政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

大手新聞の愚劣と検察審査会議決の馬鹿馬鹿しさ

2010-04-30 20:33:31 | 小沢一郎
小沢攻撃の主導権はどこが握っているのか?
初めは自民党かとも思えた。
麻生と漆間官房副長官あたりが検察を動かしていたかのようでもあった。
しかし、自民党にはその力はないことはもはや明らかである。
それでは検察か?
検察が自民党あたりの指示に唯々諾々と従うほどヤワな組織でないことも分かってきた。
そして確かに検察の小沢に対する執念は異常である。
しかし、その検察も小沢起訴をあきらめた。
すると今度は検察審査会なるものが前面に躍り出てきた。

そしてこの検察審査会が、小沢に対して「起訴相当」という議決を出してきた。
次のサイトに全文を載せてあったので転載させていただく。
弁護士阪口徳雄の自由発言

平成22年東京第五検察審査会審査事件(申立)第10号
申立書記載罪名 政治資金規正法違反
検察官裁定罪名 政治資金規正法違反
議 決 年‐月 日 平成22年4月27日
議決書作成年月日 平成22年4月27日
議決の要旨
審査申立人   (氏名) 甲
被疑者 (氏名)  小沢一郎こと 小 澤 ― 郎

不起訴処分をした検察官 東京地方検窯庁 検察官検事 木 村匡 良
議決書の作成を補助した審査補助員 弁 護 士 米 澤 敏 雄

上記被疑者に対する政治資金規正法違反被疑事件(東京地検平成22年検第1443号)につき,平成22年2月4日上記検察官がした不起訴処分(嫌疑不十分)の当否に関し,当検察審査会は,上記申立人の申立てにより審査を行い,検察官の意見も聴取した上次のとおり議決する。
議決の趣旨
本件不起訴処分は不当であり,起訴を相当とする。
議決の理由
第1 被疑事実の要旨
被疑者は,資金管理団体である陸山会の代表者であるが,真実は陸山会において平成16年10月に代金合計8億4264万円を支払い,東京都世田谷区深沢所在の土地2筆を取得したのに

1 陸山会会計責任者A(以下Aという。)及びその職務を補佐するB(以下Bといぅ。)と共謀の上、平成17年3月ころ,平成16年分の陸山会の収支報告書に,本件土地代金の支払いを支出として,本件土地を資摩としてそれぞれ記載しないまま,総務大臣に提出した
2 A及びその職務を補佐するC(以下「C」という。)と共謀の上,平成1
8年3月ころ,平成17年分の陸山会の収支報告書に,本件土地代金分過大の4億1525万4243円を事務所費として支出した旨,資産として本件土地を平成17年1月7日に取得した旨それぞれ虚偽の記入をした上総務大臣に提出した
ものである。

第2 検察審査会の判断
l 直接的証拠

(1)Bの平成16年分の収支報告書を提出する前に,被疑者に報告・相談等した旨の供述

(2)Cの平成17年分の収支報告書を提出する前に,被疑者に説明し,被疑者の了承を得ている旨の供述


2 被疑者は,いずれの年の収支報告書においても,その提出前に確認することなく:担当者において収入も支出も全て真実ありのまま記載していると信じて,了承していた旨の供述をしているが,きわめて不合理で不自然で信用できない

3 本件事案について,被疑者が否認していても以下の情況証拠が認められる。

(1)被疑者からの4億円を原資として本件土地を購入した事実を隠蔽するため,銀行への融資申込書や約束手形に被疑者自らが署名,押印をし,陸山会の定期預金を担保に金利(年額約450万円)を支払つてまで銀行融資を受けている等の執拗な偽装工作をしている。
(2)土地代金を金額支払つているのに,本件土地の売主との間で不動薄引渡し完了確認書(平成16年10月29日完了)や平成17年度分の固定資産税を買主陸山会で負担するとの合意書を取り交わしてまで本基記を翌年にずらしている。
(3)上記の諸工作は,被疑者が多額の資金を有しておると周囲に疑われ,マスコミ等に騒がれないための手段と推測される。
(4)絶対権力者である被疑者に無断でA・B・Cらが本件のような資金の流れの隠蔽工作等をする必要も理由もない。

これらを総合すれば,被疑者とA・B・Cらとの共謀を認定することは可能である

4 更に,共謀に関する諸判例に照らしても、絶大な指揮命令権限を有する被疑者の地位とA・B・Cらの立場や上記の情況証拠を総合考慮すれば,被疑者に共謀共同正犯が成立するとの認定が可能である

5 政治資金規工法の趣旨・目的は,政治資金の流れを広く国民に公開し,その是非についての判断を国民に任せ,これによって民主政治の健全な発展に寄与することにある。
(1)「秘書に任せていた」と言えば,政治家本人の責任は問われなくて良いのか。
(2)近時,「政治とカネ」にまつわる政治不信が高まっている状況下にもあり,市民目線からは許し難い

