自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

ミル『自由論』

2007年07月19日 | Weblog
 僕が影響を受けた人物は多いが、その内の一人はジョン・スチュワート・ミルである。彼の『自由論』はもっと緻密に考察されてもよいと思う。幸い良い翻訳が出ているので興味のある高校生にも読んで欲しい本である。要点だけを。
 自由には哲学的な「意志の自由」と政治的・社会的な「思想・行為の自由」の二種がある。ミルが論じているのは社会の一員である個人が自らの幸福を追求する際に必要となる、政治的自由である。ポリティックスとはギリシア語「ポリス(都市)」に由来し、ポリティコスとは市民という意味である。つまり市民的自由が論じられているのである。特に第二章「思想と言論の自由について」、第四章「個人を支配する社会の権威の限界について」が必読の箇所だろう。
 もともとミルはベンサム主義者の父の影響のため政治的過激派だった。26歳の時に論理学を徹底的に研究し、その結果、政治哲学は理論科学ではあり得ず、実験科学でしかあり得ないことに気がつく。そこで、彼は一切のイデオロギーから脱却できた。彼は市民社会に見られる多数派の押し付けを一貫して批判し、この視点から自由の限界を指摘した。つまり多数派といえども、その自由に限界があるのである。
 ミルの自由論の核心を一言で表現するとすると、「自分が正しいと思うことを、他者に強制する権利は誰にもない」ということになるだろう。一方、他者の言論や行為を間違っていると判断した時には、言論による粘り強い説得や教育が必要であり、それには思想と言論の自由、出版の自由が不可欠なのである。