人によって梅雨を感じる花は色々あると思う。
多分アジサイやハナショウブが多いと思うが、自分にとっては「夏椿」が咲くと、もうじき梅雨なのだなぁと思う。
夏椿・・・ナツツバキでなく、敢えて漢字を使いたい。
この方が花のイメージに合うと思うから。
6月~7月頃に椿に似た白い花をつけることからこの名がついた。
清楚で儚い一夜花。
別名はシャラノキ(沙羅の木)。
仏教で聖木とされる沙羅双樹(さらそうじゅ)にちなんで「シャラノキ」と呼ばれている。
その起源はお寺に多く植えられていたからという説や、お坊さんが似ている木なので間違えてしまったという説などがある。
平家物語の一節にある「沙羅双樹」はこの花のことだと思われている。
ところがお釈迦様が亡くなったとき、近くに生えていたことで有名な「沙羅双樹」は全く別物で、それはインドに自生する樹高が30mにもなる、フタバガキ科の落葉性高木らしい。
また、寒さに弱いため日本では育たないらしく、まだ見たこともない。
[沙羅双樹]
(画像は新宿御苑と草津市立水生植物園のHPからお借りしました)
確かに「夏椿」とは全くの別物。
それならば平家物語が書かれた時からこの「夏椿」が「沙羅双樹」に間違えられていたことになる。
それほど古くからある花だったのだ。
数年前ベトナム、フエにある「ティエンムー寺院」に行った時に、ガイドさんから沙羅双樹だと言って教えてもらった木があった。
でも、どう見ても「夏椿」や本物の「沙羅双樹」とは似ても似つかないものだった。
[ホウガンノキ](ベトナムの沙羅双樹)
ガイドさんの言うことを疑っていたわけではなかったが、後で調べてみたら、これは「ホウガンノキ」。
タイやカンボジア、スリランカ、ベトナムといった小乗仏教を信仰する国では「ホウガンノキ」を沙羅双樹と言うらしい。
ガイドさんが自信満々に言っていたことは本当のことだった。
「ホウガンノキ」はサガリバナ科の常緑高木で、丸い砲丸のような実がなるのでその名がついたのだが、どうして「ホウガンノキ」が「沙羅双樹」とされるのか、詳しいことはまだ分かっていないらしい。