政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

反・小沢とは何か…政治軸としての小沢一郎

2010-04-19 15:14:26 | 小沢一郎
今のこの国の政治は、良かれ悪しかれ小沢一郎をめぐって動いている。
しかしその構図は、保守と革新とか、民主対自民とかという対立ではない。
政策的な対立でさえない。

小沢一郎はイデオロギーにはさほどの関心を示さない。
個々の政策にも関心を示さない。
多分マニフェストそのものにも大した関心を持っていない。

反・小沢という態度には二種類あるように思われる。
一つは主に民主党内にある反・小沢である。

これは小沢の存在そのものに対する反感からくる。
小沢の持つ力に対する不平・不満が根底にある。
代表が渡部恒三、前原、枝野、野田等である。

この連中は、野党時代からの反・小沢である。
小沢嫌いと言った方がいいか。

もう一つは、自民党をはじめとする既得権益擁護勢力の反・小沢である。
こちらには、自民党以外にも、官僚・検察・マスコミが与している。

敵の敵は味方、というわけでこいつらは時には手を組んで小沢を攻撃することもある。
分かりやすいのは、テレビに出てくる民主党議員の顔ぶれである。
TBSの時事放談は一見格調の高そうな番組である。
しかし、その民主党議員の出演者は、

4月18日 仙谷 由人 
4月4日  野田佳彦
3月28日 渡部恒三
3月21日 枝野幸男
3月7日  渡部恒三

いわゆる反・小沢七奉行の面々ばかりである。

小沢批判で一躍テレビ露出急増の民主党副幹事長生方幸男。
4月に入ってもいまだにこの人気振り。

「生方幸夫」の出演番組 (新着順)

放送日時 番組(放送局)
2010/ 4/16(金)
19:56~20:54 太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中 (日本テレビ)

2010/ 4/14(水)
5:20~ 8:00 ズームイン!!SUPER (日本テレビ)

2010/ 4/14(水)
4:00~ 5:20 Oha!4 NEWS LIVE (日本テレビ)

2010/ 4/ 9(金)
13:55~15:50 情報ライブ ミヤネ屋 (日本テレビ)

2010/ 4/ 5(月)
19:00~21:48 ビートたけしのTVタックル (テレビ朝日)


小沢潰しを狙うマスコミとしては、民主党内で小沢批判をしてくれる連中はなんともありがたい存在である。
小沢に加えて民主党の足を引っ張れる。

この連中は、テレビに出られれば何でもする。
魂をテレビ局に売り渡したやつらである。
とにかく小沢の悪口を言えばテレビに出られるのである。

内部からの反乱は様々な形をとって行われている。

中か外か分からないのもある。

連合静岡会長が小沢氏に辞任求める 「支持率下げの最大の要因」 (産経ニュース 3/31)
連合静岡の吉岡秀規会長が31日、静岡市内で記者会見し、民主党の小沢一郎幹事長が7月の参院静岡選挙区(改選2)で2人目の候補擁立を決めたことに対し「小沢幹事長が辞職願、辞任届を出す覚悟があるなら民主党の支持率は上がり、2人立てて戦うことができる」と噛み付いた。民主党支持の連合の地方幹部から、事実上の幹事長辞任要求が出たのは初めて。


余りの非常識さに、連合会長が謝罪したようだが、どこに爆弾が仕掛けられているか分からない。

「速やかに新体制を」 民主岐阜県連が党本部に申入書 (asahi.com 4/12)
 民主党岐阜県連(代表・平田健二参院国会対策委員長)は12日、「政治とカネ」の問題で執行部の刷新を求める緊急申入書を鳩山由紀夫首相(党代表)あてに提出した。地方組織が公然と執行部刷新を要求するのは初めて。
 申入書は「厳しい世論の評価で、内閣支持率は政権発足後最低の30%前半まで大きく下落」と指摘。「政治とカネの問題に関し、さらなる説明責任を果たすとともに、政権政党として責任ある体制を考え、速やかに新体制を築くこと」を要望している。
 ただ、平田氏はこの日の党役員会で、「岐阜県連の総意ではありません」と小沢氏に口頭で伝えた。岐阜県連内で申し入れに慎重だったという平田氏は、「新体制」の意味について「どういうことか分からない。そんなに重きを置いていない」と記者団に説明した。
 県連関係者によると、文案を作成する過程で県連顧問の渡辺嘉蔵・元衆院議員らから「小沢幹事長の辞任を念頭に文言を強めるべきだ」との意見が出たという。県連幹部は「『新体制』の言葉を透かしてみれば、『小沢辞任』と書いてある」と述べた。


何とも摩訶不思議な動きであると思っていたが、次の記事を読んで納得した。
”小沢憎し”の年寄りが暴走したらしい。
全くの私怨であろう。

【単刀直言】渡辺嘉蔵元官房副長官 「小沢氏に庇を貸して母屋を取られた」(産経ニュース 4/15)
小沢(一郎幹事長)さんには、今までの自分の実績を振り返って辞任しなさい、と言いたい。内閣支持率は70%以上あったのが28%まで下がった。このままでどうやって回復するんだ。(結党から)13年かかってここまできたのに。

