今日の社内連絡(ブログver)

sundayとかオリジナルテンポとかの作・演出家ウォーリー木下のつれづれなるままのもろもろ。

大道芸ワールドカップin静岡の巻

2013-11-27 | Weblog
11月4日(月)深夜3時18分。静岡のタウンホテル。大道芸ワールドカップにオリテンが呼ばれてやってきた。3日目が終わった。明日で最終日。オリテンでは初の路上回遊型?ストリートを移動しながら行うパフォーマンスを作った。ちかちゃんが初日の最後のステージで転倒して足をやってしまった。大事にはいたってないようでほっとする。

オリジナルテンポにとっても僕にとってもはじめてのこと。路上で移動型で観客参加型。観客ていうか、一般人。通行人。道の真ん中に突然大きな鞄が現れて、しばらくするとベルボーイたちがやってくる。そして運び出す。あまりにも大きくて重たいから彼らだけでは運べない。しょうがないので周りの人たちに手伝ってもらう。それがこのパフォーマンスのシンプルなシノプシスだ。もちろん言葉は一切使わない。これを演劇と呼ぶのか、大道芸と呼ぶのかは、わからないけど、ここ最近の興味をわりとはっきり核にして作ることができたと自負している。今回の静岡バージョンをトライアウトに、いろいろ見えたこともあるので、というかやってみて見えたことだらけだった、さらにバージョンアップを繰り返し(まだタイトルも決まってない)、数年後までにひとつの強力な作品にできるといい。もしくはこれを出発にしたもっと複雑で大がかりな作品になるかもしれない。元気な産声を聞けてよかった。ともかく、いろいろ限界もあった中で、取り組むことができたのは、ひとえにパフォーマーのみんなのおかげだ。そして静岡の人たちのおかげ。この作品で年末にはタイに行く。海外の人の反応も楽しみだ。

大道芸ワールドカップには2年前にも一度オリテンで出ている。そのときはシアターの作品をやらせてもらった。でもこのフェスの魅力はやっぱり外だ。実際にそのときにいろいろと見させてもらったけど、ともかくすごかった。作品のクオリティも観客の熱気も、その能動性も。いつか僕も外で参加したいと思っていた。
大道芸、という言葉のせいか、あまり多くの演劇人の口から聞くことがないフェスだけど、僕の知ってる限り、日本の中でのパフォーミングアーツフェスではダントツに面白いし、ラインナップも強烈だと思っている。東京や京都でやってるインターナショナルなやつもいいけど、街全体を会場にしているという点で明らかにこっちの方が僕の趣味には合っている。ちなみに多摩で僕が始めたフェスは影響を受けていると思う。
町中がお祭り騒ぎで、あらゆるところにステージがあり、駿府公園なんかは、もう完全にロックフェスの会場かと思うほどに人であふれている。屋台もたくさん出ているし、子供から大人まで一日中そこをうろうろして楽しむことができる。キリンビールがメインスポンサーなのでもちろんビールを片手に歩いている人も多い。もう22年目になるそうだ。
海外からやってきているアーティストは、今年に関して言えば、サーカスよりな人たちが多かったが、僕が見たバーを使った二人組の作品なんかは音楽の効果と演出面においてすばらしく、わずか10分ほどのショーなのに泣いてしまった。物語と技術と演出のトライアングルが完璧すぎた。ちなみに彼らは銀賞だった。そうコンペもあるのだ。
このフェスを体験すると、演劇やアート、といったものの力についてまざまざと知ることになる。ジャンルもハイかローかも関係なく、アーティストというのはただの「おかしな人たち」なんだ。その情熱、人間力、夢を見る力、そういうものに勇気を与えられる。ありがとう。

「PLAY!DESIGN!~これからの都市のあり方~」

2013-11-24 | Weblog
KOBEデザインの日記念イベント2013
神戸ビエンナーレ2013連携事業
アジア・デザイン都市フォーラム2013
「PLAY!DESIGN!~これからの都市のあり方~」

日中韓各国ゲストによる「デザイン・アート×地域」のお話+未来都市ネオ神戸について考える参加型グループワーク+交流会

演じて遊んで楽しんで! これからの都市のあり方を考えよう!
人と人が繋がっていく、新しい形の「体験型」フォーラムです!

