薫 風 ~KUNPOO~

初夏に薫る爽やかな風に思いをよせ、YukirinとKaorinが日々の出来事などを綴るページです。

国語教科書の中の「日本」

2009-12-19 | 本  棚
■ 石原千秋『国語教科書の中の「日本」』ちくま新書。本業は夏目漱石研究家のようだが、受験での国語問題の「読み方」から、最近では教科書批評までこなしている著者の新刊。今回は、最近の小中学校の国語教科書では一体どのような作品が教材として取り扱われているのか、そしてその背景にあるものを探る。

■ 要は、小説・随筆・詳論などさまざまな形式はあるにせよ、子どもたちに「古きよき日本」という「内面の共同体」を形成しようとしているという。母親がつくってくれる「おにぎり」とか、本来田舎者にしか存在することのない「故郷」といった題材が、わたしたち日本人共有の概念としてまことしやかに取り上げられている。それでも最近の教科書では、(母親でなく)父親や(田舎ではなく)団地の生活の様子を描いた小説なども取り上げられるようになってきたという。

■ 小学校の頃から国語が苦手で、「自由に解釈して良い」はずの国語試験になぜ正解があるのかよくわからなかった私には、毎度毎度いろいろな読み方を提示してくれる著者の指摘には、いつもハッとさせられる。「物の豊かさ」を得ることは出来たが「心の豊かさ」は失ってしまったといった「昔は良かった」論が、まことしやかにまかりとおっているという点には、思わず「そう、そう」と頷いてしまう。

■ 娘が小学校に行くようになったら、童心にかえってまた一緒に読んでみたいものだ。

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