como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

花燃ゆ 第38回

2015-09-24 21:46:08 | 過去作倉庫15~
 一週間ご無沙汰してしまいました。
 10月いっぱいまで個人的な都合で忙しくしておりますので、更新も毎週キッチリは難しくなりそうです。まあ、こんなロクでもないブログが誰の得になるわけでもなし、自分の肥やしにも、大してなるとは思えないので、ここで完全に断筆してもいいんですけど、とりあえず2年続けて挫折しちゃったし、ことしはどんなに下らなくても、休み休みでも最終回まで続ける、ということを一応の目標にしたので、できる限りは続けてみたいとおもいます。
 それにしても「見続ける」ということだけでこんなにハードなクエストになるとは思いませんでしたね…。

 コメント欄のほうは、多忙と意欲の減退のためお返事を書くのが難しく、心苦しいので、誠に勝手ながらしばらく閉鎖とさせていただきたいと思います。コメントお寄せ下さった皆様には、ほんとうに申し訳ございません。

 以上、業務連絡でございました。


 さて、話はまったく違いますが、今週で最終回を迎える朝ドラ「まれ」の評判がすこぶる悪いんですね。
 わたしはウィークデーは最初の5分くらいをチラ見するかしないか程度なので、話についていけてないんですが、たまたま、あのドラマのどこがいらつくのかということをまとめた記事を見て、そりゃそうだな…と納得するところがありました。
 ようは、地方の町の人々が日常の仕事もしないでトグロを巻いて日がなだべっていたり、ヒロインが「夢を追い求める」という理由で人の迷惑も顧みず何度も唐突に仕事を辞めて転身したり、「働く背中を子供に見せたい」とか言ってデイトレーダーをやめて塩田職人になる、あるいは芸能界の夢破れてアパレル店員、さらにキャバクラ嬢になるとかいった周辺キャラの身の振り方など、「地方の居住者や地方公務員やケーキ屋さんやデイトレーダーやアパレル店員やキャバクラ嬢に失礼だ」、と、まあこの手のお粗末なディテールが満載で、市井の普通の生活者をものすごくバカにしていないか?ということらしいんですね。
 それはたいへん良く解るけど、あれでけっこう高視聴率とってるみたいで、それってどういうことかと思いますよ。叩かれてもなんでも数字出してなんぼ、突っ込まれ目的でわざわざ非常識な展開をするという、ようはヤフー知恵袋の釣り質問みたいなドラマという新ジャンルが…出来てしまったんではないですか。なんか背筋が寒くなりますね、その手のものが大河ドラマ界に進出してきたらと思うと。…いや、もしかして今私が見てるのは、まさしくそれなのか?
 そうなるとあんまり頑張ってツッコミどころを探してドラマを見るのも、相手の思うつぼというか…。もうそろそろ潮時なのかな。

 ということで、明治二年の奇兵隊脱退騒動を描く、第38回「届かぬ言葉」でございます。誰から誰へのどんな言葉が届かないというのか、さっぱりイミフのサブタイでございます。
 ほんとにイミフなんですけど、まあ、対立する脱退兵士と藩のあいだに入って説得に苦心する楫取素彦さんの言葉が、努力と熱意にもかかわらず「届かぬ」、という意味らしい。だけど、悪いけど今回の見てると、カトリさんの言葉が「届かぬ」のも当然だと思いますよ。

 だって頭悪すぎるんだもん。

 いやもうホントもう、あったま悪いの、このカトリって男。藩と諸隊のあいだを調停するにはそれなりに口八丁手八丁、やりかたあるんでしょうに、ただただ力んで「やつらの話聞いてやってください」「わたしの話信じて下さい」って言うばっかりで、具体的になにもしない(できない)んだよね。できることといったら、で、出ました御家芸「ザ・座り込み」! 
 なんかもう頭悪すぎて哀しみすら漂ってきましたけど、ようは、頭の悪い脚本家が書く歴史ドラマは、高度に知的な人物を描くことが「できない」のですよ。
 去年の官兵衛とかもそうでしたけど、これは、戦国や幕末の政治劇を長いドラマで描くには、致命的な問題ですよね。インテリジェンスの側面からドラマを描けない結果、「熱意さえあれば」的なことに依存して、ひたすら体当たりでで直談判、懇願の繰り返しになる。懲りずに何度も何度も。どー見ても頭よさそうに見えませし、それのまま終盤ともなると、中の人の顏まで素でバカっぽく見えてしまい、ほんと役者さんがお気の毒だと思います。

 今回のテーマになった奇兵隊脱退騒動の件。これをに取り上げたこと自体は(カトリのエピソード盛りのためだけといっても)評価をしてよいと思います。長州が主舞台で明治まで描くドラマでないとまず映像化されることないもんね。しかも、これ大事なことなんだけど、この脱退騒動って、長州の栄光の維新史のいわば「黒歴史」なんだよね。それを、意識して取り上げたのかどうかはわかりません。まあ、黒歴史を黒歴史だとわかってとりあげたなら、見上げたもんだと思いますが。

 ただ、問題は、この奇兵隊脱退騒動が

○ なんで、急に人格変わって「人の話を聞かない二代目」になってしまった若殿・元徳さまの自分探しの物語にすり替わるのか

○ なんで「母体である藩」と「ともに維新を戦ったなかま」のあいだに入って苦労する楫取さんの盛りエピソードにすり替わるのか


っつうことなんですよ。

 奇兵隊脱退騒動そのものは、まあ、(すごくざっくりと端折ってスリム化しているにしても)概ね史実にのっとっていて、極端にへんなところもないようでしたけど、前述の、楫取素彦があまりにも頭が悪く見えてしまう問題と、もうひとつ、いちばん問題なのは

○なんで富永有隣を端折ったの?