■日時
2013年11月30日(土)15時~20時 (受付14時30分)参加費 無料(要申込、定員約100名) @KIITO
*イベント終了後、交流会を開催(別途参加費1000円必要)。
※途中参加もokです。

■会場
デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO) KIITOホール
〒651-0082 兵庫県神戸市中央区小野浜町 1-4 <x-apple-data-detectors://2/0>
TEL​078-325-2201​URL ​http://kiito.jp <http://kiito.jp/>
*センターに駐車場はございませんので、公共交通機関をご利用ください。

<会場への行き方>
【電車】​JR、阪急、阪神線三宮駅より南へ徒歩20分
​神戸市営地下鉄海岸線三宮・花時計前駅より徒歩10分
​ポートライナー貿易センター駅より徒歩10分

【バス】​神戸市バス 29系統三宮ターミナル前より乗車、
​税関前(デザイン・クリエイティブセンター神戸前)下車

■ゲスト
朴活民 Hwal min Park 韓国/ソウル
1969年生。暮らし方デザイナー。暮らし方の冒険者。ノー・マネー・デザインの提案者。残高部族の初代族長。知らないうちに建築家。ハジャセンター(ソウル市青少年職業体験センター)リサイクル・デザイン工房代表。産業が皆の生き方を脅かしていると気付き、暮らし方デザイナーと名乗り、種々の変った職を生み出す。都市での住居、暮らしの技術、移動手段、エネルギー転換、自給生産、コミュニティ・スペースなどを専門に扱う。座右の銘は「お金のない人はいても、暮らしのない人はいない」。

李京生​​Jing sheng Li 中国/上海
同済大学建築・都市計画学院都市計画学部教授。上海同済都市計画研究院の総計画師。'00年~'06年、国際建築家連合の推薦と国際ガス連合の委託を受け「持続可能な都市システム設計」及び都市エネルギーと環境都市学術セミナー主宰。第一作者として国内外の雑誌等で学術論文を50件以上発表、中国の都市計画編成を数多く手がける。'01年「崇明島をエコアイランドとして建設する」研究論文で上海市科学技術進歩賞受賞。研究方針はエコシティ(環境共生都市)及び建築設計、農村計画、まちづくりの発展。

大谷燠​​Iku Otani​日本/神戸
NPO法人DANCE BOXプロデューサー。2002年「DANCE BOX」をNPO法人化。大阪・新世界フェスティバルゲート内に大阪市との公設置民営の劇場「Art Theater dB」開設、アーティスト育成と地域社会とアートの新しい環境づくりに力を注ぐ。'09年京阪電気鉄道株式会社、大阪大学と協働で“駅なか”にアートと知のコミュニケーションスペース「アートエリアB1」開設。同年神戸市から招聘され新長田に拠点を移し「Art Theater dB 神戸」を開設。現在、神戸大学、近畿大学非常勤講師。

■全体の説明
神戸市は、神戸の資源や魅力をデザインの視点で見つめなおし、くらしの豊かさを創造するための都市戦略「デザイン都市・神戸」を推進しています。ユネスコ・創造都市ネットワークの「デザイン都市」に認定された10月16日を「KOBEデザインの日」として、毎年、デザインを身近に感じるための記念イベントを開催しています。その一環として、「PLAY!DESIGN!~これからの都市のあり方~」を開催します。韓国・中国・日本の各国ゲストによる「デザイン・アート×地域」のお話、そして演劇のように演じて遊んで楽しんで未来都市ネオ神戸について考える参加型グループワーク。みんなで楽しみ、みんなで考える、新しい形の体験型フォーラムです!

