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news commentary

二重国籍

2017-07-20 00:26:12 | Weblog

蓮舫・民進党代表が戸籍情報を開示した。父親が台湾国籍だったので台湾と日本の二重国籍ということだが、日本国は外交上台湾を国家と認めておらず、「台湾国籍」者の国籍は中国になる。蓮舫氏は台湾政府発行の国籍喪失許可証書を区役所に提出したが受理されなかったという。

野党第1党の代表ともなれば人気商売のようなところもあり、戸籍情報を開示するマイナスより開示しない方のマイナスが大きいと判断したのであろう。自民党とその支持層からの批判の声があり、民進党の党内の反蓮舫グループへの対応策だった。

思い出すのは、前合衆国大統領のバラク・オバマが大統領になる資格がないと批判された時のことである。オバマ陣営はハワイ州の修正証明書のコピーを公開して対抗した。オバマ氏はホノルルで生まれ、彼の母親は米国籍だった。米国憲法は大統領の資格を “a natural born Citizen” としている。アメリカ合衆国の国籍は出生地主義なので、合衆国内で生まれた子は自動的に市民権を獲得する。加えて母親か父親のどちらかが合衆国の市民権を持っていれば、その子も自動的に市民権を獲得する。オバマ氏が “a natural born Citizen” であることは疑う余地がなかった。つまり批判は法的なものはなく、アフリカ系アメリカ人を大統領にしたくないという感情的なものであった。オバマ氏の大統領資格に懐疑的だったトランプ・現大統領ものちに資格ありと見解を変えた。

また、トランプ大統領は大統領予備選の段階で、競争相手のテッド・クルーズ上院議員には大統領になる資格に疑問符がついている、と発言した。クルーズ氏はカナダ生まれで、母親が米国籍、父親がキューバ国籍だった。クルーズ氏は4歳のころカナダから米国に移った。母親が米国市民で出生地がカナダなので、40年以上も米国とカナダの二重国籍だった。クルーズ氏がカナダ国籍を放棄したのは2014年のことである。

さて、本日のNHKで次のようなニュース聞いた。

国民の6人に1人が二重国籍者とみられているオーストラリアで、野党の上院議員2人が二重国籍を理由に相次いで議員を離職した。オーストラリアは憲法で二重国籍者が国会議員になることを制限している。1人の議員はオーストラリア人の両親のもとでカナダに生まれ1歳になる前にオーストラリアに帰国していた。5日ほど前にはオーストラリア・ニュージーランドの二重国籍の上院議員が辞職している。

日本国憲法には首相の資格として米国大統領のような  “a natural born Citizen” にあたる資格制限はない。議院内閣制だから国会議員になれば首相になることが可能になる。その国会議員になるには日本国籍所有が資格だが、オーストラリアのように二重国籍者を排除していない。

ペルーの元大統領アルベルト・フジモリ氏はペルーと日本の二重国籍者で、ペルーで失脚後日本に亡命、さらには2007年の参議院選挙で国民新党の公認候補(比例代表)になったが、落選した。

この先どうする? アメリカ合衆国式に、日本国首相の国籍条件を付ける? オーストラリア式に国会議員に国籍条件を付ける? 現行のまま?

 

(2017.7.19 花崎泰雄)

 

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暑さボケ

2017-07-09 22:28:35 | Weblog

素人くさい外交ミスである。新聞が伝えるところでは、米国のホワイトハウスが中国の習近平国家主席を台湾総統と間違って発表した。トランプ米大統領と習近平主席がハンブルクのG20で会談した4時間あとの報道発表文の中で間違った。

 REMARKS BY PRESIDENT TRUMP
BEFORE BILATERAL MEETING
WITH PRESIDENT XI OF THE REPUBLIC OF CHINA

President of People’s Republic of China が正しい。

日本の新聞によると、日本の安倍晋三首相のことを、President と書いていたそうだ。ただしくは Prime Minister である。

トランプ氏がホワイトハウスの主になって以来、ホワイトハウスの内部は相当な混乱状態だと米国の新聞が伝えている。

もっとも、アメリカ人の国際方向音痴は昔からで、日本は中国のどこにある? とアメリカ人に尋ねられたという、冗談のような話を、かつて聞いたことがある。インドネシアでは、インドネシアはバリのどこにある? と米国人に聞かれた、という話を聞いた。

