想定された様に、米住宅価格の下落が指標にも現れてきた。価格が下落しながらも、在庫は増加しており、93年4月以来の最高水準に膨らんでいる。価格調整によって在庫がはけることによって、来年早々には価格が上昇に転じると全米不動産協会(NAR)では考えている様だ。日経でも「住宅市場の調整局面は、来春まで続くとの見方が多い」としているが、いずれにしても調整のための住宅価格の下落は、即ちホーム・エクイティの減少である。
1/31に書いた様に、昨年72年ぶりにマイナスとなった米国の貯蓄率は、現在でもマイナスのままであるが、72年前というのは1934年、世界大恐慌の真っ只中の年であり、現在の米国の消費水準がいかに異常であるかは歴史的に明らかであろう。それを支えたのが、まさにホーム・エクイティであり、ホーム・エクイティを活用した色々な新しいローンであった。9/15に書いた様に、ホーム・エクイティには「のりしろ分」があるはずで、今回の価格下落がのりしろを使い切る前に止まるかどうかがポイントとなろうが、いずれにしても貯蓄率マイナスの異常事態が、不動産価格高騰の支えなしに持続するとは想定しがたい。貯蓄率をプラスに変える調整だけでも、大きな個人消費の下落は避けられない。
にもかかわらず、S&Pは5年半ぶり高値を付けている。原油高、金利上昇によるインフラ懸念という過去1~2年間米国経済の最大の懸念点・トラウマと思われたものが、緩和されたことによる安心感によるものと思われるが、足元の砂上の楼閣が崩れているのに十分な注意を払っていない様な気がしてならない。ここのところの株価の動きを見ていると、日本の投資家は、現実に不動産市場の崩壊によるバブル崩壊を体験しているだけに、アメリカでおきつつあることを冷静に見て、その日本への影響を冷静に考えることが出来ているのかもしれない。
◎米中古住宅価格、11年ぶり下落
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060926AT2M2600G26092006.html
◎全米不動産協会(NAR)レポート
http://www.realtor.org/PublicAffairsWeb.nsf/Pages/ehs_aug06_existing_home_sales_holding?OpenDocument
◎米国株、3日ぶり反発――S&Pは5年半ぶり高値 ナスダックは30ポイント高
http://markets.nikkei.co.jp/kaigai/summary.cfm?genre=c8&id=db7iaa0526&date=20060926