■11のデザイン都市:
ブエノスアイレス (アルゼンチン)、ベルリン (ドイツ)、モントリオール(カナダ)、名古屋(日本)、深圳(中国)、上海(中国)、ソウル(韓国)、サンテティエンヌ(フランス)、グラーツ(オーストリア)、北京(中国)、神戸(日本)

■「デザイン都市・神戸」とは?
2008年10月16日、神戸市は、ユネスコ・創造都市ネットワークの「デザイン都市」(現在11都市)に認定されました。神戸市では、「住み続けたくなるまち、訪れたくなるまち、そして、継続的に発展するまち」を目指して、神戸の今と未来をデザインしていくことで、人間らしいしあわせを実感できる創造都市「デザイン都市・神戸」を、市民のみなさまとともに推進していきます。

■PROGRAM
「PLAY!DESIGN!~これからの都市のあり方~」​
ゲストの話にじっと耳を傾けるだけでなく、参加者の皆さんが積極的に交流をはかり、これからの都市のあり方について楽しく考えていくフォーラムです。「子ども市長」は、未来都市への創造につながります。日中韓3カ国のゲストが集まり、各都市における「デザイン・アート×地域」の先行事例が紹介されます。そして「参加型グループワーク」では、架空の未来都市ネオ神戸の問題解決に向けて、参加者同士が頭をひねり、体を動かします。終了後、交流会もございます。お気軽にご参加ください!


■申込・お問合せ先
アジア・デザイン都市フォーラム2013事務局(灘区民ホール内)
TEL ​078-802-8555​FAX ​078-802-9811 <tel:078-802-9811>
WEB ​ http://playdesign2013kobe.com/
MAIL ​playdesign2013kobe@gmail.com

2O13年の夏について

2013-11-18 | Weblog
ヨーロッパから戻ってすぐに渋谷でのオリテン公演があり、そのすぐあとには呼吸らの「星座から見た地球」が高槻で。それが終わると東京パフォーマンスドールの稽古が始まった。同時並行で多摩1キロフェス。2013年の夏は、大きな動きとしてはそういうことがあった。4ヶ月東京に住むのも久しぶりだった。小学生の頃以来か。ウィークリーマンションやホテルにも慣れた。
他にはSUNDAYの20周年のイベントをしたり、TEDに出させてもらったり、ダンスボックスでダンス留学生に講師をしたり。あ、人生初の高校演劇の審査員もした。
たくさんの人に出会って、話をして、意見を交わして、アイデアを伝えて、コミュニケーションとディスコミュニケーションを繰り返し、いらっとしたり、うれしくなったり、悲しくなったり恥ずかしかったり。時々自分がどこにいるのかわからなくなり、ぽっかり穴が空いてしまうときもあったけど、おおむね元気に前向きに過ごすことができました(魔女の宅急便風)。
その理由の一つに、新しいこと、と、古いこと、を僕の中で混ぜ合わせて作品に挑むことができるようになったからだと思う。今、は過去と未来のぶつかり合う場所だ。そういうことを意識できたことはとても楽だった。背伸びもしないし、だからといって、ありきたりなこともしない。今、をきちんとまじめに紡ごうと思った。寒流と暖流の狭間で泳ぐサカナのように過去と未来は常に今、自分のいる場所で接点を持っている。その接点で自分にできることって結構あるんだな、と気づけた。20年この世界にいたことでそれなりに付いてる力というものがあるのだなあ(だてに年をとってないということかな)。
そしてそれなりに夢もあるんだ、と気づいた。
15歳の女の子たちと一緒に舞台を作ることでそういう意識が持てたのかもしれない。夢というのは事象であって、心の産物ではない。ということに気づいたというか。
なんかわかりますかね。