 これがわかんないです。富永有隣は、この脱退騒動の黒幕というくらい重要人物なのに。序盤からわざわざ富永有隣を出しておいたのに、吉田松陰が逮捕される直前に生霊みたいに(爆笑)牢屋にドロンと現れたのを最後にドラマ内遭難。長州戦争でもでてこず、わざわざあえて描いた脱退騒動でも出てきませんでした。本格的にドラマ内行方不明です。
 ほんとなら雲仙某なんて架空の人物をわざわざ味噌汁枠で登場させなくても、序盤から出ている富永役の本田博太郎さんを、1回限り主役として大暴れさせてて脱退騒動を描いたってよかったんですよね。ってか、ふつーにドラマをオモシロクしたいとおもったらそうするでしょう。なんでしないの?わかんない。ホントわかんない。小松先生ドラマの序盤を全然見てらっしゃらないんですかね。 
 で、ドラマを面白くする気が無いのか、面白いと感じるセンスが決定的にちがうのか、わかりませんけど、脱退騒動始末記は、てってー的に「若殿の自分探し」と「苦悩するカトリさん盛り」の二大テーマにこだわっていて、そのためなら、出して当然の既出人物をわざわざカットして架空の人物を登場させたり、若殿が急に人格変わったり、一貫性のないことはなはだしい。あと、どーでもいいけど大沢さんの滑舌が悪いんだか、声の共鳴が良すぎるんだか、「若殿」がどうしても「馬鹿殿」と聞こえてしまうのも、妙なかみあわない空気感に趣を添えておりました。
 いやあ、でもこれが池端俊策先生あたりの脚本で、本田博太郎さんを富永有隣役に、長州の黒歴史としての奇兵隊脱退騒動を描いたら、これはものすごく面白かったとおもうんだ。脱退騒動なんかがドラマで取り上げられるのは、まあ、むこう30年くらいはないと思うので、返す返すも惜しいことしたと思います。

 それにしてもそのバカ殿若殿もたいがいですよね。最初から奥方の種馬扱いで影が薄かったり、世子公のくせに伝令みたいなことやって家臣の前で手をついて人を驚かせたとおもったら、とつぜん悪いものでも食ったみたいに「人の話を聞かない二代目」キャラに豹変。
 で、奇兵隊脱退騒動も、この人が独断専行で諸隊の隊士をリストラしたからという理由に単純化されてましたが、これが全然忠告に聞く耳を持たず、二千人の兵隊が押しかけて藩公館を包囲しても自分を曲げない。なぜなら、オレ正義、オレ強い。そんでさんざん人をてこずらせたあげくが「わたしが悪うございました。知藩事として認められたいと逸るあまり、人の話を聞かず、このような事態を招いてしまいました」と先代に泣きついて事態を収拾してもらう。

 いや、これだけなら、「残念なジュニアの安っぽい自分探しの話」に矮小化された大河ドラマのいちエピソードとして、バカにして流してみてもいいところですが、これがたまたま、反対派のデモ隊が大挙して国会を包囲する中で安保法案の強行採決を断行したタイミングで放送されたので、

また神が降りたか……怒れる歴史の神が

 と、深い感慨に打たれてしまったわけですよ。
 なんか、ある意味すごいよね、このドラマ。序盤の「テロ組織」のくだりも趣き深かったけど、今回の「強行採決」もすごいですよ。駄作も極めると神を呼ぶのかねえ。あと10回でもう1回くらい、すごい神が降りることもあるんでしょうか。そうなると、見放して、半分放棄でいい加減に見てもいられないかな、と思います。
 
 あと、味噌汁枠の架空人物・雲仙の浜田学さん。この人も「急に出てきて1話限定で活躍するチョイ役」という役専門で、清盛と官兵衛に続いて御出演ですけど、浜田さんつながりもあって、どうも清盛とか官兵衛からちょことちょこパクって来たように見えてしょうがなかったです。人の話を聞かずに流血沙汰を招く二代目、なんてもろにそうですよね。
 大河ドラマは共有財産ですから、パクってもぜんぜん構わないと思うんですけど、どうせパクるなら「花神」とか、「翔ぶが如く」とか、もうちょっといいところからパクってくればいいのに。直近の官兵衛とか清盛なんかから、それもどうでもいいような陳腐なところをコソコソとパクるなよ…とちょっと情けない気分にはなります。

 奇兵隊脱退騒動につうじる事件の描き方として、「翔ぶが如く」の鹿児島私学校蜂起のくだりなど思い出すんですけど、蜂起までの緊張感は、べつに作り話でキャラを盛らなくても十分出てましたよね。たんたんと史実を追いつつ、村田新八とか、大山巌とかの複雑な心境をチラッ、チラッと挟むだけで。
 最後の瞬間の村田新八の「クッサレ(腐れ)縄が切れた…」という絶望的な呟きですべてを表現しておりました。今思い出しても、あれはよかった…と、つい遠い目。

 あ、こんなですが、木戸孝允の東山さんだけはよかった。さすがの気品ですよね。最後に「こういうことにならないためにあんたは国に帰ったんじゃないんですか」とカトリをせめるくだりなんか、ほんとに「その通りだよ!」と言いたくなる説得力でしたもん。こんなに庇う言葉が見つからない準主役もめずらしい。
っていうか、東山さんが説得力抜群だったせいもあるんですけどね。ああ、待望の「大岡越前3」撮影快調。楽しみです。楽しみすぎます。大岡越前で、このカトリ盛りのために実績を盗作された桂小五郎・木戸孝允の怒りの憂さを、存分に晴らすのが、ほんと楽しみです。