6 上記1ないし5のような直接的証拠と情況証拠があつて,被疑者の共謀共同正犯の成立が強く推認され,上記5の政治資金規政法の趣旨・目的・世情等に照らして,本件事案については被疑者を起訴して公開の場(裁判所)で真実の事実関係と責任の所在を明らかにすべきである。これこそが善良な市民としての感覚である

よって,上記趣旨のとおり議決する。


             東京第五検察審査会


おかしな議決である。
すでに多くの方が鋭い指摘をなさっているが、わたしもいくつか気がついた点を申し述べたい。

まず議決の根拠とされているのが、「直接証拠」である。
審査会が「直接証拠(1)、(2)」として挙げているのがB、C(小沢の秘書達)の供述である。
しかしB、Cの検察における供述が「直接証拠」といえるのだろうか。

しかも直後には彼等の供述を「不合理で不自然で信用できない」と述べている。
あまりにご都合主義ではないか!

そして「状況証拠 3」を挙げる。
こじつけと邪推でここでも強引な結論を導き出す。

これらを総合すれば,被疑者とA・B・Cらとの共謀を認定することは可能である。

そして根拠4もその単純な延長上にある。

絶大な指揮命令権限を有する被疑者の地位とA・B・Cらの立場や上記の情況証拠を総合考慮すれば,被疑者に共謀共同正犯が成立するとの認定が可能である。

根拠の5に至ってはお笑いぐさである。

(1)「秘書に任せていた」と言えば,政治家本人の責任は問われなくて良いのか。
(2)近時,「政治とカネ」にまつわる政治不信が高まっている状況下にもあり,市民目線からは許し難い。


「市民目線」で「許し難い」からといって、それが小沢を法廷に引き出す理由になるのか。
次の根拠6に至っては、怒りを抑えきれない。

本件事案については被疑者を起訴して公開の場(裁判所)で真実の事実関係と責任の所在を明らかにすべきである。これこそが善良な市民としての感覚である。

一人の人間を法廷に引き出そうという決定である。
一人の人間の存在を否定しかねない決定なのである。

公開の場(裁判所)で真実の事実関係と責任の所在を明らかにすべきである

審査会が議決の根拠とするのはすべて「疑い」に過ぎない。
疑わしいから起訴するのではなかろう。
疑いを明らかにするために起訴するのではなかろう。
証拠があるから起訴するのであろう。
「疑い」を明らかにするために起訴できるのなら、検察はそれこそ何でも出来る。

「善良な市民」が聞いてあきれる。
自分の氏名も明らかに出来ない「審査申立人 甲」とやはり氏名不詳の「審査会のメンバー」たち。
彼等に人の人生を決定する何の権利があるのか!

納得できないのは、マスコミがこの「正義の告発人」について一切言及していない点である。
「誰でもない誰か」・「誰でもいい誰か」!

今度のニュースに接して思い出した小説がある。
カフカの”審判”である。
はるか以前に読んだもので中身はほとんど忘れていた。
しかし得体の知れない薄気味悪さはまったく共通しているように感じる。

カフカの長篇小説『審判』の主人公ヨーゼフ・Kは、銀行で働いている。そして三〇歳の誕生日を迎えたその朝、なにも悪いことをした覚えがないのにとつぜん逮捕されてしまう。奇妙なことに、逮捕されたからといって身柄は拘束されず、ふつうに銀行勤めの日々は続く。そして呼び出しに従って裁判所を訪れるのだが、裁判所が彼をどうしたいのか、まったくわからない。

”不条理”という言葉が急に現実感を伴ってわたしのうちによみがえってくる。

大手新聞の社説のひどさにもあきれる。
長くなってしまったので、抜粋だけにする。

起訴相当」―小沢氏はまだ居直るのか 朝日新聞 4/28
しかし「『秘書に任せていた』と言えば、政治家本人の責任は問われなくて良いのか」という指摘は、先の鳩山由紀夫首相に対する検察審査会の議決同様、国民の声を代弁するものだ。
一刻も早く国会で説明する。それができないのであれば、幹事長職を辞し、民主党の運営から手を引く。無駄にできる時間は、もうない。

小沢氏起訴相当 「公判で真相」求めた審査会(4月28日付・読売社説)
小沢氏に疑わしい事実がある以上、裁判の場で事実関係と責任の所在を明らかにしてもらいたいという、極めて常識的な判断が投影されている。
 検察は、まずは再捜査に全力を挙げるべきだ。

社説:小沢氏「起訴相当」 全員一致の判断は重い 毎日jp 4/28
事実を解明し、責任の所在を明らかにすべき場所は、法廷だというのである。率直な問題提起だろう。
地検は、議決の趣旨を踏まえ最大限再捜査を尽くし、処分を検討すべきだ。


最初の疑問に戻ろう。
「小沢攻撃の主導権を握っているのは?」
自民党でもなく、官僚でもなく、検察でもないのではないか?
単なる”使いっ走り”と思われていた大手マスコミが自分の意思で小沢攻撃の先頭に立っているのではないか。
そんな疑いまで抱かされる各社説の愚劣さの横並びである。



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