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ミサイル誤射

2017-04-24 18:58:00 | Weblog

 2017年4月24日付朝日新聞朝刊に同紙の高橋純子・政治部次長が面白い記事を書いていた。題して「スットコドッコイと愛の行方」。その中の笑える一節をそのまま引用する。

              *

  作家の百田尚樹氏は「もし北朝鮮のミサイルで私の家族が死に、私が生き残れば、私はテロ組織を作って、日本国内の敵を潰していく」「昔、朝日新聞は、『北朝鮮からミサイルが日本に落ちても、一発だけなら誤射かもしれない』と書いた。信じられないかもしれないが、これは本当だ。今回、もし日本に北朝鮮のミサイルが落ちた時、『誤射かもしれない』と書いたら、社長を半殺しにしてやるつもりだ」とツイッターに投稿した。

 あらタイヘン。そんな記事本当に書いたのかしら。「北朝鮮」「一発だけ」「誤射」でデータベース検索したが、結果は0件。永遠のゼロ件。

 百田氏の過去のインタビューなどから類推すると、おそらく2002年4月20日付朝刊「『武力攻撃事態』って何」のことだと思われる。

 Q ミサイルが飛んできたら。

 A 武力攻撃事態ということになるだろうけど、1発だけなら、誤射かもしれない。

 北朝鮮を含め具体的な国や地域名は出てこない。一般論として、武力攻撃事態の線引きは難しいということをQ&Aで解説する記事だった。

                *

 インターネットの世界をのぞくと、百田氏の件のツイートがあちこちでコピーされて使われていた。このさい再コピーしてここに張り付けておくので、実物をとくとご覧いただきたい。

 さて、ミサイル誤射は実際に起っている。

 ツイッター情報にありがちな空想や誤認・誤解、意図的なデマなどではなく、非エンターテインメント・ニュースを提供するメディアであるイギリス・BBCなどの報道によると、2016年7月に台湾海軍がミサイルを誤射したことがある。高雄で訓練中に対艦ミサイル一発が誤射のため中国本土の方向へ飛んで行った。ミサイルは台湾領海内の台湾漁船にあたったが、ミサイル自体は爆発しなかった。船員1人が死んだ。

 2017年の初め、イギリスの『サンデー・タイムズ』が、2016年6月にイギリス軍が潜水艦発射核ミサイル・トライデントの誤射をしていたことをすっぱ抜いた。米国フロリダの沖合のどこかでトライデントの発射テストをしていたところ、アフリカの方角に飛んで行くはずだったミサイルが、米国の方向に向かった。テストだから、核弾頭は積んでいなかった。国防上の理由から英政府はこの誤射についての説明を避けている。

 ミサイル誤射ではないが、ミサイル飛来誤認も起こる。

 米誌『ニューヨーカー』(2016年12月23日)に掲載されたエリック・シュロッサー氏の記事 “World War Three, by Mistake” はジミー・カーター大統領時代の悪夢を物語っている。

 カーター大統領の安全保障問題担当補佐官・ブレジンスキー氏は深夜、軍からの電話で起こされた。ソ連が発射した220発のミサイルが米国に向かって飛んできているという緊急連絡だった。補佐官は攻撃の確認をとるように指示する。折り返し連絡があり、訂正します、ミサイルの数は2,200発だという。報復攻撃命令が発せられ、同時にワシントンDCは消滅するだろう。ブレジンスキー補佐官は妻を起すのをやめた。眠ったままで死なせてやろうと思ったのだ。補佐官はカーター大統領に報復攻撃を電話で進言しようとした。その時、3度目の電話のベルが鳴った。申し訳ない、警報システムの誤作動だった、という軍からの連絡だった。後日の調査で、北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)のコンピューター・チップのエラーだったことが判明した。1個46セントの部品だった。

 ソフトウェアのバグや、チップの誤作動で、家庭用のPCが暴走し、業務用のコンピューターが止まり、銀行業務や列車ダイヤなどに影響が出て、社会的な混乱が生じる危険性は普通に理解できる。だが、軍事上のシステム・エラーと未熟な人間の判断が増幅してつくりだす恐怖となると理解が及ばない人は少なくない。

逆上、それこそ命とりだ。

 (2017.4.22 花崎泰雄)

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飛ぶのが怖い

2017-04-16 23:03:50 | Weblog

 4月11日付『ニューヨーク・タイムズ』の社説(電子版)が面白かった。

 「飛ぶのが怖い――言いえて妙」というタイトルである。

 紀行機で飛ぶことはかつてアドベンチャーだったが、今では恐怖の的である。長い、長い列に並び、その先で小突かれ、触られ、X線にかけられ、侮辱的な口調で詰問されるのを待つ。そのめくくりとして、階級別に分けられて、機内に入る。それからがもっとひどい。日曜日にシカゴのオヘア空港で保安要員が乗客を座席から剥ぎ取り、機外に引きずり出した。

 日本の新聞でも話題になった米ユナイティッド航空の乗客の扱いについて社説の書き出し部分である。

 さもありなん、と筆者は思った。ずいぶん前、ボーイング747がまだ日米間の主力飛行機だったころの話だ。サンフランシスコから成田に帰るときユナイティッドに乗った。

 飛行機が滑走路に向かって動きだし客室乗務員が座席や安全ベルトなど乗客の最終安全確認を始めた。その時、アジア人の乗客が座席から離れようとした。乗務員が席に連れ戻したが、またすぐ席を離れようとした。乗務員が舞い戻って、その客を再度席に着かせた。

