ゆいばすで桜野・阿僧コースをゆく 2

2017年8月29日
僕の寄り道――ゆいばすで桜野・阿僧コースをゆく 2


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 火曜・木曜運行のゆいばす「桜野・阿僧コース」は山奥の桜野会館へ向かう。興津から興津川に沿った身延道ではなく、岩渕からの富士川に沿った身延道でもなく、途中まで由比川に沿っているものの西へ折れて山中に分け入り、桜野集落を経て内房(うつぶさ)へと抜けていく山上の身延道である。不安定な川沿いではない最も古い身延道なのであり、いわゆる塩の道だった。バスはその道を桜野集落まで辿り、槍野(うつぎの)会館まで引き返してそこが終点となる。

雨上がりということもあって桜野会館前はきりに包まれており、早朝で人影もなく天空の仙人郷に降り立ったように幻想的な風景だった。会館前バス停には仙人ではなく杖をついたおじいさんがひとりバスを待っておられた。

桜野会館まで登る道が深い谷に沿っているので驚いた。谷というより山塊にできたひび割れのようであり、桜野や槍野がある桜野川流域は薩埵峠などとひとつながりの地すべり地帯なのである。急峻な山道を登り切った尾根に農地を拓き、家を建て、人々が集まってつくった集落である。

農地脇にある村墓地のような場所には、辛うじて江戸時代の年号が読み取れる石造物が集められていた。寄進者の名に他地域の名も見えるので、古くから交通の要衝として用いられてきた道であることがわかる。

仙人のようなおじいさんを乗せたバスが山道を下って行ってしまったので、いったん先程登ってきた山道を下って槍野集落への分岐点があった場所まで下る。

あまりに静かでクマでも出ないかと心配になり、口笛を吹きながら山道を下った。


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