como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

「花燃ゆ」第4回

2015-01-26 22:44:54 | 過去作倉庫15~
 今週は、今までで一番できがよかったと思います。
 やはりNHK、腐っても朝ドラの老舗、とりあえず朝ドラフォーマットに入れれば1話完結の話をまとめることができるし、1話のなかで笑いあり涙あり、ほろりとさせ、純情なひとなら本気で感動させてしまうこともできる。長年の蓄積でできた技術ですね。
 まあ、よかったといっても朝ドラ構成の「良かった」なんで、とりあえず「なんでこれを日曜8時に見なきゃならんの」という基本的な疑問は脇に置いておく必要があります。朝ドラといっても、よくある寒いラブコメも入らないし、主役のドジッ子キャラがすべっているようなこともない。お父さん・お母さん・お兄さんを思いやる健気な良い子の真っ当な物語。いいですね。朝ドラとしてはホントにいいです。まさに「おひさま」の江戸時代バージョンじゃないですか。
 朝ドラでもなんでも、ちゃんとバランスよく物語が進んでいくというのは、案外大事なことだと思います。それだけで人はドラマを見ますからね。

 といってもそれだけじゃ困るのよな…

 ということで、第4回「生きてつかあさい」を見たいと思います。

下田踏海をめぐるあれこれ。

 今週はいよいよ、吉田松陰の短い生涯の大イベント・下田踏海の場面になります。
 先週まで散々口酸っぱくして言ってきましたように、この場面に至るまで、ペリー率いるアメリカの艦隊がなにを要求しに日本にきていて、日本がどういう対応をしていたか、日本の若者はそれに対してどのようにエキサイトしたか、といった描写が皆無で、吉田松陰がなぜに密航未遂までするほど思いつめたのかも、当然ながらまったく教えてくれてませんでした。
 そんな状況で、拾った漁師のもやい船にのって停泊中の黒船を目指した若き吉田松陰は、どうみても「陽気の加減でヘンになっちゃった人」です。
 しかもこのとき拾ったもやい船には櫓杭というものがついてなかったので、櫂をつかってこぐことができなかったんですね。乗って海に出てからそれに気づき、パニクって、とりあえずフンドシを外して櫂を船にしばって必死で漕いで言ったんですが、当然ながらこの運動で帯ははだけて前ハダカ、しかもフンドシをしていないという。ほとんど、陽気の加減で出てきちゃった露出狂の人状態……あ、いやもちろん伊勢谷友介さんのノーパン前ハダカ、なんてものはNHKの日曜8時に放送したりしませんので、ココロの目でみたものを言ってます(ヲイ)。
 それにしてもよく黒船のアメリカ人は松陰と金子重之輔君を船に上げてくれたよね。しかも英語が話せず、そのあられもない姿で(!)必死に、自分たちはこれこれこういう理由で是非ともアメリカに渡りたい、連れて行ってください、と日本語で(!)懇願するのに耳を貸してくれたと思うよ。
 そして日本語の通訳が現れ、松陰たちの行動の趣旨は理解してくれるのですが、われわれ視聴者にむけては、どうしてそういう行動に至ったかの理由は説明してくれません。そこで自己完結的にわかり合わないで、視聴者にも状況が分かるようにしてくれ、と思いますが。

 いや、わかってますよ。そのあたりの事情は、松陰の密航未遂の趣旨も黒船来航の趣きも、それは一般常識として人並みには知ってますが、だからといって「そのへんのことは知ってる前提でいいよね?」では手抜きすぎじゃありませんか、という話です。
 この、松陰の最初の破壊行動のモチベーションがどこから来てるのか、説明しないわけにはいかないと思うんですよ。そこをスルーしてしまうと、その後の彼の行動が全部支離滅裂なキ印のそれになってしまうんですもの。いや、わかってても実際かなり支離滅裂でキ印に近い面もあるんだから、ある程度思想的なバックボーンを持たせてやらないと、ほんとに、この人をどういう人物に描きたいのか、どうするつもりなのかと思っちゃう。

