばないのは、何故だろうか?
それはさておき、軍がクーデタを起こす国と、起さない国がある。タイはこれまでにクーデタを繰り返し経験してきた。無血クーデタの例が多かったので、選挙で政権交代する代わりにクーデタで交代しているのではないかとまで言われたことがある。
マレーシアやシンガポールでは独立からこれまで一つの政党が政権を担い、政権交代を経験していない。クーデタも経験していない。
インドとパキスタンはイギリス植民地から独立した際、2つの国に分れた。インドではクーデタは一度も起きていないが、パキスタンでは軍がたびたびクーデタによって民政を転覆させ、軍政を敷いてきた。
こうした違いはどこから出てくるのだろうか?
(2013.7.7 花崎泰雄)
クーデタとは、ふつう軍事力を用いて政権を急襲して転覆、国家の体制を変更することと理解されている。先ごろエジプトでは、シーシ国防相が軍を使ってムルシ大統領を解任して拘束、憲法を停止し、暫定大統領を立てた。
これは政治学上のクーデタの定義に当てはまる。そこでメディアはこれをクーデタと呼んだ。
アメリカ合衆国大統領は7月4日の「エジプト情勢についてのステートメント」で、軍によるエジプトの政変に「クーデタ」という言葉を使わなかった。なぜか? 米英のメディアは大統領がクーデタという言葉を使うと、米国からエジプトへの軍事援助が出来なくなるからで、政治学上の定義よりも政治的な理由を優先したのだろうと推理している。
日本の外務省もクーデタの語を避けている。7月4日のエジプト情勢に関する外務大臣談話は次の通りである。
1.我が国は、エジプトにおいて、6月末以降死傷者を伴う大規模なデモが発生し、7月4日未明(日本時間)には,エルシーシー・エジプト国防大臣が,憲法の一時的な停止,大統領選挙の早期実施,最高憲法裁判所長官による暫定政権の樹立などを内容とする声明を発表する事態に至るなど、エジプト情勢は引き続き予断を許さないものと認識しており、事態の推移を強い関心と懸念をもって注視しています。
2.我が国は,全ての当事者に対し,暴力を行使せず,最大限の自制と責任ある行動を呼びかけます。同時に,情勢が早期に安定し,エジプト政府が経済・社会面での課題克服に取り組めるよう、諸勢力が民主的な手続きの下で国民和解を進展させ、真摯に協力していくことを期待します。
3.また,これまでのところ,在留邦人に被害等が出たとの情報はありませんが,外務省としては,7月3日に,エジプト国内において,従来「十分注意してください。」としていた地域を「渡航の是非を検討してください。」に引き上げました。また,在エジプト大使館から随時情報提供及び在留邦人に対して注意喚起を行う等,邦人の安全確保に最大限努めているところであり,引き続き万全を期していく所存です。
2006年にタイで当時のタクシン首相とその勢力と、反タクシン派双方の対立が激化するなかで、軍部による政変が起きたとき、日本の外務省はこれを「クーデタ」と呼んだ。日本の外務省が2006年のタイの軍による政変をクーデタと呼び、2013年の軍による今回のエジプトの政変をクーデタと呼ばないのは、何故だろうか?
それはさておき、軍がクーデタを起こす国と、起さない国がある。タイはこれまでにクーデタを繰り返し経験してきた。無血クーデタの例が多かったので、選挙で政権交代する代わりにクーデタで交代しているのではないかとまで言われたことがある。
マレーシアやシンガポールでは独立からこれまで一つの政党が政権を担い、政権交代を経験していない。クーデタも経験していない。
インドとパキスタンはイギリス植民地から独立した際、2つの国に分れた。インドではクーデタは一度も起きていないが、パキスタンでは軍がたびたびクーデタによって民政を転覆させ、軍政を敷いてきた。
こうした違いはどこから生じるのだろうか?
(2013.7.7 花崎泰雄)
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