原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

とりあえず、ビール、って?

2011年11月01日 08時27分19秒 | 社会・文化

 よく言ってしまうのだが「とりあえず、ビール」というあいさつ代わりの言葉。酒宴の開始時、一種の景気づけとその後のメーンコースの前の酒、という意味なのだが。どうもこれは、ビール好きにはなんとなくひっかかる。ビールが軽く見られるような気がするからだ。だが、ある意味しょうがない部分もある。というのも、ビールを多く飲んでしまうと、おなかが膨れて後のものがあまり入らなくなるからだ。ビールはビールとして大変おいしいのであるが、これがちょっと困る。かといって、本来の酒飲みではないものにとっては、いきなり日本酒とか焼酎とはいきにくい。そこでとりあえず、ビールとなるのだ。

私の場合であるが、何かつまむものや食事など食べるものがないと酒が飲めない。これは生来の酒飲みではない証拠でもある。本当の酒飲みは、つまみなしの酒だけで何時間でも飲める。友人に何人かそういう酒飲みがいた。もっと本当の酒の飲み方を覚えろと、私は彼らに小言を言われ続けた。だが、依然としてそれができない。従って私は本当の酒飲みではないと今でも思っている。

いまでもビールから始まり、焼酎、あるいはウイスキーへと旅をするように彷徨する。もちろんおいしい食事もだらだらと継続する。それゆえか、体重が歳とともに増え続けた。これもまたやむを得ない。

フランス語にはアペリティフ(食前酒)という言葉があるが、私にとってビールは食前酒であり、酒前酒なのだ。本来の酒飲み人にとっては明らかな邪道。だが、もともと酒が弱く、ビールを出発点に酒飲みになった人種にはどうしても避けられない道である。

ビールは和食でも洋食でもどんな味の料理にもうまくマッチする。しかも、特に強いアルコール分もないからスターターとしても、最適なのだ。

酒飲みにはいろいろな道がある。邪道もまた一つの道、自分に合えば正道となるのでは、と正当化している。

料理に口うるさい人が多いイタリアやフランスでこんな話をすると、確実に馬鹿にされる。彼らはビールを食事のテーブルに乗せることは考えられない人たちだ。ワインが食事の絶対必需品という固定概念にこり固まっている。どのように説明しても、まったく聞く耳を持たなかった。ま、彼らに理解してもらわなくても、何の問題はないのだが。何か人を見下したような態度が癪に障る。日本料理の素晴らしさや日本ビールのうまさを、認めることができない哀しい人種だ。

本当を言うと、ビールによってお腹が膨れないなら、ずっとビールを飲み続けていたい。食事用のビール、それを開発することはできないのだろうか、とずっと前から思っていた。じつはそれが、ベルギーにあった。

(食事に合わせて飲んだビールの数々。いつの間にか5本も)

ベルギーは食文化も優れている。伝統的なフランス料理を楽しみたいなら、ベルギーへ行けと言われるほど、フランスより正当派のフランス料理に出会える。しかし、ベルギーの最大の問題は、昔からワインが造れなかった(今はワイン醸造所もあるらしいが)こと。素晴らしい食事に添えるワインは常にフランスから輸入しなければならなかった。これを克服するために考えられたのが、食事にあうビールの開発であった。ベルギーはもともとトラピストビール(修道院ビール)の本場でもある。酒の評論家として世界に知られたマイケル・ジャクソン(歌手と同姓同名だが違う人)が自分の著書で、「ヨーロッパにビールの王様がいたとしたら、それはベルギー人に違いない」と書いている。ベルギーは隠れたビールの宝庫で、古典的なビールはすべてそろっている国なのである。

そのベルギー人が料理に合うビールを懸命に作った。料理も実に幅広い。いろいろな味に合わせるために、多種多様なビールを生みだした。魚料理、肉料理、野菜料理、その日のメーンに合わせてビールを選択できるようにしている。どれがどれという銘柄指定をしないことが味噌でもある。レストランに行って、その日の料理を決めたら、相談すればいい。今日の料理に合うビールを出してください、と。レストランがきちんとビールを用意してくれ。まるで嘘のような話だが本当である。残念ながらそのレストランの名前まで、今思い出せない。ベルギーにいくチャンスがあったら、必ず現地で聞けば分かる。アルコール度数も3%から20%近いものまである。いずれも瓶詰であった。ビールは「生」が最高と言っているうちは、まだまだビールの神髄に触れていないということ。ビールの世界も深く広いことをベルギーが教えてくれた。

さすがに日本ではここまでいかない。だから、やはり酒前酒としてビールを楽しむ。しかし、大いなる敬意を表して、「とりあえず、ビール」と言う。

一言追加する。世界中でビールを飲み比べてみたが、ビールは日本が一番おいしい。これはたしかだ。

*プロ野球のCSファーストステージが終わった。日ハムも巨人も敗退。やはり監督の質がすべてを決したようだ。楽しみがまた一つ終わった。


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4 コメント

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どうやら日本がイチバン・・ (numapy)
2011-11-01 11:30:19
10年ほど前、アサヒビールの副社長と懇談したことがあります。その時彼は言っていた。
「ビールは日本がイチバン美味いです」。その理由として彼が挙げたのは「寝かせる時間が違う!」。
記憶があまり定かじゃないのだけど、確かそんな理由でした。
その時彼はこんなことも言ってました。「アサヒビールは発泡酒には参入しない!」
ウソだったじゃないか・・。
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スーパードライは? (原野人)
2011-11-02 08:14:33
アサヒはこれで急成長をしましたが、どうもこれは本来のビールのような気がしません。あくまで私見ですが。発泡酒に近いものに感じています。
ビール本来の味はやはり、キリンラガーであり、恵比寿麦酒にあると思います。サッポロのクラシックもいいですね。
いずれにしても日本のビールは世界ナンバー1です。
昨日飲み過ぎで、二日酔いです。
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やっぱりビール (BEM)
2011-11-07 09:47:48
普段は財布の中身と相談すると発泡酒になってしまうのですが、たまに外でビールを飲む機会があり感じるのはやっぱりビールの方が美味い!です。

友達通しで飲む時もまずはビールからです♪
その時、とりあえずとは言わないと思うのですが、それからもずっとビール(笑)
たまたま昨日サッポロビール園に行きましたが(ただ行っただけ)サッポロビールって日本で一番古いビール会社なんですね。

20度のビール飲んでみたい!
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サッポロビール園、行きたい! (原野人)
2011-11-07 11:54:13
ビール園の生は最高です!
私は今はいろいろ飲みますが、本来はビール党。
なかでもビール園のビールは旨い!実にうまい!
これに勝るものはありません。サッポロビール園に行ったのは、もう何年前か。数えられないくらい昔です。今年は無理ですが、来年はぜひ。
20度のビールの酔い心地、忘れ難いです。日本にもありますよ。シーメイというベルギービールをぜひお試しを!ただ日本にあるのは15度までだったかも。
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