政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

アメリカ政府広報誌・産経─対米外交とは

2009-12-05 17:29:31 | 政治
8月30日の総選挙の結果を受けて産経新聞社会部がtwitterに載せた言葉が、

でも、民主党さんの思うとおりにはさせないぜ。これからが、産経新聞の真価を発揮するところ。
1:36 PM Aug 30th webで


抗議が殺到したと見えて、翌日謝罪。

下記の発言について、たくさんの厳しいご意見をいただきました。軽率な発言だったと反省しています。ご不快の念を抱かれた方には、お詫び申し上げます。
1:15 AM Aug 31st webで


そして釈明。

産経新聞は、保守系の「正論路線」を基調とする新聞です。発言は、新政権を担う民主党に対し、これまで自民党政権に対してもそうであったように、社会部として是々非々の立場でのぞみたいという意思表示のつもりでした。
1:15 AM Aug 31st webで

「これまで自民党政権に対してもそうであったように」
ということは、政権与党べったりということかと思ったら、「是々非々」だったらしい!
しかし、産経が「自民党さんの思うようにはさせないぜ」と言ったことは多分なかったろう。
産経らしく幼稚な言い訳であった。

普天間基地移転問題が訳の分からぬ状況になっている。
岡田外務大臣、北沢防衛大臣の言うことがバラバラ。
福島瑞穂がケツをまくって連立離脱を言いだす。
鳩山は今になってグアム移転を言ったとか言わないとか。
橋下大阪府知事が関空受け入れ。

ところで産経のいう「正論路線」とはこれか。

【正論】拓殖大学大学院教授・森本敏 国家を揺るがす日米同盟の危機  (産経ニュース 2009.12.4)


このところ急速に株価が下落し、円高もすすみ、デフレ現象への危機感が広がっている。政府・日銀はこれに対して、追加的な金融緩和策を取ろうとしている。これは当面の危機に対処するための適切な措置かもしれない。しかし、先般、米議会で海兵隊のグアム移転経費の7割を削減する法案が採決されたり、トヨタのリコール問題が起こったりしたことを合わせ考えると、これら一連の変化の背後に米政府の意図が介在しているような気がしてならない。


トヨタのリコールは米政府の陰謀だったのか。
「これら一連の変化」すなわち、急速な株価の下落も円高もデフレ現象も、「背後に米政府の意図が介在している」のではないか、と森本氏は疑っているらしい。
これはアメリカ政府に対する弾劾の文ではないか。
同盟国たるアメリカが、日本が思い通りにならないから、陰でこそこそ嫌がらせをしている。
そんなアメリカに対する怒りの表明か、と思ったらどうやら違うらしい。
こいつにそんな骨があるはずがない。

確たる証拠があるわけではないが、米国のアフガン新戦略を同盟諸国や中国、インドにまでオバマ大統領が直接電話をして事前説明しているのに、鳩山首相には電話さえなかったのも、同様の背景要因がある。すなわち、これには明らかに米政府の日本政府に対する不快感とそれに基づく政治的圧力が存在すると見るべきである。

確かに「日本政府に対する不快感とそれに基づく政治的圧力が存在する」かもしれない。
で、それがなにか?

ワシントンではオバマ訪日を延期すべきだという意見さえ一部にあった中で、オバマ大統領は訪日を決断し、11月13日には2回目の首脳会談をやった。実質的な内容のない会談であったが、ともかく日米同盟深化のための政府間協議と普天間問題を話し合う閣僚級会合という2つの枠組みを作ることだけは合意した。その直後、鳩山首相がシンガポールで普天間基地問題に関するオバマ大統領との約束を反故(ほご)にするような発言をした。米国の温情と忍耐もここまでだった。

「米国の温情」とは何なのだ?
そんなものを受けた覚えはないが。
オバマが日本にやってきたことか?

