政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

100日・鳩山内閣

2009-12-25 20:52:09 | 鳩山由紀夫
海の向こうでは、政権発足後100日間はハネムーンと称して、マスコミも暖かく、忍耐強く政権批判を手加減するとか。
この国のマスコミにそんなものがあったのかどうかは分からない。
批判は控えめにしていた、などと言うところもあるかも知れない。
少なくとも産経は違っていただろう。
政権発足直後から、いや総選挙期間中も、解散する前からも、ずうっとずうっと昔から自民党の敵は産経の敵、と思い定めて攻撃しているのだから。

100日目が鳩山の弁明会見となった。
単なる偶然か、それとも検察の陰謀か。
検察の目にはマスコミの民主党叩きは生ぬるいと映っていたのだろう。
今日からは心おきなく民主党叩きをやるように、という検察からのメッセージだったのかもしれない。

麻生政権もそれなりに批判はされていたが、なんとなく「間抜けな麻生内閣」を揶揄するという感があった。
一方、鳩山・小沢への批判は、命まで取ってやろうかという力の込めようである。

幸いなことに材料は山ほどある。

一つ一つ挙げていけばきりがないので、一つだけ取り上げる。

予算に絡んで、小沢の要望が鳩山に突きつけられた。
マニフェストの変更を要求したのが子供手当に所得制限を設けることと、暫定税率の維持であった。

小沢支配と言われたくない鳩山としては両方を呑む訳にはいかない。
両方を蹴るのは後の祟りが恐ろしくてできることではない。
結局鳩山の選択は、金のかからない方であった。
所得制限で浮く金は大した金額ではない。
暫定税率を残した方がやり繰りは楽になる。
小沢もそのくらいの決着を想定していたのかもしれないが……。

この選択が正しかったのかどうかは時間を経た後でなければ分からないだろう。

所得制限を設ける場合の基準は800万円程度とか、一部には2000万円という声も出ていたようだ。
800万で線引きした場合、対象から外れる人は多少の不満は覚えるだろう。
しかし、それほど切実な痛みを感じる訳ではない。
2000万なら尚更である。
子育てを終わっている人も多いはずだ。

ところが、暫定税率の方は切実である。
公共の交通機関が整っている都市部と、車無しでは生活が出来ない地方の住民を区別せずに行う世論調査の結果を盾に、「国民が臨んでいるわけでもない」などと勝手な理屈で約束を反故にする。

取って付けたように、「環境問題のために」などと言い訳する。
そういえば、たばこの増税に関しても、「健康のために」などと言っていた。
要は金が欲しいだけだろうに。

麻生もそうだったが、鳩山も体裁よくしゃべろうとし過ぎる。
無理に敬語を使おうとして、奇妙な日本語になる。
言葉に、自然と伝わってくる人間性が感じられない。
「宇宙人だから」と言ってしまえばそれまでであるが。

鳩山のために一言弁護をすれば、総選挙が8月30日、その結果を受けて鳩山内閣発足が9月16日である。
ところで、2010年度予算の概算要求は8月末までにまとめられている。

予算(Wikipediaより)
通常、8月末に各省から提出された概算要求を財務省が査定して年末までに財務省原案として作成し、復活折衝を経て政府案を決定する。この政府予算案を1月中に国会へ提出し、3月末日までに成立するようにする(財政法第16条~第28条)


鳩山内閣成立前に、概算要求はできあがっていたのである。

10年度概算要求、最大の92兆円 民主、やり直し明言 (asahi.com 8/31)
10年度政府予算の概算要求で、一般会計の総額が09年度当初予算比約3兆5800億円増の約92兆1300億円に上る見通しになった。社会保障費や国債の元利払いが増え、概算要求額は初めて90兆円を超えて過去最大となる。ただ、民主党は概算要求のやり直しを明言しており、予算編成の見通しは不透明だ。


麻生内閣のもとですでに役人達は92兆円を超える概算要求をまとめていたのだ。
事業仕分けで、仕分け人達が戦っていたのがこの幻の概算要求だったのだ。
役人達も、自分たちがいい加減な要求をしていたのではないと証明しなければならない。
抵抗が強かったのも当然であろう。

10年度予算案を閣議決定 一般会計92.3兆円で最大 (asahi.com 12/25)
鳩山内閣は25日、2010年度予算案を閣議決定した。「子ども手当」など民主党が政権公約(マニフェスト)に掲げた主要政策を盛り込み、一般会計は過去最大の92兆2992億円。公共事業費は前年度当初予算比18.3%減と大幅に削減した。

 歳出は09年度当初予算を4兆円近く上回り、2年連続で過去最大を更新。社会保障費は9.8%増やした。鳩山政権が掲げる「コンクリートから人へ」の姿勢を示した。


”過去最大を更新”と言うけれど、麻生内閣のもとでまとめられた概算要求と同水準である。
子供手当その他を盛り込んでのこの数字は、まあまあ健闘したと言えるかもしれない。

無い袖は振れないが、それでも工夫をこらし、自分の信念・哲学を貫くのがステーツマン(statesman)というものであろう。





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