西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

一ごの涙

2009-12-31 | プライベート
いよいよ大晦日、今年も終わりです。
今年の1月から始めました、このブログも、
おかげさまで、皆勤賞!です。

毎日、いくばくかの文字を綴るというのは
脳のためにも良いようで、
その爽快感が皆勤賞の原動力になっています。

さて、巷は正月モード一色で、浮き世のことはお休みです。
わがブログも休暇といたし、ちょっと気分を変えてみようと思います。

10月に亡くなりました私の母は、随筆を趣味としており、
『いびき』(1969年)と、『三味線』(1987年)という2冊の本を出版しております。
内容は、家族や親類縁者など、半径10メートル圏内のささやかな話題です。

その中に私の事を書いたものがありますので、幾つかご紹介します。


「一ごの涙」

 次女がはじめて三味線を手にしたのは幼稚園の時だった。
まだ三味線を抱えかねるほどの小さい子が、
色っぽい唄を平気な顔で唄うのがお愛敬と、
みんなに可愛がられたのが余程嬉しかったらしく、
毎日毎日休まずに熱心にお稽古に通い続けていた。
 平カナもまだ読みかねた娘にとっては、
くずし文字や変体カナばかりで書かれた唄本はチンプンカンプン。
宙で覚えるより外なかったが、
訳のわからぬ唄の文句を一生けんめい覚えようとするだけに、
それが家に帰るまでにすっかり迷文句にアレンジされ、
聞いている方が、おかしさを我慢できずに、
笑いころげることも度重なり、
私にとっては長唄のどの曲にも、どの曲にも、
幼かった頃の次女の姿がくっきりと焼きついて、
懐かしい思い出のこもるものばかりとなっている。(つづく)

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tea breaku・海中百景
photo by 和尚
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138-鬼次拍子舞

2009-12-30 | 時系列的長唄の見方(c)y.saionji
杵屋正次郎―59「鬼次拍子舞」

 
そして二人で手踊り。

『悪性な程 なお思いぞ増鏡
 見るにつけ 聞くにつけ
 男の心と秋の空
 縁のあるのが誠なれ
 嬉しかいなの命とは
 心で拝んでいるわいな
 ねやに残りし枕がものを
 言わば悋気の種と思い草』

そして二人の戯れ事は終り、本意をあかしての立回りとなる。

セリフ
女「さあ、長田の太郎と名乗って笛を渡しゃ」
男「こしゃくな女、そこのけ」
女「いや」
男「どっこい」

『互いに劣らぬ千草の盛り
 荻 萩 桔梗 蔦葛
 裾もほらほら吹き返し
 さらさらさっと秋風に
 連れて梢の花紅葉
 露の玉散る風情かな』

これにて「鬼次拍子舞」は終わり。
正次郎は、拍子舞仕立て(強いて言えば一種のラップ)のこの曲に、
新内や、チョボクレ(フレーズの名称)を取り入れるなど
自在の境地に遊んでいる。

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tea breaku・海中百景
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137-鬼次拍子舞

2009-12-29 | 時系列的長唄の見方(c)y.saionji
杵屋正次郎―58「鬼次拍子舞」

再びセリフ。
男「そりゃ何だ」
女「茶々上がらんかいな」

そして、松の前が水茶屋女になった体で、
願人坊になった体の長田太郎と絡む。

『出花の花が汲んで来る(娘盛りが給仕する)
 水も漏らさぬ水茶屋の(情の深い水茶屋の)
 味な縁も今更に』

『月待ち 日待ち 代待ちを(信仰的な催し事)
 そそる山伏の錫杖を
 しゃんぐ しゃんぐと振り立てて
 さんげ さんげ ぞっこん其様に
 惚れて 惚れて 惚れぬいた
 それ様の御器量を(お前の器量を)
 今で例えて言おうなら
 難波 高島 菊本も(歌麿の描いた、美人モデルたちも)
 はだし参りの代参り(シャッポを脱いで、逃げて行くような)
 弁財天と打ち込んだ
 君の色香の蘇民書札(そみかくだ・山伏、修験者の異称)
 お茶の数さえ
 三千三百三十三杯
 うっかれ浮か浮か
 恋は曲者靡かんせ
 これどうじゃいな』

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tea breaku・海中百景
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136-鬼次拍子舞

2009-12-28 | 時系列的長唄の見方(c)y.saionji
杵屋正次郎―57「鬼次拍子舞」


クドキの続き。


『そういわんすりゃ
 お前一人が真実で(思っているのは、あなた一人)
 わしが心に
 あるとあらゆる神かけて
 かわる心はないものを
 お前は嘘と思わんす
 それでもわしゃ なお可愛い
 しんきなことと寄り添えば(じれったいねと、寄り添えば)』


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tea breaku・海中百景
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135-鬼次拍子舞

2009-12-27 | 時系列的長唄の見方(c)y.saionji
杵屋正次郎―56「鬼次拍子舞」


再び二人のセリフがあり、
「武蔵野」から縁付けて、虫づくしのクドキとなる。


『問うも憂し
 問わぬも辛し武蔵野と
 掛けたる謎に愛嬌の
 こぼれかかるや花すすき
 君こおろぎと男郎花(おとこめし)
 返事松虫 きりぎりす
 お前にどうぞ扇蝶
 こっちはしゃんと 轡虫
 鬼一口と寄り添えば(観念しなと寄り添えば)
 置いて袂を振り切って
 胸ぐら取ってこれ男』

「問うも憂し…」
の件は、『伊勢物語』にある
「武蔵鐙 さすがにかけて頼むには
 訪わぬもつらし 訪うもうるさし」
の同音意義語とんちバージョン。

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tea breaku・海中百景
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