 その乗務員が私の座席の横の通路を通りながら、呪いの言葉を吐いた。一言一言いまでは正確に記憶していないが「坐っているか、さもなくば、飛行機からとび降りるがいい」と英語で言ったのが私の耳に届いた。

 乗務員の気苦労はわかるが、その当時(今でもそうかもしれない)のユナイティッド航空のキャッチフレーズは、なんと「フレンドリー・スカイズ」だった。

 経営側のコスト削減・利益増大路線によって、会社の客室乗務員に対する扱いが過酷になり、従業員の労働条件に対する不満がお客に対する扱いに反映されるたのであろう。

 それが今では会社が自己都合で乗客の剥ぎ取りという形にまで及んでいる。「アグリー・スカイズ」になってしまった。

 (2017.4.16 花崎泰雄)

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59のトマホーク

2017-04-09 00:51:20 | Weblog

アメリカのトランプ大統領は2017年4月6日、米軍にシリア攻撃を命じた。地中海にいた2隻の米軍艦が巡航ミサイル・トマホーク59発を発射した。

アサド政権が毒ガス・サリンを使って自国民を殺傷した4月4日の事件について、トランプ大統領は「アサド政権のこのような極悪非道な行為は、前政権の優柔不断と及び腰の結果である」と、オバマ政権のシリア政策を非難した。

2013年にアサド政権がダマスカス郊外の反アサド勢力支配地に猛毒ガス・サリンを使った攻撃をした。この時、オバマ政権はシリアに対する武力制裁を避けた。トランプ大統領はアメリカが毅然とした態度を示さなかったことが、2017年4月のサリン攻撃につながった、と言っているのである。 

他を非難することで自らの正当化に努めるのはいつもながらのトランプ流だ。一方、トランプ政権と折り合いの悪い米国主流派メディアの多くは、これを逆手にとって、トランプ大統領の言動の矛盾を突いた。 

2013年のサリン攻撃のさい、不動産業者・ドナルド・トランプ氏は、シリアに対する武力制裁はすべきでないと、ツイッターに繰り返し書き込んでいた。たとえば、 

<2013年9月5日> オバマ大統領がシリアを攻撃したがるのは、ただただメンツのせいである。 

<2013年9月5日>我らが愚かな大統領再度申し上げる。シリアを攻撃してはならない。 

<2013年9月7日>大統領、シリアを攻撃するな。次に備えて弾薬を節約せよ。 

<2013年9月9日>シリアを攻撃するな。攻撃でアメリカが得るものはやっかい事だけだ。 

その他、「シリア攻撃に先立って、大統領は議会の承認を得なければならない」と、同年8月31日のツイッターに書いていた。 

2013年のアサド政権によるサリン攻撃の死者は1000人を超えると見られている。2017年4月の攻撃による死者は100人以上とみなされている。2013年のケースは奪われた生命という点では10倍の規模だった。 

顧みればクリントン政権は1998年のアルカイダによるケニアとタンザニアの米大使館爆破事件で、アフガニスタンのアルカイダ基地とスーダンの化学兵器製造基地と疑われる工場をミサイル攻撃した。ブッシュ政権はアフガニスタンにタリバン・アルカイダ討伐軍を送り込み、勢い余って大量破壊兵器を隠し持っているという容疑でイラクに侵攻した。大量破壊兵器保有の証拠は見つからなかった。イラクを攻撃したかったから容疑をでっちあげたと今では批判されている。 

過去に「シリアを攻撃するな。攻撃でアメリカが得るものはやっかい事だけだ」と書いたことのある不動産業者のドナルド・トランプだが、アサド政権によるサリン攻撃の報告を受けて2日後、米国大統領としてミサイル攻撃に踏み切った。

比較的短時間で米国大統領がシリア攻撃に踏み切った理由は何だろうか? トランプ大統領はミサイル攻撃のあとの政治的収拾に何らかの名案をもっているのだろうか? それとも、例によって反射的にシリア攻撃のアイディアが閃いたせいだろうか? 国家安全保障会議(NSC)でテーブルに並べられた政策オプションのうち、強く推薦されたミサイル攻撃案を却下する理屈を、オバマ前大統領とは違って、思いつかなかったからだろうか? 

(2017.4.9  花崎泰雄)

 

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教育勅語

2017-04-01 22:12:40 | Weblog

 

 日本の安倍内閣が3月31日、戦前・戦中の教育勅語について、「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」という答弁書を閣議決定した。4月1日の新聞が伝えた。

 1890年(明治23年)の「教育勅語」とはどんなものだったかというと、

 

 朕惟フニ、我ガ皇祖皇宗、國ヲ肇ムルコト宏遠ニ、徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ。我ガ臣民、克ク忠ニ克ク孝ニ、億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ、此レ我ガ國體ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦(また)實ニ此ニ存ス。爾臣民、父母ニ孝ニ、兄弟ニ友ニ、夫婦相和シ、朋友相信ジ、恭儉己レヲ持シ、博愛衆ニ及ボシ、學ヲ修メ業ヲ習ヒ、以テ智能ヲ啓發シ徳器ヲ成就シ、進デ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ、常ニ國憲ヲ重ジ國法ニ遵ヒ、一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スベシ。是ノ如キハ獨リ朕ガ忠良ノ臣民タルノミナラズ、又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン。

斯ノ道ハ實ニ我ガ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ、子孫臣民ノ倶ニ遵守スベキ所、之ヲ古今ニ通ジテ謬ラズ、之ヲ中外ニ施シテ悖ラズ。朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ、咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ。

 

