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「君が代」不起立処分大阪府・市人事委員会不服申立ならびに裁判提訴当該15名によるブログです。

落語とは人間の業の肯定である

2012-10-12 01:58:36 | 

※2012年2月12日、中之島公園で始動した「橋下さん、ひどない!? ☆橋下さんにひとこと言いたいプロジェクト ☆」は、私たち当該よりずっとずっと若い人たちの企画でした。そのブログから、ご本人の了承のもとに、スタッフからのメッセージを掲載します。実は職場で配布したとき、「うちの子どもに読ませたい。」「あの話は印象に残った」と評判になったものです。

http://hitokoto21.exblog.jp/ 

ひとこと言いたい!プロジェクト☆スタッフからのメッセージ③☆

 大阪W 選直前に書いた文章を、一部加筆修正し、メッセージとしてココに掲載します。


『落語とは人間の業の肯定である』

「赤めだか」という本の冒頭、
佐々木という中学生が学校の課外授業で、落語を見にいく。
何人目かで表れた落語家、立川談志は、落語の演目なんてやらずに、いきなり、本質を話し出す。

「あのネ、君たちにはわからんだろうが、落語っていうのは他の芸能とは全く異質のものなんだ。

どんな芸能でも多くの場合は、為せば成るというのがテーマなんだな。
一所懸命努力しなさい、勉強しなさい、練習しなさい、
そうすれば最後はむくわれますよ。良い結果がでますよとね。

忠臣蔵は四十七士が敵討ちに行って、主君の無念を晴らす物語だよな。
普通は四十七士がどんな苦労をしたか、それに耐え志を忘れずに努力した結果、
仇を討ったという美談で、当然四十七士が主人公だ。
スポットを浴びるわけだ。

でもね赤穂藩には家来が三百人近くいたんだ。
総数の中から四十七人しか敵討ちに行かなかった。
残りの二百五十三人は逃げちゃったんだ。

まさかうまくいくわけがないと思っていた敵討ちが成功したんだから、江戸の町民は拍手喝采だよな。
そのあとで、皆切腹したが、その遺族は尊敬され、親切にもされただろう。
逃げちゃった奴らはどんなに悪く云われたか考えてごらん。
理由の如何を問わずつらい思いをしたはずだ。

落語はね、この逃げちゃった奴らが主人公なんだ。

人間は寝ちゃいけない状況でも、眠きゃ寝る。
酒を飲んじゃいけないと、わかっていても、つい飲んじゃう。
夏休みの宿題は計画的にやった方があとで楽だとわかっていても、そうはいかない。
八月末になって家族中が慌て出す。

それを認めてやるのが落語だ。

寄席にいる周りの大人をよく見てみろ。
昼間からこんなところで油を売ってるなんてロクなもんじゃねえョ。
でも努力して皆偉くなるんなら誰も苦労はしない。
努力したけど偉くならないから寄席に来てるんだ。

『落語とは人間の業の肯定である』。

よく覚えときな。

教師なんてほとんど馬鹿なんだから、こんなことは教えねェだろう。

嫌なことがあったら、たまには落語を聴きに来いや。

あんまり聴きすぎると無気力な大人になっちまうからそれも気をつけな!」

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落語家・立川談志さんが亡くなられた直後、ある方がブログに書かれていたこの話。
なんだか、ずしーんと来た。
読み終わって、
「なにやってんだ大阪」「なにやってんだ橋下」
と急に悲しくなって涙が出た。
しかし、大阪W戦は2日後に迫っている。

教育の中にこそ、人間の業を緩やかに認める「あそび」の部分が必要だ。
「あそび」の部分があってこそ、様々なバックグラウンドを持つ子どもたちの居場所が出来る。
「あそび・ゆるみ」、言い換えるなら、「矛盾やままならなさを受け止める余裕」。
そんなものを大切に受け止める中で、子どもたちは育まれる。

「どんな芸能でも多くの場合は、為せば成る
というのがテーマなんだな。
一所懸命努力しなさい、勉強しなさい、
練習しなさい、そうすれば最後はむくわれますよ。」


努力をしてもなかなか報われない現実の中でも、生き延びていくしかないことを幼くして知った子どもたちを、緩やかに受け止め、寄り添って来たのが、いろんな人間が生きている、ここ大阪が大切にしてきた教育だったのではないかと思う。

「大阪維新の会」が提出した「教育基本条例案」には、その、「あそび・ゆるみ」の部分を一切感じない。だから、背筋がゾクッとする。

「教育基本条例案」の基本理念の中にはこんなことが謳われている。

第一章 目的及び基本理念
(基本理念)
三.他人への依存や責任転嫁をせず、互いに競い合い自己の判断と責任で道を切り開く人材を育てること

六.グローバル化が進む中、常に世界の動向に注視しつつ、激化する国際競争に迅速的確に対応出来る、世界標準で競争力の高い人材を育てること



私はこの2つの基本理念が特に嫌いだ。

子どもたちよ、大人の思惑で製造されるな。
ボイコットしちゃえ!

「でも努力して皆偉くなるんなら誰も苦労はしない。
努力したけど偉くならないから寄席に来てるんだ。」


この部分の言葉が好きだ。
ままならなさを生きる現実の、静かな、いとおしさがある。

例え「偉く」なれなかったとしても、
ままならなさを抱えながら、それでも生きていく様々な方法を、
できる得る限り伝えるのが、教育の大きな役割なんじゃないかと思っている。

  ☆AMANI☆

 
コメント
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