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「君が代」不起立処分大阪府・市人事委員会不服申立ならびに裁判提訴当該15名によるブログです。

竹林意見書②

2016-04-03 10:32:10 | 裁判

引き続き②を掲載します。

3.大阪府教委の「日の丸・君が代」問題に対する姿勢

 結成以後、組合は精力的に、交渉を通して、あるいは職場闘争や地域闘争を通して「日の丸・君が代」反対闘争を展開していった。1989年11月23日の教育合同結成大会で決議された1989年度運動方針案においても「教育現場への『日の丸・君が代』の持ち込み、天皇制イデオロギーの押しつけに反対し、地域の労働者・市民と連帯して、学校を『逆包囲』するような広範な闘いを組織します」と明記されている。このような方針のもと、教育合同組合員は現場での「日の丸・君が代」反対闘争に取り組んでいった。

 そして大阪府教委も、この時期、基本的には、物理的な圧力でもって現場に強制することには否定的もしくは慎重な姿勢を崩さなかった。

 このことの背景には、第2節でも触れたが、1970年代より大阪各地の教育現場で広範に取り組まれていた解放教育運動の影響を見ないわけにはいかない。深刻な差別がまさに喫緊の教育課題であった大阪の教育労働者にとって、目の前の子どもを取り巻く差別に敏感であること、その差別の現実に深く学ぶこと、子どもの主体性を解放する教育を創造することはいずれも避けて通ることができないものであった。そしてそれらを包括した解放教育運動は1970年代から80年代にかけて差別のみならず障がい者差別、女性差別、在日朝鮮人差別などさまざまな社会的課題にも取り組み始めていった。

 一方、行政の側も、運動体による行政闘争の強化と1966年の同対審答申以降、「差別の解消は行政の責務」という認識を共有し始めた。それは、1980年代ころから公共施設や交通機関でのバリアフリー化の進展、進路保障における就職差別の排除のための統一応募用紙の定着、学校での「男女混合名簿」の導入など、市民にも目に見える形で結実していったのである。

 であるならば、侵略と植民地支配の歴史が刻印され、差別と表裏一体となった特権的身分制度である天皇制を賛美する「日の丸・君が代」について強制への異議が現場から問題提起されたとき、府教委もそれを明確に否定することはできなかったのも当然といえよう。まさに侵略と植民地支配の歴史を背負って存在する在日朝鮮(韓国)人児童・生徒の多く在籍する学校で、あるいは行政も差別に加担した歴史を持つ被差別出身児童・生徒が多く在籍する学校で、ということは、敷衍するとどの学校でもそういった生徒が在籍する可能性のあるこの大阪という地域で、少なくとも当時の府教委は、あからさまに「『日の丸』に頭を下げろ! 『君が代』を大きな声で歌え! いうこと聞かんやつは処分するぞ!」と宣言することはできなかった。それが行政なりの良心の表れだったのか、社会情勢を見て本音を隠していただけなのかは今となっては不明だが。

 したがって、組合結成以来の「日の丸・君が代」問題についての府教委の基本的回答は、ある時期まで一貫して「粘り強く指導していく」「職務命令にはなじむものではないと認識している」というものであった。

 1990年代においても組合は個別の支部・分会では常に校長とのせめぎあいはあったし、とくに府立東淀川高校、大阪市立鯰江中学校においては、当時の校長が実施強行の姿勢を崩さず組合との対決姿勢をあらわにしたため、組合は全組合員、支援労組・団体に呼び掛けた「包囲闘争」に取り組んだ。これらの闘いはそれぞれの当該組合員に対する処分撤回闘争としてその後何年も続くこととなった。しかし、そうであっても、府教委は(あるいは府教委に「指導・助言」される市町村教委も)総体としては「強制にはなじまない」という姿勢は変えなかったのである。

 しかし、その姿勢が転換する兆しを見せ始めるのが2000年代になってからである。そして、あからさまに組合との対決姿勢を打ち出したのが2008年の橋下知事誕生以降のことである。以下、そのことを府教委自身の交渉等での発言で確かめてみよう。

 

4.府・府教委の「日の丸・君が代」についての交渉等での回答・発言

(注;ここで「交渉等での回答・発言」というのは、組合と府・府教委との定期交渉や「日の丸・君が代」問題などでの個別交渉での回答、組合側申し入れ時の対応での発言、また教育合同が参加する上部団体の大阪全労協と府・府教委との交渉・申し入れ時の発言、大阪府内の労働組合の連絡機関であるおおさかユニオンネットワークと府・府教委との交渉・申し入れ時の発言、行政内部の会議での発言などを指している。また、煩瑣を避けるために「府教委」としか表記していない個所でも、申し入れおよび交渉相手は常に「府・府教委」である。)