こんなものである。公文書が漢字とカタカナで書かれていた1世紀以上も前の古文書である。漢字読解をあまり得意としない副総理兼財務大臣に音読させてみたい。

 この文書は1948年6月19日の参議院本会議で真っ向から否定されている。

 

    教育勅語等の失効確認に関する決議

 われらは、さきに日本国憲法の人類普遍の原理に則り、教育基本法を制定して、わが国家及びわが民族を中心とする教育の誤りを徹底的に払拭し、真理と平和とを希求する人間を育成する民主主義的教育理念をおごそかに宣明した。その結果として、教育勅語は、軍人に賜はりたる勅諭、戊申詔書、青少年学徒に賜はりたる勅語その他の諸詔勅とともに、既に廃止せられその効力を失つている。

  しかし教育勅語等が、あるいは従来の如き効力を今日なお保有するかの疑いを懐く者あるをおもんばかり、われらはとくに、それらが既に効力を失つている事実を明確にするとともに、政府をして教育勅語その他の諸詔勅の謄本をもれなく回収せしめる。

  われらはここに、教育の真の権威の確立と国民道徳の振興のために、全国民が一致して教育基本法の明示する新教育理念の普及徹底に努力をいたすべきことを期する。

  右決議する。

 

また、衆議院本会議でも同日、同様の決議がなされた。

 

   教育勅語等排除に関する決議

  民主平和國家として世界史的建設途上にあるわが國の現実は、その精神内容において未だ決定的な民主化を確認するを得ないのは遺憾である。これが徹底に最も緊要なことは教育基本法に則り、教育の革新と振興とをはかることにある。しかるに既に過去の文書となつている教育勅語並びに陸海軍軍人に賜りたる勅諭その他の教育に関する諾詔勅が、今日もなお國民道徳の指導原理としての性格を持続しているかの如く誤解されるのは、從來の行政上の措置が不十分であつたがためである。

  思うに、これらの詔勅の根本理念が主権在君並びに神話的國体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ國際信義に対して疑点を残すもととなる。よつて憲法第九十八條の本旨に從い、ここに衆議院は院議を以て、これらの詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めないことを宣言する。政府は直ちにこれらの詔勅の謄本を回収し、排除の措置を完了すべきである。

  右決議する。

 

以来幾星霜。いまでは、自民党の国会議員の中に、教育勅語にもいいところがある、という者が跋扈している。

 教育勅語の「父母ニ孝ニ、兄弟ニ友ニ、夫婦相和シ、朋友相信ジ、恭儉己レヲ持シ、博愛衆ニ及ボシ」あたりのことを言っているのだろう。だが、教育勅語を持ちださなくても、これらは人類共通の良識である。

 「両親にはやさしくしてやれよ。それから近い親戚や孤児や貧民にも、また縁続きの物や血縁の遠い被保護者、わずかな期間でも一緒に暮らした友、旅人……にも」(井筒俊彦訳『コーラン』4-36)

 この調子で行くと、自民党・文部科学省は次に「夫れ女子は、成長して、他人の家に行き、舅、姑に仕ふるものなれば、男子よりも、親の教えを忽にすべからず、父母寵愛して、恣に育ちぬれば、夫の家に行きて、必ず気随にて、夫に疎まれ、又は……」で始まる貝原益軒『女大学』を女子校の副読本に薦めるであろう。

 嘘だろうって?

 とんでもない、戦後レジームの否定が安倍政権の悲願なのである。

 

(2017.4.1  花崎泰雄)

 

 

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籠池デー

2017-03-23 23:57:57 | Weblog

 

3月23日は「籠池デー」だった。

 右翼愛国教育を旗印にする森友学園「瑞穂の國記念小學院」(一時期は「安倍晋三小学校」を標榜)をめぐる国有地の払い下げ問題や、学校設立準備中に安倍晋三総理大臣夫人の安倍昭恵氏から「安倍晋三からです」と100万円の寄付を頂いたと発言していた、同学園理事長(理事長退任をすでに表明)の国会証人喚問が午前中は参議院で、午後は衆議院で行われた。また、そののち、籠池氏は午後6時過ぎから外国特派員協会で記者会見に応じた。

 午前中の参院喚問は自宅のテレビで、午後の衆院喚問はスポーツクラブのトレッドミルなどについているディスプレーでNHKの中継を見た。シャワーを浴びて自宅に帰り、今度はPCのインターネット中継で特派員協会での記者会見を見た。

 国会審議で野党がさんざん籠池氏の参考人招致を要求しても、与党は応じる気配を見せなかった。籠池氏が「安倍昭恵氏から100万円の寄付をいただいた」と発言した途端に、自民党は籠池氏の証人喚問を提案し、野党と合意を見た。証人喚問は参考人招致と違って、宣誓の上で証言し、偽証すると刑事罰が待っているという厳しいものである。

 去る3月17日の衆院外務委員会で、日本維新の会の足立康史議員が、仮に寄付をしていたとしても(寄付は選挙区外のことで、公職選挙法上は何ら問題ではなく)教育への寄付はむしろ美談ではないか、と発言した。足立氏は本気だったのか、冗談で言ったのか、よくわからなかったが、その足立発言に対して、安倍首相が要旨次のように答えた。妻は名誉校長をしていたので寄付することもありうるから確認をとったが、寄付はしていないということだった。寄付して悪いわけではないが、寄付していないからしていないと答えている。

