今日の社内連絡(ブログver)

sundayとかオリジナルテンポとかの作・演出家ウォーリー木下のつれづれなるままのもろもろ。

Mくん

2011-10-08 | Weblog
20代の頃に、Mくんという漫画家志望の友達がいた。僕より、5つ、6つくらい下で、よくお酒を呑んだり、だべったり、遊んでた。とてもいいやつで、かつお互いに若いふたりは、世の中のほとんどのことが気に喰わないことで一致していた。彼は僕の芝居を見にきては的確な感想を言ってくれた。彼は僕のつくる演劇の最大の理解者だったと言ってもよかった。お互いに他の仕事もしながら、かたや演劇を作り、かたや漫画を書いていた。彼もまた漫画を僕に見せてくれた。しかしそれはいつも未完だった。途中のものだった。僕は僕なりに感想を言い、そしていつも「最後まで書きなよ、そうじゃないと、わからないよ」と生意気なことを言って終わった。それが何回か繰り返され、僕はとうとう「漫画家になりたいなら最後まで書かないと、次ぎ会うときは絶対に最後まで見せてくれないと、そうじゃないと会わないことにする」と告げた。偉そうに。それは僕自身が演劇で行き詰まっていて、そのフラストレーションをぶつけただけなんだと思う。もしくは「演劇は本番があるからいいよね」というMくんの言葉にもいらっとしたのかもしれない。なんにせよ、それ以来、彼とは疎遠になった。
それが面白いかどうか、人にほめられるかどうか、評価に値するか、自分で満足するか、そんなことはどうでもいいと思っていた。とにかく駄作でもいいから作らないと始まらない。そして一度手を付けたものは終わらせないと。それを何度も繰り返さないと、どこにも向かわない。そう信じてた。
今なら、もうちょっとましなアドバイスをしたと思うし、なにはなくとも彼の存在が僕の演劇を支えていたのは間違いないのだから、僕はそこにもっと敬意を表すべきだった。Mくんは今も漫画を書いてるのだろうか?そして完成することはできたのだろうか?



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