僕は小さい頃は夢を基本持たないように生きてきた。夢ってなんですか?と。反抗期だったのもある。先生に将来の夢を聞かれても、まじめに答える気なんてさらさらなかった。そんなものは信じてないし、人間はなるようにしかならない。もう少し正確に言えば、夢にした瞬間、それは叶わない気がしたのだ。叶わなくてもいい物語になってしまう心配があった。夢を語る友人を横目に、夢を語る前に具体的にすることあるだろ、と心の中でぼやいてた(性格悪いですね)。僕自身は現実的な目標設定を細かく作るタイプだった。
また僕の若い頃は夢を持つことがいやに奨励されていた時代だったというのもあると思う(ああ、息苦しい時代)。それと、個性とかね(なんだよ個性って!)。そういう時代の中で、実際の自分と、つまり凡庸で退屈な自分と、どうやって折り合いをつけるか、というのがひとつのテーゼとしてあった。そのためには実際にチケットを買って、飛行機に乗ることでしか達成できないことが多いと思っていた。行動だけがすべてだった。

年を取って、やっぱり退屈で凡庸な人間としてこれからの人生の後半をやっていくときに、今持てる「夢」てなんだろうって考えた2013サマー。
そのひとつのヒントはTPDのライブにあるなあと思い、また別の大きな枠で言えば多摩でやったフェスの中にある。オリテンにもあるし、YOUPLAYにもあるし、もちろんSundayにもある。人の前で喋ることや、人の話を聞く中にある。
色々やりすぎだと、注意されることが多いけど、色々やらないとどうもうまく結ばないようです。
全部繋がっている。繋がっている、ということが、もしかしたら今一番大事にしたいことかもしれない。
(この間静岡でやったパフォーマンスはまさにそれがコンセプトだった。その話はまた今度。)

YOUPLAYとは

2013-11-14 | Weblog
YOUPLAY vol.1「スペースレンジャーの不思議な惑星」が今週土曜から始まります。
まだ参加できるステージはありますので、どしどし。

これは、観客参加型の舞台です。というか、舞台上には役者は誰もいません。いるのは参加者のみなさん10名だけです。
見ず知らずの10名の参加者は、協力して、決められた物語の中で役を演じることになります。
物語の展開に応じて床と壁の全面に映し出される映像(マッピング)とヘッドフォンやスピーカーから聞こえてくる音は変化します。
臨場感ハンパないです。さらには衣装とヘルメットにつけられたセンサーによって様々な仕掛けが用意されています。
参加者は、宇宙にいる感覚を楽しみながら、いつのまにか「スペースレンジャー」の一員になっています。

上演時間はおよそ30分間。いくつかの分岐点があり、マルチエンディングになっています。
「まさに筋書きのないドラマ」をみんなで作るのです。
さらにはキャラクターを選ぶことができます。10名のキャラの説明は以下です。好きなキャラを選んでぜひ役作りしてみてください。
http://youplay.jp/sandc.html

またキャラを変えて別のステージに参加することで、まったく別の演じ方/遊び方があることを発見してください。

前回の3月に行ったトライアウトの感想は以下です。
http://www.hephall.com/24639/
http://togetter.com/li/478292

みなさん、最初は「演技なんてしたことないから緊張する」と言ってますが、ものの10分で一人前の役者になっていて、最後には感動的なシーンまで完成させています。

ナレーション役にはプロの俳優の坂口修一さんと中村真利亜(TAKE IT EASY!)さんが参加しています。プロの俳優との共演もできる面白さもあります!
ちなみに土曜と日曜にはプロの劇団によるスペシャル公演もあります。もちろん彼らも即興で演じます。
まずはそれを見てからでも遅くありませんよ。

キャッチコピー的に言えば「誰でも、役者、になれる」。

まさに21世紀型の体験演劇です。

さあ、あなたはハッピーエンドを作れるのか?それともバッドエンド? レッツプレイ!!

http://youplay.jp/index.html
・・・・・・

追伸

YOUPLAYは僕にとって、「演劇の解放」がテーマです。
これはこの間の静岡で作ったオリテンの作品にも通じるし、多摩1キロフェスとも繋がります。
簡単に言っちゃえば「演劇というこんなに面白いツールがあるんだ、みんなにももっと教えてあげよう」です。