 安倍昭恵氏が仮に100万円を寄付していたとしても、寄付行為には問題ないと、安倍首相も考えているわけだ。

 それでは、なぜ、与党自民党は籠池氏を証人喚問したのか。まさか自民党議員が野党と組んで、安倍政権打倒を目指すわけはないから、安倍晋三からですと首相夫人から寄付金100万円をもらったという籠池発言が、政府与党に激しい衝撃を与えたのだろう。

 では、どんな衝撃か。安倍首相は森友学園への国有地格安払い下げに関して、すでに国会で、首相も首相夫人も関わっていない、もし関わっていたら首相も国会議員も辞任する、と啖呵を切っている。籠池氏をこのまま野に放置して、吠えつづけさせるわけにはいかなくなったのである。緊急籠池対策が必要になった。

 そういうわけで、たとえば参院の証人喚問ではこわもての自民党・西田昌司議員が、籠池氏が言っている内容は、安倍首相や安倍昭恵氏が言っていることに反するので、うその証言をすると罪に問われますぞ、と強く念を押した。同時に衆参の与党議員は質問を通じて、小学校認可申請をめぐる籠池氏の詐欺師的策略を、テレビ中継を見ている人に強く印象づけようと試みた。

 仮に、籠池氏が詐欺師であったとすれば、この一件はこういうことになる。右翼で愛国者を名乗る詐欺師が立てた小学校設立計画に、国家主義者の安倍晋三首相が、一時期ではあるが、森友学園について、すばらしい教育をしていると聞いていると発言し、また、首相夫人が一時期ではあるが、その名誉校長を名乗り、くわえてその詐欺師が安倍晋三からだと言うことで、安倍夫人から100万円の寄付金をもらったと広言する。つまり、首相夫妻が詐欺の被害者だった、という間の抜けた話になる。だが、一国の首相が間抜けで困るのは国民である。

 偽証は罰されますぞ、と警告された籠池氏だが、間違いなく100万円の寄付を受けていると言い張った。偽証罪を問われることもある証人喚問での籠池発言は、日本国首相その他に守られた夫人の言い分より重い、と思った人は少なくなかったであろう。

 夕方からの外国特派員クラブでの記者会見で、籠池氏は、ある時期、神風が吹いたように学校設立計画が進み、最後の段階で、その風が強い逆風に変わって計画がとん挫した、と背後に大きな力があったのではないかと推測した。

 そういうことで、23日には早速、民進党が安倍昭恵氏の証人喚問を求め、籠池氏と同じ立場で森友学園との関係を聴いてはどうかと言い出した。証人喚問で籠池氏の口封じをしようとした自民党のやり方は、いってみればヤブヘビだった。

 小学校開校が不可能になり、学園の幼稚園は差し押さえを受け、やがて多額の債務に苦しむことにもなるであろう籠池氏が、安倍首相夫妻と抱き合い無理心中を図ろうとしているようにもみえた。

 

(2017.3.23  花崎泰雄)

 

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「問題ない」は条件反射?

2017-03-21 22:59:57 | Weblog

 主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明に、これまでは盛り込まれてきた「あらゆる形態の保護主義に対抗する」という文言が今回は米国の抵抗で削除された。このことについて、日本国の菅義偉官房長官が3月21日の記者会見で、「問題ない」と発言した、と日本の新聞各紙が伝えた。

菅氏から見れば「問題ない」問題なのだが、G20に集まった各国の財務相・中央銀行総裁は、侃々諤々の議論をし、挙句のはてに、内に忸怩たるものを持ちながらも、米トランプ政権の横車を入れたのである。

菅官房長官の「問題ない」発言を不見識とする意見もある。菅氏が国際政治や国際経済に優れた見識持っているかどうかはさておき、彼は永田町における自分の役目に限って言えば、十分な見識を持っている。

麻生太郎財務相(副総理)が現地バーデンバーデンで、「反保護主義」が盛り込まれなかった点に関して、「『毎回同じこと言うな』って言って、次のとき言わなかったら『なんで言わないんだ』という程度のもの」と説明(日経新聞)している以上、麻生コメントを否定するような発言を控えるのが役目柄というものであろう。官房長官は閣内融和の要である。

菅官房長官は3月14日の記者会見でも、稲田朋美防衛相が2007年に学校法人「森友学園」が起こした民事訴訟に原告側代理人弁護士として出廷したことを示す記録が見つかったことについて「個人的な活動に関することなので政府としてはコメントを差し控えたい。稲田氏から適切に説明されると思う」と述べるにとどめた。稲田氏の進退に関しては「まったく問題ない」とした。(3月14日、産経新聞電子版) 

稲田防衛相は安倍総理大臣のお気に入り閣僚なので、稲田氏を擁護することが安倍首相擁護につながる。

とはいうものの、菅官房長官の定例記者会見での「問題ない」の多発に、気を悪くしている国民もいると見えて、インターネットの世界をのぞくと、菅官房長官の「問題ない」というコメントをメディアの報道から集めた書き込みがあちこちにあった。そのいくつかを拾い読みしていて、筆者の頭の中にも過去の発言がよみがえってきた。

