西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

桜狩

2010-08-15 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
130-「桜狩」(嘉永年間・1848~54)

浅草寺の二天門をくぐって、左に行くと”奥山”というエリアに出る。
奥山は吉原への近道で、観音詣でを言い訳に
雷門から仲店通りを来た男は、二天門を抜けるや、
本堂を尻目に、ひょいと左にそれる。

射的・見せ物・茶屋・占い・かんざし・指物屋
などなどの誘惑をくぐり抜け、吉原へ一目散。

嘉永4年の春に、奥山に客寄せの桜が植えられた。
もちろん吉原仲の町形式に、「根ごして植えし初桜」
(山で育てた桜の木を、根のついたまま運んで植えること)だ。
この曲はそれを詠んでいる。

『其の昔 ありしも恋の手引き草
 誓いも深き奥山に
 根ごして植えし初桜
 色香を送る春風に
 馬道越えて通う駕
 三枚 四枚 衣紋坂
 はや大門と夕桜
 気高き花の装いに
 松の位の外八文字
 実にこの廓の春の宵』

●その昔、恋の手引き草というのがあったそうな。
 観音様のご利益深い奥山に、この春植えた初桜。
 花の色香に誘われて、馬道を越えて駕に乗る。
 超特急の早駕で、あっという間に衣紋坂、
 左に折れて、大門(おおもん)に着いた。
 桜の提灯に灯りがともり、まあなんとまぶしい花魁たちの装い。
 外八文字を踏むような、高級な遊女もいて、実に浮き立つ廓の春よ。 

三枚、とは駕かきの人数のこと。普通は二人でかくのだが、
急ぐ時は担ぎ棒の先に紐をつけて、一人が引っ張りながら走る。
四枚になると、引っぱり手が二人になり、両方の棒を引っ張る。
計四人で走るのだから、そりゃあ早いだろう。

 〓 〓 〓

teea breaku・海中百景 
photo by 和尚 
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