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一日一書 929 蝉頃・室生犀星

2016-07-07 15:32:05 | 一日一書

 

室生犀星

 

「蝉頃」全文

 

半紙

 

 

   蝉頃

 

いづことしなく

しいいとせみの啼きけり

はや蝉頃となりしか

せみの子をとらへむとして

熱き夏の砂地をふみし子は

けふ いづこにありや

なつのあはれに

いのちみぢかく

みやこの街の遠くより

空と屋根とのあなたより

しいいとせみのなきけり

 

 

あまり知られていませんが

「抒情小曲集」に収められています。

「東京にて」というくくりの中にありますから

この詩の中の「みやこ」は東京です。

 

この詩で特徴的なのは、

せみの声を「しいい」という擬音語で表現していること。

この詩以外に「しいい」という擬音語は見たことがありません。

 

昨日、はじめてニイニイゼミの声を聞いたのですが

この「しいい」と鳴くセミは

どう考えてもこのニイニイゼミだと思うのです。

 

まだ無名時代の犀星が、東京で孤独な生活をしていたころの

しみじみとした感情が歌われています。

 

セミの声が、こんなに切なく響く詩も珍しいのではないでしょうか。

 

 

 

 

 


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