令和3年7月31日(土)
空 蝉 : 蝉の殻
蝉の抜け殻のこと。蝉の卵は木の幹や枝に産み付けられるが、
其処で孵化した幼虫は地中に潜り、木の根の汁を吸って成長
する。その地中生活は数年から十数年間に及ぶ物も在る様だ。
充分に成長した幼虫は、夏になると地上に這い出して来て樹
の幹や枝に六股を確り固定して脱皮する。
羽化を果たした蝉が翅び立った後には、抜け殻が其のまま樹
にしがみついたものや、風等で地表に落ちた物よくを見かけ
るが、その姿は人々にとって何かしら哀れをさそう。
古来、空しい事、儚い事の喩えにも使われて、詩歌にも多詠
われて来た。
俳句に「空蝉」が多く登場するのは、明治以降である。
現生、人の世を意味する「うつせみ」は、人の世の命にかか
る枕詞に伴って、人間存在の虚しさ、人の命の儚さ、無常さ
を滲ませる。
先日、私の句仲間のMさんからのメールで、蝉の脱皮する瞬
間の写真が贈られて来た。とても綺麗な画像で、半透明の緑
色の翅と樹木に残る茶色の抜け殻が強烈であった。
今日(7月31日)で7月も終り、、、、
この処の蝉たちは、自分たちの命の尽きるのを察しているか
の様で、、、その鳴き声は沸騰点となって、まさに断末魔の
様相である。
10階のベランダに迄、舞い降りた蝉は仰向けとなり、最後
の声を振り絞り、やがて六肢の動きが止まる、、、、、、
熊蝉も油蝉も、皆同じように仰向けとなり天を眺め居る。
今日の1句
しがみ付く空蝉の爪あらあらし ヤギ爺
連なりて空蝉となる淋しさよ ヤギ爺