菅官房長官自身の政治資金集めパーティーで同氏の事務所が白紙領収証のやり取りをしたことについて、官房長官が「問題ない」(2016年10月)。望月環境相の政治資金めぐる問題でも、「返金しており、全く問題ない」(2015年2月)。宮沢経済産業大臣が過去に代表を務めていた自民党の支部が、外国人が株式の過半数を保有する企業から献金を受けていたことについて、事実が判明したあと、すぐに返金して適正に処理しているとして、「問題ない」(2014年10月)。原子力規制委員会の委員に就任予定の田中知・東京大工学部教授が、原子力関連事業者から今年前半まで報酬を受け取っていたことについて「いずれも少額で、また専門技術委員の立場から助言を行うような内容であり、委員に就任するうえで全く問題ない」(2014年7月)。百田尚樹・NHK経営委員の個人的発言「南京虐殺は無かった」発言について「は問題ない」 (2014年2月)。NHK籾井会長の「戦争地域ではどこでもあった」という慰安婦問題についての発言も「問題ない」(2014年1月 )。米国の諜報機関の各国首脳の電話盗聴の件で、安倍首相の携帯電話は大丈夫かと聞かれ「問題ない」(2013年10月)。

まあ、ざっとこんな調子である。政権に降りかかる火の粉を払うのは官房長官の役目だろうが、ここまで来ると、定例会見での記者の突っ込み質問に、梅干しを見ると唾が出るような条件反射で「問題ない」と答えているようにも思える。

(2017.3.21 花崎泰雄)

 

 

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一国資本主義

2017-03-04 00:12:25 | Weblog

 アメリカ合衆国のトランプ大統領が2月末日、米議会上下両院の合同会議で演説した。日本の新聞が伝えるところでは、国防予算の増額やオバマケアの撤廃、法人税減額などの税制改革とともに、メキシコ国境での壁建設開始を強調した。

トランプ大統領は打ち上げ花火のように思いつきの政策目標を次々に打ちだして人気を煽り、大衆からの喝采に酔いしれる自己陶酔型の人物と、大統領とその側近が敵視する米国の主流派メディアは酷評する。

日本のテレビやアメリカのCNN、イギリスのBBCが流す映像では、トランプ大統領はいつでも自ら拍手して聴衆の拍手を煽っている。ペンス副大統領もポール・ライアン下院議長もトランプ大統領と一緒に立っているときは、大統領に拍手をおくっている。メキシコと米国の国境に壁を張り巡らし、その建設費用をメキシコに払わせるというアイディアに、副大統領も下院議長も拍手喝采してきたのだろうか。

それはさておき、国境の壁の建設費をどうやって捻出するか、具体的な方法論なるといまだに状況は混沌としている。

国境の壁の建設はフランクリン・ルーズベルトのニューディール政策・テネシー川流域開発ほどには雇用促進の効果は出ないだろうが、それでも1兆円を超える費用がかかるそうだ。

この金額をメキシコ政府あての請求書に書き込んだところで、メキシコがこれを支払うことは100パーセントない。日本の安倍政権の対米インフラ投資やソフトバンクの雇用協力資本を回すこともできない相談だろうから、結局、米国自身が払うしかない。

トランプ大統領はメキシコからの輸入品に税金をかけると言った。

日本の関税法では、関税を納める義務がある者は、通常、貨物を輸入する者と規定している。つまり荷物の受取人が関税を払うのである。

この制度は米国でも同じとみえて、メキシコからの輸入品に課された税金を払うのはアメリカの輸入業者である。アメリカの業者はこの税額を商品の価格に反映させるので、最終的にはアメリカの国民の財布からの支出となる。連邦政府が予算から支出しないというだけのことである。

このような手品はすぐバレてしまうえ、メキシコ製品への関税についてはWTOの協定違反になる可能性が大きい。

そこで、「国境税調整」という共和党のアイディアに乗って税制改革で建設費を捻出する策に、トランプ大統領が乗り気だと報道されている。

国境税調整というのは、一口で言えば、米国内に生産拠点を置く企業の輸出には税制上の優遇措置を与え、米国外に生産拠点がある商品の米国内販売には税制上きびしく対応する方式の法人税の扱いである。

これもまた、新手の輸出補助金の疑いで、WTOの場で問題になる可能性が大きいそうだ。

だが、アメリカ・ファーストの「一国資本主義」を声高に叫ぶトランプ政権は、WTOの決定がアメリカの主権を侵害する場合はその決定に従わない方針である。、最新のニュースがそう伝えた。

米国がWTOの決定を無視すれば、あらゆる国が自国に不利なWTOの決定を無視するようになり、WTOがTPPと同じ運命をたどることになる。

(2017.3.3  花崎泰雄)

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スルタン的支配への回帰

2017-02-18 18:07:01 | Weblog

[ドイツ=小野フェラー雅美] ドイツをはじめEUで暮らすトルコ国籍のトルコ人・クルド人は数百万人に上る。ドイツでは人口の3,3%、ブルガリアは10,2%、オランダは2,5%を占める。2016年のトルコのクーデター未遂事件後には、トルコの高官を含む40人の軍人とジャーナリストがドイツに政治亡命を求めた。一応は存在していたトルコの民主主義が、エルドアン大統領の権力拡大にともなって崩壊している。トルコのEU加盟交渉も昨年、中断されたままだ。EUもドイツもトルコとの関係に神経質になっている。

エルドアン政権打倒を目的とした軍の一部によるクーデター未遂事件は2016年7月15日に発生した。エルドアン大統領はこれを鎮圧し、彼の政敵であるアメリカ在住のイスラム教指導者ギュレン師が企てたクーデターだったと発表した。だが、証拠は無い。ギュレン派一掃のために事件後2日間で6000人が逮捕された。つづいてエルドアン政権は緊急事態宣言を発令し、大統領が大統領令を使って政治を行い、集会の自由や報道の自由といった基本的人権を停止させることもできるようにした。