加えて、G20の会議のメインテーブルのトランプ大統領の席に娘のイヴァンカ・トランプが座ったということで、ヨーロッパや米国では話題になっている。トランプ大統領がちょっと席を離れたあいだ、彼女がその席に座った。

ホワイトハウスはトランプ一族の家族経営という意識があるのか、どうなのか? いずれにせよ、素人くさい外交である。

(2017.7.9 花崎泰雄)

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乱暴狼藉国会議員がいっぱい

2017-06-23 00:07:56 | Weblog

 秘書を殴ったと週刊誌に報道された豊田真由子衆議院議員が、暴行の事実を認めて6月22日、自民党を離党した。

 ちょっと、筋が違う。自民党員を辞めることはない。国会議員の方を辞めるべき事件なのだ。

 国会議員は特別職の国家公務員であるという考え方が一般的である。憲法99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」としている。なぐった豊田議員は特別職の国家公務員であり、殴られた方の秘書(当時)も政策秘書という特別職の国家公務員である。

 議員秘書は国家から給与が出る公設秘書と議員が給与を支払う私設秘書からなる。公設秘書は特別職の国家公務員である。

 『週刊新潮』の記事を引用したNHKニュースによると、殴られてけがをした秘書は公設秘書のうち「政策秘書」とよばれる秘書だった。政策秘書になるには国家試験に合格しなければならない。司法試験、公認会計士試験、国家公務員採用Ⅰ種試験若しくは外務公務員採用Ⅰ種試験に合格している者あるいは博士の学位を授与されている者は、国家試験を免除され、選考採用審査を受けることができる。

 専門的な知識で議員をサポートするのが役目の、ちょっと格式の高い秘書である。その政策秘書が議員の運転手役をつとめていた。その政策秘書兼運転手が車運転中に、後部座席にいた豊田議員が背後から殴った。いやどうも、運転妨害というか、危ないことである。

 そうした専門職の政策秘書を国家から与えられながらも、政策秘書を政策立案面で使いこなすことができず、議員の草履とりのような仕事をさせ、草履とりのように扱っていた。この事件をこうした視点から判断すれば、特別職の国家公務員が特別職の国家公務員を殴った事件の当事者である豊田議員は、その不明を恥じて辞職するのが当然である。

 この件についての自民党の河村建夫衆院議員(元官房長官)のコメントがふるっている。「あれはたまたま彼女が女性だから、あんな男の代議士なんかいっぱいいる。あんなもんじゃすまない」(朝日新聞電子版、6月22日)と述べた。河村氏はすぐフェイスブックで、発言を取り消したが、はしなくも、国会は暴力常習議員でいっぱいであることを告白した。

 (2017.6.22 花崎泰雄)

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笑止千万

2017-06-03 14:29:53 | Weblog

「沖縄密約事件」あるいは「外務省密約事件」が起きた1972年、日本国首相・安倍晋三氏と内閣官房長官・菅義偉氏は、ともにまだ学生だった。

ちょっと因縁話めくが、外務省の秘密文書を暴露された当時の佐藤栄作(安倍晋三氏の大叔父)政権は、秘密文書のコピーを持ちだした外務事務官・蓮見喜久子氏と、コピーを受け取った毎日新聞記者・西山太吉記者が「情を通じていた」とネガティブ・キャンペーンを始めた。

これが功を奏して世間は「密約」問題よりも「密通」問題の方に多大な関心を寄せた。この事件は裁判に持ち込まれ、蓮見・西山両氏とも執行猶予付き有罪の判決を受けた。ちなみに「ペンタゴン・ペーパーズ」をニューヨーク・タイムズ紙に渡したダニエル・エルズバーグ氏は裁判で無罪を勝ち取った。

日本の最高裁判所の判決要旨は、男の新聞記者が秘密文書を入手する目的で女の公務員と肉体関係を持ち、公務員が新聞記者の依頼を拒み難い心理状態に陥ったことに乗じて秘密文書を持ち出させた、とした。肉体関係を持つことにより男が女を言いなりにできるとする考え方は、当時の最高裁判事たちの知的レベルをよく示している。事務官が男で新聞記者が女だったとしたら、こういう風な判決要旨になっただろうか? 