たとえばギター。僕も中学時代、買いましたよ。で「禁じられた遊び」とか弾くわけですよ。
でそのまま趣味でやる人もいればプロになる人もいる。

でも音楽や絵画や彫刻や小説、そういうものと演劇はどこか違う気がしません?
でもね、もっともっと子供の頃に「ヒーロー戦隊ごっこ」とか「おままごと」とかしたでしょ?
あれって演劇ごっこだよね。影踏みとか、鬼ごっこ、とか、あれなんかも、全部演劇です。
タッチされた人がどんどん鬼になっていく。鬼を演じる、鬼を怖がる人を演じてる。
つまり簡単なルールさえあれば、じつはどこでも演劇は遊びのツールになるんです。

大人のごっこ遊び、とYOUPLAYのことを称しています。

大人が真剣にごっこ遊びをしたら、こんなに面白いんだ、ということをひとつの作品にしました。
頭と体を使った宇宙の冒険です。確かにちょっと恥ずかしい。恥ずかしいけど、その恥ずかしさが最終的には快感になります。
それもまた演劇の効用なのです。

たくさんの普通の人に演劇というツールを使って遊んで欲しい、という目的が一つ。
で、もう一つの別の目的もあります。

それはこのYOUPLAYをやったあと、演じるということをしたあとに、演劇の公演を見に行って欲しいんです。
そのとき、今までとは確実に見方が変わっています。

ギターの構造をわかってコンサートに行くように、なるほど、と思うことがたくさんあると思います。
それこそが「演劇の解放」であり、演劇のリテラシーをあげることだと思っています。

あ、だからこそ、演劇をやったことある人にもぜひ挑戦して欲しいな。演劇って、かっこいいし、面白いんですよ。何にもまして奥深いし。

シビウ編その2+番外編ヘルシンキ

2013-11-11 | Weblog
仕込みは半日しかなかったが、ここまでのツアーのおかげでずいぶんと段取りは良くなった。
オリテンのだいたいの本番までの作業の流れは、前日までにすることは外で撮影するくらい。仕込みは照明音響映像を仕込んでる間に、段ボールを60個作って、それから楽器関係の配線、サウンドチェック、マッピング映像のあわせ、あとは場当たりしてリハーサル。やろうと思えば一日で仕込んで本番ができなくはない。特に海外はタイトなスケジュールなのでそれにあわせた内容にする。
公演は夜の11時。そんな時間に人が来るのか、と思ったけど、たくさん来た。日本とは3時間くらい感覚がずれてるようだ。
おかげさまでシーガルが飛ぶ作品になった。小屋のサイズも大きくもなく小さくもなくわりとやりやすかった。

終演後はフェスティバルカフェというのがあってそこに行く。DJが皿を回し、ビールが配られる、他の出演者やスタッフやボランティアが踊って飲んで騒いでいる。それが午前3時くらいまで続く。プレスの人なんかもいて、僕らの作品を見てくれてた人からその場で取材を受けたり、知らないカンパニーと仲良くなったり、ただそこにいるだけで多幸感に包まれる。僕はもともとパーティや社交場というものが極端に苦手なのだけど、まあ、こういうところは酔っ払ってしまえば何時間でもいれる。
翌朝早くにシビウを発つ。まだ日が昇る前で、青く静かな世界が広がっている。車の中で眠る。ようやくすべて終わった。

海外で公演をするためには、やはり英語はできないと話にならない。特にヒアリングと会話の姿勢。受け身にならないこと。優しく丁寧に確認を何度もすること。去年の共同製作でも痛感したけど、ボキャブラリーはあまり関係ない(もちろんあるに超したことないけど)。ときたま英語コンプレックス、外人コンプレックスによって、喋ることが億劫になることがある。だいたい2週間目くらいに真夜中、英語の夢を見て(その中でもたどたどしいことには変わりない)、3週間目くらいに英語を喋ると頭が痛くなってくる。その後、外人相手でも日本語を喋りだす。自分でもイヤになる。怒るときだけ英語がぺらぺらでる。よくいうけれど、必要に迫られないと英語なんて出てこない。(僕は課目の中で一番英語が苦手だったし、実際にいまだに苦手意識は強い)