月日

交渉等

府・府教委による回答・発言内容

1989

12・15

「天皇誕生日」講話反対申し入れ

「(『天皇誕生日』講話について)文部省から何の通知も来ていないし、府教委としても指示・通達を出すことは考えていない」

1990

 

 

2・19

 

 

府立学校長対象予算説明会

 

「来年度からの学習指導要領の移行措置が円滑に行なわれるよう、今年度の卒業式での『日の丸』掲揚について特段の配慮をされたい」

3・2

 

 

新学習指導要領撤回・「日の丸・君が代」義務化反対申し入れ

「いろいろ意見があるのは承知だが、最終的には校長の責任でなされるので、今後とも通知などは出さない」

「学習指導要領違反と処分は別問題」

3・20

 

 

 

 

 

 

 

 

大阪全労協「日の丸・君が代」反対交渉

「指導要領の主旨を踏まえながら、粘り強く現場の理解を得られるよう指導する」

「努力の結果揚げられなかったら、校長を処分することにはならない」

「(『強制しない』と言えばいいと聞かれて)そう言うと何もしなくていいと受け止められては困るので」

「(実施状況調査は)現在のところ考えていない」

「(処分について)揚がっていないということで処分はない」

 

10・24

(おおさかユニオンネットワーク「即位の礼・大嘗祭」反対府教委交渉)

「文部省から指示が来ていないので対応を決めていない」

「普通の祝日と同じ扱いになるだろう」

「文科省の指示は府教委でストップできない」「これに何か新しく付け加えることはない」

1991

2・13

おおさかユニオンネットワーク府教委交渉

「『日の丸・君が代』を国旗・国歌と規定した法令はなく慣習による」

「世論調査でも80%が国旗・国歌と認識しておりオリンピックでも国旗が揚がっているのだから学習指導要領にそって行なう」

「『立太子宣明の儀』の『日の丸』掲揚について通知等を出すのであれば説明の場を持つ」

「学習指導要領の主旨にそって、国際理解の教育のために、世界の国々の国旗・国歌を尊重する態度を育てる。そのために自国の国旗・国歌を尊重する態度を育てる」

「学習指導要領は日本の生徒を対象にしたもので(指導一課)、発達段階に応じて指導するものである(指導二課)。したがって、在日外国人の子どもたちには配慮すべきである」

「ねばりづよく理解を求めるが、国旗が揚がらなかったといってそれだけで処分するものではない」

「現時点でこの問題については通知などは何もしていない。状況に変化がおこるようなら、説明の場を持つ」

2・15

府教委確認

「『立太子礼』の通知は命令・指導・助言ではない」

9・13

おおさかユニオンネットワーク処分撤回府教委交渉

「2月の『処分しない』という回答は校長を処分しないという意味だった」

「国旗掲揚は校長が行なうものである」

11・6

「日の丸」処分取り消し要求集会・府教委申し入れ

「『日の丸』処分取り消しは交渉事項ではない」

1992

2・18

おおさかユニオンネットワーク府教委交渉

「国旗が揚がらなかったといってそれだけで処分するものではない」

「共通理解がないから揚げない、休戦をするとはならない」

 

3・25

春闘総行動府教委抗議行動・交渉

「『校長に権限があることについては交渉当局である』『組合側の交渉権が本部にある』ことを認める」

1993

2・8

おおさかユニオンネットワーク府教委交渉

「PTAや一部の反対があっても校長の判断で実施する」

5・27

「皇太子結婚に対する通知」府教委交渉

「6月9日の休日化は国が決めたことなのでいかんともしがたい」

「国旗掲揚・児童生徒への理解指導については、校長に配慮願うよう取り計らいを願う」

「市町村教委それぞれに事情があると思われるので、適切に処置をお願いする」

「事後の調査は全く考えていない」

「(組合との事前協議なしに通知を出したことについて)今回のことも踏まえて今後このようなことがおこらないようにする」

「日給制非常勤職員について、休日化が決まる4月29日以前の採用者は当日賃金カットしない」

1994

 

 

 

 

2・15

「日の丸」反対総行動・春闘第一波行動おおさかユニオンネットワーク府教委交渉

「『日の丸』が揚がらなかったからといって処分しない」

「卒業証書の発行主体は校長である」

 

