政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

戦後日本人を最も苦しめてきた国は?

2010-04-11 11:52:05 | 政治
多くの人が何の疑念もなく思いこんでいる。

戦後日本の平和と安全はアメリカの軍事力によって保たれてきた。
軍事力を米国に頼ることによって日本は経済発展に注力できた。

本当にそうなのだろうか。

1951年サンフランシスコ平和条約締結により、日本は独立を回復した。
同時に日米安保条約が結ばれ、進駐軍が駐留軍になった。

首相「米の言いなりにならない」 米誌インタビューで (産経ニュース 2010.4.10 )
鳩山由紀夫首相は9日までに米タイム誌のインタビューに応じ、日米関係について「日本にとって最も大事な関係」としながらも、「今までは米国の主張を受け入れ、従属的に外交を行ってきた」と指摘した。その上で「一方的に相手の言いなりになるよりも、お互いに議論を通じ、信頼を高めていく」と強調した。


戦後65年経って、独立国の総理大臣がこんな事をわざわざ言わねばならないほど、日本はアメリカの言いなりになってきた。
そのひとつの現れがいわゆる密約問題であろう。
なぜ歴代の内閣あるいは外務省・防衛庁(防衛省)は国民を欺いてまでかくも多くの密約の存在を否定し続けてきたのか?

四つの「密約」とは (jiji.com)
(1)核持ち込み=1960年の日米安全保障条約改定時に、核を搭載した艦船が日本に寄港する場合は、事前協議の対象外とする取り決めが交わされたとされる。
 (2)朝鮮半島有事の際の在日米軍基地自由使用=休戦状態にある朝鮮戦争に関し、在韓の国連軍が攻撃を受けた場合に備え、米軍が事前協議なしに在日米軍基地から出撃することを認める内容。
 (3)沖縄への核再配備=1972年の沖縄返還に際し、当時の佐藤栄作首相とニクソン米大統領が交わしたとされる取り決めで、有事に当たって沖縄の米軍基地に核兵器の再配備を認める内容。再配備には事前協議が必要としたが、首相と大統領の合意議事録で、日本側は速やかに了承することを確約している。
 (4)沖縄返還時の土地原状回復費の肩代わり=沖縄返還に際し、米軍基地跡地の原状回復補償費400万ドルを日本側が肩代わりするとした取り決め。(2010/03/09)


これらに加えてまた新たな密約が発覚した。

「米兵裁判権を放棄」日米の秘密合意明らかに (YOMIURI ONLINE 4/10)
日米地位協定の前身にあたる日米行政協定で、日本に駐留する米兵らの犯罪について、米側に実質的に裁判権を譲るとした日米間の「秘密合意」が存在したことが10日、外務省の調査で明らかになった。

 日米行政協定では、米兵らの公務外の犯罪は日本に裁判権があると規定していたが、研究者らが米国の公文書で秘密合意の存在を発見、指摘してきた。日本側でこの点が判明したのは初めて。


これは実質的には、国民をアメリカに売り渡したものである。
しかもそのことを秘密にし続けたのである。

米兵による犯罪被害者となり得る日本人の人権を完全に無視したものであるといえよう。

すべての密約は、表面上の取り決めを越えた利益をアメリカに認めたものである。
政府や役人どもは、国民向けの条約・協定とアメリカ向けの条約・協定とを二通り作り、国民には内緒にしていたのである。

日本の平和と安全を保持するためのやむを得ない方策であった、と彼等は言うだろう。
外交に秘密はつきものである、とも言うかも知れない。

しかし、すべてはアメリカのプレゼンスが抑止力として有効であるという前提があって初めて成り立つ議論である。
つまりアメリカ軍の存在がなければ、たちまち日本は攻撃を受け独立を脅かされるという可能性があつて初めて日本の国民の犠牲が辛うじて正当化されるといえる。
ところでサンフランシスコ平和条約締結後、日本を取り巻く情勢は、そのような危機が現実問題として起こりうる状況にあったのか?
その検証をすることなく、政府はアメリカの言いなりに基地を提供し、上納金のごとく金銭を提供し続けてきた。

しかしその間日本は自身の国防予算をゼロにしていたわけではない。
インドなどよりはるかに多い世界5・6位の国防予算を維持しているのである。
中国でさえ、その国防予算が日本を追い抜いたのは2007年になってからだという。

中国国防費の伸び鈍化 10年は7%、22年ぶり1けた (asahi.com 2010.3.4.)


公表している国防費だけで2007年に日本を抜いている。近代化を進める中国軍は、新型戦闘機や宇宙空間の開発に力を入れており、今後も増加傾向は続くとみられる。


中国の公表数字があてにならないものとしても、中国の防衛予算が日本を抜いたのはそう古いことではないだろう。

本当に脅威は存在したのか?
確かに現在の中国軍事予算の伸びは驚異的である。
しかし、それは近年のことなのである。
戦後65年間のほんの一部に過ぎない。
脅威は現在でこそ増大しているかもしれないが、中国が過去65年間、日本の脅威でありつづけたとは考えられない。

中国が、経済覇権と軍事覇権の両立を意図しているのは多分確かであろう。
しかし中国が資本主義的政策を進め、世界的な経済体制に組み込まれつつある現在、過度な警戒はかえって中国の軍事力の拡大を招く恐れさえある。

いずれにしろ政府が国民を欺いてまで、”米軍に駐留していただく”理由があったとは思えない。
一方では、米軍の存在によって確実に苦しんできた国民が存在する。
米軍兵士の犯罪による被害者、騒音被害でまともな生活が破壊されている国民が多数存在する。

戦後65年。
その間、直接に日本人を苦しめた外国はどこか。
北朝鮮は百人を越える日本人を拉致したと思われる。
決してそのことを軽視するつもりはないが、北朝鮮が、日本の平和と安全を脅かす存在とは言えないだろう。
中国も、人権問題・領土問題などで日本との間に問題がないわけではない。
ロシアとの間にも領土問題や漁業問題があるのも確かである。
しかし、もっとも長く、もっとも大きく、確実に日本人を苦しめてきたのはアメリカである。

沖縄に住む人たちだけではない。
全国に展開する米軍基地の周辺に暮らす人たちは、いまでも耐え難い苦痛を与えられ続けているのである。

政府は、存在するのかどうかも分からない脅威を口実に日本国民の不利益を無視し、アメリカの利益を図り続けてきた。

我々は、”アメリカ軍に駐留していただく利益”と”それによって被る国民の不幸”を冷静に比較衡量し、日米安保条約そのものを考え直す時期にきているのではないか?




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