薫 風 ~KUNPOO~

初夏に薫る爽やかな風に思いをよせ、YukirinとKaorinが日々の出来事などを綴るページです。

ヴァイオリニストの音楽案内

2005-12-29 | 本  棚
■ 高嶋ちさ子『ヴァイオリニストの音楽案内』PHP新書。6歳からヴァイオリンを弾き始めた彼女。雑誌オレンジページに連載されたエッセイをまとめたものです。

■ バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンからショパン、バーンスタインまで著者自身が大好きな曲を中心に50曲が厳選されています。どの曲も必ずどこかで耳にしたことはあるような有名な曲ばかり。作曲家のエピソードや演奏技法、演奏者ならではの経験など、本当に楽しんで読めます。

■ 彼女は、オペラもバレエもそんなに興味はないといいます。なぜなら、「われわれ演奏者を二の次に考えていて、ピット(舞台下の暗い場所)に入れられちゃうし、自分たちの歌い方や踊り方に音は合わせろ!!という考え方が気に入らん。」そう、オーケストラにとっては、オペラの演奏って実はあまり心地のよいものではないようです。わりと単調な演奏が多いし、ピットの中で管楽器を吹いた日にはまるで風呂場のなかで吹いているようなものだと・・・

■ 彼女が師事した徳永先生の言葉も面白い。「ヴァイオリニストが書いた曲はどんな超絶技巧でも、一度わかれば弾けるものだけど、ブラームスやベートーヴェンのように自分が弾けないやつが書いたのは弾きづらい。」そうだろうなぁ。でも、自分では弾けもしないのにもかかわらず、素敵な曲を書いてしまうというのも、これまた凄いけど。

■ そして音楽家といえども人の子。プロとはいえ、舞台の上ではかなり緊張するようです。「いつも自信満々で舞台の上で演奏しているように見える音楽家たち。しかし直前の舞台裏というものは、緊張と戦いながら切羽詰った顔でうろうろしたり、なかには倒れそうになっていたり、本当に倒れちゃったり、本当にさまざまな人間模様が繰り広げられている。」これまた徳永先生によれば「人前で緊張しないような無神経な奴は、逆に音楽という繊細なものには向いてない」ということらしい。結局それを乗り越えるためには練習しかない。スポーツの世界と同じですね。

■ いくつかのオーケストラを経、国内で活動するにあたって、自分でコンサートの曲目解説をすることを思いつき、「クラッシクを好きでも嫌いでもないけど、ちょっと聴いてみようかなと最近思いはじめている人」にむけて書かれているだけあって、わかりやすく面白く読めます。全体を通して、読んでいて、つい「プッ」と噴出してしまいます。

■ 本当に、読んでいるとその曲を聴いて見たくなってしまいます。お勧めのCDも掲載されていますが、そのうち私が持っていたのは4~5枚程度かな。またCD屋さんへ行って、探してみなくては・・・