それと、別に海外で公演をしたからといって、なにかなるわけではない。駒が進むわけでもないし、人気者になるわけでもない。
旅で行くよりかは、その先で作品を上演した方が楽しいし、そもそもコミュニケーションのツールとして自分の仕事が役に立つのならそれは嬉しい。特にオリジナルテンポはノンバーバル作品だし、持ち運びしやすい。いわばユニバーサルデザイン。結果としてそうなった作品なので、実は目指したわけではない、その分やってて後ろめたさもないし、信念があるので絶対に倒れない。
ただユニバーサルであることのデメリットだってあって、それは一言でいってしまえば「どこかインスタントなもの」になってしまうことだ。やる側も受け入れる側も。それは気を付けないといけない。この話はまたどこかで。

そして今はブダペスト空港のゲート前だ。フィンランド産の飛行機で日本に帰る。乗り継ぎの関係でヘルシンキに1泊しないといけない。そういえば今回の旅のお供に村上春樹の最新作を持ってきてたのだけど、その中でヘルシンキが出てくる。オルガさんという名前の女性も出てくる(ブダペストではオルガさんという女性にお世話になった)。たいしたことのない偶然だけど、僕は驚いたものだ。もう一冊はブルックリンが舞台の小説。それと荒木飛呂彦の映画論。全部読み終わったので、今からの飛行機でまとめて日記を書く。


番外編 ヘルシンキ8時間観光

トランジット。深夜0時にホテルにチェックイン。翌日の夕方4時に再び空港に行かなくてはいけない。
手帳を見ればどう考えても今年いっぱいまともな休みがとれないことを知っていたのでこの公演も仕事相手もいない街の空白の半日を有意義に過ごすことに決める。
朝の8時半にホテルを出て、空港で荷物をロッカーに入れ、€をつくり、市内に向かう空港バスに乗る。バスが中央駅に着いたのが10時過ぎ。歩いて海を目指す。みどり色の路面電車が走っている。港にはマーケットがでていて、そこで朝食代わりにサーモンが乗ったパンとコーヒーで5€。お土産を屋台で物色。名刺入れや栓抜きなど。すべてトナカイがらみだった。ここではじめてフィンランドにはトナカイがいること、少なくともお土産としてはメジャーなことを知る。スオメンリンナ島にフェリーで渡る。歩いて一周するのに1時間すこし。途中で潜水艦の中に入る。砲台がずらりと並んだ島の先端でぼんやりする。フェリー乗り場の前で地ビールを飲む。乗ってきたのと同じフェリーで本土に戻る。のんびりとした散歩だった。素晴らしかった。わずか8時間ほどのヘルシンキだったけど(そのほとんどはスオメンリンナ島)、大きな休暇になった。今も(あれから半年過ぎたけど)ふとしたきっかけに思い出すのはヘルシンキのことばかりだ。風と海。どことなく寂しい街。なぜだろう。

日本に戻る飛行機の中、斜め前の席に指揮者がいる。ずっと譜面を覚えてる。フィンランド人かな?後ろの子供はひとり旅なのか?日本語がしゃべれることがわかる。母親が大阪にいるらしい。子供ひとりでも乗れるんだ飛行機。
そろそろナイトフライトがはじまる。消灯された機内は、病院を思い出す。僕は小さい頃、入院を何度も繰り返していた。最終的には半年くらい病院に住んでいたこともある。
夜の病院と夜のフライトは空気が似ている。自分はひとりぼっちだ。誰にも助けてもらえないし、誰にも理解してもらえない。この惑星の片隅で誰にも見つけてもらえないで死んでいく小さなリスみたいな気分になる。森の奥で雪がしんしんと降り積もっていく寂しい景色が浮かぶ。まあそういう情緒的な気持ちになりやすいのが夜の飛行機と病院だということだ。毒にも薬にもならない一時の気の迷い。
パソコンを閉じて目をつむる。眠れたら眠る。