ホームドラマパートが悪くない。

 松陰の思想と時代相をまったく説明する気が無い代わり、ご家族の心境はコテコテにやってくれてました。それでしか時間を埋めるものがないからしょうがないとも言えますが、そんなに丁寧に盛らなくても…と思うくらいの盛りっぷり。
 それでも、あの「江」みたいなムカつくような悪趣味ホームドラマじゃなく、あら、けっこう趣味が良いわとか思ってしまったので、やっぱりNHKの朝ドラ手法はバカにしたもんじゃないですね。
 今週は特に、原田泰造さん。なんか、いい役者だなあと思ってしまった。寅次郎の安否を確かめに江戸へ行って、帰ってきて、自分はどうするのか逡巡し、責任とって自決まで考えている夜に、妻に「昼間は忙しくていいそびれてしまいましたが、おかえりなさいませ。よう御無事でおもどりくださいました」と言われ、「………んっ」と頷くところなんか、実があって非常に良かったです。
 あと、サブタイの「生きてつかあさい」というのを寅次郎じゃなくてじつは文ちゃん(井上真央)がお父さん(長塚京三)に寄せた言葉だったと裏返したり、そうせい候(北大路欣也)がお父さんにさりげなく示した温情とか、けっこう芸が細かく、しかも興ざめなセリフでベラベラ心境を吐露するようなこともなくて、そのあたりは「あれ、悪くないんじゃ……??」と思ってしまいましたね。

小田村伊之助の残念さ

 ファンの方には申し訳ないんですが、わたし大沢たかおさんて「なんでこんなに残念なんだろう、何を演じても残念なんだろう」と長年思っていました。「JIN」は、彼のナチュラルボーン残念な持ち味が最大に生きた名作だったと思うのですが、ああいう奇跡はあまりしょっちゅう起こるものではないのですね。
 で、今大河ドラマでも大沢さんの残念パワーは早くも全開しようとしてまして、今週なんか何度も吹きましたよ。とくに、自分の留守中に家を守ってひとりで出産までした産後の妻(優香)にむかって、「寅次郎がこの子(赤ん坊)とおれを結びつけてくれた」などとウットリ顔でのたまう空気の読めなさかげん。それを受ける優香の引きつった顏もおかしくて、ほとんどコメディの領域。
 いやあ、この人ヒロインと一緒に最初から最後まで登場すると思うんで、あとどのくらいこの残念っぷりで笑わせてくれるか、ちょっと楽しみになったりなんかして。

ところで、今後にむけてひとつ気になっていること。

 これは、書いていいものか迷ったのですが、これを書いている現在、イスラム国に邦人二人が人質にとられ、うちお一方が殺害されてしまったというむごいニュースが、日夜分刻みで報道されています。
 こんなふざけたブログで言及するのは不謹慎だと承知しておりますが、この件でにわかに気になったことがひとつ。
 幕末の長州藩っていうのは、ある意味「過激テロ組織」だったんですよね。歴史を紐解いていけば、近年の過激派やテロ組織との親和性はこわいくらい見いだせるのですが、この状況で、NHKはそのあたりをどうドラマで捌いていくつもりなのか。このまま「幕末男子」たちをキラキラに美化していくと、テロによる社会変革という考え方を美化することになるけどそのあたりをどうお考えか、と、ふと思いました。
 いや、なまじ歴史の重さなんてものは匂わせず、説明も最小限にとどめて、ただただ軽薄な「日本の夜明けエーー!!」で明治維新を総括し、幕末男子の育て方・はあと、とか言って徹底的に毒抜きしてしまうほうが……歴史に手を触れず、昨今のむごたらしいニュースとの関連付けなど一切拒否して突き進んだほうが、ドラマの手法としていまは正しいのかもしれない、と思ってしまいました。って、いままで言ってることと真逆じゃねえか、と突っ込み覚悟ですし、じぶんでもそう思います。。
 いや、実は一瞬、幕末期のテロ組織としての長州藩から眼を背けないで、昨今の世界の混乱にもつながる大きな視野で幕末ドラマを描けたら…などと夢想しました。したんですけど、いやいやいや………。そんなこと思い付きで半端にやらないほうが、むしろいい。やんないほうがいい。この状況ではね。
 でも、そうはいってもこのヌル湯みたいなホームドラマで1年つづけるのもキツイもんがあるし、どうするのか。けっこう本気で心配。

 そんなことで、世界はますます混沌とし、ドラマどころではないニュースに目が釘付けになる日が続くなかで、この大河ドラマがどこへいくのか、今のところはまだ生温かく見守りたいと思います。


5 コメント

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こんにちは ()
2015-01-27 18:09:57
ブログ再開、本当にうれしいです!
ご無理なさらず、庵主さまのご都合に合わせてぽちぽち更新していただければ、それだけで、もう♪

