経於千歳
法(のり)のため雲井を出でゝあしたづの齢(よはひ)とともに過ぎにけるかな
半紙
【題出典】『法華文』提婆達多品
【題意】 経於千歳
(阿私仏に仕えること)千年を経て、(法のために精進給持した。)
【歌の通釈】
仏法のために宮中を出て(阿私仏に仕え)、千年の鶴の齢を過ぎたことだよ。
【考】
冬部の32・33番歌も、『法華文』提婆達多品の仏が国王の地位を捨て阿私仏に仕える場面を詠んだものであった。この場面は「法華経を我が得しことは薪こり菜摘み水汲み仕えてぞ得し」(拾遺集・哀傷・一三四六・行基)以来多くの歌に詠まれるが、ここでは「祝」の視点からその修行が千載に及ぶことを讃嘆した。
(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)