湯原修一の歓喜悦慶と聊かの慷慨憂愁, etc.

いつとはなしに眠りにおち微風を禿頭に感じて目が覚める。
このような生活に変わったらブログが更新されないかもしれません。

◇ 「四代目井上八千代」さんと「浅草ゆう子」さん

2015年11月16日 23時54分22秒 | 日常・その他
宿明け勤務の今朝(6時前)、仮眠から目が覚めてTVをつけたら(*)
NHKのEテレで「にっぽんの芸能」(**)という番組があっていました。

    * : 二度寝防止のために目覚めたら直ぐTVをつけ、
       たいていはNHK総合にチャネルを合わせています。
    ** : 「にっぽんの芸能」という番組はNHK総合で夜10時頃から
       放送されているはずなので、早朝あっていたこれは再放送のようです。

その番組の「名人列伝」というコーナーで、
着物姿の高齢の女性が日本舞踊のようなものを踊っておられました。
私の場合、女性の踊りといえば「ソシアルダンス」、「フラメンコ」、「リバーダンス」
それに「フラダンス」などを見るのは好きですが、
日本舞踊のようなものには興味がありませんでした。
 舞と踊の違いも解りません。

ところが、TVに映し出される嫋やかな踊り(舞い(?))に思わず見入ってしまいました。
京舞という舞いでした。
京舞についての知識も全く無い私でしたが、
ご高齢とは思えないブレないシャンとした姿勢と
しなやかな手の動きや足の運びを見て、
素人の私でも "凄い" ということは判りました。

舞っておられたのは、
京舞井上流の四世家元「四代目井上八千代」こと本名「片山愛子」という方で、
家に帰ってWebで調べてから判ったのですが、
この方は平成2年に「文化勲章」を受章されていました。
やはり "凄い" 御仁でした。

  四代目井上八千代さんは平成16年に98歳で亡くなられています。
  途中から観たので、テレビでの舞姿がいつごろのものか判りませんが、
  カラーの画質が鮮明だったので、90歳前後の頃のものではないかと拝察しました。

どのような修行を積んだら、あの年齢であのように神がかり的な舞が踊れるのでしょうか、
"名人" の域を遙かに超えた "超人" に見えました。



日舞は御大尽のお相手をする芸者さんのお座敷芸の一つなどと、
いい加減な認識しかなかった私を咎めるかのように、
次のコーナー「古典芸能玉手箱」でまた一人、凄い女性が紹介されました。

東京都内最高齢の現役人気芸者「浅草ゆう子」(本名:菊池文)さんでした。

何と御年92歳の売れっ子芸者ということでした。
 90歳のときに「いつでも今がいちばん」という本も出されています。

凛とした気格と艶やに見えないこともない容姿、そして時折見せる可愛らしい仕草は
とても92歳の女性には見えませんでした。
(ゆう子さんとは2歳年下になる家のお袋は、たぶん食欲では負けていないと思いますが)

 大正12年に生まれ、戦争をはさんで波乱の92年間を生きて来られた御方です。
 生き方そのものが「極められた芸」と言えるのかもしれません。


  30年後の私も
  ゆう子お姐さんのように張りのある生き方をしていたいものです。
    男性のままで


・・・・・・・・・・・ ギャラリー 036 (「踊り」の絵) ・・・・・・・・・・・
                          ライセンス(2点とも): (パブリック・ドメイン)


 ◆タイトル:序の舞(Noh Dance Prelude)

 ・画家:上村松園(Uemura Shoen)
 ・制作年:1936年
 ・収蔵:東京藝術大学大学美術館(?)

   ※上村松園(本名:上村津禰(つね))さんについて

     ・1875年(明治8年) 京都に生まれる 父は生れる2ヵ月前に他界
     ・1887年(明治20年)日本最初の画学校(京都府画学校)に12歳で入学
         ※翌年、カリキュラム優先の学校を退学して、尊敬する「鈴木松年」に師事
     ・1890年(明治23年)第3回内国勧業博覧会に出品して一等褒状受賞(このとき15歳)
         ※この絵を後の(?)英国皇太子コンノート殿下がお買い上げ
     ・1895年(明治28年)京都画壇の中心人物「竹内栖鳳(セイホウ)」に師事
     ・1902年(明治35年)未婚で長男松篁(ショウコウ)を出産
         ※父親は最初の師匠鈴木松年ではないか云われているが松園さんは多くを語らず
     ・1934年(昭和9年) 松園を理解し支えてくれた母(仲子)が死去。
         ※この2年後に、代表作の一つで
          真に理想の女性像を描いたともいわれる『序の舞』(上の絵)を完成させる
          『何ものにも犯されない女性の内に潜む強い意志をこの絵に表現したかった。
           一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香り高い珠玉のような絵こそ、
           私の念願するものなのです』(松園談)
     ・1948年(昭和23年)女性初となる文化勲章を受章
         ※長男「上村松篁」さんも1984年(昭和59年)に文化勲章を受章されています。
          (親子での受章は上村さん親子だけ?)
     ・1949年(昭和24年)74歳で死去

   ※上村松園さんは『気性だけで生き抜いて来たとも思い、
       絵を描くために生き続けて来たようにも思える』という言葉を残されていますが、
    「四代目井上八千代」さん「浅草ゆう子」さんの口からも
              同じような言葉が聞けたのではないでしょうか。


 ◆タイトル:稽古する踊り子(Dance Rehearsal)

 ・画家:エドガー・ドガ(Edgar Degas)
 ・制作年:1870年-1872年
 ・収蔵:フィリップス・コレクション<ワシントンD.C.>