ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『スノーデン』を観て

2017年02月07日 | 2010年代映画(外国)
『スノーデン』(オリバー・ストーン監督、2016年)を観た。

香港の高級ホテル。
ドキュメンタリー映画作家ローラ・ポイトラス、ガーディアン紙の契約記者グレン・グリーンウォルドとの待ち合わせ場所に、一人の青年がやってくる。
彼の名はエドワード・スノーデン。
アメリカ国家安全保障局(NSA)に勤務するスノーデンは、アメリカ政府が秘密裏に構築している、国際的な監視プログラムの機密資料を提供する。

国を愛するごく平凡な若者だった彼は、CIAやNSAで勤務するうちに、その恐るべき実態に直面。
テロリストだけでなく民間企業さらには個人までも対象として、全世界のメールや携帯電話での通話を監視する体制に危機感を募らせたスノーデンは、
キャリアも幸せな生活も捨ててまでリークを決意する・・・
(Movie Walkerを一部修正)

スノーデンについて私は、昨年 “『暴露』と『スノーデンファイル』を読んで” を書いた。
今回のオリバー・ストーンの映画は、この『スノーデンファイル』に大きく依存している。
だから、恋人リンゼイとの関係の比重が大きくなっていて、それが却って作品を観易くしている。

米国の情報収集活動。
テロを防御するという名目で、秘密裡に、膨大な量の通信傍受を行う。
アメリカ国内は勿論のこと、全世界からアメリカに流れてくる私的情報もすべて掬い取る。

政府のために働く「愛国的」な青年、スノーデン。
その政府自身が憲法違反を犯している。
自分がそのことに加担していることへの、疑問と失望。

スノーデンが証拠となるデータを公開し、国民の間に議論を喚起しようとしたことに対し、国・政府側の反応はどうだったか。
“売国奴”の名を被せ、機密漏えい情報容疑のかどで逮捕して社会的の抹殺しようとする。
その言い分は、暴露されたことによって、アメリカの敵を利しただけだ、という理屈である。
そして付いてまわるのが、あれは“売名行為”だという宣伝。

映画のラスト近く、身の危険も顧みず、何をもってしても暴露しようと考えるに至ったスノーデンの言葉を聞く時、
そのひとりの人間の真の勇気に感動せずにはいられない。

それにしても、主役の俳優・ジョセフ・ゴードン=レヴィットが、スノーデン本人に見た目から雰囲気までそっくりである。
このことは、グレン・グリーンウォルド役にしてもそう。
だから、出演者に違和感がない分、なまの実際の人々でないかと錯覚し、自然と内容に溶け込んでいく。
この作品を撮った監督のオリバー・ストーンの、是非、全世界の人々に観て貰いたいという願いが、そして、その自信のほどが見えてくる。
これは、そんなことを感じる、立派で堂々としている優れた作品だった。

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2 コメント

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Unknown (mariyon)
2017-02-09 22:21:13
はじめまして
スノーデンとシチズンフォーでブログ検索してたら、こちらにたどりつきました。
やっぱり、シチズンフォー~も見るべきかと
ネットレンタルをみたら、貸し出し中でした。

ニュースは覚えているのに、改めてこんなに大変な子tだったのかと驚く、そういう映画でした。
事実をトレースするほうが、恐ろしい・・・。
なんだか、映画のあとうすら寒さを覚えてしまったんですが、ほんとこれからどうなる!!って、何度も思いました。

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>mariyonさんへ (ツカヤス)
2017-02-10 08:39:34
コメントありがとうございます。
返事が遅れてしまいました。
確かに私も、当時スノーデンのことで世界中が驚いていた時、
具体的にどのようなことだったのか知りませんでした。
それが昨年、映画「シチズンフォー」が出、本も翻訳され、今年また「スノーデン」が上映されると、
この事件の風化に歯止めがかかるかな、と思っています。
そういう意味で、やはり映画の効用はあると思っています。
mariyonさんは、「スノーデン」を観てみえるので、「シチズンフォー」も理解しやすいと思います。
十分にお勧めの作品です。
興味がおありでしたら、本の「暴露」もおすすめです。

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