1995

2・7

おおさかユニオンネットワーク府教委交渉

「国内関係においては国旗について定めている法律はない」「国民の多数が『日の丸』を国旗として認めている」

「卒業式等の主催者は学校(校長)である」「掲揚することを指導する」

1996

2・13

おおさかユニオンネットワーク府教委交渉

「『国旗掲揚・国歌斉唱』通知は昨年と同じスタンスであり、校長へのお願いである」

「事前に指導はしない。結果として実施されない場合は、やむを得ない」

1997

2・10

おおさかユニオンネットワーク府教委交渉

1月8日付「入学式及び卒業式における国旗掲揚、国歌斉唱について」(教育長通知)をめぐって紛糾→昨年の経緯をふまえずに通知を出したことを謝罪

2・13

おおさかユニオンネットワーク府教委折衝

「ユニオンネットと事前に協議をせずに通知を出したことを謝罪する」

「『生徒に日本人としての自覚を養い』という通知文言が問題であることも認める」

「来年度は誤解のないように事前に協議する」

(折衝1週間後)「前例がないので文書回答はできない」

 

3・18

おおさかユニオンネットワーク春闘総行動府教委交渉

「昨年来の交渉の経過について、引き継ぎ上でミスがあり、回答ができなかったことをお詫びしたい」

「通知文にある『生徒』は日本人を指すもので、在日朝鮮・韓国人をはじめとする在日外国人生徒には配慮をする必要があることを説明できなかったことを謝罪したい」

「入学式の取り扱いについては、外国人生徒に配慮すること。配慮のあり方については各学校で自由にやってもらう」

「入学式に向けてこのことを各学校に周知徹底する努力を行なう」

来年度の通知に関しては、12月中にこの課題に絞って交渉することで合意。

8・18

「なみはや国体」府教委交渉

「参加は強制ではない」

「個々の自主的な判断である」

「学校を通したPRはしない」

「本来の教育活動が損なわれないよう配慮する」

「『国体』を理由にした各校への『日の丸』強制はない」

12・18

おおさかユニオンネットワーク「教育長通知」府教委交渉

「通知文の誤解を招く点について内部討議をし各校長に対して特段の配慮を行なうように周知したい」

「『日の丸・君が代』について一律一斉に実施してもらうことについては留保している」

交渉の成果を無駄にしない方向で、通知文について事前に連絡するとの合意が成立

1998

1・8

府教委組合来訪

「従来通りの通知文を出すことにした」

1999

2・10

「日の丸・君が代」府教委交渉

「指導要領に基づいて実施するよう粘り強く理解を求めていく」

「校長への個別指導について、校長を呼んだのは事実。対象は実施していない約80校の校長。内容は『相談に乗る』というもので圧力をかけるためではない」

反対せざるをえない生徒を抱える高校については善処を確約

 

3・23

府教委28市教委呼び出し

「全国状況に比べて大阪の実施率が低い」

「広島のようなことになるのを危惧している」

3・24

府教委未実施府立学校長呼び出し

未実施の府立学校長に対しても「指導」

10・18

「天皇在位10周年式典」府教委申し入れ

「教育内容に関わるものではない。校長の施設管理の問題である。最終判断は校長が行なう」

2000

2・21

「日の丸・君が代」府教委<高校教育課>交渉

「方針に変化はない。学習指導要領に基づいて国旗・国歌を実施してほしいという強い思いはあり、お願いしている」

「職務命令については、他府県のようなことは考えていない。実施しないからといって(校長に対する)処分は考えていない。実施するかしないかは最終的には校長の判断である」

「よく論議して、共通理解を得て実施してほしい」

「1月12日の臨時校長会で9月議会の教育長答弁を口頭で伝え、国旗は壇上に掲げ、国歌は式次第に入れて、起立して斉唱することが望ましい<いわゆる3点セット>と指導・助言した」

「『日の丸・君が代』未実施校の校長を呼びだし指導した」

「3点セット」の法的根拠示せず

「(生徒の『思想・良心・信教の自由』については)各学校の実態に合わせて、校長の判断によって配慮がなされてよい」

「(『卒業式が混乱してもよい』と発言する校長が出てきていることについて)そういう姿勢は好ましくない。共通理解を得るよう努めるのが府教委の基本姿勢である」

4・3

府教委府立臨時校長会指示

「役割分担を果たさないなど混乱が予想される場合には職務命令を出すよう」

「妨害行為などは事実を把握し、教委に報告を」

2001

2・14

「日の丸・君が代」府教委交渉

(1月19日府立校長会での指導内容)「国歌斉唱を指揮の中に位置づけること」「PTA役員には理解を得ておくこと」「あらかじめ教職員には斉唱起立するよう伝えておくこと」「司会者は起立を促すが、不要な発言はしないこと」「校内でのビラ配布は許可しないこと」

