一緒に世界の将来について考えよう

世界の将来について、一緒に考えていくブログ
-2006年から大恐慌の到来を予想
-6年半ぶりに投稿

(大)不況!? その61 信用の収縮の開始?

2007-02-10 09:50:01 | 世界経済

新規住宅購入のための週間ローン申請数は前週から0.8%低下し404.7(前年は425.1)。4週続けて低迷し、4週間平均は4%下落し12週平均を割り込んだ(※1)。予想通り、金利高によって、住宅市場の回復は一服し始めたようで、今後住宅関連の指標に反映される中で、住宅市場底入れという楽観論は後退すると予想される。今後の住宅関連で製造業に限っても100万人程度の雇用減を見込む記事が出る(※2)など、雇用についての慎重な見方も徐々に広がっていくと思われる。

トールブラザーズの1Q予想も厳しい状況がつづくことを示している(※3)。

今最も注視するべきは、徐々に始まっている「信用の収縮」の動きである。ARMなどのリスクの高い住宅ローンで、抵当流れが急増していることから、当然の帰結として、金融機関はローンの焦げ付きの急増に苦しみ始めており(※4)、貸し出し基準が高まりつつある(※5)。貸し出し基準の高まりは、実質的な利上げと同じ効果をもたらし、住宅販売数の減少、orそれを補うための価格減少、が必要となる。

更に面白い指摘として、現在歴史的高水準にある空室率の分析がある。空室の所有者が、投資目的の所有者であることが多いため、通常の売り主の様に別の家を買うことがないため、市場の売り圧力となるという。また損切りで価格を引き下げるリスクも懸念されている(※6)。

 

※1

◎MBA: Purchase Applications Decrease

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/02/mba-purchase-applications-decrease.html


The second graph shows the Purchase Index and the 4 and 12 week moving averages since January 2002. The four week moving average is down 4 percent to 413.78 from 430.8 for the Purchase Index.

 

 

※2

◎Housing Layoffs Coming

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/02/housing-layoffs-coming.html

http://www.marketwatch.com/news/story/many-layoffs-coming-housing-economists/story.aspx?guid=%7B102B585B%2D9CC4%2D49B5%2D954B%2D5706815027D7%7D

David Rosenberg, chief North American economist for Merrill Lynchによると、2007年に住宅建設で60万人、関連する製造業で30万人、計90万人は失われる予想をしている。不動産業、金融業などの関連業種は含んでいない。住宅着工から6ヶ月くらいで完成することから、今後の急速な落ち込みを想定していると言う。

Click on graph for larger image.


 

 

 

 

 

 

※3

◎米トール・ブラザーズの11-1月期、売上高19%減に

http://www.nikkei.co.jp/kaigai/us/20070209D2M0900R09.html

米高級住宅最大手、トール・ブラザーズは8日、2007年第一四半期(06年11月―07年1月)の住宅売上高が、前年同期比19%減の10億9000万ドル(約1300億円)になるとの見通しを発表した。受注残高も同30%減り、住宅市場の減速が続いていることが浮き彫りになった。

土地の評価損が事前予想を上回り、最低でも6000万ドル、最大で1億6000万ドルに膨らむ見通しも明らかにした。発表を受け、同社の株価は取引終了時点で前日比約3%下落した。

※4

◎英銀最大手HSBC、米での不良債権急増

http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070208AT2M0803C08022007.html

英銀最大手HSBCは米国での不動産融資で不良債権が予想を上回って増えたため、2006年12月期決算で貸倒引当金を大幅に積み増すと発表した。アナリストの事前予想である88億ドル(約1兆600億円)を「約20%上回る」という。総額では100億ドル規模となり、前の期の78億ドルに比べても大きく膨らむ。

 HSBCは米住宅市場の減速で最近になって焦げ付きが急増したと説明している。決算は3月5日に発表する。HSBCは03年に米ハウスホールド・インターナショナルを買収し、米国で住宅融資など個人金融業務に進出していた。

◎HSBC Warns on Bad Debt

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/02/hsbc-warns-on-bad-debt.html

◎New Century Financial Warns, Will Restate

REIT会社が、ローンの貸し倒れ引当金などの処理を巡り、リステートの予定とのこと。会計数字の信用性が失われるのは、信用崩壊の第一歩。

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/02/new-century-financial-warns-will.html

 

※5

◎Northern Trust: On the Fed and Tighter Lending Standards

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/02/northern-trust-on-fed-and-tighter.html

銀行は貸し出し基準を厳しくしている。

Click on graph for larger image.