こうして、うやむやのうちに闇の中に残された秘密文書は、後になって米国で機密指定が解けて公開された文書の中から見つかった。当時の外務省アメリカ(北米局の前身)局長・吉野文六氏も日本側に同じ秘密文書があったことを証言した。

今回、加計学園獣医学部新設に関連して、「官邸の最高レベルが言っている」と記された文書があることを文部科学省の前事務次官・前川喜平氏が公にした。さっそく、前川氏がひところ新宿歌舞伎町の出会い系バーに通っていたとするネガティブ・キャンペーンが始まった。どこかで誰かが1972年の柳の下のドジョウを目論んでいる。

さすがに首相は「歌舞伎町の出会い系バー」のことは口にしなかったが、代わりに、ラジオ番組の収録で次のように言った。

「次官なら大臣と一緒に私のところに(確認に)来ればいい。内閣府との議論で、なぜ(計画に)反対しなかったのか不思議でしょうがない」(6月2日付朝日新聞朝刊)

首相はことさらに不思議がって見せたのだが、どっこい、日本国で世間を渡るための常識からすれば、少しも不思議な事ではない。

「外務省は1日、韓国・釜山の森本康敬総領事(60)を退任させ、後任に道上尚史ドバイ総領事(58)をあてる人事を発表した。同日付。森本氏は16年6月に着任したばかり。総領事の任期は通常2~3年間で、約1年での交代は異例だ。政府は釜山の日本総領事館前に慰安婦を象徴する「少女像」が設置されたことへの対抗措置として、長嶺安政・駐韓大使とともに森本氏を1月から4月まで一時帰国させていた。複数の政府関係者によると、森本氏は帰国中、私的な会食の場で安倍政権の対応を批判したこともあり、首相官邸が問題視していたという」(6月1日付朝日新聞夕刊)

役人も辛いのである。外務省密約文書の存在について、吉野文六氏はアメリカ局長時代にはその存在を否定していた。存在を認めたのは私人となってからである。

安倍首相は加計学園理事長が友人だからではなく、加計学園の理事長がたまたま友人だった、というふうな言い方をしている。加計学園理事長・加計孝太郎氏は首相の「腹心の友」だそうだ。腹心の友は「刎頚の友」と似たようなものだろう。では、言い換えてみよう。

「加計学園理事長が刎頚の友だからではなく、加計学園の理事長がたまたま刎頚の友だった」

今から半世紀ほど前、エロ路線を展開していた新東宝という映画会社があった。そこのワンマン社長が、自社所属の女優との関係について

「女優を妾にしたのではなく、妾を女優にしたのだ」

といって、世間を賑せたことがあった。

歴史はファルスを繰り返すが、日本ではファイルは失せたままだ。

 (2017.6.3 花崎泰雄)

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世論調査はどの程度正確か

2017-05-29 18:24:04 | Weblog

新聞がときどき世論調査記事を掲載する。それがどの程度信用できるかどうか。判断が難しい。回答者が性別、年齢、職業などの面で日本の有権者の縮図となるように、層化無作為2段抽出法によって選び出した回答者に面接調査するのが、かつては世論調査の常道だった。これには時間と費用がかかった。今では新聞社の世論調査は電話調査が多い。面接調査に比べると安上がりで機動性もある。

面接調査のころは固定電話の普及率が低かった。固定電話が普及したのでコンピューターで無作為に電話番号を発生させて、電話に出た人の意見を聞く電話調査法式に変わった。皮肉なことだが、電話調査を始めると間もなく、携帯電話が普及し、固定電話の加入率が減った。そいうことなので、今では電話調査は固定電話だけでなく携帯電話も対象にしている。

面接調査法と電話調査法のどちらの世論調査が代表性に優れているかについての議論はさておく。回答率に限って言えば、面接調査の時代の回答率は80-60%台だった。電話調査では回答率は40%台にとどまっている。