トルコはヨーロッパの隣国であり、中東地域の主導的国家である。NATOと共同体制を取り、EUと連携してシリア難民を受け入れている。トルコの動静に敏感なヨーロッパのさまざまなメディアは、クーデター未遂事件以後、概略以下のような詳細なトルコ報道を続けてきた。

2016年7月24日 アムネスティー・インターナショナル(AI)によると、首都アンカラだけで6000人が拘束された。政府側に属さないアンカラの弁護士団が法的支援の活動をはじめた。何百人もの容疑者が汚物で溢れる厩舎に、3日間も食事なしで監禁された。腕を後ろ手に縛られ、吊るされたという。同弁護士団によるこの報告はAI報告と重なる。依頼人の青アザや傷の写真を撮った女性弁護士は、写真を消去するよう警察に強いられたという。依頼を受ける弁護士の多くは、若く、経験が少ないうえ、1人で10人以上の被告を受け持っている。依頼人と弁護士の会話は当局が傍聴する。非常事態宣言によって、被疑者を起訴前の30日間にわたって拘束することができるようになった。弁護士の1人は「お前たちも奴らの見方(ギュレン派)か?」と言われたという。

7月27日 CNNによると、クーデター後80以上の報道機関が閉鎖された。内訳は、テレビ局16、ラジオ放送局23、新聞社45である。

7月29日 ギュレン派とみなされた逮捕者総数は18044人に及び、そのうち9677人を拘置。NATO閣僚も任を解かれた。「粛清の波」は軍、司法機関、大学、学校、そしてメディアに及んだ。AIの抗議に対し政府は、ギュレン派に踊らされている、と返答。29日だけで48人の将軍が退職させられた。クーデター未遂後1700人の軍人が解雇され、陸海軍の将軍職の40%がそれに含まれている。

7月31日 クーデター未遂容疑者の検挙は商業界にも及んだ。有名な複合企業Boydak Holding の幹部数人と経営協議会会員も逮捕された。軍首脳部はクーデターに参加した軍人数は8651人と報告。2週間弱前の未遂クーデターに参加した軍人は全軍の1,5%で、この2週間で6万人以上の軍関係者、役人、教師、官員が逮捕された。

8月7日 反クーデターの大衆集会の会場でエルドアン大統領が死刑制度の再導入を示唆した。死刑制度があるとEU入りが許されないため、2004年に廃止された。ギュレン派と関係するとみなされる国民の国外逃避を不可能にするため49000人以上のパスポートが無効にされ、世界中のトルコの外交官の内88人も容疑対象となった。8月下旬、報道関係者の粛清は続けられ、左派及びクルド系の報道機関が閉鎖された。

10月25日 禁止されているPKK(クルディスタン労働者党)所属の容疑で、クルド系の多い東南トルコの町で公選され任に着いていたクルド人市長と同じく女性の副市長が逮捕された。副市長はクルド寄り野党HDP(国民民主主義党)幹部。クルド系の人々がいくつかの町でデモを行った結果、HDP所属の24人が逮捕された。

10月29日 大統領は再び議会で死刑制度導入を示唆し、緊急事態措置の拡大を発表した。1万人の公務員をギュレン派との関連容疑により解職。逮捕された人は3万7千人。1万人の法務・警察・軍部の関係者が解職・解雇。

10月31日 非政府系の独立した報道を続けていた最後の新聞・クムフリエット紙の編集長以下13人の編集員が逮捕された。PKKやギュレン派との関係容疑で、7月15日のクーデターを是認したことが理由とされた。しかし、同紙は実際には、クーデターを糾弾し、ギュレン派批判を論調とする報道をしていた。2015年5月にトルコ政府の過激イスラム派への武器供給を同紙が暴露する記事を掲載した頃から、同紙は政府のブラックリストに上っていた。同紙は国外では真のトルコの声とみなされていたため、トルコ国内各地やベルリンやパリなどで抗議デモが行われた。

11月4日 親クルド派の野党HDP党の党首2人を含む11人のメンバーの身柄が拘束された。政府は既にクーデター前の5月に59人のHDP党の国会議員の議員資格を剥奪している。HDP党がPKKの代弁者であるとみなしたからだ。

このように、クーデター未遂事件を機にエルドアン大統領は権力集中の動きを加速させた。2017年に入って1月21日、イスラム教保守派の与党AKPが圧制する議会で、339対142票で、憲法改正が可決された。憲法改正に必要な5分の3の票を9票上回る結果だった。4月の国民投票で過半数の票が得られれば発効する。憲法改正によってトルコは議院内閣制から大統領制に移行する。トルコ議会は、議会自身の権限の無力化を決議し、首長制の導入を許可したことになる。また、エルドアン大統領は4月16日に予定されている憲法改正の国民投票に、死刑制度の導入を加えた。過半数の賛成でトルコに首長制と、同時に死刑制度が再導入される。クーデター未遂事件後の非常事態下で拘束された人々の生命が危ぶまれている。

こうした状況の中で、ドイツのメルケル首相が2月2日にトルコのエルドアン大統領を訪ねた。言論の自由についての意見を述べるための訪問だった。「メルケルは詳細に報道の自由を説き、去年7月のクーデター未遂後もトルコにおける表現の自由と三権分立が遵守されることは非常に重要で、野党の存在は民主主義の一部である、と強調した」(スイス紙『ノイエ・チュリヒャー・ツァイトゥング』2月2日電子版)

4月の国民投票で決定すると、2019年以降は首長としての現大統領エルドアン1人がすべての行政権を把握することになる。大統領は大臣と裁判官の任命権も、議会を解散させる権限も持つ。更に、覆すことの難しい大統領令を発布し、緊急事態宣言の発動も可能となる。そして、議会は大統領に対する不信任決議を行う権限を失う。

