ゆうの気まぐれ日記

備忘録のつもりで書いています。

好きな詩

2020年08月23日 | 日記

用事の待ち時間に気軽に読める詩集を持って行った。

新川和江さんの『わたしを束ねないで』という本。

もう何度も読んだがやはり素敵だなあとあらためて思った。

 

『わたしを束ねないで』 新川 和江

 

わたしを束ねないで

あらせいとうの花のように

白い葱のように

束ねないでください わたしは稲穂

秋 大地が胸を焦がす

見渡すかぎりの金色(こんじき)の稲穂

 

私を止(と)めないで

標本箱の昆虫のように

高原からきた絵葉書のように

止めないでください わたしは羽撃(はばた)き

こやみなく空のひろさをかいさぐっている

目には見えないつばさの音

 

わたしを注(つ)がないで

日常性に薄められた牛乳のように

ぬるい酒のように

注がないでください わたしは海

夜 とほうもなく満ちてくる

苦い潮(うしお) ふちのない水

 

わたしを名付けないで

娘という名 妻という名

重々しい母という名でしつらえた座に

坐りきりにさせないでください わたしは風

りんごの木と

泉のありかを知っている風

 

わたしを区切らないで

,(コンマ)や ・(ピリオド) いくつかの段落

そしておしまいに「さようなら」があったりする手紙のようには

こまめにけりをつけないでください わたしは終わりのない文章

川と同じに

はてしなく流れていく 拡がっていく 一行の詩

 

※私の好きな詩の一つ。

今朝観た24時間テレビに瀬戸内寂聴さんが出演されていた。

御年98歳とのこと。

瀬戸内寂聴さんもまさに、この詩のような生き方をされてきた方だと思う。

「もう文を書くのも飽きたから今度は絵を描くことにチャレンジ

しようと思ってる。油絵を描こうと思ってる」というようなことを

お話しされていた。

98歳で新たなことにチャレンジしようとされているその姿勢に

驚くとともに大いに励まされる思いがした。

ぬるま湯に浸っていないで私も少しは目を覚まして

チャレンジしなくてはと思った。

 

 

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