語り手が「クリック?」と尋ねると、あたりの聴衆は待ち兼ねたように「クラック!」と答え耳をすます。まさにダンティカはこの伝統にのっとり、時空を超えた現代の「語り手」として、新たにきわえられた文字という文化を駆使し、私たち読者に「クリック?」と尋ねているのです。人としての大切な思いを伝え、私たちの心を育みたいという切なる願いを込めて。 (訳者 あとがきより)
クリック?クラック! | |
エドウィージ・ダンティカ 山本伸 訳 |
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五月書房 |
ハイチ生まれで12歳の時にアメリカに渡った女性作家による短編集。
ハイチといっても、地震があったので知っているくらいで、その歴史も文化もほとんど知りません。
ただ、本書からうかがい知れるのはそこが、カリブ海にうかぶリゾートアイランド・・・・ではなさそうということ。
それぞれの作品から垣間見える社会は、戦い、虐殺、貧困、難民・・・厳しい現実を背景にしています。
読んですっきりするとか、感動するという作品ではなく、正直、よくわかりませんでした。
著者によるあとがき、
「何千という女たちの声が、あなたのそのすり減った鉛筆の先から文字となって溢れ出すことを待ち望んでいる。なぜならハイチの女はみな台所の詩人だから。いまは亡き女たちの願い、それはあなたがあなたのお母さんからもっとたくさん話を聞くこと。たとえそれがパトワや方言やクレオールのようなわかりにくい言葉であったとしても。」
それぞれの作品の中の女たちは、語るべき物語を持っている。
その現実があまりにも非日常すぎて、日常の言葉としては語り切れないためなのか、
記憶の中で断片化するとともに抽象化されているからなのか、
昨夜の夢が説明できないように、それぞれの物語を起承転結では要約できません。
これはもしかしたら「女」とか「人間」という自分自身の感性を総動員しないと理解できないのかもしれません。
今回は跳ね返された感もありますが、この人の作品、もう1冊くらいトライしてみたいです。
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