大統領には各5年、2回までの任期が許されているので、2019年に新憲法下で行われる大統領選挙でエルドアン氏が改めて当選すれば、同氏は2029年まで、また、その後再延長が議決されれば、2034年まで実権を握り続けることが可能となる。その時点で彼は80歳のはずだ。

エルドアン大統領と与党は、内的・外的な脅威で不安定になっているトルコの現状を打開するためにはこの政治制度変更が必然である、と主張する。野党は専制政治の方向に向かっていると警鐘を鳴らしてやまない。だが、クーデター未遂後、政府批判の報道をする報道関係者が多数拘束されたり、新聞社が取り潰されたりしている。報道の自由が侵害されているため、野党の主張は国民の耳に届かない。トルコ弁護士会の会長は、確実に進みつつある首長制を過去のスルタン制度に比したという。

民主主義制度は、立法・行政・司法が互いに互いをコントロールしあう事で成り立つ。行政を任される大統領が、立法権(議会)と司法権(裁判所)を無力化して権力を行政に集中させると、大統領制の名の下で、マックス・ウェーバーやホアン・リンスが「スルタン的支配」と呼んだ苛烈な個人支配体制が成立してしまう。

アメリカでは現在トランプ大統領が、大統領令を矢継ぎ早に発令するという、異例な政治を行っている。エルドアン大統領はトルコの大統領制もアメリカやフランスの大統領制と同じだと主張するが、前者には影響力の大きな議会があり、後者にはそれに加えて首相もいる。また両者にはトルコにはない地方分権制度があり、報道の自由がある。その点がトルコと異なる。

イギリスのEU離脱に加え、米国のトランプ大統領、ロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン大統領、足元では極右政党の伸長と、EUは内憂外患の時代に入っている。

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家産制国家への道

2017-02-11 22:20:43 | Weblog

トランプ米大統領の長女のファッション・ブランド「イヴァンカ・トランプ」の取り扱いをやめたアメリカの百貨店ノードストロームを、大統領が「不公平だ」となじった。

例によってツイッターの利用である。最初の“つぶやき”は私的なアカウントで。そのあと大統領専用のツイッター・アカウントで念を押した。曰く、

「ノードストロームは娘のイヴァンカを不公平に扱っている。彼女は素晴らしい人間だ。私が正しい行いをするよう常に背中を押してくれる。ひどい話だ」

ノードストロームは中止の理由は売り上げが落ちたからだと説明していた。

トランプ氏は大統領正式就任以前からツイッターを使って日米の自動車業界を困惑させた。ツイッターのごときは、オバマ政権時代のケリー国務長官が「「ツイッターの140文字で、複雑な政策について十分に対応できるとは思わない」とトランプ氏を皮肉った、その程度のものである。したがって、ノードストロームは娘に対して不公平である、程度の父親のボヤキなら舌足らずなツイッターの分にあっている。

とはいうものの、ホワイトハウスから大統領が大統領専用のツイッター・アカウントを使って語るに値する内容ではあるまい。

これが普通の人の感覚である。

だが、ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官は役目柄、普通の人の感覚にとどまってはいられない。それで記者団にこう言った。

「大統領には自分の娘を守る権利がある。ノードストロームの決定は政治的な動機に基づくものだ」

ホワイトハウス上級顧問のケリーアン・コンウェイ氏も「イヴァンカの商品を買いに行きましょう」とFOXニュースに出演して大ぴらに宣伝した。

「ネット上で一部の高官がイヴァンカや彼女のブランドを困らせるようなことを言いふらしているのはおかしな話です。にもかかわらず、彼らはトランプ政権で最も傑出した女性を利用しています。最も傑出した彼の娘をですよ。彼女を利用しているんです。彼女は職場で女性が権限を持つことを支持してきましたし、トランプ大統領にもそうするよう促したのです」「みなさんはそのことがわかっていると思います。イヴァンカ・トランプの商品を買いに行きましょう! 私は買い物が嫌いですが、今日自分で直接買いに行きます」「イヴァンカ・トランプの店は素晴らしい品揃えです。私もいくつか持っています」「私はここで、無料でコマーシャルをするつもりです。みなさん、今日買いに行ってください。オンラインでも買えますよ」(『ハフィントン・ポスト 日本語版』2月10日)

米国からの報道がそう伝えている。

トランプ大統領就任式の人出が少なかったこというメディアの報道にトランプ大統領が不満を持っていることを告げられると、スパイサー報道官は、メディアは嘘をついている、史上最高の人出だった、と大統領の妄想を擁護した。その根拠を問われて、コンウェイ上級顧問が使った言葉が “alternative facts”。

現在のホワイトハウスを観察していると、何世紀も前の家産制国家における王様とその家族とその臣下の右往左往を思い起こさせる。歴史は前進するだけではなく後退することもあり得る。デモクラシーの旗振り役を自称してきたアメリカ合衆国においても。

(2017.2.11  花崎泰雄)

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朝貢外交

2017-02-04 22:29:18 | Weblog

来日したマティス米国防長官が2月3日、安倍・日本国首相に「尖閣諸島は日本の施政下にある領域であり、安保条約の適用範囲だ」(朝日新聞2月4日朝刊)と明言し、中国の拡張的態度に戦々恐々としている日本政府を安心させた。

しかし、よくよく考えるまでもなく、上記の「安保条約適用範囲」発言は先のオバマ政権でも、当時の米国防長官がしばしば口にし、2014年は来日したオバマ大統領自らも言明した約束である。

