テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 上がる幕、閉じる幕 ~

2021-02-24 23:30:22 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 あはッ! めをォさましたのでスゥ!」
「がるる!ぐるるがるぐるる~!」(←訳:虎です!水仙の芽が出たよ~!)

 こんにちは、ネーさです。
 風はまだ冷たくとも、
 春の足音が着実に聞こえてきましたね。
 これで花粉さえなかったら……と、
 溜め息したりしつつ、
 さあ、読書タイムですよ。
 本日は、華麗にして豪快!なこちらの快作を、どうぞ~♪

  



       ―― 化け者心中 ――



 著者は蝉谷めぐ実(せみたに・めぐみ)さん、
 2020年10月に発行されました。
 小説野生時代新人賞を受賞し、
 各メディアの書評でも絶賛されている
 異色のミステリ作品です。

「むかァ~しィ、むかしィ!」
「ぐるるるる!」(←訳:お江戸の昔!)

 それは、芝居か、マジックか。

 いえ、マジックという言葉は
 文政年間の江戸にはありませんね。
 手妻(てづま)、でしょうかしら。

 その場に居たのは、
 6人の役者さんたち。

 次に上演されるお芝居の、
 前読みのために集まった彼らを照らす
 蝋燭の灯りが、
 ふっと揺らいだかと思うと。

 ごろり。

 6人の中央に、
 生首が転がった!

「ひええええェッ!」
「がるる!」(←訳:うわあ!)

 次の瞬間、
 照明がすべて消え、
 あたりは暗闇に。

 やがて再び灯りが点いたとき、
 室内の者は凍りつきました。

 生首が、ない。

 生首が転がっていた痕跡はあるのに、
 どこにも、首はない。

 それなのに、
 6人の役者さんは……
 1人も欠けず、揃っている。

「ふァ?」
「ぐるぅ?」

 生首があって、
 つまり誰かが亡くなったのなら、
 役者さんは5人に減っている筈だけれど、
 なぜ。

 なぜ、減っていない?
 なぜ、6人のままなのか?

「えッとォ、それはァ~…」
「がるるるるる!」(←訳:有り得ないよ!)

 これは鬼のしわざだ、と言うのは、
 芝居小屋の座元さんです。
 
 鬼が、役者のひとりを食べたのだ!
 そうして、
 その役者になりすまし、
 今も素知らぬ顔でいる……!

「おにィ??」
「ぐる?」(←訳:鬼が?)

 毒には毒を。
 闇に満ちた《謎》を解くには、
 その身に闇を背負った人間を。

 座元さんが呼び寄せたのは、
 大阪生まれの元女形、
 田村魚之助(たむら・ととのすけ)さん。

 当代一の女形と、
 大評判をとった人気役者さんでしたが、
 3年前、ひいきの客に足を切られ、
 舞台に立つことは叶わなくなった魚之助さんなら、
 芝居小屋の表も裏も、
 役者さんたちの暗い腹の内側も、
 よぅく解っておりましょうから。

「……なんだかァ、あやしいィ!」
「がるぐるがるるる!」(←訳:誰も彼も怪しそう!)

 魚之助さんの相棒役を務めまするのは、
 心優しい鳥屋(とりや)の
 藤九郎(ふじくろう)さん。

 ふたりは果たして、
 鬼を探し当てることが
 出来るのか……?

「むずかしィでス!」
「ぐるるるるるるる!」(←訳:見分けられないよ!)

 魚之助さんの上方言葉、
 藤九郎さんたちの江戸言葉、
 どちらもすばらしくて、

 ああ、この物語を講談で、
 神田白山さんに演ってほしい!

 なんて妄想しちゃったりする謎解き奇譚は、
 ミステリ好きさんにも
 時代小説好きさんにも
 激おすすめですよ。
 ぜひ、手に取ってみてくださいね~♫

 

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