長州=テロ組織…納得です。
伊藤博文も、塙保己一の息子で国学者・次郎を(勘違いで)暗殺したといわれてますし。
池田屋のきっかけになった孝明天皇拉致計画だって、立派なテロ行為だと思うのですが、今回、そこはどう正当化するのでしょう。
(え、まさか、そこもスルー?)
それにしても、山口県からクレームがきた「八重の桜」の方が、松陰先生のやむにやまれぬ感を丁寧に描いていたのに…なんだか皮肉ですね。
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雰囲気は悪くないんだけど (SFurrow)
2015-01-31 10:59:51
確かに嫌味のないヒロイン像といい、『篤姫』以来泣かせるパパ役が定着している長塚京三さんといい、朝ドラ大河として見れば、悪い雰囲気ではないんですけどね。
ただ昭和世代としては、朝ドラであっても父親ってのは長塚さんよりも中条静夫さんなのよね~(雲のじゅうたん…古過ぎか)
残念なJIN先生転生伊之助くんの結婚ですが、「相手自身よりも、その父や兄との結びつき重視の結婚」というのは、私の母世代では普通でしたし、私自身の世代でも、たまにありましたよ。ただ、相手自身の立場も一応は考慮すべきなわけで、そのへんがあまりにも天然っていうのは、どの時代であってもやっぱり残念には違いないか。

現実のところ、3時間後に『ダウントンアビー』を見てしまうと完全に消し飛んでしまうという、「薄い大河」であることが最大の問題かも。自分の意思と無関係に「英霊の妻」にされちゃうとか、外国の話とは思えないですよね~再び『ダウントン』レビューも等と無理は申しませんけど(Twitterはいつも拝見しております♪)

『銀漢の賦』、渡辺ジュニアはお役御免でしたが、平ジュニアのほうは、息子役で復帰してました。木曜のこの枠も、数少ない時代劇としては貴重ですよね。
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テロ集団の定義 (庵主)
2015-01-31 21:11:51
>彩さん、コメントありがとうございます。

お陰様で再開しました。
なんとなくマイペースでゆるゆるやっていけたらいいかな、と思います。

長州=テロ集団は、いろいろな意見もあろうと思います。
もちろん現実に表に出た暗殺やクーデター計画も数多いんですけど、ようは、
「自分たちの理想とする社会を実現するために、人を殺したり、社会を破壊するという手段を正当とみなす」
という理念に基づく活動をテロ活動と定義するなら、長州はテロ団体だと思うわけです。
そのあたりをドラマとして美化するのか、批判するのかどうするのか、ちょっと興味を持って見守ってみたいと思ってます。

下田事件に関しては、扱いが小さかったはずの「八重の桜」のほうが、たしかに的確に事件の核心をついて描いてましたわねえ…。
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心は英国のほうに… (庵主)
2015-01-31 21:26:33
>SFurrowさん コメントありがとうございます。

>朝ドラであっても父親ってのは長塚さんよりも中条静夫さん

うわっっ懐かしいお名前!!
私の世代では父親=宇津井健さんなんで、やっぱり長塚京三さんだと父親と言うより「上司」って感じですね。
あと、「花神」つながりだと長塚さんはなんと前回は土方歳三役(!!)なんですから。枯れきっちゃったお父さんでは違和感も激しいですわー。
実は篤姫のお父さんは、あまりにも乙女チックでメソメソしすぎてて嫌だったクチなので…ww

ぜんぜん関係ないけど長塚さんは最近では「薄桜記」での吉良上野介が絶品でしたわ。
平ジュニアの復帰…
じつは、「銀漢の賦」は、今週・先週と見ていたはずなんですけど、途中で意識を失ってしまい、気が付けば、もうすぐ9時テレマップをやっていたという…。
そんなわけで見逃してしまいました。次回は気を確かにして確認したいと思います。

ダウントンアビーも、レビューしたいのはやまやまなんですけど、あまりにも濃い展開になっちゃって、もう見るので一杯一杯というか。(でも、そのうち突然語り始めるかもしれません)
たしかに、英国のほうがほんとに濃くて濃くて、8時45分まで見てた長州の話を全部忘れて、心はイギリスにいったまま眠りについてしまうのですよね…。
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Unknown (じゅでぃ・すみす)
2015-01-31 22:06:32
小学生の息子が「おかーさん、今年の大河は合戦シーンがいっこもないから、おもんないなあ」
幕末男子はどーでもよろし。小学生男子は、こう思ってます。

そういえば、萩に行ったとき、宿泊先のYHのおじさんが「長州藩では、毎年正月に萩城に集まって藩主に向かって「今年こそ(政権をひっくり返しましょうぜ)」と挨拶するのが正月の恒例行事でした」と話していたことを思い出しました。ちょうど「毛利元就」をやってた時で、安芸からあんなちっこいところに移されて、藩主一同恨み骨髄な気持ちで、毎年ネチネチと誓ってたんやなあと妙に納得してその話を聞いたもんです。まーそーいうネチネチ感って、やっぱり出てこないですよね。

私の中では長塚京三さんは、昼ドラですね「花の嵐」とかの。みょーに、変に屈折した感じがすごく好きだったから、普通にいい人やってはるのを見ると、なんか、「もっと、クセのある役やってよ~」と思ってしまいます。
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