 世論調査で80%が「(小沢幹事長は)辞めよ」なんだ。これが戦前の日本だったらタイのバンコクのようなことが起きとるよ。労組からも手が上がったはずだ。労組からも手が上がったはずだ。自衛隊は平和憲法で縛ってあるで(心配ないけれども)ね。


渡辺嘉蔵は民主党岐阜県連顧問という。
県連役員に、幹事長代理 渡辺 嘉山  岐阜県議会議員という名がある。
住所・電話番号が同じなので同居の親子なのだろう。

「戦前の日本だったらタイのバンコクのようなことが起きとるよ」
「労組からも手が上がったはずだ」
「自衛隊は平和憲法で縛ってあるで(心配ないけれども)ね」


訳の分からないセリフが並ぶ。

■わたなべ・かぞう 大正15年、岐阜市生まれ。昭和21年社会党入党、県議を経て58年の衆院選(旧岐阜1区)で初当選し3期務める。平成8年、橋本龍太郎内閣の官房副長官。旧民主党の創立メンバーの一人だが小選挙区導入以降は議席を得られず12年に引退。民主党岐阜県連常任顧問。

先の連合静岡の反抗も岐阜の場合も、小沢の参院選二人擁立に対する反発があるのか。
安泰と思われた現職が、にわかに苦しい選挙戦を強いられることになり、そいつらが裏で糸を引いているのかもしれない。

民主党岐阜県連の現職は、山下 八洲夫、平田 健二の二人である。
山下が今回改選である。
山下は日本社会党出身である。
そこに二人目の候補として、小見山幸治という新人の擁立が決められた。
自民党松田岩夫議員の秘書だった人物である。
これに関して松田議員の自民党離党という副作用も生じている。

僕は民主党創立メンバーの1人だ。小沢さんが(平成15年9月に)民主党に入る時は賛成だった。自由党を解散するのは気の毒だし、力を結集できればいいと思った。でも今は、田中角栄(元首相)の孫みたいな者に、庇(ひさし)を貸して母屋を取られた感じがする。

不満の源はこの辺か。
もしかすると県連内での勢力図になにがしかの変化があり得るのかもしれない。

(小沢氏は)去年は自分の秘書が(政治資金規正法違反容疑で)逮捕されても知らんと言っていた。さすがに代表を辞め、鳩山内閣ができてほっとしたが、去年の暮れから(小沢氏サイドが)特定の業者から5000万もらったとか、資産が10億あるとか、聞いていられない話が報じられてる。政治は信条と清潔が第一に求められるんだ。
 それなのに民主党の国会議員たちは一向に動かん。生方幸夫副幹事長がクビになりかけたのを見て、物が言えないのかもしれないが、そんな腰抜けども、何を考えとるのかと思う。


全面的にマスコミの小沢批判に乗った主張である。
産経もこんな奴を見つけることには抜け目がない。

4月10日の県連の申し入れは幹事長の辞任要求ですよ。県連代表の平田健二参院国対委員長が「小沢さんの辞任要求を意味しない」と言ったそうだが承服できない。だから今日(15日付)、鳩山由紀夫首相に小沢氏更迭を求める「お願い」を送った。民主党が変わったと示すには、首相が幹事長を更迭せにゃいかん。「小鳩内閣」の汚名を返上し、立ち直ってほしい。そのうえで普天間移設問題に取り組むといい。徳之島に(受け入れを)お願いする国民運動を起こすべきだ。(佐々木美恵)

県連会長・平田健二の「小沢さんの辞任要求を意味しない」という言葉を真っ向から否定する。
あくまで小沢辞任を要求していく姿勢のようである。
こんな奴らがこれからまだまだ現れてくるだろう。

小沢はなぜここまで参院選の複数候補擁立にこだわるのか?

窮地に自ら鼓舞 小沢氏、地元で大法要 (東京新聞Tokyo Web 4/19)

「最後の総仕上げのつもりで、日本に民主主義を定着させるため、残りの人生を頑張っていきたい」


小沢一郎と反小沢との真の対立軸はここにある。
「民主主義」である。
民主主義の確立・定着こそが小沢一郎の基本姿勢であるが、それを信じる人は決して多くない。

小沢はそのために反・民主主義勢力の壊滅を狙っている。
その中心にいるのが自民党である。
検察も官僚も経済界もマスコミもその権力の背景は政治権力である。
頼るべき最後の砦が自民党なのである。

自民党がある限り、彼等は再びその力を結集できる。
小沢一郎は、その寄るべき砦を消し去ろうとしているのだ。
自民党を消滅させること。
それこそが民主主義の定着のために不可欠のことだと小沢は思っているのである。

小沢はそのために権力を必要としている。
小沢の権力欲は、一個人の私利私欲とは離れたところからきている。

そうは言っても100%私利私欲を離れた人間などいるはずはない。
小沢にしろそうであろう。
しかしながら現在の政治家の中で、もっともそこから遠くにいるのは小沢であるのも確かであろう。




民主主義の確立のために!
  人気ブログランキングへ
ご面倒でもクリックを↑

おすすめの関連図書
小沢一郎はどのように自民党をぶっ壊したか? (徳間文庫)
大下英治
徳間書店

このアイテムの詳細を見る

政治・社会関連図書へ


古書 那珂書房

特に歴史書が充実しています