「(『不要な発言』とは)思想・良心の自由については、教育活動全般において指導していくものであるから、ことさら言うのは不適切である」

「学習指導要領の範囲内で行なわれることは、思想・良心の自由を侵すものではない」

「最終決定は校長が行なう」

2002

7・3

東豊中高不当処分撤回府教委交渉

「卒業式での発言が生徒や保護者をはじめ府民の学校教育および教育公務員への信用を著しく失墜させた」

「(その根拠は)校長の嫌悪感と式後の匿名の電話」

2003

2・7

「日の丸・君が代」府教委交渉

「通知文中の『わが国』とは言うまでもなく日本」

「『日本』の建国の時期についてわからないというのが府教委の統一見解」

強制通知撤回・府職員派遣中止を拒否

2004

2・10

「日の丸・君が代」府教委交渉

地教行法の「指導・助言」と「指示・命令」で混乱

「職務命令にはなじまない。この問題は服務上の問題ではなく指導上の問題である」

2005

2・1

2・18

「日の丸・君が代」府教委交渉

「万やむをえない場合、新しい取り組みの可能性としての職務命令」(050105府立臨時校長会)

「現時点で職務命令の必要性を感じない」

確認「職務命令は好ましくない」「式中の職務命令による混乱も好ましくない」「府教委が職務命令を出させることは一切ない」「校長には粘り強い指導を求める」

2006

2・22

「日の丸・君が代」府教委交渉

「良心の自由を保障する」

「校長が一方的にするのも好ましくない」

「式の状況には立ち入ってはいない」

「校内のビラ配布は認められない」「勤務時間内かどうか状況を把握するよう校長におろしている」

「(来賓、教委派遣員による「起立」強制発言は)当日すべきことではないと考えている」

2007

2・6

「日の丸・君が代」府教委交渉

「現在の教委の指導は斉唱強要、人権侵害にはあたらない」

門真市教育委員不起立生徒非難発言→府教委として事実把握・報告

「校長への指導内容は例年通りで、踏み込んだ点はない」

「式の形態については指導も関与もしていない」

「『日の丸』の位置は壇上にこだわらない、斉唱時の「号令」は指導対象ではない」

2008

2・15

「日の丸・君が代」府教委交渉

「『職務命令は好ましくない』『府教委が誘導的に職務命令を出させることは一切ない』『組合活動には一切介入しない』等について、従来のスタンスを変えるものではない」

(音楽科非常勤講師に対して「君が代」ピアノ伴奏職務命令を出すことについて交渉で答えられず後日口頭で)「労働条件として明示されたことを超えて職務命令を出すことはもちろん許されない。ボランティアとして本人が自発的に申し出ることを否定するものではないが、校長から依頼される場合には、翌年度の雇用の問題などを本人が考えるために権力関係の中で圧力となるので好ましいことではない」

2009

2・20

「日の丸・君が代」府教委交渉

門真三中処分が府教委主導で行なわれたことを認める。

引き続いて不起立を行なえば、職務命令違反でワンランクアップした処分を行なう可能性を公言する。

「(不起立学校名を右翼に伝えていたことについて)府民への情報提供である」

10・16

天皇在位20周年DVD配布問題府教委申し入れ回答

「文科省の依頼に基づき事務的に配布したものである」

「(DVD回収は)事業主体である内閣府が判断するもので、府教委が判断する問題でない」

「DVD活用の依頼をもらったわけではない。この件で介入する意図はない」

「(この件での組合との交渉は)協議を受ける立場ではないので、話し合いの場は持たない」

2010

3・31

府教委府立学校15校校長呼び出し

「入学式は職務命令を出してでも起立させよ」

2011~2013

2011613「君が代」起立条例施行】

(交渉が実現せず)

201241府職員基本条例施行】

2014

 

2・26

「日の丸・君が代」府教委交渉

「(首席・主査に斉唱現認の「補助的役割」をさせることについて)入学式に向けて改めて考え方を整理するが、今年の卒業式はこれでいきたい」

「通知は一言一句変えない」→(交渉終了後)「訂正します」

3・25

府教育委員会議

「(首席・主査現認方針を)各校の状況に応じて、校長・准校長の責任と裁量において実施する」

         

 

 

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