 

 

 

 

 

 

◎WSJ: Mortgage Refinancing Gets Tougher

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/02/wsj-mortgage-refinancing-gets-tougher.html

※6

◎WSJ on Vacant Homes

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/02/wsj-on-vacant-homes.html


(大)不況!? その60 米経済の注目ポイント

2007-02-03 15:28:46 | 世界経済

最近発表された経済指標をもとに、今後数ヶ月の米経済の注目ポイントをまとめてみる。

・4Q米GDP3.5%増

 個人消費支出(GDPの約70%)が対前年同期比+4.4%(3Qは+2.8%)と大変強い。

 注目されるのは、貯蓄率で、3Qは住宅市場の不況を受け、大幅に下落したが、4Qでは大幅に回復。株高等で、資産含み益をあてにした消費傾向が続いている様だ。

  3Q 7月:-1.7%⇒8月:-1.3%⇒9月:-0.7%

  4Q 10月:-0.7%⇒11月:-1.0%⇒12月:-1.2%

  なお、2006年度通期の貯蓄率はー1.0%で大恐慌の1933年に記録したー1.5%以来の水準。住宅バブル以前の水準は+2%以上。如何に歴史的に突出した過剰消費であるかが窺われる(これもニューエコノミー?)。

  今後、長期金利の上昇等で仮に株式市場が調整局面に入ると、3Qと同じく、貯蓄率が急上昇(=消費が急落)する可能性がある。また、4Qにおける暖冬の影響がどれだけあったかも注目ポイント。

 一方、民間住宅投資(GDPの約5%)はー19.2%(3Qは-18.7%)。今後も引き続き減少が続くという見方は、※1を参照。

 民間設備投資(GDPの約12%)も、-0.4%と3Qの勢い(+10.0%)がすっかり無くなった。民間住宅投資の下落が民間設備投資の下落に先行する傾向がある点は※2参照。

・1月の非農業部門の雇用者数は前月比11.1万人増(予想14.9万人増)、失業率4.6%(+0.1%。予想4.5%)

2006年第4四半期の数値が計10.4万人上方修正された他、2005年3月~2006年3月の12ヶ月で+75.2万人(0.6%)上方修正するなど、これまでの雇用環境は絶好調であることが再確認された。1月の数値からは、足元の減速感も窺われるが、これだけ大きく修正される指標であると、1ヶ月だけで判断は出来ない。なお、住宅着工件数から6~9ヶ月遅行する住宅完成件数の落ちがまだ本格化していないことから、住宅建設労働者の減少は1.1万人に留まる(※3参照)。今後数ヶ月で本格化する住宅完成件数の下落により、月5万人減程度まで拡大するかどうかが注目。

・製造業ISM指数

 11月から1月を空けて再び景気判断の分かれ目の50割れの49.3(アナリスト予想51.9)。2003年4月以来の低水準。

こう見ると、米経済は個人消費の一本柱に支えられる様相を強めつつあり、その個人消費を支えるのは、雇用の強さと資産含み益をベースとした過剰消費という姿が浮き彫りとなってくる。楽観論が完全に支配的となり、長期金利の高止まり傾向が続いているが、気候の平準化に伴い、原油価格も再び騰勢を強めつつある。

今後数ヶ月の間、住宅完成件数の下落による労働市場への影響の顕在化、金利高止まり等による株式市場の調整局面入りなどが、ターニングポイントとして注目すべきだろう。

※1

Residential Investment as Percent of GDP

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/01/residential-investment-as-percent-of.html


Click on graph for larger image.

民間住宅投資のGDP比率の過去35年の中央値(median) は4.5%であり、そのレベル、あるいは不況のレベル(3.5%以下)まで低下するとすると、まだまだ落ちる可能性あり。

 

 

 

※2 GDP-Report

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/01/gdp-report.html


Click on graph for larger image.

例外はあるものの、民間住宅投資の下落に続き、民間設備投資が下落するパターンは多い。GDPの下落はその後。 

 

 

 

 

※3

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/02/january-employment-report.html




 住宅建設労働者数の推移