回答率が低いと誤差率が高くなる。回答率4割台の世論調査結果は、「当らずと言えども遠からず」程度のものである。

くわえて世論調査は質問の発し方によって回答が違ってくる。

たとえば、5月29日付日経新聞(電子版)の世論調査記事は次のように言う。「日本経済新聞社とテレビ東京による25-28日の世論調査で、安倍晋三首相が提起した憲法9条に自衛隊の存在を明記する条文の追加について『賛成』は51%で、『反対』の36%を上回った。男女別に見ると、男性は賛成が59%で反対の34%より多かった。女性は賛成が40%、反対が38%で賛否が拮抗した。首相の2020年に新憲法を施行する目標については「賛成」が43%で「反対」は39%だった」

次に5月3日付同紙の記事。「日本国憲法は3日、1947年の施行から70年を迎えた。日本経済新聞社とテレビ東京が憲法記念日を前に世論調査を実施したところ、憲法改正について『現状のままでよい』が46%、『改正すべきだ』が45%で拮抗した。昨年4月の調査と比べると、現状維持が4ポイント減って改憲支持が5ポイント増え、その差が縮まった」

5月初めの段階では、「憲法は現状のままでよい」とする世論と「憲法を改正すべきだ」という世論が拮抗していたが、5月末になると「憲法9条に自衛隊の存在を明記する条文の追加」に賛成する意見が51%と、反対する意見34%に大きく水をあけた。憲法9条に自衛隊の存在を追加することは、すなわち憲法修正・改憲であることを考えると、この2つの調査結果の矛盾は世論というものを考えるうえで興味深い。

日経新聞の記事から、質問を引用すると次の通りである。

「安倍首相は憲法9条について戦争放棄や戦力の不保持を定めたいまの条文は変えずに、自衛隊の存在を明記する条文を追加したい意向を示しました。あなたはこの条文の追加に賛成ですか、反対ですか」

ちなみ、次のような質問と回答もあった。

「安倍首相は憲法改正の項目として、高等教育を含む教育無償化にも理解を示しました。あなたは高等教育も含めた教育無償化を憲法に明記することに賛成ですか、反対ですか」。

  賛成だ   52

  反対だ   35

では、質問を次のように変えたら、回答はどう変化するだろうか?

「安倍首相は憲法9条について戦争放棄や戦力の不保持を定めたいまの条文は変えずに、自衛隊の存在を明記する条文を追加したい意向を示しました。あなたはこの憲法改正案に賛成ですか、反対ですか」

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役人

2017-05-22 13:05:00 | Weblog

「最近の役人たちといったら……10もの禁忌を犯して10もの真実を踏みにじるといった具合で、それがどんな結果をひきおこすか何も考えていないのではないか」

そういわれてみると、防衛省の例があった。南スーダン国連平和維持活動参加した陸上自衛隊の部隊から送られてきた日報について、保管期限切れですでに廃棄したと、国会で(つまり国民に)言っておきながら、問い詰められると、実は保管してあった、と返答を変えた。

森友学園国有地売却問題でも、国会での追及に対して、高級役人がその記録は規定に従って廃棄した、の一点張りだ。コンピューターから消したとしても、データは復元出来るとして、情報公開活動をしているNPOが、関係官庁のコンピューターの証拠保全申し立てしている。

安倍首相のお友達が理事長をしている加計学園の獣医学部新設に関係して、文部科学省に「総理のご意向」とつたえられた文書があると、報道され、国会で追及された。そこで、文部科学大臣が、関係する高等教育局長、大臣官房審議官、専門教育課長ら省内の7高級役人に問い合わせたが、答はすべて知らぬ。存ぜぬ、だった。新聞の報道によると、1人当たり10分から30分間程度の聞き取りだった。

内閣総理大臣とその妻を守るために、役人たちが公務員としての禁忌をものとせず、納税者のために真実を見つける責任を拒否している――ように見える。

時の政権と官僚集団は運命共同体だ。これは日本に限らないが、日本は特にひどい。公文書の扱いについて、歴史への敬意の気持が薄いからである。

さて、冒頭の「最近の役人たちといったら……」は、今から1000年前の、11世紀ペルシアのニーザム・アルムルク(井谷鋼造他訳)『統治の書』(岩波書店)からの引用だ。

