空港ターミナルの平面形態(3)

2009年10月27日 18時14分23秒 | 研究論文

空港ターミナルの平面形態(2)の続きです。

第4章
この章では世界75空港を3人で分担してリサーチしました。グーグルアースを使い駐機方式の見極め、空港の公式サイトで動線方式を確認し、全空港のデータシートを作成しました。国際空港ゆえに公式HPはあるものの、親切にマップがある空港もあれば、内容が意味不明な空港もあり、そもそも基本的に英語で書かれているので時間がかかる作業でしたね。

ここで全部の空港を紹介しても仕方ないので、前回記述した“駐機方式”にそれぞれ該当する空港を1個ずつご紹介し、全世界ではどのような形態の空港が多いのかまとめていきます。

 フロンタル ・・・ ミュンヘン国際空港(MUC)/ドイツ
■写真の上側のターミナルがフロンタルです。見た目はフィンガーですが、内部は一般客エリアと乗客エリアが平行して収まっています。

 フィンガー ・・・ 関西国際空港(KIX)/日本
■日本の空港は図形的なものが多く、中部国際空港もフィンガーです。中央の巨大ターミナルで乗客を改札して、フィンガー部分は乗客しか入ることはできないのがこのタイプの特徴です。

 サテライト ・・・ オーランド国際空港(MCO)/アメリカ
■サテライトは旅客ターミナルとエアサイドターミナルが離れているのが特徴です。成田空港の第2ターミナルもサテライト方式で、両間は新交通システムなどで結ばれています。

 ピア・サテライト ・・・ バンクーバー国際空港(YVR)/カナダ
■サテライトはエアサイドターミナルが離れていますが、こちらはそこまでも通路でつながっていて搭乗口があるタイプです。フィンガーを増改築した際に登場するカタチと言ってもよいでしょう。

 変形フロンタル ・・・ 東京国際空港(HND)/日本
■フロンタルの拡大版ともいうべきものが変形フロンタルです。カタチを変形することによって駐機数を増やしています。こちらもターミナルの内部に乗客・非常客エリアが納まっています。

 オープンエプロン ・・・ モントリオール国際空港(YMX)/カナダ
■旅客ターミナルと飛行機まで建築物でつながっていないものがオープンエプロンです。日本の小さな空港は基本的にこの駐機方式ですよね。

 分離ピア ・・・ アトランタ国際空港(ATL)/アメリカ
■これは巨大空港によく見られるタイプで、旅客ターミナルのほかに、もはや独立したエアサイドターミナルが複数あって、それらは地下鉄などで結ばれています。アトランタ国際空港は世界で一番利用者・発着便数が多い空港です。

 リニア ・・・ マイアミ国際空港(MIA)/アメリカ
■分離方式のリニアはターミナル内部が会社などによって独立しています。ですので、ターミナル内では右左と自由に移動できないように作られています。その典型例はマイアミ国際空港です。

こうしてみると、世界にはいろんなカタチの空港ターミナルがあるのがわかります。逆に言えば、日本は変わり栄えのない意味のない空港が多すぎるのかもしれませんが…。
さて、もちろんながらすべての空港をこれにあてはめるのは困難で、2つのタイプが組み合わさっているものもありました。また、マップがなくてターミナル内がよくわからず見た目のみで判断しているものもあります。こうして…
75個の主要空港の駐機方式をまとめた結果は左のようになりました。→


上記では触れなかった動線方式と、上の表を円グラフにまとめてみました。
 ←世界75空港(95のターミナルビル)の動線方式・駐機方式
■動線方式は大半が2層方式でした。この2層方式は、出発と到着の階がそれぞれ異なっているため、混雑させにくいメリットがあります。
一方、駐機方式はフィンガーがかなりのウエイトを占めています。空港全体の視野で考えると、滑走路に平行してターミナルを造りますから、こういう結果になったと解釈できます。

 ←動線、駐機方式における利用者数上位30位の空港が占める割合
■動線方式はやはり多層方式の割合が大きいですが、2層方式の空港も多いことがわかります。
駐機方式は利用者数が多い空港ゆえに、サテライトや分離ピアの割合が大きくなっていることがわかります。

 ←地域別における動線、駐機方式の割合
■動線方式としては、多層方式はアジアに多いことがわかります。また、アメリカは多種多様な空港形態がありながら、ほとんどが2層方式を取り入れている。
一方の駐機方式は、フィンガーは全世界で採用されているということと、分離ピアは先進国の地域での採用が目立つ。アフリカはオープンエプロンの割合が高いですね。

ここまでを夏休み前半くらいで終えて、先生に見せると一言。

「これ、普通に考えれば当たり前だよね?」

まさにその通り…。冷静すぎる先生は、いやはや、やはり教授だなーと実感。
ということで、次章はこれら空港を視覚的に“カタチ”として捉えて、研究を進めます。駐機方式のところでお見せした空港は方位、縮尺は全部バラバラですから、今度はこれらすべて同条件にして取りまとめていく必要があります。要するに、ここでようやくこの研究のスタート地点に立ったということになります。


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