マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

『奉教人の死』を聴く

2012年12月08日 | 映画・美術・芝居・落語

 ”ようこそ、語りと和楽 旧安田楠雄邸公演へ 
                芥川龍之介 奉教人の死”
と書かれたビラを目にした。旧安田邸は我が家から徒歩20分の至近距離にあり、大正8(1919)年に建設された近代和風建築として名高い建物だが、門を潜ったことはなかった。何かのイベントが開催された折りに出掛けようと考えていた矢先、芥川作品の語りと和楽演奏開催を知り、
早速申し込み、12月1日(土)、旧安田邸に家人と出掛けた。

 申し込みをした以降に出立した用事の為、ここを訪れたのが開演19時の15分前。建物内部は見学可能だが、庭園を鑑賞する時間帯ではなかった。
 受付を済ませ、長い廊下を進むと、かなり広い客間があり、そこが会場だった。椅子席が30、座布団席も30席ほど用意されていて、定刻19時にはほぼ満席となり、津軽三味線の演奏で幕が開けた。
 出し物は①津軽三味線  小池純一郎
        ②琴演奏     山田雅生
       ③「奉教人の死」 語りと琴演奏 北原久仁香と山田雅生

 中でも「奉教人の死」の語りには、人をその世界に誘う強力な吸引力があった。芥川龍之介生誕120年に寄せて選ばれたこの短編作品の初めから終わりまでが語られた。後で知ることであったが、語りの北原さんは、声優にして、ラジオ『むさしのFM』では情報ナレーターとして天気・交通情報・ニュースなどを担当する方。この様な語りの会に数多く出演ているらしい。
 時に静かな、時に迫力ある凛とした声が響く。読みに緩急が入り、人物によって発声を変える。謂わば、女性講談師の語りと言ったら良いのだろうか、そう言っては本質を見失うような気もするが・・・。所によっては感情移入たっぷりに語られる、異色の世界。(写真は左北原、右山田)

 大正建築の建物の薄明かりの中で、大正時代の作品が、大正時代の衣装を纏った女性によって語られ、時折筝曲の音が流れる訳で、大正ロマネスクたっぷりのこの空間を皆一心に眺め、見目麗しき演者の語りに耳を傾けたのであった。
 この短編読んでいなかった。ところどころ意味が通じない言葉が語られるが、実に明瞭な、澄んだ声は聞きやすく、一遍の物語がすとんと胸に落ちた。
 
 この3人の組み合せで、2月には北村薫「恋愛小説」が、4月には竹ノ塚「昭和の家」で森鴎外「高瀬舟」が語られるそうで、今度は作品を読み終えてから語りを聴いてみたいと思った。”おっかけ”をしたい気分である。(最後に登場した芥川)



      (旧安田邸玄関)                   (長い廊下)


       (会場の和室)                       (洋間)