古典の教えは常に新鮮で、人はあいかわらず愚かである。

 (2017.5.22  花崎泰雄)

 

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セドナヤの火葬場

2017-05-16 22:33:41 | Weblog

チュニジアで2010年12月に始まったジャスミン革命は、アラブの民主化運動にとなって中東に広がった。あれから6年余り。すべては短い春の夜の夢であった。

エジプトは再び軍政の国に逆戻りしたし、シリアでは地獄の内戦が続いている。

民主化失敗の原因究明はこの地域の政治を観察している専門家にゆだねることにするが、素人判断では、この地域に民主化を進めることができる政治指導者が不足していたこと、政治制度の確立が遅れていたこと、指導者や住民の多くが古い政治的メンタリティーを残していたことが原因であろう。これらは多くの国が抱える問題である。

日本の民主化は占領軍が原案をつくり、それにしたがって成立したが、そののち、日本の有権者と彼らが選んだ議員たちがさらなる民主主義の前進に向って、大きな足跡を残したという事例は、あいにくこれといってない。日本にはびこっている藩閥時代のメンタリティーと、家柄・血筋の信仰と、拝金主義と、大勢順応・異議申し立てへの嫌悪、などが足かせになっている。

 愚痴はさておき、シリアのことだが、5月15日のワシントン・ポスト紙の記事を読んで暗然となった。ダマスカスから30キロほど離れたセドナヤ軍刑務所に、シリア政府が火葬場を建設し、刑務所内で殺害した囚人の遺体を密かに焼却している、というニュースだった。

アムネスティ・インターナショナル(AI)によると、シリア内戦が始まった2011年からこれまでに、シリア政府の監獄で拷問、殴打、電気ショック、レイプの果てに殺された囚人は1万8千に達する。AIや他のNGOによると、2011年から2015年の間に、6万5千人から11万7千人の人々が投獄された。また、10万人以上の人々がなお拘束され続けているか、消されているという推定もある。

AIがかつて囚人だった人々から集めた証言によると、毎月300人のペースで囚人が殺害されているという。政府による自国民のホロコーストである。

国連の資料によると、シリア内戦でこれまでに40万人が死んでいる。AIによると、住む場所を失って国内を漂泊しているシリア人は6百万人を超え、400万人が難民となって国外に出た。内戦前のシリアの人口は2千2百万人だった。

それぞれ腹に一物――安全保障上の自国の利益――抱えるソ連、EU、トルコ、米国がにらみ合って身動き取れない間に、シリアの人口がどんどん減って行く。

 

(2017.5.16  花崎泰雄)

 

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ビデオ・メッセージ

2017-05-05 17:54:07 | Weblog

憲法記念日の3月3日、日本国首相で自由民主党の総裁である安倍晋三氏が、日本会議が中心になって開いた改憲集会に①2020年の東京オリンピックの年を新しい憲法が施行される年にしたい②憲法9条の第1項、第2項を残したうえで、自衛隊についての項を追加する③あわせて高等教育の無償化も憲法に書き込むと語った。

安倍氏が集会に出席して発言したわけではなく、集会主催者が安倍氏から送られてきたビデオ・メッセージを披露した。

米国大統領のトランプ氏が、ツイッターの書き込みで、米国の市民やメディアを右往左往させているのと同じ手法である。安倍氏は先ごろ読売新聞の首脳と会食し、その数日後に同紙が首相にインタビューを行い、3月3日の朝刊でこのニュースを報じていた(『朝日新聞3月4日付朝刊』。とはいえ、日本のその他の新聞はそのニュースの後追いをせざるをえなかった。

安倍首相はこれまでも日本会議の改憲集会にビデオ・メッセージを送ってきたが、内容は改憲派の季節のご挨拶に毛の生えたようなものだった。それが、今回は異様に中身の濃いメッセージだった。

安倍氏が2020年を目標に本気で9条変更に走り出したのか、憲法記念日をとらえての政治的ジャブだったのか、多くの市民も、多くの新聞も、自民党内でさえ、判断に迷ったようだ。