日本政府は日米安保条約が日本の安全保障の根幹であり、日米同盟の核心であると言い続けてきた。そうした重要な日米国家間の約束事でありながら、米国の大統領が交代したことで、改めて約束の確認をとらねば安心できないという不安定さは異常だ。

尖閣諸島が日米安保の適用範囲であるとの確認を、日本政府がアメリカ政府高官に求めたのは、トランプ米大統領の政治家としての資質の欠陥に不安を抱いているからだ。

トランプ米大統領の常軌を逸した発言とふるまいが、異常事態を巻き起こしている。メキシコ大統領との電話会談で、メキシコが麻薬問題などを自力で解決できないのなら米軍を送り込む、と発言したと伝えられた。オーストラリア首相との電話会談では、オバマ政権時代にオーストラリアと約束した難民の引き取り――オーストラリアにいるイラク人を中心にした難民1000人余りを米国が引き取り、代わりに米国にいる中米からの難民をオーストラリアが引き取る約束――をめぐって、豪首相がアメリカへ爆弾犯を輸出しようとしていると非難し、1時間の予定の電話会談を25分で一方的に打ち切った。オーストラリアは湾岸戦争、アフガニスタン、イラクと米軍に寄り添って出兵し、オーストラリア国内でも、オーストラリアは世界の保安官・米国の副保安官になっている、と身内からも批判が出るほどだった。それほど米国に寄り添ってきた国の首相であっても、このような仕打ちを受ける。

ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストである経済学者のポール・クルーグマンが2月3日の同紙に “Donald the Menace” という論評を書いている。書き出しはこうだ。トランプ政権は米国人を外交的危機、ひょっとしたら戦争にさえ引きずり込むかもしれない。

このような人物とまともな外交交渉は可能か?

トランプ大統領の、イスラム教徒をターゲットにした米国入国禁止の大統領令は米国内に分裂をもたらし、ヨーロッパの主要国や国連事務総長らからも厳しく非難されている。日本国の安倍首相はこうしたトランプ批判からは距離を置いて、米国の内政問題であると逃げを打っている。国連決議で米国に遠慮して棄権にまわる例の手法である。安倍首相は2月10日に米国でトランプ大統領と会談しなければならない。下世話で下品な言葉遣いをすれば、どのツラさげて俺に会いに来た、というような状況は避けたい。そのようなことを平気で言う人物であると恐れている。

訪米に先駆けて、「日米首脳会談に向け、政府が検討する経済協力の原案が2日、明らかになった。トランプ米大統領が重視するインフラへの投資などで4500億ドル(約51兆円)の市場を創出し、70万人の雇用を生み出すとしている。日米間の貿易不均衡を批判するトランプ氏に10日の会談で示して理解を得たい考えだが、日本の公的年金資産の活用をあて込むなど異例の手法だ」という記事が朝日新聞に掲載された。

ホワイトハウスへの手土産である。「ただ、政府内には『米国なしに日本経済は成り立たない。(相互利益の)ウィンウィンだ』(政府関係者)という評価の一方、トランプ氏に寄り添い過ぎて朝貢外交と言われてしまう(首相周辺)という批判もある」と同記事はいう。

米国の名目GDPは4兆6千億ドル規模で世界のGDPの22%を占め、日本のそれは17兆3千億ドル規模で6%弱を占める程度である(2014年)。1人当たり名目GDPは米国が約5万6千ドルで世界第7位、日本が約3万2千ドルで第28位(2015年)。失業率は米国で5%ちょっと、日本で3%台である(2015年)。

2017年2月3日発表の米国の統計では、1月には米国の雇用は22万7千人増えた。失業率は4.8%、賃金は3%伸びて26ドルの増。

日本に比べればはるかに経済好調な大国・アメリカのさらなる雇用増のために、国債残高がGDP比で300%近い日本(米国は100%少々)が、友好の証として投資をして差し上げようというのだから、朝貢外交と言われても仕方がない。

トランプ大統領は日本に対して、米軍駐留経費の負担増をもとめ、日本は米国からの自動車輸出を困難にしている、為替操作をしている、など根拠のない言いがりをふっかけいる。

日本に駐留する米軍の経費の75%は日本国が負担している。韓国とイタリアでは各40%、ドイツでは30%である。フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディは日本で売れ行き好調である。トランプ大統領は日本だけではなく、ドイツにも中国にも為替操作をしていると言っている。

これらが米大統領の妄想であることは、日米安保の費用分担問題を見ればよくわかる。日米安保条約は第6条で「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」としている。米軍は日本の安全に寄与すると同時に、米国の安全と利益を目的として、極東において日本の基地を使用することができる。米国にとって日米安保条約の意義はそちらの方にある。日本の基地を母港とする米空母がイラク攻撃に出撃したこともある。イラクは極東の範囲から外れるが、出撃ではなく移動であるからと日米両政府は問題にしなかった。

そういうわけで、これ以上日本が米軍駐留経費の負担増に応じれば、新たな日米安保ただ乗り論が噴出する可能性がある。過去のただ乗り論では、ただ乗りするのは日本だったが、新しいただ乗り論では、米国が自国の核心的利益である世界戦略の一環として日本に駐留させている米軍の駐留経費の大半を日本に負担させて、ただ乗りをしているという議論になる。

以上、すべてはわかりきったことなのに、それでもアメリカに対して日本の為政者は朝貢外交を続けている。どこか別のところに根の深い理由がある。

(2017.2.4  花崎泰雄)


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