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引き裂かれる世界 サミュエル・P. ハンチントン ダイヤモンド社 このアイテムの詳細を見る |
政治には全く疎い私にも、意外に読みやすかったのですが、読み終わってみると消化不良をおこしております。
著者はアメリカ人国際政治学者で、「第三の波」や「文明の衝突」という、私でも聞いたことくらいはあるような著書を発表されておりますので、知る人にとっては有名なんでしょうね・・・。世界に何が起こっているかが知りたくて、TVで紹介されていた本だ勘違いして、図書館で借りてみましたが、それは最近出た方の著作で、本書は2002年10月に出版されたものでした。
当時の社会は、2001年9月11日にアメリカでは同時テロ、その後の、アフガン出兵から、一気にタリバンをたたき年末には暫定政権の樹立に着手したという時期。まだイラクには出兵していないが、サダム・フセイン排除に向けて動き出したというような頃で、今から考えると、”アメリカの終わりの始まり”だったように思います。
ソ連崩壊後の世界は、1つの超大国(アメリカ)とそれぞれの地域の主要大国とが存在し、
(途中略)
超大国は独善的に行動し、一方的に自分の意思を押し付けようともするので、他の国、とくに主要地域大国と軋轢が生じる。
(途中略)
冷戦時代の二極世界では、各国はアメリカをもう片方の超大国から守ってくれる守護者として歓迎した。反対に、一極・多極世界では、各国は自動的にアメリカを自国に対する脅威と見る・・・
確かに、一般的な日本人にとってのアメリカの印象はこの10年で随分変わったと感じていましたが、こんな風に説明されるとなるほどなぁと納得できます。しかし、著者は結局アメリカの独善は続かないだろうと結論しており、それは今まさに経済の面から現実になろうとしています。
また、イスラム世界との衝突について、人口問題という側面から論じており、非常に興味深いものがありました。テロを支えるものとして、宗教やイデオロギーといったものだと思いがちだけれど、もう少し掘り下げると普遍的なものがある。世界史の中でさまざまな革命を支えてきたのは若者であり、若者の人口が多くないと社会の変革を望む力が強くはならない。中東地域では1970年から80年頃にベビーブームがあったようで人口が急激に増えたことが問題の根底にあるというのです。
ということは、原理主義の暴走も、あと20年すれば納まるのでしょうか・・・。と思ってしまいましたが、あまりに希望的にして、無責任な観測かもしれませんね。 そしてこの論理から言うと、日本でどれだけ若者が失業しようと、決して革命は起こらない。だって年寄りの人口の方が多いのですから・・・・。
日本にとっても論じておられて、結局のところ日本に必要なのはリーダーシップということは否定のしようがないが、結局のところアメリカとの強力な関係をベースにすべきとしているところが、私にはちょっと気に喰わないけれど・・・。
とにかく、非常に分かりやすい文章であっという間に読めてしまうのですが、これらの知識を受け入れる基礎が私にないため、はじめに書いたとおり消化不良をおこして食べたものをみんな戻してしまったような感じで、あまり頭に残っていないのでとても残念。でも、やはり非常に面白いので、今後、こういう本ももう少し読んでいきたいなぁと思ったのでした。ま、それでどうなるってものでもないけれど・・・。
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