最近発表された経済指標をもとに、今後数ヶ月の米経済の注目ポイントをまとめてみる。
・4Q米GDP3.5%増
個人消費支出(GDPの約70%)が対前年同期比+4.4%(3Qは+2.8%)と大変強い。
注目されるのは、貯蓄率で、3Qは住宅市場の不況を受け、大幅に下落したが、4Qでは大幅に回復。株高等で、資産含み益をあてにした消費傾向が続いている様だ。
3Q 7月:-1.7%⇒8月:-1.3%⇒9月:-0.7%
4Q 10月:-0.7%⇒11月:-1.0%⇒12月:-1.2%
なお、2006年度通期の貯蓄率はー1.0%で大恐慌の1933年に記録したー1.5%以来の水準。住宅バブル以前の水準は+2%以上。如何に歴史的に突出した過剰消費であるかが窺われる(これもニューエコノミー?)。
今後、長期金利の上昇等で仮に株式市場が調整局面に入ると、3Qと同じく、貯蓄率が急上昇(=消費が急落)する可能性がある。また、4Qにおける暖冬の影響がどれだけあったかも注目ポイント。
一方、民間住宅投資(GDPの約5%)はー19.2%(3Qは-18.7%)。今後も引き続き減少が続くという見方は、※1を参照。
民間設備投資(GDPの約12%)も、-0.4%と3Qの勢い(+10.0%)がすっかり無くなった。民間住宅投資の下落が民間設備投資の下落に先行する傾向がある点は※2参照。
・1月の非農業部門の雇用者数は前月比11.1万人増(予想14.9万人増)、失業率4.6%(+0.1%。予想4.5%)
2006年第4四半期の数値が計10.4万人上方修正された他、2005年3月~2006年3月の12ヶ月で+75.2万人(0.6%)上方修正するなど、これまでの雇用環境は絶好調であることが再確認された。1月の数値からは、足元の減速感も窺われるが、これだけ大きく修正される指標であると、1ヶ月だけで判断は出来ない。なお、住宅着工件数から6~9ヶ月遅行する住宅完成件数の落ちがまだ本格化していないことから、住宅建設労働者の減少は1.1万人に留まる(※3参照)。今後数ヶ月で本格化する住宅完成件数の下落により、月5万人減程度まで拡大するかどうかが注目。
・製造業ISM指数
11月から1月を空けて再び景気判断の分かれ目の50割れの49.3(アナリスト予想51.9)。2003年4月以来の低水準。
こう見ると、米経済は個人消費の一本柱に支えられる様相を強めつつあり、その個人消費を支えるのは、雇用の強さと資産含み益をベースとした過剰消費という姿が浮き彫りとなってくる。楽観論が完全に支配的となり、長期金利の高止まり傾向が続いているが、気候の平準化に伴い、原油価格も再び騰勢を強めつつある。
今後数ヶ月の間、住宅完成件数の下落による労働市場への影響の顕在化、金利高止まり等による株式市場の調整局面入りなどが、ターニングポイントとして注目すべきだろう。
※1
Residential Investment as Percent of GDP
http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/01/residential-investment-as-percent-of.html
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民間住宅投資のGDP比率の過去35年の中央値(median) は4.5%であり、そのレベル、あるいは不況のレベル(3.5%以下)まで低下するとすると、まだまだ落ちる可能性あり。
※2 GDP-Report
http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/01/gdp-report.html
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例外はあるものの、民間住宅投資の下落に続き、民間設備投資が下落するパターンは多い。GDPの下落はその後。
※3
http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/02/january-employment-report.html
住宅建設労働者数の推移