本気だったらもっときちんとした場を選んでいたはずだから、あれはアドバルーンをあげただけだ。読売新聞に特ダネとして書いてもらい、改憲派の憲法集会でビデオ・メッセージを流したが、自民党総裁として党幹部を引き連れて改憲スケジュールと内容を堂々と発表したわけではない。いやいや、かたちはどうあれ、2020年目標という流れがこれでできることになる、など。

そのころ安倍氏はというと、3日の午前から午後にかけて、東京・富ケ谷の自宅で過ごし、午後になって山梨県鳴沢村の別荘へ向かった。夕方には富士吉田市の中国料理店で首相補佐官、秘書官らと食事し、夜8時半ごろ別荘に帰った(朝日新聞3月4日朝刊・首相動静)。

翌4日は、早朝からお友達とゴルフ。ゴルフのあとは夕刻から別荘で、夫人、官房副長官、補佐官らとバーベキューを楽しんだ。官房副長官らが別荘を辞したのは夜10時ちょっと前(朝日新聞3月5日朝刊・首相動静)。

のどかなものである。首相は北朝鮮からミサイルが飛んでくることはないと知っているのであろう。

世間を騒がせておいて高みの見物である。憲法に自衛隊を正式認知する条文を書き込んだところで、北朝鮮がミサイルを飛ばすのを躊躇するわけでもあるまい。そもそも憲法9条の1項と2項を残したままで、自衛隊について書き加えるという発想が、ブレーキとアクセルを同時に踏むようなものである。

日本政府の高等教育に対する公財政支出は、OECDの平均の半分ほどで、加盟各国中最低の水準だから、高等教育の無償化は素晴らしい約束になるが、さて、その財源をどこからひねり出すか? 教育国債? ビデオ・メッセージに託すには、これまた重大すぎる政策転換である。

(2017.4.5 花崎泰雄)

 

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東京とソウル

2017-05-01 20:33:57 | Weblog

  北朝鮮がミサイル発射に失敗した4月29日早朝、ミサイル発射の報道速報をうけて東京メトロが地下鉄全線、JR西日本が北陸新幹線の運行を短時間であるが停止した。

 北朝鮮が発射したミサイルが日本に飛んでくる恐れがある場合、日本政府はJアラート(全国瞬時警報システム)を使うことになっている。鉄道各社はJアラートを受けて、安全が確認されるまで、列車の運行を止めることにしている。

このときJアラートは使われていなかった。

新聞報道によると、JR東日本、JR東海は新幹線、在来線とも運行を続け、朝鮮半島に近い九州の西鉄、福岡市営地下鉄も運転を停止しなかった。

日本の鉄道の慎重ぶりを知ったソウルの新聞は「大げさに振る舞う」(『東亜日報』)と報じた。 ソウルからのニュースでは、38度線のすぐ南に位置する韓国の首都で地下鉄が止まることはなった。

日本の対応が妥当だとすれば韓国のそれは鈍感。韓国の対応が妥当だとすると、日本のそれは過敏ということになる。

さて?

2日後の5月1日、海上自衛隊が保有する最大の護衛艦「いずも」が、安全保障関連法にもとづいて「米艦防護」を実施した。横須賀基地を出港して、東京湾の南でアメリカ海軍の補給艦と合流、四国沖までの護衛を始めた。

米海軍の補給艦を防護したのは「いずも」1隻だけだった。これといって危険が予想される海域ではないから、形ばかりの米艦防護である。ねらいは米艦防護の実績づくりである。「いずも」は米補給艦と別れた後、東南アジア方面に向かうが、その時は護衛艦「さざなみ」が「いづも」を護衛する。

首都東京の地下鉄や新幹線がとまったあと、米艦防護とくれば、少々カンの悪い向きといえども、「なんだかなあ」という筋書きを感じるだろう。

東京の地下鉄がとまり、新幹線もとまった4月29日、日本国首相・安倍晋三氏は訪露・訪英のはるか旅の空にあった。

 (2017.5.1  花崎泰雄)