・・・

これで6月のヨーロッパツアーの不定期日記は終わります。あれから5ヶ月経ち、その間にもいろんなことが(ほとんどが演劇に関することだけど)あったので、そのことも備忘録としてまた書き始めます。やっぱりブログが(facebookとかツイッターより)僕には書きやすい。

シビウ編 その1

2013-11-09 | Weblog
シビウにはまず電車でブダペストから、アラドという国境沿いの小さな街に行く。そこで演劇祭のドライバーが迎えに来てくれている。愉快な二人組で、フランス映画のコメディ俳優のような二人だった。明らかに僕らの手荷物とはサイズのあわない車に荷物をムリヤリ積んでGO! ルパン映画みたいに荷物が落ちていくんじゃないかと思った。2台の車はアメリカンニューシネマのような広大な世界を疾走する。ルーマニアとか、クロアチアとか、あのあたりの抜けた風景とその独特な異世界感は本当に気持ちが良く、長時間眺めていても飽きない。
何度か「シビウに着いたか?」と勘違いした街を抜け、6時間後くらいに到着。夜だったので、そのままみんなでスーパーで買い出しして部屋でご飯。ワインもビールも相変わらず安い。ホテルはココもすばらしく、とくに見晴らしが良くて滞在中何度も外の風景を眺めた。
翌日は早速事務局に挨拶に行き、お土産を渡したり、書類にサインをしたり。欧州で3番目に大きい演劇祭と言われてるだけあってそれなりの数のスタッフが働いている。ボランティアスタッフも200人とかいるらしい。それでも、エジンバラと比べると田舎ぽさもあり、村祭りのような雰囲気もある。そこで昨日の愉快なドライバーとも再会、もうすでにこの街でハローアゲインを言える友達ができてるのは嬉しい。
そのあとは街を散策。シビウでの散歩は格別素晴らしいものだった。路地裏に入ると、そこには光と影と猫と子供が同じような気持ちで遊んでいる。迷宮のような作りになっているけど、小さな街なので、感覚でどのあたりにいるかはわかる。補修中の教会や、ユーズドの服を売ってる店や、ファストフードの屋台、などなど。シビウの街で気づいたのは、家に「目」があることだ。どの家にも必ず「目」がある。二つ目もあれば三つ目もある。もちろんそれは本当の目ではなくて窓だ。建築的特徴なのだろう。どこにいても見られているようですこし気味が悪い。
街の広場には明日から始まる野外劇のオープンセットが組まれ始めている。わくわくする。

オリテンについてくれたボランティアスタッフはひーくんとエステラさん。日本人がいるだけでほっとする。ふたりには期間中、たくさんお世話になった。よく働くひーくんと何をしているかわからないエステラという対比も、どちらがいいというわけではなく、いかにも日本人とヨーロッパ人の違いで面白かった。

シビウ国際演劇祭は今年20周年目だそうだ。地元の人たちにも愛されていて、そして世界中のパフォーマーが憧れる(少なくとも僕は憧れてた)演劇祭。
僕は韓国の春川国際演劇祭がとても好きなんだけど、それと少し似てる雰囲気を感じた。まずひとつに演劇祭サイドのもてなす気持ち。それとボランティアスタッフのやる気。もしも演劇祭をしたい人がいるなら、この2点は大事にした方が良いと思う。10日間ほどに100近い団体を招聘し、何万人という観客が訪れるのだから、手違いや失敗やディスコミュニケーションは起こるだろう。完璧な人間がいないように、完璧な演劇祭なんてない。それでも参加したい演劇祭というのがあって、シビウもそのひとつだ。

シビウにはシーガルが飛んでいる。海はどこにも見えないのに。それが夜に空をまってるのはいいショーがあった証拠さと現地の人はかっこいいことを言う。

(その2に続く)

