父は木彫を趣味にしている。
先日、何かの作品展に出品したら、非常に良い成績を収めたという事で表彰されたみたいだった。
その作品が不動明王と題したこの作品。
高さ70cmほどあるこの木彫は、丸太を掘って作ったものだった。
審査員の方々の評には
「91歳という高齢なのに、作品はエネルギッシュで見応えがある。丸い木を彫り出して、これだけの形を作り出すことは
とても苦労されたと思う。」
「・・・木を彫っていくというけっして楽ではない作業に向かって、表現していこうという意思は素晴らしいと思います。
こちらが背筋を正したくなる作品と出会う事ができました。」
「力強さ、優しさが感じられます。
何とも言えない生きる力を感じます。
作品への熱意と造形に作者の喜びを感じる」
など、様々な方々からのお褒めの言葉を頂き、表彰式の日の夕食時には照れくさそうに
「おれが年寄りだもんで褒めてくれたんだら。」
と言っていた父。
今年の夏、
父の足で約50分ほど登った山の中腹にある、山の寺の不動明王を見に行った。
大きな一枚岩に掘られた不動明王で、是非とも父に見せてあげたかった。
もちろん父は写真も撮らず、このわずか数分不動明王をじっと見つめただけだった。
作品が展覧会から帰ってきて見た時、この作品はこの時の不動明王だと初めて知った。
そして、多くの人に評して頂いた「力強さ」はきっとこの話を聞けば頷けるに違いないと思う。
もう一つの作品「豊穣」は米俵の上で鶏の親子が遊んでいるところだけれど、
私は「やさしさ」を感じる。
親の作品とはいえ、いい作品を見せてもらったという気持ちは審査員の方たちと何ら変わらない。