ゲーツ国防長官が訪日して、相当に不快感を持って帰ったが、国防長官をなだめることができたのは、キャンベル、グレグソン両次官補など知日派による説得ではなかったのか。しかし、その忍耐も限界に来つつある。こう考えると、最近、日本を取り巻く経済状況の裏に、米政府の意図が介在していても不思議ではあるまい。

外交とは相手をなだめることではない。
そういうのは阿諛追従という。
不快感を抱いたのはゲーツではなく日本国民の方ではなかったか!
「日本を取り巻く経済状況」が米政府の嫌がらせだとしたら、それは誠実な同盟国の取るべき態度ではあるまい。
そのような米政府こそ責められるべきではないのか。

米国にしてみれば、日本は米国の期待を裏切ることばかり重ねているように見える。普天間基地問題は日米間で約束したのに、これを実行するどころか今までの経緯を検証すると言いつつ、決断を先送りしている。沖縄の現状を見ると、事態はますます深刻になりつつある。インド洋から海自を撤退する代わりではないが、5年で50億ドル(約4500億円)の民生支援をコミットして金で済ませようとする。また、日米地位協定の改訂を提起しようともしている。

 在日米軍への接受国支援(HNS)を事業仕分けの対象にして減額しようとする。米国外しの東アジア共同体を提案する。そして、日米間の核密約を暴露しようとしている。これが同盟国の対応なのか。日本民主党は、自民党政治の仕組みだけでなく、日米同盟も排して新しい政治を試み国民人気を取ろうとしているのではないか。日本民主党が主張する「対等」な日米関係というのはこういうことだったのか。


「米国にしてみれば」?
ここに来て、森本氏の立ち位置が明らかになる。
”温情”といい”忍耐”といい、すべてアメリカ政府の側に立った見方である。
しかし不思議な物言いをする人間である。
日本国民の感情には目を向けることなく、アメリカ政府の立場からのみ物を言う。
大体、核密約など、とっくにアメリカの方で暴露しているではないか。

米国の疑念はこういう気持ちに要約されよう。われわれは米国が日本の政治に失望しようが、期待はずれの気持ちを持とうが、日本の国益を追求するために必要だと思えば、米国に遠慮なく物を言うべきである。遠慮なく振る舞うべきである。

笑わせるな!
「米国に遠慮なく物を言うべきである。遠慮なく振る舞うべきである」?
自分がまず、「米国に対して遠慮なく物を言って」みろ。
米国の気持ちは分かるが、日本国民の気持ちは分からないか。

もう少し文章は続くのであるが、バカバカしいので引用はこの辺にしておく。
この下らない文章を長々と引用したのは、これと同じような論調がマスコミばかりでなく、日本全体にはびこっていると感じるからでもある。

「そんなことをしたら日米関係を損なう」
「そんなことを言ったらアメリカのご機嫌を損じる」

結局、日本国民の気持ちよりもアメリカ政府の思惑を優先させる、というのがこいつらの姿勢なのである。
日米同盟とは、アメリカの温情と忍耐の上に成り立っているらしい。

たまには「そんなことをしたら、日本国民が不快に思うからよしたら?」と、アメリカ政府を諫めてやれ。
だれも言わないから、彼等はいつまでも分からないのだ。

ルースというアメリカの駐日大使が怒ったとか。

ルース米大使が日本側に激怒 岡田外相らの面前で大声張り上げる 普天間移設の年内決着断念で

産経や馬鹿評論家どもはすぐに、「そら見たことか。アメリカを怒らせてしまった」と言いつのる。
産経は、自民党の機関誌と同時に、アメリカ政府の広報誌でもあるらしい。

2008/07/08民主党沖縄ビジョン(2008)
普天間基地の辺野古移設は、環境影響評価が始まったものの、こう着状態にある。米軍再編を契機として、普天間基地の移転についても、県外移転の道を引き続き模索すべきである。言うまでもなく、戦略環境の変化を踏まえて、国外移転を目指す。


民主党が普天間基地の県外・国外移転を目指していることは、もともとアメリカも承知のことである。
日本国民がその民主党を選んだ時点で、アメリカは日本国民の感情や意思がどこにあるかを考え直さなければならない。
それもまた同盟国としてのあるべき姿勢ではないか。
アメリカの独善的なデモクラシーを、一方的に押しつけようとしても、その国の国民感情に配慮することをしないやり方では、世界中どこに行ってもうまくいくはずがない。

わたしたちは、いつまでも終戦直後のウブでおとなしいままの国民ではないのだよ。




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