ブダペスト編その2

2013-11-07 | Weblog
2泊3日のスロベニア滞在のあと、再びブダペスト。仕込み開始。まずは日本から持ってきたモノを並べる。そのあと、この施設にあるモノを借りる。物足りないときは物色する。前述したとおり、この施設自体がひとつの大きな倉庫のようなモノなので、うろうろすれば面白いモノは次々と見つかる。DIY精神。そう考えると宿泊先のレゲエマンたちとやってることはそんなに変わらない。僕たちはラスタじゃなくてイエロー。
ともかく舞台美術や楽器をその場にあるモノでどんどん作る。ブダペストでは日用品だけで「美しく青きドナウ」を演奏することにした。その演奏自体は素晴らしかったのだけど、完全に僕のミスで、ヨハン・シュトラウス2世はオーストリアの人だった。ごめんよハンガリー人。
ライブ前「ブダペストの人はシャイだから」と言われていたが、どっこい、他のヨーロッパと比べても、みんな楽しんで参加してくれた。おそらくそれはこのスペースの持つ温かさのおかげだと思う。新しいもの、今生まれるものを大事にしようとしている気風がスタッフにも観客にも感じられる。それがたとえよくわからないものだとしても。そんなことは後々の誰かが決めることだ。まずは生むこと。それがこの施設のミッションであり、彼らを大きな波から守ること(政治的なことや、経済的なことから)、がその次のミッションだ。もちろん日本から来てくれたのだからというおもてなしの優しさもあったと思う。公演後は人生初の英語でのアフタートーク。できるかどうか怪しかったけど、なんとかなった。日本では絶対に出ないような質問もいくつかあった。
その点、僕たちのやってることを、日本では正面的な質問しかされたことはないと思う。つまり的外れなことは誰も聞かない。その分、「本当に」やろうとしていることも理解してくれてる人はとても少ない。僕らにすらわからない質問をして欲しいといつも思ってるけど、なかなかそうはならない。その点、文脈の違う国で公演をすると、意外なバイアスがかかってない分、驚くような質問が来て、それの答えを考えるだけで、次の新しい作品が生まれるときはある。

ブダペストにいる間、サイダーワインをよく飲んだ。オルガさんに教えられてはまった。もちろんライブがはねたあとも飲んだ。
翌日はラジオに出演した。ヨーロッパでも有名なコミュニティラジオで、名前はTilos Rádió。stop radioという意味。反骨精神に富んでる、変わった音楽が好きな人たちの間で一目置かれている局だ。そこの名物DJが今回僕らを呼んでくれた。彼の名前はカオス。笠置シズ子のレコードを持ってるような男だ。名前の通り混沌としたキャラで、ほとんど何を言ってるのか分からない。そこではラジオなのに、オリテンで演奏したり、ちかちゃんがDJしたり(モモクロをかけたりして楽しかった)、休憩室では怪しい煙草をみんな吸ってた。
その翌日は雨の中屋外型の演劇フェスに行った。そこでも今後に繋がる大きな出会いがった。ともかく充実したブダペストライフを送った。そうそう、そのフェスではコシチェのクリスとも再会した。1週間ぶりだけど、まさかそんなところで会うとは思ってなかったので感激した。
最終日はDJカオスの家に呼ばれてパーティ、なぜに彼が僕らを気に入ってくれたのかが分かった。彼の家には日本のロボットのおもちゃや、レコードがわんさかあった。彼は日本のある範囲のカルチャーにどっぷりはまっているのだ。ハンガリーの家庭料理を楽しんだあとは、有名なクラブに行って、DJカオスのDJぷりも楽しんで、ビールが頭をかき回し、ひさしぶりに泥酔。音楽は鳴り止まない。

翌朝、頭を押さえながら移動。電車の中ではパソコンで映画を見る。マドンナがアルゼンチンのインスタントクイーンになる伝記ミュージカル。

ハンガリー人は別れるときにハローと言う。ハローブダペスト。