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ミサイル誤射

2017-04-24 18:58:00 | Weblog

 2017年4月24日付朝日新聞朝刊に同紙の高橋純子・政治部次長が面白い記事を書いていた。題して「スットコドッコイと愛の行方」。その中の笑える一節をそのまま引用する。

              *

  作家の百田尚樹氏は「もし北朝鮮のミサイルで私の家族が死に、私が生き残れば、私はテロ組織を作って、日本国内の敵を潰していく」「昔、朝日新聞は、『北朝鮮からミサイルが日本に落ちても、一発だけなら誤射かもしれない』と書いた。信じられないかもしれないが、これは本当だ。今回、もし日本に北朝鮮のミサイルが落ちた時、『誤射かもしれない』と書いたら、社長を半殺しにしてやるつもりだ」とツイッターに投稿した。

 あらタイヘン。そんな記事本当に書いたのかしら。「北朝鮮」「一発だけ」「誤射」でデータベース検索したが、結果は0件。永遠のゼロ件。

 百田氏の過去のインタビューなどから類推すると、おそらく2002年4月20日付朝刊「『武力攻撃事態』って何」のことだと思われる。

 Q ミサイルが飛んできたら。

 A 武力攻撃事態ということになるだろうけど、1発だけなら、誤射かもしれない。

 北朝鮮を含め具体的な国や地域名は出てこない。一般論として、武力攻撃事態の線引きは難しいということをQ&Aで解説する記事だった。

                *

 インターネットの世界をのぞくと、百田氏の件のツイートがあちこちでコピーされて使われていた。このさい再コピーしてここに張り付けておくので、実物をとくとご覧いただきたい。

 さて、ミサイル誤射は実際に起っている。

 ツイッター情報にありがちな空想や誤認・誤解、意図的なデマなどではなく、非エンターテインメント・ニュースを提供するメディアであるイギリス・BBCなどの報道によると、2016年7月に台湾海軍がミサイルを誤射したことがある。高雄で訓練中に対艦ミサイル一発が誤射のため中国本土の方向へ飛んで行った。ミサイルは台湾領海内の台湾漁船にあたったが、ミサイル自体は爆発しなかった。船員1人が死んだ。

 2017年の初め、イギリスの『サンデー・タイムズ』が、2016年6月にイギリス軍が潜水艦発射核ミサイル・トライデントの誤射をしていたことをすっぱ抜いた。米国フロリダの沖合のどこかでトライデントの発射テストをしていたところ、アフリカの方角に飛んで行くはずだったミサイルが、米国の方向に向かった。テストだから、核弾頭は積んでいなかった。国防上の理由から英政府はこの誤射についての説明を避けている。

 ミサイル誤射ではないが、ミサイル飛来誤認も起こる。

 米誌『ニューヨーカー』(2016年12月23日)に掲載されたエリック・シュロッサー氏の記事 “World War Three, by Mistake” はジミー・カーター大統領時代の悪夢を物語っている。

 カーター大統領の安全保障問題担当補佐官・ブレジンスキー氏は深夜、軍からの電話で起こされた。ソ連が発射した220発のミサイルが米国に向かって飛んできているという緊急連絡だった。補佐官は攻撃の確認をとるように指示する。折り返し連絡があり、訂正します、ミサイルの数は2,200発だという。報復攻撃命令が発せられ、同時にワシントンDCは消滅するだろう。ブレジンスキー補佐官は妻を起すのをやめた。眠ったままで死なせてやろうと思ったのだ。補佐官はカーター大統領に報復攻撃を電話で進言しようとした。その時、3度目の電話のベルが鳴った。申し訳ない、警報システムの誤作動だった、という軍からの連絡だった。後日の調査で、北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)のコンピューター・チップのエラーだったことが判明した。1個46セントの部品だった。

 ソフトウェアのバグや、チップの誤作動で、家庭用のPCが暴走し、業務用のコンピューターが止まり、銀行業務や列車ダイヤなどに影響が出て、社会的な混乱が生じる危険性は普通に理解できる。だが、軍事上のシステム・エラーと未熟な人間の判断が増幅してつくりだす恐怖となると理解が及ばない人は少なくない。

逆上、それこそ命とりだ。

 (2017.4.22 花崎泰雄)

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